107 / 764
-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-
-第二章三節 ホエールビアードと如何わしい看板と双子の妹-
しおりを挟む…サマーオーシャン大陸…この大陸に有る国は三つの大きな国家が共存する形で
治めており。文字通り連合国としてこの大陸に長くから安寧をもたらしていた…
年がら年中常夏の様な気候・海は穏やかで滅多な事では荒れる事は無く…
山や森も余程の事が無い限りスプリングフィールドみたくダンジョン化する事は
あまり無い…ゲームの中でもリゾート地として有名であり、その他にここでしか
育たない果物や海産物が取れるとあって他の大陸の料理人達からも人気で、
それが功を奏してかこの大陸では有名なレストランが数多く存在し、冒険者達の
胃袋を掴んでは離さない!…そんな魅惑的なレストラン街が出来る程、料理人達の
聖地としても名高い場所であった。そしてその他にもこの大陸では鍛冶が盛んで、
隠れた名器が武具屋で売られている事でも有名であり、初心者~熟練者まで
幅広い層に抜群の人気がある大陸なのだが……船から降りる直前…甲板で上陸を
待っている時に薄々感じてはいたのだが……
__ジリジリジリジリ!!……コッ…コッ…コッ…コッ…
「ふぃ~…あっつい!……常夏とは聞いていたが……
本当に熱いな!…この大陸!……シロ?…大丈夫か?」
そんな常夏のバカンス大陸にマサツグ達は足を踏み入れるのだが、まず船から
降りてその気候から大陸の洗礼を浴び始めると、ものの数分で汗だくに
なり始める!…その際マサツグとシロの格好は然程厚手でも無い…スプリング
フィールドのあのクラウディアの店で買ったTシャツ等を着ている訳なのだが…
見事なまでに汗に塗れるとこのサマーオーシャン大陸の気候に早くも心が
折れそうになる!…さすが年中常夏の大陸!…そう思いつつ降りる間際に
肩車していたシロへ声を掛けるのだが、シロはと言うと…
「あ…あついのです…ごしゅじんさま……シロは駄目かもしれません…」
__ブラン…ブラ~ン…
「……だろうな?…見事なまでにダレきってるし…
肩車止めようか?…高い位置に居ると日が…」
__ッ!…ギュッ!…
シロもこの気候には参った様子で…降りる間際まで元気だったのが今では
完全に溶けるチーズの様に…マサツグの頭にもたれ掛かると体力を消耗して
いる様子で歩く振動に合わせてはダラ~ン…と、手をブラブラ左右に振って
見せてはマサツグの問い掛けに受け答えをしていた。そして当然溶けている
訳なのでワザワザ聞かなくても見たら分かるのだが…マサツグが一応と言った
様子でシロに話し掛けては降ろそうか?と心配したトーンで声を掛けると、
シロはその言葉に反応した様子でマサツグの頭にしがみ付き!…その反応が
返って来た事にマサツグが嬉しい様な呆れた様な微妙な反応を見せていると、
まずはギルドを目指して歩き出すのであった。
「……そこは譲れないのか…やれやれ…
とにかくギルドに向かうか…」
「……はいです…」
__ザッ!…ザッ!…ザッ!…ザッ!…
シロのやる気のない返事を聞きつつ…マサツグ達はまず船乗り場…港から
離れると町の中へと足を踏み入れ出すのだが、そこで見た光景は活気溢れる
港町そのものの光景で、それを目にしたマサツグはある種の戸惑いを覚えると
同時に感動を覚える!…恐らくはこの港町のモデルは南イタリアのシチリア島…
その白のコントラストが綺麗な街並みに背後の青い海とまさに観光地として
グッと来る光景で、溶けるシロを頭に乗せいざ町の中へと二歩~三歩と
歩き出すと、いつもの様に町の観光案内がマサツグの目の前に表示される。
------------------------------------------------------------------------
「サマーオーシャン連合国・中央中立港町・ホエールビアード」
サマーオーシャン大陸の湾に設置されたどの国家にも属しない
完全中立の港町。ここの他にも港町は有るのだがその港町はそれぞれ
サマーオーシャン大陸に属する国家が占有しており、色々規律が
厳しく入港が困難な場合が有るため、この港町が設けられた訳なのだが…
その結果この大陸一番の観光地となる結果をもたらしただけでなく、
レストラン街に鍛冶師街…冒険者達の支援等を行う重要な拠点として
活動する事になる。尚、この完全中立の港町を仕切って居るのはこの
大陸の冒険者ギルドのギルドマスターに管理されており、迂闊に騒ぎを
起こすとどの国家が絡んで居ようとも対立する姿勢を持つ!…ある意味
恐ろしい場所ともなっている!…
------------------------------------------------------------------------
「……ギルドマスターが仕切る町!?…それに最後のこの文章って?…
…気を付けるに越した事は無いか……面倒な人じゃなきゃ良いけど…」
__……ふわぁ~~ん……ッ!…
「良い匂いが……ッ!!…おぉ!!…すげぇ!!…」
__ジュ~~!!…むわあぁぁ!!…
マサツグは観光案内に目を通しつつ最後の文章に疑問を持つと、嫌な予感を
感じ始める!…何やら面倒な!…この先ギルドマスターと関わらないまま
冒険するのは難しいだろうと考えつつ、気を付ける事を自身の胸に刻み込んで
居ると、さすが観光地と言った所か至る所から美味しそうな匂いが漂い出す。
その匂いに釣られてマサツグが辺りを見渡すとそこには市場の様に開けた
場所が設けられて色々な物が売られており、こっちの市場はラズベルとは
違って規模が大きく、また商業都市クランベルズの様に色々な屋台が立ち並んで、
あっちみたく強引な客引きもしていない!…まぁ、アレはあの土地だけだと
思うのだが…その屋台ではやはり海産物が押されているのか、客の目の前で
海老を焼いたりしては何かの貝を酒蒸しにして売っている様子が見て取れた。
そんな活気溢れる光景を目にしては驚いた様子で見詰める中、匂いに釣られて
シロも起きるかと思いシロの方に視線を向けるが、やはり暑さ負けしているのか
ピクリとも動かない…
「シロ!!…あれ!!……って、やっぱそんな気分じゃなさそうだな?…」
__だらぁ~ん…
「…あんまり悠長にはしてられないか!……
シロの為にもギルドへ向かおう!…」
__コッ…コッ…コッ…コッ…
市場の様子が気になりつつもシロの事を心配すると、寄り道している暇は無いと
感じては改めてギルドを目指し歩き出す。その際町の中を改めて見るとやはり
観光客が多いのかラフな格好をした冒険者や旅行者の姿が多く、その姿を見て
マサツグは格好を間違えたか?と歩きながら考えて居ると、その旅行者や
冒険者達もマサツグの頭に注目しては疑問符を浮かべる。何故ならマサツグの
頭には溶けたシロが…アレは何?…そんな視線を集めつつシロを頭に乗せた
マサツグがホエールビアードのメインストリートへ出て来ると、マサツグは
無事出て来れた事に若干安堵した様子を見せる。
__コッ…コッ…コッ…コッ…
「……多分ここがメインストリート…ふぅ~…
だとするとこの道なりの何処かにギルドが……ッ!?…え?…
何あれ?…」
__エビバディマッソゥ!!…
「え?……ギルド?…そんな馬鹿な!?…いやでも…」
メインストリートに出て来れた!…後はギルドを探すだけ!…そう思いつつ
マサツグが辺りを見渡すと、やたら目を引く看板が掲げられている建物を
見つける。その掲げられている看板に目を向けるとそこにはギルドの文字…
それと同時に「愛と情熱に溢れた冒険者を待つ!!!」と大きく書かれた
言葉とポージングをするスキンヘッドの男の裸体の絵が描かれてあるのを
目にする!…明らかに変!!…でもギルドって書いてある!?…何か怪しい
建物に困惑しつつ、そのギルドと思わしき建物に近付けば近づく程看板の
異様さを目の当たりにし!…マサツグが戸惑いショックを受けて居ると、
やはりその建物は看板通りギルドなのか、冒険者らしき人物達が出たり
入ったりとしていた。
__バタンッ!!…ギイィィィ!…
「うおッ!?…ビックリした!?…」
「ッ!…あぁ…すいません!!………」
「あぁ!…いやいやこちこそ………ッ~~~~…」
「ッ!…え?…」
まるで西部劇の酒場の様な扉から冒険者達が出て来ると、扉の前に立っている
マサツグに驚き、マサツグも邪魔になって居る事を感じ謝って避けると、
向こうもマサツグに謝ってはクエストか観光か…何やら慌ただしく町の方へと
消えて行く。その際冒険者全員が通る道なのか町へと消えて行った冒険者達が
チラッとマサツグの方に一度振り返ると何やら気になる一言呟き、それ偶然
聞いたマサツグが思わず振り返って冒険者達の後を確認するが、冒険者達は
足早に目的地に向かったのか姿は何処にも無かった…この時、マサツグが
あの冒険者達から聞いた言葉はこうであった…
{……やっぱあの看板のせいで誰もあそこが
冒険者ギルドだって気付かねぇよ!…パッと見何か怪しいし…}
「………。」
その一言が気になるのだが先程の話を聞く限り、ここがこの大陸のギルドで
間違いは無さそうだ…そう言い聞かせる様にもう一度ギルドに掛かって有る
看板を確認しては目を擦るも変化は無く…
…安心してください。パンツ、穿いてますよ?と言いそうな男の裸体を見ては
やはり如何わしい店なのでは無いか?と疑ってしまう!…一応全年齢対象なので
そう言った物は無いと思うのだが、如何にも胡散臭さが勝ってしまい!…
入るのをマサツグが躊躇って居ると、マサツグの頭の上ではシロが唸り声を
上げては更に溶けそうになっていた。
「うぅ~~…」
「ッ!?…イカン!!このままだと本当にシロが!!…
……悩んでいる暇は無いか!!…最悪の事態に備えて!…
シロだけでも逃げられる様に!!……よし!!…」
__ガタンッ!…ぎいいぃぃぃ……ッ?
シロが溶ける様子にマサツグが不味いと感じると、いよいよ覚悟を決めては
そのギルドと思わしき建物の中へと足を踏み入れようとする!…ただギルドに
入るだけでこの緊張感!…最悪の事態に備えてマサツグがいつでも武器を
抜ける様にすると、恐る恐る扉を押して中へと入って行くのだが…
次にマサツグの目に映ったのは警戒する必要の無い…南国風のカフェの内装と、
冷房が付いているのかギルド内で涼んで居る冒険者達の様子であった。
__ヒュオォォ…
「……あれ?…涼しい?…」
__…ッ!……コッ…コッ…コッ…シャキィーン!!…伸び~~!!…
「ご主人様!!…ここは涼しいですね!!…お外の熱いのが嘘みたい!!!」
まるで冷房が効いている様なギルド内にマサツグが戸惑うと改めてあの看板の
異様さに疑問を持ち、ただ困惑した様子で身構え固まって居ると、そのマサツグの
様子を見た冒険者達はまるで気持ちを理解するよう静かに頷き始める。やはり皆
あの異様な看板に騙されたくちなのか同情する様にマサツグを見詰め、シロも
涼しい部屋に入った事で徐々に固形に戻ると、元の元気なシロに戻って
マサツグに肩車されたまま両手を上げて大きく伸びをする。そしてマサツグに
涼しいと言ってしがみ付いて来るのだが、肝心のマサツグはまだ混乱しているのか
その場に固まり…シロはマサツグの気など気にしていない様子で耳をピコピコと
動かして居ると、辺りをキョロキョロと見回しては徐にマサツグの耳に顔を
近づけて話し掛け始める。
「……ご主人様?…」
「ッ!?…どわあぁ!?…」
「ッ!?…ご、ごめんなさい!!!…」
「え!?…え?……えぇ?…あれ?…いや……何かゴメンな?……
…とにかく挨拶に行くか…」
シロが困惑気味にマサツグの事を呼ぶとマサツグは跳ねて驚き!…その反応に
シロも驚いた様子で若干の仰け反るが、落ちる事無く耐えるとマサツグに
しがみ付いて謝り出す…驚かせてしまった事に反省している表情で
シュンとしていた。マサツグはまだ混乱している様子で、シロに謝られた事に
対しても混乱するのだが少なくともシロは悪くないと理解すると、マサツグが
逆にシロへ謝り…二人揃ってシュンとしつつ驚いた表情をすると、とりあえず
ギルドに挨拶しに行こうと受付カウンターの方へと歩き出す。
__コッ…コッ…コッ…コッ…ッ!?…どよ!?…
{…な!…何だあの可愛い生き物は!?……あんなの今まで居たっけか!?…}
{ッ!?…聞いた事が有る!!…
確かどっかのチャットに掲示されてあったペットだったんじゃないか!?…}
{ッ!?…ちょっと待て!?…
今のペットってあんな可愛いのがペットに出来るのか!?…
後で探しに行こうぜ!!!…}
そんな一連の様子はギルド職員だけならず、冒険者達の目にも止まるのだが…
何よりこの時!…注目を集めたのは間違い無くシロで有り、冒険者達は可愛い
生物が居る!?と言った様子でシロの事をガン見していた。そしてマサツグが
シロを肩車しながら受付カウンターの前に立つと一人の受付嬢がマサツグの
相手をし始めるのだが…マサツグの前に立った受付嬢は何処か見覚えの有る…
そんな不思議な容姿をしていた。
「ッ!…いらっしゃいませ~!!
お仕事をお探しですか?…それとも調べ事…」
「ッ!…え?…」
「……ッ?…如何か為さいましたか?…」
「……リン?…」
マサツグの前に立った受付嬢…その様子にマサツグは驚いた表情を見せると
またもや固まり、マジマジ観察するようその受付嬢を見詰めると、マサツグの
様子に受付嬢が困惑する。受付嬢は固まったマサツグに若干戸惑った表情で
見詰めては如何した?と尋ね出し、マサツグはマサツグで驚いた表情のまま
リンの名前を口にすると、改めて目の前に立っている受付嬢がこちらの
ギルド仕様に変わったリンの様に見える事に戸惑いを覚える。ヒューマンの女性…
茶髪の短いツインテールで服はスプリングフィールドの方とは違い、南国の
バカンス仕様の制服を着ている。まるでサラシの様に胸を隠す帯状の白い服に、
軽く風通しの良さそうな短めのノースリーブジャケットを身に着け、
下はパレオスカート…その姿は何故かふしぎの海的な何かを連想させる…
体型もリンに良く似ており、リンの事は艦○れの飛龍に似て居ると言ったが
こっちの受付嬢は蒼龍に似ている…そんなリンに良く似た受付嬢にマサツグが
困惑の視線を向けて居ると、その受付嬢もマサツグの「リン」の名前に
引っ掛かりを覚えたのか…若干戸惑った反応を見せた後、納得した様子で
マサツグに答え出す。
「え?……あっ!…もしかして…貴方がマサツグさんですか?」
「え?…」
「えぇ~っと…私の名前は[ルン・ヒリュース]と言います!
マサツグさんが仰られるリンと言うのは恐らく双子の姉で…
その姉さんからは……っと!…」
__カサッ!…ッ!?…
受付嬢がハッと気付いた反応を見せると恐る恐るマサツグの事を尋ね出し、
その問い掛けにまだ自己紹介をしていない…とマサツグが戸惑った反応を
見せると、その反応を肯定と受け取ったのか受付嬢は自己紹介をし始める。
そしてリンと似ている理由を答える様に自分が双子である事・リンが姉で
ある事を口にすると、リンから手紙を貰っていた事も話し出し…その際
ルンはスカートの内側に手を入れると一通の手紙を取り出してマサツグに
差し出し、その手紙がリンからの物である事を更に話すと、手紙からリンが
マサツグに迷惑を掛けていたと言うのが分かるのか…ルンはマサツグに
対して頭を下げると申し訳なさそうに謝り出す。
「…この手紙からマサツグさんの事を伺っております!……
何でも王都の御前試合で騎士団長を倒したり…カルト教団を壊滅させたり…
後ラッキースケベを良く起こすとか…あの文面を見る限り姉がご迷惑を
掛けたみたいで…申し訳ありませんでした…」
「……ッ!?…あ…あぁ!…べ!…べべべ別に良いから!!…
頭を上げてくれ!!…頭を下げられるの慣れてないから!!…」
「ッ!…あっ!…そうなんですか?…ごめんなさい!…
…コホンッ!…では改めて…このギルドでの冒険者登録ですね?」
「ッ!…え?…またやるの?…
一応スプリングフィールドの方で冒険者登録をしたんだけど……」
今一体何処から手紙を取り出した!?…そんな違和感を覚えるのだが
それよりも…ルンの様子にマサツグがハッと我に返って慌てると、
ルンに頭を上げるよう声を掛ける。更に手紙の内容についても
ルンから語られた際…色々とツッコミどころが有り気になる事間違い
無いのだが…今は全てをスルーして話を元に戻すとルンは頭を上げて
マサツグにもう一度謝り、元のギルド業務に戻り出す。そして気を取り
直すよう軽く咳払いをするとまるでマサツグがここに来た目的を
知っている様に話し出し、その内容にマサツグが戸惑った表情を見せ
ルンに質問をすると、ルンはマサツグの問い掛けに答えるよう
ギルドの仕組みについて補足説明をし始める。…因みにこの間シロは
と言うと…マサツグの頭にしがみ付きながら視線を感じ…振り返って
正体を確認するとその正体に対して手を振り…愛嬌を振り撒いて見せると
前のギルド同様…冒険者達による茶番劇が行われてはキャッキャと
楽しそうに眺めていた。
「あっはい!…そうです!…
えぇ~…ギルドの組織自体は世界に一つだけなんですけど、やっぱり各大陸毎に
よってギルドマスターが違って管轄も変わり…一つ一つ登録をしないといけない
決まりになっているのです!…やっぱりその土地ごとに決まり事とかも
有りまして、その土地を冒険するに当たって約束事を護らないといけない!…
それらを一括で管理するには情報量が多すぎまして…ですからこうして各大陸の
ギルドごとに登録・管理を!…これも安全かつサポートする為!…その土地に
生きる人達から信頼を勝ち取る為の必要な事なので何卒ご協力ください!!…
…あっ!…後、登録後のギルドの機能は何処も一緒なのでご安心ください!」
「……なるほど…要は管轄ごとに登録しないと駄目って事か…」
「その通りです!
それでは、お手数ですが冒険者カードをご提示お願いします!」
ルンから聞かされる各大陸毎による冒険者登録の必要性…その重要性を
淡々と説明されてはマサツグの中で簡略化されて行き、とにかく今後この
サマーオーシャン大陸を冒険するにはこの土地のギルドの登録が必要と
分かると、マサツグはルンに納得した様子で頷いて見せる。そして同意
するよう自身の冒険者カードをアイテムポーチから取り出し始めると、
ルンもマサツグが納得したと感じたのか…マサツグが呟いた言葉に
返事をしてカードを渡す様にお願いし、マサツグがカードを提示すると
ルンはカードを受け取って自身の手前に裏面向けて置き、徐にハンコを握る。
__カタンッ…グッ!…ふぅ~…キラキラキラキラ!…ポンッ!…
「ッ!…え?…」
ルンがハンコを手に取ったかと思えば徐にハンコの印面に息を吹き掛け、それに
反応するようハンコの印面がキラキラと輝き出すと、ルンはそのまま朱肉等を
付ける事無く冒険者カードの裏面に押し付けて見せる。そして思いっきり
押し付ける等の動作も無いままハンコを離すとそこにはそのハンコの印影が
クッキリと付いており、それを見たマサツグがハンコに仕組みに戸惑った反応を
見せて居ると、ルンはマサツグの冒険者カードを取るなり驚き興奮した様子で
マサツグに話し掛け始める!
「…はい!これでOKです!…にしても凄いですね!!
Lv20オーバーでシルバーランク…出世も出世!…大出世ですよ!!」
「え?……冒険者ランク?……シルバーランク?……
ッ!…あぁ!!…はいはい、あれね!!……ってそんなに凄いの?」
登録はアレで終わりなのかマサツグが戸惑いながらもルンから自身のカードを
受け取り、その際ルンはマサツグの冒険者ランクを見て頬を赤く染め!…
興奮した表情で話し掛け出すと、そのルンの様子はまるで珍しいアイテムを
目の前にしたリンに酷似していた!久々に聞いた冒険者ランクと言う言葉と
初めて聞いた自身の階級…その両方とルンの様子に戸惑いつつも、にわか反応で
躱そうとするが躱せる筈も無く…やはりここでもピーカブースタイルで迫って来る
ルンの様子にマサツグが戸惑い、思わず如何凄いのかを聞き返してしまうと、
ルンは興奮そのままそのシルバーランクに到達するのに掛かる時間の凡そを
説明し始める。
「えぇ、それはもう!!……最初はストーンランクからのスタートなんですが…
もしストーンランクからシルバーランクに上がろうとするなら?…
大体10年間町の外の低級モンスターを倒し続けるって言った所でしょうか?…
何にしてもこの短期間でシルバーランクは凄いですよ!!」
「そ…そうなのか?…」
「はい!!!……って、あっ!!…ご、ごめんなさい!!…つい…」
「あははは…いやいや、もう慣れたから…大丈夫だよ?…」
ルンが言うには相当らしく…時間の単位が「年」とかなり時間が掛かる事を
言い出すと、ルンもお約束とばかりにピーカブーでマサツグに迫り始める!…
あの姉にしてこの妹有り!…間違いの無い血の繋がりを感じる事にマサツグが
戸惑いの表情を見せながらルンの説明に相槌を打っていると、ルンの方はまだ
冷めやすいのか…マサツグの相槌に力を込めて返事をした後、直ぐにハッと
した表情を見せると慌ててマサツグから離れて謝り始める。何度も頭を下げて
謝るルンの様子にマサツグが苦笑いし…慣れていると言ってルンを落ち着かせ
始めると、改めて仕切り直す様に軽く咳払いをして挨拶をする。
「……ああぁぁ……コホンッ!…じゃあ改めまして…
これから宜しく!…ルン!」
「ッ!…は、はい!…こちらこそお願いします!!」
__………ひょこッ!…
「ご主人様!!…次は何処に行きますか?」
互いに苦笑いをしながら挨拶を交わすと漸く周りの雰囲気に順応したのか
マサツグが落ち着き、ここまで来て漸くこの大陸のスタートラインに立てた
訳なのだが…話しが終わるや否やシロが待ち草臥れた様子でマサツグの
顔を覗き込むと、次の行き場所について質問を始める。その突然のシロの
顔面ドアップにマサツグは若干驚いた反応を見せるも、改めて聞かれた事に
悩んだ表情を見せ…とにかく今必要と思った事を挙げ出すと、目的が
決まったのかシロの質問に答え出す。
「うおっ!!…びっくった!……そうだな?…
……とりあえずシロと俺の防具を買いにかな?
リーナに貰った鎧もこの通りだし……」
__ガサガサ…ゴトッ……どよッ!?…
「ッ!?…マ、マサツグさん!?…これは!!…」
マサツグが話し出した次の目的は武具の調達で有った。その際シロの分も
今後必要になって来ると考え…やはり良い物が欲しいと言い出すと、徐に
アイテムポーチを開いては中から前に着けていたバルデウス戦で壊れた
防具を取り出して見せる。その損傷具合は酷く有らぬ形状になっては
ルンやシロを驚かせ、シロに夢中だった冒険者達の目にもそのボロボロの
防具が映り出すと、その奇妙な防具を見るなりギルド内がどよめく!…
一体何と戦えばあそこまでボロボロに!?…そんな声が辺りからチラホラと
聞こえる中、周りの声を代弁するようルンが困惑気味にマサツグへ質問を
始めると、マサツグは如何答えたものかと悩みながらルンに答える。
「一応前に着けてたヤツなんだけど…この通り…ね?…」
「………ッ!!……ここまで激しい戦闘をされるなら確かに良い物で無いと!…
うぅ~ん…今案内出来るとするならシェルクエルの防具屋ですかねぇ?…」
「…ッ?……シェルクエル?」
「はい!…今この大陸一番の防具屋です!
ここ最近またメキメキと腕と名を上げ始めてて…
既存の防具なら性能はピカイチです!…
ただその分お値段が張ってしまいますが…
如何ですかね?…そこが一番人気の防具店です!」
駆け出しの冒険者がいきなり魔王と戦ってこうなった!と言って!…
一体誰が信じるだろうか?…まず魔王自体余程の事が無い限り出て来る筈が
無いのに、更に出て来たとしても今のマサツグでは勝てる見込みは万に一つと
して有りはしない!…アレは奇跡!!…その事は自分でも理解して居る為、
ただルンの質問に如何答えたものかと悩んで居ると、ルンはマサツグの様子を
見て察したのかそれ以上の事は聞かず、ただこんな戦闘をする人!…と
身を案じた様子で心配すると一軒の防具屋を紹介し始める。その防具屋の話を
話し出したルンにマサツグも興味を持った様子で反応すると、ルンは
その防具屋の詳しい話を続けて口にし、そこへ行くようマサツグを勧め出す
のだが……ここでマサツグがルンのある言葉に引っ掛かりを覚えると、
その事を尋ねる様に声を掛ける。
「……んん?…ちょっと良いか?…既存って如何言う意味?…」
「え?…」
「……ッ!…あぁ!!…意味が分からないじゃなくて!…
何で既存って言葉を使ったのかが疑問に思えて…
さっきの話だとまるで…普通に作った物ならそのシェルクエルが一番!…
でもオーダーメイドなら別の所がある!って、言ってる様に聞こえたから…
何でそんな風な言い方をしたんだろうって?…」
「ッ!?……」
マサツグが疑問を感じた点…それはルンの言い回しで有った。ルンはマサツグに
その防具屋を紹介する際、確かに既存なら…と紹介したのである。それではまるで
オーダーメイドで作るならそこじゃなくて別の所が良い!と言う風に聞こえ、
その点を疑問に感じたマサツグがルンにツッコミを入れたのだが、最初の質問では
そう言う風に伝わらなかったのかルンが困惑し…その様子にマサツグも釣られて
困惑するとハッと気が付いた様子で改めて如何言う事かを説明し、再度説明を
求め出すとルンはマサツグのツッコミを受けては驚いた表情を見せ…目を見開き
マサツグの事を数秒見詰めて居ると、次には意味有り気な表情でフフッと笑って
見せるのであった。
0
お気に入りに追加
563
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
いや、自由に生きろって言われても。
SHO
ファンタジー
☆★☆この作品はアルファポリス様より書籍化されます☆★☆
書籍化にあたってのタイトル、著者名の変更はありません。
異世界召喚に巻き込まれた青年と召喚された張本人の少女。彼等の通った後に残るのは悪人の骸…だけではないかも知れない。巻き込まれた異世界召喚先では自由に生きるつもりだった主人公。だが捨て犬捨て猫を無視出来ない優しさが災い?してホントは関わりたくない厄介事に自ら巻き込まれに行く。敵には一切容赦せず、売られたケンカは全部買う。大事な仲間は必ず守る。無自覚鈍感最強ヤローの冒険譚を見よ!
◎本作のスピンオフ的作品『職業:冒険者。能力:サイキック。前世:日本人。』を並行連載中です。気になった方はこちらも是非!*2017.2.26完結済です。
拙作をお読み頂いた方、お気に入り登録して頂いた皆様、有難う御座います!
2017/3/26本編完結致しました。
2017/6/13より新展開!不定期更新にて連載再開!
2017/12/8第三部完結しました。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
【本編完結】転生隠者はまったり怠惰に暮らしたい(仮)
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる