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-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-

-第二章七節 モジャ男とモジャ男からの条件とまさかの採掘-

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マサツグがフェンリル(幼女)…シロを連れて居る事にそのドワーフの男が驚き、

更にそのフェンリル(幼女)に謝られた事に更に驚き戸惑って居ると、シロは

そのドワーフの男…モジャ男に不思議そうな表情を向ける。今ままで出会った

人種と違う…初めて見るドワーフに若干の興味を示す中、モジャ男も徐々に

落ち着きを取り戻しマサツグを改めてマジマジ観察し出すと、何かが見えるのか

一人納得した様子で自身の長い髭を撫で始める。


「……ふ、ふむ…フェンリルが居る事には驚いたが…なるほど……

一応はそこそこの実力が有ると見える…じゃが…まだまだじゃな?…

武具を作ってやるにはまだ力が足りんと言った所か…」


「え?……あぁ!…いやいや!…

それよりも何でシロがフェンリルって?…ただ見ただけなのに?…」


あのギルドでルンが話していた曰く付きの職人なのか…如何やらモジャ男は

相手を見ただけでその実力を見定める事が出来る能力を持って居るらしく、

マサツグがそれなりに経験を積んで居る事を確認すると、金槌で自身の肩を

叩き始める。そしてこの時やはりモジャ男はシロがフェンリルである事を

理解している様子で、それに疑問を持っているマサツグが三度目の正直と

言った気持ちでモジャ男にシロを看破した理由について尋ねると、モジャ男は

今度こそ反応した様子で遠い目をしてはそのシロをフェンリルと看破した

理由を話し始める。


「…ワシの故郷にそのフェンリルが居るんじゃよ?…

母なる霊峰の頂に住まう…孤高かつ幻のな?…そして一度見たら忘れられぬ

あの迫力!…この子にその気迫が感じられたから分かっただけの事…」


__…ニコッ!…


「ッ!……」


__トットットットッ…ワシャッ!…ワシャッワシャッ!…ッ~♪…


モジャ男が話し始めたのは故郷の話…そしてモジャ男自身フェンリルを見た事が

有るのかその容姿を思い出すよう徐に目を閉じ出し、次に目を開きシロの方に

振り向くと優しい笑みを浮かべ始める。まるでシロを安心させる様に…優しい

おじいちゃんの顔をして見せると、シロはそれに反応するよう警戒を解いて

モジャ男に近付いてモジャ男の髭を触り出し…それをモジャ男は微笑ましく

見ては頷いて見せると、楽しそうに髭を弄るシロを置いてマサツグにある事を

尋ねるよう振り向いて言葉を掛け始める。


「……しかし如何して?…お前さんこの子を何処で?…」


「…ッ!……」


__ジャッ!!…


シロの話を口にするとやはりモジャ男が気になったのはシロの出生…

如何やらモジャ男自身もフェンリルについて何か知っているのか、

シロを拾った子と理解した様子で話し出すと、そのモジャ男の言葉に

マサツグが思わず警戒をする!…何故ならフェンリルは子供でも

普通に強い!…悪用しようと言う者は少なからず居るであろうと、

誘拐等を不安視する保護者の身として危惧して居たからである。

そんな中からの突如出生の話!…この話が出て来ては当然マサツグが

警戒をすると、いつでもシロを護れる様に身構えるのだが…モジャ男は

直ぐにマサツグの考えを読んだ様子で話し出すと、シロに視線を向け

直しては頭に手を置き撫で始める。


__…ポンッ!…なでなで…


「…別に責める訳でも無い…取って食いもせん……

ただ気になっただけ、ワシも面倒事は嫌いじゃ……それに…

この子の様子を見ればお前さんが悪者かどうかを見定める事位は出来る。」


「ッ!!…………」


「んん~!…ゴワゴワなのですぅ~…」


モジャ男がシロの頭を撫でながら弁明する際…ただ気になっただけと

マサツグに話すと、シロを見詰めて若干の悲しそうな表情を見せる。

マサツグの知らない…何かを知っている…そんな風な態度を見せると

その態度にマサツグは戸惑い、更に敵意が無い事を証明するよう

モジャ男がマサツグの事を悪人で無いとシロの様子から察した風に

言い出すと、その言葉を言われたマサツグは更に戸惑う!…そうして

二人の間に微妙な空気が流れ始めるのだが…その空気を壊す様にシロが

モジャ男に撫でられた感想を口にすると、そのシロの一言で一気に

緊張が解けたのかマサツグも呆れた様子で溜息を吐き出す。


「……だぁ!…はあぁ~……ったく!…

これで分かっててやってるのならシロは間違い無く女優モンだな?…

……シロを見つけたのはとある化け物との戦闘を終えた後…

卵を見つけた事から始まる。」


「……ッ?…卵?…」


「あぁ…場所はスプリングフィールド大陸の大森林…

その大森林の廃墟の中で卵になって居るのを見つけて、卵が割れたと

思ったらシロが入って居た…最初はちゃんと子狼の姿をしていたんだが…

次の日になったら幼女になってて…面倒見ようと覚悟を決めてその際…

シロの防具や俺の装備を新調しないと、色々この先大変だと思って

ギルドに相談したら…」


「……なるほど…話は読めた。

その武具の制作をワシに依頼して来たと言う事じゃな?…」


モジャ男とマサツグとの間で警戒が解ける一方、シロは今だモジャ男の髭が

気に入ったのか夢中になって遊んでおり、そんなシロの様子を見てマサツグが

溜息を吐くと身構えるのを止めてはモジャ男にその経緯を話し出す。最初の

卵発見から子狼…そして幼女とこの短い期間で起きた事を簡単に説明し出すと、

モジャ男は若干の困惑を覚えつつシロに髭を弄られたまま黙って聞き…色々と

モジャ男の中で話が纏まったのか理解した表情で頷き出すと、マサツグ達の

本来の目的である武具制作の話へと入り出す。話が大回りになった事に

マサツグは若干の疲労感を見せるのだが、モジャ男はそれらを聞いて

ただ頷き…納得した様子でシロを抱えるよう腕を組み出すと、マサツグに

ある事を話し始める。


「……ここに来る奴の用件は大体が武具作成の依頼ばかり!…

それも実力の無い連中ばかりで腕を振るう気は無かったが……面白い!…」


「ッ!…え?…もしかして引き受けて…」


モジャ男が話し始めたのは愚痴の様な言葉であった。やはりこのモジャ男が

件の武具職人で間違い無いらしく、マサツグ達がここに来るまでの間何人かは

辿り着いたらしい…のだが、その来た冒険者達全員がモジャ男のお眼鏡に

叶う者では無かったらしく、ウンザリした様子で話しては癖なのか金槌で

またもや自身の肩を叩き出す。しかしマサツグ達には興味を持ったのか

面白いと言ってはフッと笑って見せ、その様子にマサツグが食い付き受けて

貰えるかどうかについて尋ねようとすると、モジャ男は待ったを掛ける様に

マサツグに有る条件を話し始める。


「あぁ~っと!…早合点はするな?…最初に言ったじゃろ?…まだ未熟と!…

お前さんに武具を作る気は無い!…じゃがそれもと言った話じゃ!」


「え?…」


「…簡単に話をするとだ…

今からワシが出す条件を達成する事が出来たら受けてやろうと言う事じゃ!…

その条件も簡単!…この[龍の血脈]には質の良い鉱石がゴロゴロと眠っておる!…

それを自分の手で掘って来いと言うだけの話じゃ!…ただし!…

…そん所そこいらの鉱石は認めん!!…ワシが認める鉱石を持って来る事!…

それだけじゃ!…如何じゃやってみるか?…」


「ッ!!…そんだけなら今すぐに!!…」


「ッ!?…あっ!…待ってください、ご主人様!!…」


モジャ男は最初の話を思い出させるようマサツグに話を振り出すと、久々に

骨の有る者が来たと言った様子で有る条件を話し出す!それは自身の納得行く

一級品の鉱石を揃えて持って来る事!…現地調達を指示する条件であった。

そう言ってモジャ男は洞窟の更に奥へ向かう道を指差しては受けるかどうかと

言った…煽る様な笑みを浮かべて見せ、その条件にマサツグは最初戸惑った

反応を見せるも内容を聞くや否や自分でもやれると感じたのか、直ぐにその

モジャ男が指差す[龍の血脈]へと歩き出そうとする!そして当然シロも

マサツグが洞窟の奥に進もうとして居るのを見つけると慌てて付いて行こうと

するのだが、しかし…


「ッ!!…あぁ!…ちょっと待ってくれ!!…その前に一つ!…」


「え?…」


「[龍の血脈]の最深部だけは絶対に行くな!!…

今のお前さんだろうが誰だろうが危険過ぎるからな!!…」


「……ッ?…それは如何して?…」


モジャ男はまだ話が有ったのか[龍の血脈]へと歩き出そうとするマサツグを

慌てて呼び止め、マサツグは戸惑った様子で振り返りその呼び止めた理由に

困惑の表情を見せると、モジャ男は慌てた様子のままある忠告を

マサツグにする。洞窟の最深部に行くな!…ただそれだけは守るよう必死の

様子で話すと、マサツグは更に戸惑い…モジャ男にその理由を尋ねるよう

言葉を掛け出すと、モジャ男はまさかこうなるとは思っても居なかっただろう

理由を話し出す。


「…今この先の一番奥には竜の巣があってなぁ…そこに火竜が住んどるのじゃ…

迂闊にその巣に近付く奴はマル焦げにされとる!…それもお前さんと同じ様に

武具を作ってくれと言って来た者達がなぁ!…」


「ッ!…」


「余りにもしつこいかったからのぅ…

同じ様な条件を言って諦めさせようと思ったら!…

案の定火竜に焼かれておって!……確かに深ければ深い程良い

鉱石が取れる!…じゃが勿論危険も同時に伴う!…それを理解させる!…

自身の未熟さを分からせる為に行かせたのだが…



悪い事は言わん…只、ワシが納得する鉱石を採って来るだけで……」


__ピクッ!…


モジャ男が話し出した理由は強力なモンスター…火竜が居ると言う事で、

その話を聞いたマサツグは最初戸惑いを覚える。その際モジャ男は同時に

マサツグ同様冒険者が来ては同じ条件に挑戦した事を話し出し、その全員が

返って来て居ない事を告げると俯き始める。まるで言わなければ良かったと

後悔する様に!…若干の悲しい表情をしては落ち込み始め、恐らくギルドで

噂になっている神隠しの噂はここから来ていると考えられるのだが、

その話をする際マサツグはあるモジャ男の言葉に引っ掛かりを覚え…

モジャ男自身もこれ以上の犠牲は出したくないと言ったつもりでマサツグに

忠告をしたのだが、逆にその引っ掛かりがマサツグの闘争心に火を点ける事と

なると、マサツグはモジャ男の話を最後まで聞かずに結論を出す!


「……わかった!…最深部に言って来る!…」


「じゃから最深部へは……ッ!?…今何と!?…」


「絶対に!!…意地からでも!!…一番奥の鉱石を採って来ます!!」


「なッ!?……ッ!?…」


マサツグの心情上…自身のレベルを見下される!…要は負けず嫌いの気が有り、

先程の様に「…」と

言われると無性に反抗!…そして達成しては見返してやりたいと言った気持ちが

出て来る!それは本来の性格…面倒臭い等の枠を超えたマサツグのちょっとした

プライドで有り、この時のマサツグはある意味!…初めてハイドリヒ(リーナ)に

出会った時の様な闘争心に火が点いて自身の反骨精神を増進させるのであった!

更に運が悪い事にこれは武具の話!…マサツグの趣味はゲーム内で武器・防具を

集める事で、そう言った物に対し妥協する事は絶対に許さないとした性格を

持っており、自身が満足するまで突き詰め!…作るとするなら一番良い物を

意地からでも作ろうとする性質なのである!その際更に引っ掛かったのは…


最深部に行かなくても良い! = その辺の鉱石でパパッと作る…


と言う捻くれた方に受け取って更にマサツグを拗らせ、そのマサツグの言葉を

聞いたモジャ男は当然驚き戸惑うと、もう一度言い聞かせる様にマサツグに

話し掛ける!


「ば!…馬鹿を言うんじゃない!!…相手は自分より格上の相手なのじゃぞ!?…

今の装備では真面に戦う事も!!……ッ!…その大剣は!…」


「竜が居ようが居よまいが!!…

そんな言われ方をされたんじゃあ引き下がれねぇ!!…

死んでも絶対に取って来る!!!…

覚悟して待っててくれよ!?…ジッチャン!!!

……あっ!…後シロも預かっててくれ!…」


__ッ!?…×2


モジャ男がマサツグを叱る様に制止を呼び掛けるのだがマサツグは全く聞く

耳を持たず、ただ最深部の鉱石を取って来ると言って見せると一方的に

約束を取り付ける!…この時マサツグはモジャ男の方に振り向いてはギラギラと

した視線を向け…その視線にモジャ男が気圧された様子を見せて居ると、

マサツグは更にモジャ男にある事をお願いする!そしてそのお願いと言うのは

シロの事であり…シロの意見を無視して預かってくれと頼み出すとその言葉に

シロとモジャ男が驚き、当然とばかりにシロがマサツグを見詰めては膨れ

始めると、マサツグはシロの方を振り向いては説得を試みる。


__ぷっくぅ~~~!!!…ッ!…


「シロ!…お前はここで留守番を頼む!

このオジちゃんと一緒に大人しく待っててくれ!…な?…」


「むぅ~~!!…でも!!…」


__ギュッ!…ッ!…


「シロまで危険な目に会わせたくはないんだ!!…分かってくれ!!…

…絶対に帰って来る!!…シロを迎えに来るから!!…ほら、約束!!…」


物凄い勢いで膨れるシロにマサツグがしゃがみ込んで説得をし始めると、

当然シロは不服とばかりに文句を口にしようとする。しかしマサツグが

先手必勝とばかりにシロを抱き締めると口説く様な落ち着いたトーンで

喋り出し、膨れっ面のシロに苦笑いをしては約束の言葉を口にすると、

小指を立ててシロに差し出す。それを見てシロは膨れた表情のまま無言に

なるのだが、渋々納得したのかマサツグの差し出した小指に自身の

小指を絡めて指切りをし始めると、膨れた表情から一転…少し寂しそうな

表情でマサツグを見送り出す。


「……絶対!…絶対ですよ!!…必ず帰って来て下さいね!?…

帰って来なかったら!……」


__ポンッ!…なでなで……ッ!…


「だ~いじょうぶ!…絶対に帰って来るから!!…

それにこんな所でオチオチ死ぬ気もねぇよ!…じゃ!…」


「まっ!…待たんか!!…ワシは引き受けるとも言っとらん!!…

勝手に話を!!…」


__…バッ!!……シィ~~ン……


先程のテンションも何処へやら…完全にショボンとした様子でシロが項垂れると

マサツグに約束し、不安で一杯の表情を見せてはウルウルとした目で見詰めると、

マサツグは笑顔でシロの頭に手を置いて宥め始める。不安を感じさせないよう

満面の笑みで大丈夫と答えてはシロの言葉に約束を返し、シロが目を見開き

若干安堵した様子を目にすると、立ち上って振り返り洞窟の奥に進もうとする!

しかしながら当然それを良しとしないモジャ男は最後の手段と言った様子で、

シロのお守を断ろうとするのだがマサツグはそれを聞かず…そのまま洞窟の奥へと

進み出すと、モジャ男はマサツグに向かい慌てて手を伸ばのだが空しく空を

切るだけ…それでも慌てて追い掛け先へ続く洞窟の前に立つと、呆れながらも

マサツグにある事を助言するよう叫び始める!


「……はあぁ~!…全く!…如何してこうなるんじゃ!…

またこれであの火竜が暴れ出したら!……」


__タッタッタッタッタ!…ガッ!…すぅ~~…


「これが最後の忠告じゃあぁぁぁ!!!…

もし本当に挑むのならこれだけは覚えておけぇぇぇ!!!…

竜にはそれぞれ逆鱗と言う物が有る!!…

しかしてその正体は竜を一撃で仕留める事が出来る!!…

唯一の弱点でも有る!!…倒せなくともそこを狙えば!!

逃げる事位は出来るじゃろう!!!…

生きて帰って来るんじゃぞぉぉぉぉ!!!…」


__じゃぞぉぉ!!…じゃぞぉぉ!…じゃぞぉぉ………


マサツグが進んで行った洞窟の入口の前に立っては大きく息を吸い、慌てた

様子の大声で生き残る為の助言をすると、そのモジャ男の大声は洞窟内で

反響する。その際近くに居たシロがそのモジャ男の大声に驚いた様子で耳を

押さえいると、徐々にその反響も消えて行き…落ち着いた所でシロがスッと

耳を放すと、マサツグに言われた通りシロはモジャ男の所に歩いて来ては

如何したら良い?…と言った困惑の眼差しを送り始める。


__トッ…トッ…トッ……ジィ~~…


「ッ!……やれやれ…お前さんのご主人様もとんだ変わり者じゃな?…

折角忠告をしてやったと言うのに!……せめて…

せめてあ奴の無事でも祈って居るとするか…」


__……コクリ……スッ……


「ッ!……ふうぅ~…まさかこの歳でまた誰かの手を握る日が来ようとは…

本当に……変わった者達じゃの?…」


シロの視線に気が付きモジャ男が振り返るとそこにはショボンとした様子の

シロの姿があり、その様子を見てモジャ男は改めて余計な事を言ってしまった!…

と言った様子で呆れてシロに声を掛けると、シロに付いて来るよう手を振っては

自身のキャンプに戻り出す。その際マサツグの無事を祈る様な事を言っては

シロに同意を求めるとシロはモジャ男の言葉に頷き…何方の意味で同意したのかは

ともかく、シロはモジャ男に向かって手を差し出すと手を握って欲しそうな表情で

モジャ男を見詰める。そしてそれに気が付いたモジャ男が若干驚いた表情をすると

戸惑いながらもシロの手を握って見せ、自身に孫が出来た様な感覚を覚えつつ

キャンプに戻り出すと、改めてフェンリルにしては人懐っこい事に驚きの言葉を

漏らすのであった。


そうしてマサツグの方はと言うと、モジャ男の助言が聞こえたのか聞こえてない

のか…ただ足場を探しつつ先を急ぐ様に薄暗い洞窟の中を進んで居ると、徐々に

辺りが明るくなり出して不思議な光景を目にする。それは恐らく鉱脈

だろうか?…色々な淡い光を放つ水晶らしい物が点在し出すと、奥に進めば

進む程に辺りが明るくなって行き、気が付けばそこは豊富な鉱脈が至る所に

眠る…マサツグが最初に警戒していた場所へと辿り着いていた。

 ---------------------------------------------------------------------------------

         「ホルンズヒルダンジョン・龍の血脈・序」

  ホルンズヒルダンジョンの中腹部に位置する…まるで蛇龍の様に曲がり

  くねった洞窟。数々の質の良い鉱脈が埋蔵されており、駆け出し鍛冶師の

  修行場として有名になっているのだが…ここに生息しているモンスターは

  とにかく面倒臭く、一回でも囲まれると瀕死!…又は最悪死を意味する

  危険な場所となっている。どのモンスターも一筋縄ではいかない為、

  それ相応の実力が必要とされており、中でも洞窟に住み着いているゴブリン

  には一番注意した方が良いと言われている。

 ---------------------------------------------------------------------------------


「……ゴブリンの住処……

何かとあるスレイヤーが出て来そうな場所だな?……とは言え……」


__ゴオオオォォォォ……


「何かかなり明るいなぁ!…ここが本当に洞窟である事を忘れそうな位に…

……それにまだ入ったばかりだからかね?…その巣穴らしき場所がない様な?…」


例によってマサツグの目の前に名所案内が表示されると、そこにはやはり

迷子が濃厚の曲がりくねったと言う言葉が書かれて有り、それを見て

嫌気が差すと同時にもう一つ…ゴブリンと言う単語を目にすると、思わず

何処かのボロボロ兜の冒険者を想像する。想像した所で完全にお門違い

なのだがふと想像しては辺りを見渡し、そのゴブリンの巣穴らしき場所を

探して見るのだが何処にもそれらしき物は見当たらず…ただ有るのは

某一狩り行こうぜのゲームに出て来そうな一目で分かる鉱床のオブジェクト

だけであった。そしてそれらを目にしてマサツグはホッと安堵した様子を

見せるのだが、ここである疑問が出て来るとマサツグを悩ませる。


「……ッ!…そう言えば…これ如何やって掘れば良いんだ?…

ピッケルも鶴嘴も無いよなぁ……あれ?…」


__…スッ……ガサゴソガサゴソ…


「……うんやっぱり無い……採掘に使えそうな物は……えぇ~?…」


マサツグが悩み出した理由…それは鉱石の採掘方法であった。

まさかこんな風に鉱石を掘りに来るとは思っても居なかったので、当然採掘用

アイテム…ピッケル等を持って来ておらず、ただ目の前に鉱床を置いては

如何掘るかで悩み出す。徐にアイテムポーチを開いては何か採掘に使えそうな

物を探し始めるのだがやはり何も無く、マサツグが悩みながら鉱床を見詰めて

色々考え始めていると、ふとある事を思い出し始める。


「うぅ~ん……ッ!…そう言えば…

この大剣ってよっぽどの事をしない限りは傷一つ付かなかったよな?…

何ならモツの全力…あのバルデウスの攻撃でも防げた……これもしかして

ワンチャン有るんじゃ?…」


__ガッ…スラァ……ゴッ!…


「ッ!…やっぱ狭いとこでは振り回し難いか…上手い事出して…」


__……ジャキンッ!!…


マサツグはふと思いついた様子で自身の背負っている大剣の事を思い出すと、

同時にその頑丈さも思い出し始める。リンデの実を回収する時にやったあの

モツのダッシュ斬り!…デュへインの魔法にバルデウスのゲイルジャッジメントと

傷一つ無く防ぎ切った事を思い出すと、この大剣で掘れるのでは?と考え出し…

徐に大剣を抜こうとし始めるのだが案の定振り回すには手狭だったか、天井や

壁に突っ掛かっては鞘から抜くのに苦労する。そうして鞘から抜くのに5分の

苦労を覚えつつ…何とか鞘から抜いてその目の前の鉱床に対し大剣を構え、

マサツグがやる気を滲ませながら若干振り被るとその鉱床に向かって

大剣を振り下ろす!


「……よし!!……ぃよいしょ!!…ぅおいしょ!!…」


__ガインッ!!…ガインッ!!……ゴロゴロ…


「おッ!?…案外取れる!?…ライモンド様様だな!…」


__ガインッ!!……ゴロゴロ……ガイイィン!!…


マサツグはまるで鉱床に大剣を突き刺すよう構えると、類を見ない大剣での

採掘に挑み出し…掛け声と共に何度か大剣を振り下ろし、その鉱床から

鉱石らしきアイテムがドロップされるのを見ると、採掘で来て居る事に

マサツグは驚く!…ある意味万能なライモンドの大剣に感謝しつつ、

一度大剣を本当に鉱床へ突き刺し放置すると、そのドロップされたアイテムの

状態を確認する。しかし!…


「どれどれ?……鑑定アプレェィザァル!」


__ピピピ!…ヴウン!…


「…あぁ~…駄目か…」


   -----------------------------------------------------------------------

                 石ころ
 
                  レア度 G

   何処にでも落ちているただの石ころ。これと言った用途は無く、

   ただのゴミなのだが場合によっては陽動や投擲と言った事に使え…

   石ころを上手く使える者は超一流と言った冒険者のステータス

   アイテムにもなっている。ただそう言う場面に出くわさない者から

   すると本当にゴミでしか無く…手に入れたとしても速攻で

   捨てられてそのまま消滅を待つ…悲しい運命を背負ったアイテム

   でも有る。

   -----------------------------------------------------------------------


「……そんな石ころ一つでこんな仰々しい文章を使わなくても…」


マサツグが期待した様子で鉱床からドロップされたアイテムを拾うと

鑑定アプレェィザァルを発動し、その正体を確かめ出すのだが鑑定の結果は石ころに終わる…

目の前に石ころの詳細説明が表示されてマサツグはガッカリとし始める

のだが、その際マジマジ詳細説明に目を向けるとそこには面白い事が

書かれてあるのを目にする。それは超一流の冒険者が持つアイテムと

書かれて有っては結局ゴミと書かれて有ったり、上げては落とすの振り幅が

大きい事と文章が仰々しい事にマサツグは戸惑い…一人その場で思わず

詳細説明にツッコミを入れて居ると、石ころを転がす様に捨てては再度

採掘作業へと戻り始める。しかし…


__ガインッ!!…ガインッ!!……ゴロゴロ…


「……鑑定アプレェィザァル!」


__ピピピ!…ヴウン!…


「……はあぁ~…やっぱ駄目か…」


再度採掘作業に戻り鉱床からアイテムをドロップさせ、そのドロップした

アイテムを毎回鑑定するが結果は同じ…無駄に石ころが量産されては遂に

その叩いていた鉱床が消え…足元にゴロゴロと石ころを転がせては

1個たりとも鉱石を手に入れる事が出来ないのであった。これは運なのか?

それとも採掘方法に問題が有るのか?…何方とも言える状況にマサツグは

悩んで一度大剣を仕舞い始めると、落胆した様子でその場に座り出す。


__……ジャコンッ!…ドッカ!…


「…はあぁ~…疲れた…やっぱ採掘方法が駄目なんだろうか?…

…まぁ確かに大剣で掘ろうなんて考える奴は……俺位か……

さて…如何しようか?…このままだとただ石ころが量産されるだけ!…

戻った所でシロに誤解されては無駄な心配をさせるだけ!…

やっぱ他に手段は……ってあれ?…アレは?…」


__ザザッ…ザッ…ザッ…ガコンッ!…


「……鶴嘴だ。

でもこれ誰かのなんじゃ?……誰も…居ない?…」


__……ニヤリッ!…


一度戻るか戻ろまいか?…戻った所で結局は手段が無い事に再度悩み出すと、

徐にもう一度辺りを注意深く見渡し…そこで漸く近くの岩場の影に隠れて

誰のか分からない鶴嘴が立て掛けられて有る事に気が付くと、腰を上げて

その鶴嘴へ近付き出す。そしてその鶴嘴を手に取ると誰か近くに居るかを

確認するのだがマサツグ以外に誰も居らず…それを確認したマサツグは

これはラッキーと言った様子で悪い笑みを浮かべて鶴嘴を手に、

鉱床に向かい鶴嘴を振り下ろし始めるのであった。

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