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-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章三十ハ節 型破りの騎士と弾きの達人とライモンド-

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モツがエイブレントを倒し終えてから時間は少し戻り戦闘前…

段差下に落ちたマサツグとライモンドは場所が悪いながらも向かい合っては

剣を構え、何方が先に動くかの我慢比べが始まっていた。その際マサツグと

ライモンドの足元はまるで沼の様に大きめのドロドロな泥濘の中におり、

思う様に足が動かせず強制的に行動に制限が掛けられるのだが、幸いな事に

然程泥濘は深くなく脛辺りまでしか深さはないのであった。


__ズップ!!…ズップ!!…


「……うわあぁ…泥の感触までしっかり伝わって来るぅ~…

それに動き難い!…見た感じあの大剣士はスピードとパワーで

ゴリ押すタイプだから制限掛けるには持って来いだけど…

それは俺にも効くって奴だからなぁ…」


__ズップ!!…ズップ!!…


二人はこれは厄介とばかりに小刻みに足を動かしては何度も泥の感触を確かめ、

直ぐに体重で沈んでいく足に戸惑った様子を見せて居ると、ライモンドも戸惑った

様子で武器を構えつつ足元を確認している。互いに立ち回りが基本の戦闘をする

タイプなので足回りが効かない事に抵抗を覚えつつも、マサツグが何か

アクションをと考えると、ライモンドに向かい剣を構えて走り出し始める!


「…とにかくやるだけ……」


__バッ!!!…ッ!!…


「やってみるかああぁぁ!!!」


__フォン!!!…ガキイィィン!!!…


剣を下段に構えて泥を斬る様に走り出すとマサツグはダッシュ斬りを敢行し、

その際やはり泥濘に足を取られそうになっては若干スピードが落ちるものの、

走れる事を確認してはライモンドに向かい斬り掛かり始める!それに反応して

ライモンドは受け止める体勢を整え両手で大剣を握り、真っ向勝負とばかりに

どっしりと構えて斬り掛かるマサツグに対して逃げる事無くぶつかって行くと、

激しい剣戟音と共に鍔迫り合いが始まる!…のだが、マサツグの攻撃はやはり

泥濘によって弱体化されているのか、いとも簡単にライモンドに弾かれてしまう。


__ッ!!…ガキィィン!!…


「ッ!!…やっぱ無理か!?…」


__オオオオオォォォォ!!!…ブォン!!!…


「ッ!?…刹那!!!…」


ライモンドに攻撃を弾かれ後ろに吹き飛ばされるとマサツグは着地と同時に

よろめき、思う様に動けなかった事に言葉を零して居るとすかさず隙を突いて

来るようライモンドが大剣を振り上げ反撃をして来る!縦に真っ直ぐマサツグへ

向かって振り下ろされる大剣はよろめいている者からすればガードをするには

到底無謀に近く、マサツグが堪らず刹那を発動すると瞬間的に体勢を整えて

頭上で剣を横に構えて受け止める体勢に入り、ライモンドの大剣が

ガードするマサツグの頭の上に振り下ろされると、またもや激しい剣戟音が

辺りに響く!


__ヴウン!!…バッ!!!…ガキイイイィィン!!…


「おっこいしょおぉぉぉぉ!!!」


__ッ!?……ッ!!…ガキィィン!!…


「うおあぁぁ!?…」


マサツグがライモンドの大剣を受け止める際…掛け声を挙げて受け止めると、

突如目の前でよろめいていた者が瞬時に体勢を立て直すだけでなく、大剣を

受け止めるだけのガードまでした事にライモンドが驚いた挙動を見せるのだが、

ライモンドの方にやはり分が有ったのかマサツグは更に押されてしまう。

距離を取る様にマサツグはまた弾かれては後ろに吹き飛ばされてしまい、

ライモンドがゴリ押すよう更に追撃を放つ体勢を整え、マサツグがよろめき

ながらも着地するとライモンドの容赦ない追撃が炸裂する!


__オオオオオォォォ!!!…


「ッ!?…うわあぁぁ!!!…

ヤバイヤバイヤバイ!!…」


__バッ!!!…ブォン!!!…ザバアァァァ!!……


「ッ!?……マジかよ!?…」


マサツグが着地するや否やライモンドは畳み掛ける様に追撃の一撃を

放つのだが、マサツグは刹那を発動しているお陰かそれを辛くも

ドッジロールで回避し、何とかしゃがんだ状態ながらも体勢を整える。

その際剣圧が強烈なのか一瞬泥濘が割れて下の地面が見えるとその様子に

マサツグが恐怖するのだが、ライモンドはまだ止まらないと言った様子で

大剣を振り被っては攻撃を続けようとし、その様子にマサツグはやられて

ばかりでは居られないと考えると反撃を開始する!


__オオオオオォォォ!!!…


「ッ!?…コナクソ!!…火炎斬り!!!…」


__ッ!?…バッ!!…バシュウゥゥ!!!…


「ッ!?…大剣で瞬時にガードってかよ!?…

面倒だな!!…」


マサツグはしゃがんだ状態で剣を構え直し、向かって来るライモンドに対して

火炎斬りを放とうと構えるのだが、ライモンドはマサツグの動きを瞬間的に

察知してか大剣を盾にするよう平らな面を見せて構え、その大剣の陰に体を隠すと

マサツグの火炎斬りを防いでしまう。その光景を見せられたマサツグは戸惑いを

隠せない様子を見せながらも泥濘の中から立ち上がると剣を構え直し、

ライモンドは火炎斬りによってまだ宙に舞っている火の粉を振り払うよう大剣を

一振りすると、また静かに大剣を構え直す。足は泥濘で動き難い上に相手は

自分よりかなり上手で正直勝てるかどうかが怪しい…更に自分が今持って

いる武器は舐めプか?と思われる様な脆弱な武器で、明らかに自分にとって

不利な事が積み重なり諦めたくなるのだが、マサツグは意を決するとまた先に

動き出して高く飛び上がる!


__…ッ!!…バッ!!!…


「兜割り!!!」


__オオオオォォォ!!!…ガキイイイィィン!!……バッ!!!…


「クッ!!…やっぱ何か考えないと埒が明かない!!!…

…で、恐らく反撃が!!……あれ?…」


ライモンドに向かって飛び上がっては剣を上段に構え、落下と体重を乗せる様に

剣を振り下ろすもやはりあの大剣でガードされてそのまま弾き飛ばされる。

そしてマサツグは本日何度目になるか分からない宙の旅をして受け身を取って

着地をし、恐らく来るであろうライモンドの追撃に備えて火炎斬りの構えで

待ち構えるのだが、ライモンドはその場から動かずただマサツグの動きを

観察している様子で攻めてこようとはしない…先程の攻めの様子から一転、

馬鹿の一つ覚えでは駄目と考えたのかそれともマサツグの刹那による復帰能力に

戸惑って居るのか…とにかく大剣をマサツグに対して構えては無駄に動かず、

確実に仕留められるタイミングを見計らう様にジッとマサツグの事を見詰める。


__……ブォン!!…オオオオォォォォ!!…チャキッ!!!…


「ッ!?…急に冷静になった!?…

…えぇ…そっちが動かないんじゃカウンター狙いは駄目って事かぁ…

……どの技も迂闊に撃った所で受け止められるし…最悪返されるし…

…せめてこの泥濘さえ何とか出来ればワンチャン有るかも……

足場も無さそうだし…何か打開策は……?…」


歴戦の戦士が如く堂々たる風格でマサツグを見詰めて動かず、その様子に

マサツグが困惑して攻め倦ねていたが、一度冷静に自分の状況を確認し始める。

今の所ダッシュ斬りと兜割り…火炎斬りとやって見せたが全部あの大剣で

防がれては窮地に追い込まれ何度も被弾し掛けた…更に良く見るとライモンドは

もうこの泥濘に慣れたのか、足は周りに生えている木々が如くしっかりと地面を

踏み締め、いつでも対応出来るとばかりに大剣を構えて見せて居る。自分も

もう少しでこの泥濘を利用した戦闘が出来るかもしれないと言った所なのだが、

当然そんな時間がある訳が無く、時間を掛ければ掛ける程不利になって行く事を

考えると、更に焦りを産み始める。そうなるとやはり一番の難点は今居る場所…

足場であり、マサツグが何とか出来ないかと一人ライモンドを警戒しながら

辺りを探っていると、ふとある考えが浮かんで来る。


「……いっそ樹を斬ったら足場に出来ないか?…

足場にワンチャン掛けて戦うのも手か?…」


__オオオオォォォォ!!!……


マサツグの目に映ったのはその泥濘の近くに生えている木々で、マサツグは

それを斬って泥濘に沈めて足場に出来ないかと考えたのである。しかし

そんな事をすれば当然ライモンドにもメリットを与えるきっかけになり、

更に自分が危ない目に遭う事を考えるのだが、マサツグは徐々に考える事が

面倒になって来ると悪い癖が出たのか、思い付きだけで行動し始める!


「……うぅ~ん……うん!…やっぱ考えるのは性に合わねえな!…

こうなりゃ!…一か八か!!…火炎斬り!!!」


__バシュウゥゥ!!!…ゴゴゴゴゴ……ドシャアアァァン!!!…


「もういっちょ!!!」


__バシュウゥゥ!!!…ゴゴゴゴゴ……ドシャアアァァン!!!…


ライモンドが目の前で構えていると言うのにマサツグは無策に木々に向かって

走り出しては火炎斬りで木を伐採し、泥濘の中に火の点いた丸太を浮かべ始める!

バッサバッサと樹を斬って行くマサツグに、さすがのライモンドも困惑した様子で

反応しては目で追い掛け様子を見ていると、マサツグは泥濘の中に火の点いた

丸太を6~7本位投入して行く!更にマサツグが伐採した樹は偶然にも可燃性に

優れているのか、泥濘に浸かっていても護摩焚きの様に燃えては泥濘の水分を

蒸発させて行き、傍から見れば火事と誤解を受けそうな程に樹を燃やしていき、

遂には泥濘の水分を蒸発させ泥の上に立てる様にしてしまう。


__…ぬちょ……ぬちょぬちょ…


「…若干滑り易くはなったけど…まだ戦い易くはなったかな?…」


__オオオオォォォォ!!……ブォン!!!…


「ッ!!…やっぱいますよねぇ~…

丸太をぶっこんでる際巻き添えになってないかなぁ?…何て考えてたけど…

そんな甘くはありませんよねぇ…」


ある程度水分が抜けて泥の上に立てる様になり、マサツグがその感触を

確かめては戦えると確認して嬉しい誤算と言った様子で口にしていると、

ライモンドがゆっくり蒸気の影から姿を現してマサツグに剣を構える。

そしてその姿に気が付いたマサツグが淡い考えを持っていた事を口にしては、

諦めた様子で頭を掻き毟りライモンドに視線を向けると剣を構え始め、

これによりマサツグとライモンドが共に動き易くなった状態で剣を構えての

再度睨み合いに発展するのだが、泥濘の外側内側では今だ樹が轟々と

燃え続けており、一度判断を間違えれば大火傷の危険なバトルフィールドが

完成する。さて…このマサツグのトンデモナイ行動が吉と出るか凶と出るか?…

この後のマサツグの戦いによって決まる訳なのだが、マサツグは先程とは

違うと言った様子で飛び出してはライモンドに斬り掛かり始める!


「足場さえ何とかなればまだ対抗策はある筈!!…歯を食い縛れ!!…

思いっきりをぶつけろぉぉぉぉぉ!!!…」


__オオオオオォォォォォ!!!!…フォン!!!…ガキイイイィィン!!!…


「グッ!?…ッッッ!!!……何つう衝撃なんだ!?…

こんなのまともにやり合ったら手がおかしくなる!!

…とは言え!…」


マサツグがライモンドに向かいダッシュ斬りを敢行してはそれに合わせて

ライモンドも大剣を振り被り、互いがぶつかり合うタイミングで剣を振り

激しい剣戟音を響かせると、マサツグの両手に鈍い痺れに似た痛みが

伝わって来る。ジ~ン!…としたあの何とも言えない痛みに耐えつつ

マサツグがライモンドとの鍔迫り合いを始め、ライモンドも先程のぶつかり

合いで若干力が入らないのか怯みながらもマサツグと弾き合いになると、

追撃を放つ!


__ガキイィィン!!…ッ!?…ッ!!…オオオオオォォォォォ!!!…


「ッ!?…意味が無かった訳じゃ無いんだな!?…」


__ブォン!!!…フォン!!!…ガキィィン!!…


マサツグはライモンドの手に力が入っていない事に気が付いて地面を固めた事に

意味はあったと確信し、ライモンドの追撃に対して迎え撃つよう剣を横に振りまた

ぶつかり合うと、ジ~ン!…としたあの何とも言えない痛みに襲われる!その際

互いに余り力を入れられないのか最初の時より威力が低い一撃同士がぶつかり、

お互いに若干仰け反り距離を取り合い始めると、ここでマサツグの刹那が

使用時間切れになってしまう。


__ヴウゥン!!…


「ゲェ!?…マジかよ!?…」


__グウウゥゥゥ!!…


「ッ!!…とは言え、今更引けるかよ!!!…」


__バッ!!!…


マサツグが刹那の使用限界時間が来た事にショックを受けるも、目の前では

ライモンドが反動のダメージに怯んでは動けない様子を見せて居るのが目に映る。

それを目にしたマサツグが落ち込んでは居られないと、ライモンドに向かい

走り出しては斬り掛かるのだが、ライモンドもまだ動けるとばかりに

大剣を握ると向かって来るマサツグに大剣を振り下ろし、マサツグとライモンドに

よる打ち合いが展開される!


__オオオォォォォ!!!…ガキィン!!ガキィン!!ガキィン!!…


「クッ!!…まだ痺れが!!…でも負けられねぇ!!!…」


__オオオオォォォォォ!!!…ガキイィン!!ガキイィン!!ガキイィン!!…


一進一退の攻防を見せては互いに炎を背負いそうになり、危ない場面が

多々見られるのだが巻き返しては硬直等…お互いに怯みが取れて無くなって行き、

徐々に激しい打ち合いになり始める!マサツグがダッシュ斬りで一気に間合いを

詰めて斬り掛かれば、ライモンドが大剣を巧みに扱ってパリィで返し、その際

パリィでマサツグがよろめくとライモンドが飛び上がっては兜割りをするのだが、

マサツグも徐々に相手の動きに慣れて来たのか刹那無しでも瞬時に体勢を

立て直しては、剣を構えて兜割りを受け流す!この時マサツグとライモンドは

似た者同士なのか…ただ目の前の相手にしか集中しておらず周りが見えていない

様子も多々見られ、そんな互いに一進一退の攻防を繰り広げているとここで

マサツグが鍔迫り合いに勝って隙の出来たライモンドに向かい火炎斬りを放つ!


__ガキイィィン!!…グラッ!…


「ッ!!…火炎斬り!!!」


__バシュウゥゥ!!!…ッ!?…ブォン!!!……ッ!?…


マサツグが隙を突いて放った火炎斬りはライモンドに向かい迫るが、ライモンドが

火炎斬りに気が付くと、咄嗟の判断で大剣で払い除け一筋縄では行かない

様子をマサツグに見せつける!しかしライモンドが火炎斬りを払い除けた時!…

そこにマサツグの姿は何処にも無く、ライモンドが戸惑った様子で辺りを見渡して

居ると突如頭上から声が聞こえ始める!


「こっちだ!!!馬鹿野郎ぅぅぅ!!!!」


__ッ!?…


「ハアアアアァァァァァ!!!!」


__ッ!?…フォン!!ガキイィィィン!!!……ッ!?…


火炎斬りを囮にマサツグは飛び上がり、二段構えでライモンドに向かい頭上からの

兜割りを敢行するのだが、ライモンドはこれも瞬時に大剣でガードしてしまうと

マサツグは空中で止まってしまい絶好の的となってしまう!マサツグも止められる

とは思って居なかった様子で戸惑ってはライモンドを見詰めていると、ライモンドは

マサツグを投げ飛ばす様に大剣で払い除け、地面に落下するマサツグに対して

ダッシュ斬りを放つ!!


__ブン!!!…バ!!!…オオオオォォォォ!!!…


「グッ!?…あれも駄目なのかよ!?…

それに向かって来る!?…体勢は悪いけど!!…」


__オオオオォォォォ!!!…ガキイィィィン!!!…


「グオォ!!!…ガード!!!…」


投げ出されたマサツグは地面に落ちるまで間は回避行動を取る事が出来ず、

向かって来るライモンドに慌てた様子を見せては剣を構えてガードの体勢を取る。

踏ん張りが効かない分あまり意味の無いガードなのだがそれでもマサツグが

構えて見せて居ると、ライモンドは真っ直ぐマサツグに斬り掛かり、マサツグは

ガードに成功するもダメージを貰って更に吹き飛ばすよう振り払われると、

地面に叩き付けられる!その際持っていた唯一の武器トライアルソードを

手放してしまい、更に叩き付けられた追加ダメージで意識が遠退きそうになる!


__ドザアアァァァ!!…カランカラン!!…


「グッ!!…ガハッ!!…まっず!!…」


__オオオオオォォォォ!!!…バッ!!!…


マサツグが地面に倒れて意識が混濁状態の中、ライモンドがゆっくり歩いては

マサツグとの距離を縮め始め自身の間合いにマサツグを捕らえると、大きく

踏み込みマサツグに向かって大剣を掲げる!止めを刺さんとするライモンドに

マサツグは意識を徐々にハッキリさせながらも何か武器は無いのか!?と、

とにかくガードが出来そうな物を探していると、それは突然起きた!


__オオオオオォォォォ!!!…


「ッ!?!?…」


__…ッ!…ガッ!!!…バシュウウゥゥゥゥ!!!…ッ!?!?!?…


最期の光景の様に…刹那を使って居ないにも関わらずマサツグの目の前が

スローモーションで流れ始めてはライモンドがマサツグに剣を振り下ろし、

マサツグが倒れたまま慌てた様子で周りを探っているとある物が手に当たり、

それに気が付くと必死に掴み取る!そしてライモンドに向かいガードするよう

突き出すと、次の瞬間マサツグを守る様に突如何処からともなく突風が

噴き出しては襲い掛かって来たライモンドを襲い始め、その突風で体勢を

崩したライモンドが押し戻されると、ライモンドは戸惑った様子で

受け身を取る。


__……ザシャアァァ!!!…ッ!!…


「ッ!!!………?…あれ?…助かった?……ッ!…

え?…これって?…」


ライモンドが警戒した様子でマサツグから距離を取り、突風が吹き止んで攻撃が

飛んで来ない事にマサツグが戸惑いながらも助かったと感じ、徐に手に取った物を

確認するとマサツグの手には春風刀が握られていた。春風刀はモツから返して

貰った後確かにアイテムポーチの中に仕舞った筈であり、自分が春風刀を握って

いる事に驚いた様子を見せて居ると、ライモンドは大剣を構え直しマサツグに

再度斬り掛かり始める!


__オオオオオォォォォ!!!…


「ッ!?…ヤッバ!!…抜く事は出来なくても!!…」


__チャキッ!!…スラァ…


「え?…」


向かって来るライモンドに慌ててマサツグが立ち上り、春風刀を手に構えて

見せると迎撃の体勢を整える。抜けなくても戦えるとばかりに柄へ手を向け、

しっかり握って抜刀の構えを取るのだがその際柄を握る手に力を入れて、

鞘ごと振り抜くつもりで抜き始めると、今まで1mmも鞘から抜く事が

出来なかったのに…その出来事が嘘だった様に抜刀出来てしまう。

そして春風刀を完全に抜刀すると同時に先程に似た強烈な風が鞘から噴き出し、

またもやライモンドに襲い掛かるとライモンドの体を浮かせては遠方へと

吹き飛ばしてしまう!


__スラァァ!!…バシュウウゥゥゥゥ!!!…ゴウッ!!!…ッ!?!?!?…


「え?…えぇ!?……」


__チャキッ!!…


ただ突然の目の前の出来事にマサツグが戸惑い、鞘に目を向けると鞘からは

風が微かに流れるだけであれ以上風が吹き出す様子は無く、吹き飛ばされた

ライモンドに目をやると大剣を手に地面に倒れていたがゆっくりと起き上がり

始めていた。そんな光景を目にしつつマサツグが今まで見たくても見る事が

出来なかった刀に目を向けると、そこには見事な刀身が姿を現していた。

春風刀の刀身は棟が萌黄色で刃は薄い感じの黄緑…一見シンプルに見えるのだが

刀身に光を当てると桜や花びらの紋様が入っているのか、その紋様が刀身に

映し出される。長さは刀身75cmの柄20cmの打刀(95cm)で、刀身はまるで

風を纏っているが如く…逆巻く様に流れてはその場に落ちている木の葉を

舞い上げる。そして見たかった刀身に目を奪われマサツグがライモンドの事を

忘れていると、ライモンドは二回も吹き飛ばされた事に戸惑ってかマサツグの

出方を伺い始める。


__ザッ…ザザッ…オオォォォォ…


「ッ!!…おっと!いかんいかん!!…鑑賞会はこれ位にして…

刀身が抜けたんなら行ける筈!!…意識も戻って来たし!…

こっからが!…本番って所か!!」


__…スチャ…ゴオオォォォォ!……


マサツグがハッ!と我に返ってライモンドの事を思い出すと、首を左右に振って

意識をハッキリさせ始める。そして抜いた刀を構えては様子を伺うライモンドを

見詰め、ライモンドもマサツグの反応を見て警戒した様子を見せて対峙する。

マサツグは刀を両手で握り下段に軽く後ろへ流すよう構えると、

マサツグの闘志に反応してか春風刀が纏っている風が強くなり、辺りに落ちて

いる木の葉などを吹き飛ばし軽い嵐を起こし始める!そんなマサツグを目にして

ライモンドも好戦的になり始めたのかマサツグに向かいダッシュ斬りを

し始めると、マサツグもそれに答えるよう構えそのままにライモンドへ向かって

行き始める!


__……バッ!!!…バッ!!!…


「オオオオオォォォォォ!!!!」


__オオオオオオォォォォ!!!!……ブォン!!!…バッ!?…


互いが向かって来る相手に向かい走り出し、自身の持つ剣を構え、逃げる事無く

声を挙げて攻撃のタイミングを伺っていると、先に動いたのはライモンドで

あった。先に動いたのもライモンドだったと言う事も有るのかマサツグに対して

走り込んでは勢いそのまま横薙ぎに大剣を振って見せるのだが、マサツグは

その横薙ぎの大剣の下に潜り込むよう回避すると身を屈め下段の構えのまま、

刀を抜いた時に習得した技をライモンドに向けて放つ!


__チャキッ!!…ゴウッ!!!…


「四季刀剣術!!…疾風の型!!!」


__フォブオオォォォン!!!……バシュウゥゥ!!!…


マサツグがダッシュ斬りの大剣を回避しライモンドに向けて技を放つ際、

刀を構え直すと刀身の風が更に強くなり、マサツグが大きく踏み込んで

ライモンドを間合いに入れると思いっきり下から斬り上げる!マサツグが

放った居合い剣・疾風の型と言うのは簡単に言うと刀版ダッシュ斬りの事であり、

下段の構えでダッシュをしながら自身の間合いに相手を入れて捕捉すると、

風を切り裂き巻き込んで相手を斬り上げると言う春風刀限定の技であり、

それを土壇場でマサツグがやって見せるもライモンドは咄嗟にバックステップを

していたのか、傷が思ったより浅く…仕留め切る事が出来ない。しかし傷を

負わせる事には成功しその胸から腹部に掛けての傷口からエイブレントと

同じく黒い体液と靄が出て来ては、マサツグを戸惑わせる。


「うげッ!?…な、何だこれ!?…」


__ザザアァァ!!…ッ!!…ガィン!!!…ッ!!…ッ!!…


「……とにかく漸くまともなダメージを入れる事には成功したかね?…」


__ッ!!…ガッ…ガッ…ガッ………ブォン!!…


マサツグがライモンドの体から出て来た黒い体液と靄に驚いて居ると、

ライモンドがバックステップの受け身で更に出血?…をしては膝から崩れ落ち、

大剣を地面に刺し杖代わりにすると体全体で息をする様に揺れ始める。

そのガックリと項垂れた様子からでもマサツグの一撃が重かった事を物語り、

マサツグが効果あったと静かにガッツポーズをしていると、ゆっくりではあるが

ライモンドは立ち上がり始める。これが御前試合の様な決闘なら誰かが止めに

入るのだろうがここにはマサツグとライモンドの二人しか居らず、互いがこれで

最後になると自覚すると剣を構え合う!


__チャキッ!!…


「これで終わりにする!!!…こっちにも負けられない理由が有るんだ!!!」


__オオオオオォォォォ!!!…


「ッ!!…刹那!!!…」


互いが覚悟を決め合った所でライモンドは大きく踏み込み飛び上がるとマサツグに

向かい落下し、大剣を縦に構えて回転し始める!ライモンドの中での大技であろう

その攻撃にマサツグが戸惑うも、ここで刹那のクールタイムが終了すると再度使用

可能になり、マサツグが勝つ為遠慮無しに刹那を発動するとライモンドの攻撃が

スローモーションに見え始める。ただスローモーションに見えてもライモンドの

攻撃は速く、隙を見つけるのに時間が掛かって居ると徐々にライモンドは

マサツグに迫って来る!


__オオオオオオォォォォォォォ!!!!…


「ッ!?…隙が見つからねぇ!!…でも、もうやるしかない!!

一か八か!!…喰らいやがれぇぇぇぇぇ!!!」


__バッ!!!…


「絶!!!…天翔剣!!!」


ライモンドの攻撃を捕らえる事の出来ないマサツグは一か八かの大勝負に出始め、

刀を納刀し後方に構え直すと大きく踏み込み、ライモンドに向かって飛び出して

行く!そしてぶつかる直前で抜刀しては勢いそのまま横薙ぎに一太刀で

斬り掛かり、空中で誰かが斬られた様な音が聞こえて来ると互いに通り過ぎ、

そのまま二人は地面に降りては受け身を取り着地をする。


__…バシュウウゥゥ!!……ヒュウウゥゥ…スタッ…スタッ……


「…まだやるのか?……」


__ブシュウウゥゥ!!!…ッ!?!?!……ッ!!…バッ!!…


「……だったらキッチリ留めさしてやらぁ!!!」


二人が地面に降りてから大体1~2分後…マサツグが確かな手応えを覚えた様子で

一言呟くと、ライモンドの腹部に横薙ぎの傷口が突如出来てはその傷口から

更に出血し、それでも倒れないライモンドがマサツグの方に振り返ると

正真正銘最後とばかりにダッシュ斬りを敢行し始める!それに気が付いた

マサツグがこれ以上は無駄だと分かっていつつも、無下には出来ないと考えると

刀を握り直して迎え撃ち、ライモンドの不屈の闘志に敬意を払いつつも

ダッシュ斬りをライモンドに向けて放つ!


__バッ!!!……


「オオオオォォォォォォ!!!!」


__オオオオオォォォォォ!!!!…ズバアァン!!!…バシュウウゥゥ!!…


時分は刹那を発動した状態で相手は既に瀕死…そんな相手のダッシュ斬りを

マサツグが避けられない訳も無く、回避して懐に潜り込むとカウンターの

ダッシュ斬りをライモンドの腹部目掛けて放つ!マサツグが止めの一撃を入れて

通り抜けると同時に、ライモンドの腹部からはまた黒い体液と共に靄が噴き出し、

それに合わせてライモンドが前のめりに倒れ始めると光を纏い消滅し始める。

その後ライモンドは起き上がる様子を見せる事無く地面に突っ伏し、マサツグが

刀を一振りしてから納刀すると刹那を中途半端に切って、一息吐き始める。


__…フォン!!……ヴウゥン!!…


「……だあッ!!…ぜぇ…ぜぇ…

これで!…勝負あり!…だな!…」


__ぱああぁぁぁ!!…


「……ッ!……あれ?…あれは?……

さっきの…大剣?…」


まるで息でも止めていたのかと言わんばかりに突如息を切らし始めては両手を

両膝に付き、項垂れながらも消えて行くライモンドの遺体を見詰めていると、

その光の中からライモンドが振り回していた大剣が姿を現し始める。そして

やはり最後地面に刺していた様子も無いのに大剣は地面に刺さっており、

マサツグは息を整えスッと立ち上がるとその大剣の方へと歩き始める。その際

大剣は幾多の戦場を乗り越えて来たのか峰の部分は傷だらけで、柄のグリップ

テープも握り込んで来た数の分だけボロボロ…しかし不思議な事に刃の部分は

刃毀れしておらず、鈍く輝いてはその頑丈さをアピールしている様に見える

のであった。


「…これってドロップ品かなぁ?…だとしたら胸熱モンなんだが……」


__ガッ!!…ぱああぁぁぁ!!…


「うおぉ!?…な、何だああぁぁ!?!?…」


マサツグの武器コレクターの血が騒ぎ…好奇心が擽られるまま大剣の柄に

手を伸ばし地面から引き抜こうとすると、これもモツの時同様突如マサツグの

視界がホワイトアウトし始める。勿論何が起きたのか分からないマサツグは

戸惑って辺りを見渡すが、一面何も無いただの白の世界で何も見えず、

ただ何が起きたのか分からないまま困惑し続けるているとふと自身の手元に

目が行く。マサツグの手には先程地面から抜かれた大剣が握られおり、今までの

戦闘が夢では無かった事がハッキリと分かるのだが、この状況は何!?と一人

戸惑い慌てた様子で立ち尽くしていると、突如目の前に黒髪のヤンチャそうな

少年が出て来ては近所の子供と喧嘩している様子が映し出される。


「え?…ナニコレ!?…如何しろと?…てか、喧嘩してる?…」


__ぱああぁぁぁ!!…


「うぇえ!?今度は!?……?…武術大会?…いや…でも何か違う様な?…

でもこの黒髪の子はさっきの…あれ?…ライモンド?…じゃあこっちは?…

エイブレント?……もしかして何かの回想シーンに入ってたりしてるのか?…」


喧嘩している黒髪少年の様子が消えては次に投影されたのは黒髪少年が成長して

剣を握り、その相手に金髪の綺麗な男の子が相手をしている…剣の訓練?…

試合をしている様子であった。何方の互いに一歩も退かない見事な戦いぶりを

見せており、互いにライバル視している様子もしっかり見て取れる反面、

二人に何処か見覚えを感じていると、マサツグはハッ!と気が付いた様子で

黒髪の少年がライモンドである事を理解し、相手をしている金髪の少年も

エイブレントである事を理解すると、漸く今自分がいる状況を理解する。

そこから流れる光景はエイブレントの方でも見れた物と同じで、何処かの国の

騎士になって…エイブレントが王様に対して敬意を示すよう敬礼をしている中、

隣ではライモンドが大欠伸をして自分の腹を掻いている様子が映ったり…

戦場を駆け抜けた日々が映ったり…大した事無い事で喧嘩ばかりをしていた

日々が映ったり…自分達が仕えていた王から始めて勲章を授与した時等の…

エイブレントがライモンドと共に過ごし成長して来た記憶がマサツグの目の前で

投影され続け、そしてそれをマサツグが黙って見ていると二人の騎士の

最後の場面が投影され始める。


「エイブレント!!…ライモンド!!…お前達にこの国の将来を託す!!…

必ずや伝承にある光り輝く樹を見つけ出し!!…

この国の瘴気を払う手段を見つけて来るのだ!!!…」


「…ハハァ!!…」


「ッ!!…まぁたメンドクセェのが出て来やがって!!…

こちとらもう三日も戦いっぱなしなんだよ!!!…邪魔すんじゃねぇ!!!…」


「でぇ!…ぜぇ!…ったく!手こずらせやがって!…おいエイブレント?…

お前くたばって…ッ!…テメェ何も!!…グッ!!…

この!!ふざけるなああぁぁぁ!!!…」


その最後はやはりエイブレントと同じ物で二人が王様から命を受け、この森に

来た後この森で見た事の無い化け物と戦いボロボロになりながらも勝利を

収めるがその後にやって来た術士に捕まり、実験台にされる後味の悪い最後に

なっていた。そしてそれを見せられてはマサツグが困惑し立ち尽くしていると、

いつの間にかマサツグの目の前にはライモンドが亡者ではなく元の姿に戻った

様子で現れ、大剣を担いでマサツグの方へと歩いて近付いて来てはさっきの

戦闘に覚えがある様子で話し掛け始める。


__…ッ!……ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


「いやぁ~参ったぜ!!…

まさかあんな隠し玉を持っているとか聞いてねぇっての!!…

風に吹き飛ばされるとか…ドラゴン退治以来じゃねぇかな?…

あっはっはっはっはっは!!!…」


「え、えぇ~っと…ライモンドさん…で、良いんですよね?…」


やられた事に対して全く恨みを持っていない所か満面の笑みでフレンドリーに

話し掛けて来ては、マサツグを呆気に取り困惑させる。まるでさっきの

命のやり取りが楽しかったと言わんばかりの軽い口調で話し、春風刀の突風を

ドラゴンの羽ばたきと言って豪快に笑い飛ばすライモンドに、マサツグが

ただ戸惑いを覚えつつも本人であるかを確認すると、ライモンドは不思議そうな

表情を浮かべては肯定する。


「あぁ?…おう!そうだ!!…

…あん?…どした?…何でそんなに奇妙な顔をしてんだ?…」


「い、いや…化け物化しても一応アンタを斬った事だし…

恨み言の一つでも言われるかって思ってたんだけど…」


「あぁん?…んなモンやられた奴が悪いんだろうが!!…

大して実力もねぇのにピィピィ喚く奴らの戯言なんざ気にすんな!!…

お前は俺より強ぇよ!!!…胸を張って良いぞ?…

あっはっはっはっはっは!!!…」


「は…はぁ……」


マサツグが不思議そうな表情をして居る事にライモンドが疑問を持つとその表情の

理由をマサツグに尋ね出し、マサツグが戸惑いながらもその質問に答えると、

その返答を聞いたライモンドは呆れた様子で気にするなと笑顔で答える。

見た目通りと言うか何と言うか…ライモンドはマサツグの事を気に言った様子で

近付いて来ては腕を回してマサツグの肩を抱き、軽く叩いて見せると笑顔で

称える。そんな予想していたのと違う反応にマサツグが戸惑いを覚えていると、

マサツグがライモンドに質問をし始める。


「…ッ!それはそうと何であんた達はここに?…

一応アンタの記憶…っぽいのは見たけど…如何にも…」


「あぁ…記憶の通りで間違っちゃいねぇよ…

王に頼まれてこの森に来たモンの…化け物共が馬鹿みてぇに襲って来やがって!…

ロクに寝る事が出来ないままイライラしてたらあのデカいバケモンが登場!…

そっからはただ怒りに任せてぶん回してたんだが…

妙な術士に捕まってジ・エンドって奴だ……ったく、やってらんねぇぜ!!…」


「お、おう…」


マサツグの質問に対してライモンドが笑顔から一転…真剣な表情を見せると

記憶通りと話してはその話に答え始める。その時ライモンドはマサツグに

やられた事より術士に捕まった事の方が頭に来ていたのか、術士の話になると

拳を握ってはイライラした口調で話し、化け物に変えられた事に怒りを

覚えた様子を見せ始める。そのライモンドの様子にマサツグが更に戸惑いを

覚えていると、ライモンドは徐々に落ち着きを取り戻し始め、マサツグに

対して謝ると更に話を続ける。


「にしても悪かったな?…

バケモンになっちまったとは言え襲っちまったみたいでよ?…

…一応自我はあったから抵抗はしていたんだが…

だんだんお前との戦闘が楽しくなっちまって…気が付いたらこの様だ!…」


「ッ!…楽しくってって!…こっちは命懸けだったっての!?…

何なら一回死んだって!!…」


「だからその詫びにコイツを貰ってくれ!!」


「え?…」


ライモンド自身あの状態になっても自我は残っていたらしく…自身を制御しようと

抵抗していた旨をマサツグに話すのだが、マサツグの奮闘ぶりに触発された様子で

つい戦っていたと笑いながら話すと、マサツグはすかさずツッコミを入れる!

幾度と無く危ない場面に立ち、それが楽しかったの言葉で済まされる事に

マサツグが戸惑った様子で更に文句を言おうとするのだが、ライモンドは謝罪の

言葉を口にすると突如マサツグの前に自分が担いでいた大剣を差し出し始める。

ライモンドが差し出した大剣は光りとなってはマサツグの持つもう一本の大剣へと

吸収されて行き、その事にマサツグが困惑して居るとライモンドは改めて

マサツグに話し掛ける。


「お前…俺の剣に興味を持っていたな?…やるよ!…

死んじまった俺が持っていても仕方がねぇし…

使ってくれるってんならそいつに託した方がこっちの気も晴れる!!…」


「え!?…あ、あぁ…ありがとう…」


「ただチョイとばっかし頼み事を聞いてくれねぇか?…

なぁに難しくはねぇ話だ…」


「……あんた本当に読めないな?…」


マサツグは自分が持つライモンドの剣に光が宿った事に戸惑いを覚えていると、

ライモンドは再度自身の持っていた大剣をマサツグに託す事を口にする。

その掴み所の無いライモンドの話口調にマサツグが戸惑いを覚えていると、

更にライモンドはマサツグにある事をお願いし始め、それを聞いたマサツグが

戸惑いながらもツッコミを入れていると、ライモンドはマサツグにそのお願いの

内容を口にし始める。


「もし!…!!…

と出会う事があれば!!…躊躇う事は要らねぇ!!…

そのクソ野郎を叩き斬って欲しいだけだ!!」


ライモンドが言ったお願いと言うのは普通に聞けば何もおかしくない普通の

恨み言なのだが、マサツグがある部分で引っ掛かりを覚えるとライモンドに

質問し始める。その質問と言うのは…


「ッ!!…ちょっと待て!?…

あのは!…

なのか!?…」


「あぁ!!間違い無ぇよ!!……何せ!…

俺達があの化け物を倒し終えて動けない時に現れたそいつは

こう言ったんだからな!…」


{フフ…これは驚いた!…

私の最高傑作を倒す奴らがいるとは!…

こいつらはいい研究材料になりそうだ…

フフフフフフフフ!…}


「…って、ふざけた事を抜かしやがったんだからな!?…」


マサツグが疑問を持ったのはこの森に居る人キメラを作った者はエイブレントと

ライモンドを亡者に変えた者と同一人物だと言う事、その事をライモンドに

間違いが無いかどうかと確認するよう質問をすると、ライモンドは間違い無いと

怒りの表情を見せては頷き、その術士の言葉を真似てマサツグに話しては最後に

文句の言葉を口にする。相当その術士に対して怒りを燃やしているのか

ライモンドは今にも暴れ出しそうな様子を見せては地団太を踏み始め、その様子に

最初っから最後まで戸惑いっぱなしのマサツグがオロオロしていると頭の中で

ある事を考え始める。


{…この話はかなりやばい話じゃないのか?……

とりあえず、戻ったらモツとギルドに話をした方が良いだろうな…よし!…}


「…分かった!……やるだけやってみるとするよ!…

この惨状が何よりの証拠だし!…遠慮なく真っ二つにしてやるよ!」


「ッ!!…ホントか!?…助かるぜ!!…

これで心置きなく成仏出来るってもんだ!!……

…ッ!…あの野郎も解放されたみたいだしな?…」


「エイブレント?…って事はモツ!…」


マサツグがライモンドの話を聞いた所でこの話はそこそこ重大なのでは?と

考えるとモツとギルドに話を通す事を考え始める。ただ話すだけでは

信憑性が無い為ギルドにある水晶を使って証拠の記憶を作る事を考えると、

ライモンドにその約束について了承しそのマサツグの返事を聞いてライモンドが

明るい表情を見せるとライモンドの霊体が薄れて光り始める。それと同時に

エイブレントも成仏した事を感じてか笑みを浮かべて明後日の方を向いて呟き、

その言葉を聞いてモツがエイブレントに勝った事を悟るとマサツグは笑みを

浮かべる。そしてマサツグが喜びライモンドが成仏しようとしている時、

ライモンドがハッ!と思い付いた表情を見せてはマサツグにもう一つお願いを

し始める。


「……ッ!…そうだ!悪い!!伝言を頼めるか!?…」


「え?…伝言?…」


「あぁ!…もしそのクソ野郎を着る事が出来たら!…

こう伝えて欲しいんだ!…


…ッ~~~~~~!!!……ってな!?…」


「ッ!!……フッ!…了解!!…」


__グッ!!……ぱああぁぁぁ!!…


突如マサツグを呼んでは慌てた様子で伝言を頼み、マサツグが不思議に

思いながらもライモンドに耳を貸すと、ライモンドはマサツグに耳打ちで

伝え始める。誰も聞く者は居ない筈なのにライモンドはウキウキとした

様子で内容を伝え、マサツグがそれを聞いて若干噴き出すも了承すると、

ライモンドは満足そうな表情を浮かべてはマサツグにサムズアップし、

天に消えて行く。マサツグの視界がまたホワイトアウトし始めると、

次に映った光景は水分が完全に抜けたのか泥濘だった物の上で、周りで

燃えて居た筈の樹はいつの間にか鎮火していた。そしてマサツグの手には

モツの時同様…鞘に仕舞われたライモンドの剣が握られていた。


「……ッ!……ここは?……ッ!……じゃあ遠慮なく!…」


__ジャキン!!…ギュッ!ギュッ!…


       ----------------------------------------------------------------------

            ライモンド卿の残傷の大剣

                レア度 C

           ATK+90   DEF+30   MDEF+10

         ライモンド卿が持っていた傷だらけの大剣。

    幾多の戦場を駆け回った証かその大剣には傷が多く、どれ程傷を

    作ろうが全く曲がりもしない折れもしない…そんな頑丈さを

    物語っており、並の攻撃は簡単に弾き使用者に傷一つ付ける事が

    出来ない鉄壁具合を持ち合わせた幅の広いグレートソード。

               [阿吽の呼吸]

    このスキルが付いている武器を持つ者との連携技発生率が格段に

    上昇し、連携技の威力も上昇する。
        ----------------------------------------------------------------------


[マサツグはライモンド卿の残傷の大剣を装備した]


ATK 245+55 → ATK 245+75

DEF 235+50   → DEF 235+80

MDEF 115   → MDEF 115+10


マサツグが現実に戻って来てはライモンドの剣に気が付き、早速とばかりに

装備し始めると、ここで将軍に貰ったウェポンベルトが仕事し始める!

メイン装備にライモンド卿の大剣を装備し、ウェポンベルトで解放した

サブ装備に春風刀を装備すると、マサツグはトライアルソードからの卒業を

果たすのであった。その際意外な事にライモンド卿の大剣は見た目よりも

軽く、背負っていても動けなくなる心配は無いのだが…マサツグの前には

ある難題が浮上し始める…


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……チラッ…


「……これ…如何やって登ろう……」


マサツグが落ちたのは光り輝く広場より下にある泥濘の中、目の前には当然簡単には

戻れないだろうと思われる意外と高い急こう配の坂が鎮座しており、マサツグの道を

邪魔する。しかし当然目の前の坂を昇って行くしかなく、モツに助けを求めよう

にも聞こえるかどうかも怪しい…そう一人で考えるマサツグは次第に考える事を

止めたのか、自力でその先に手を掛け足を掛け…えっちらほっちら昇り始める

のであった。 

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