488 / 519
雑賀重清の目標
第438話:青龍
しおりを挟む
「なるほど・・・始祖様の弟子の具現獣ですか。それは興味深い・・・」
聡太の話にじっと聞き入っていた亀太郎が呟くと、紅葉は面白くなさそうに亀太郎を睨みつけ、
「それでも、あなたが『玄武の術』と契約をしない理由にはならないわ!
『玄武の術』の発動には具現獣が必要なの。しかも、具現獣ならばなんでも良いというわけじゃない。
『玄武の術』には亀の具現獣がいないと、本当の力は発揮できないわ。
その点、亀太郎ならば聡太と契約しても構わないと言っているわ。聡太が『玄武の術』の術と契約した方が―――」
「・・・それも間に合ってます」
申し訳無さそうにそう言って視線を外す聡太の視線を、紅葉は自然と追った。
そこには、頭に亀を乗せたバカそうな子が満面の笑みで立っていた。
「ソウ!言うの忘れてたけど、お前の伯母さん失礼だぞ!」
重清は今更ながら、先程の紅葉の『バカそうな子』発言に対する文句を、聡太へと投げつけていた。
「でも、まぁ、間違ってもいないからね」
「え、風魔ってみんなこんなに失礼なの?」
親友の呆気ない裏切りに、重清は亀太郎へと視線を向けた。
「いえ、聡太様のお母様、楓様はそれはそれはお優しい方でした。
お嬢様は、その、独り身が続きすぎて少々性格が―――」
「亀太郎!!」
亀太郎のフォローになっていないフォローに、紅葉は怒鳴り声を上げた。
「っていうか、あんた雑賀重清でしょ?なんで亀なんて具現獣にしているのよ!?
あんたの具現獣は、猫じゃなかったの!?」
「ふん。儂はその、雑賀本家の元具現獣じゃ」
紅葉の言葉に、ロイは冷たく言い放った。
「おぉ!あなたがあの、ゴロウ様ですか!亀先輩であるゴロウ様にお会いできて、私は感動しておりますっ!!」
突然の謎ワードを叫びながら、亀太郎は重清の頭に鎮座するロイへと尊敬の眼差しを向けていた。
「いや、亀先輩って、なに?」
さすがにこらえきれず、重清がロイに謎ワードについて尋ねるも、
「儂に聞くな」
ロイは呆れ声でそう返して重清の中へと戻っていった。
「なんとクールな・・・」
「あんたも少しは見習ったら?」
感動冷めやまぬ亀太郎に対し、紅葉は華麗なる嫌味を飛ばして聡太に目を向けた。
「とにかく、雑賀に術を与えるなんて私は認めないわ」
「だったら、ぼく風魔の当主になんか絶対になりません」
「あーでも、一旦貸してあげるくらいは問題ないかなぁ~」
聡太の強い口調に、紅葉は瞬時に手のひらを返した。
「じゃ、そういうことで」
聡太が笑顔でそう言うと、
「・・・わかったわ」
紅葉は諦めたように、術の契約書を具現化させた。
「いい?ことが済んだら、すぐに聡太に術を返すのよ!」
「いや、誰に言ってんの?」
何故か亀太郎に向かって声をかけている紅葉に、重清は小さくつっこんだ。
他人に直接話しかけられない紅葉の、精一杯の頑張りに、亀太郎は何故か涙を流して喜んでいた。
(風魔本家マジ面倒くせぇ。早くソウが当主になってくれ)
ノリはそんな現風魔本家当主とその具現獣の様子に、ただただそう祈るのであった。
紅葉が術の契約書をいじっている間に、亀太郎は涙を拭きながら聡太へと声をかけた。
「そういえば、聡太様の具現獣、確かお名前はブルーメ様でしたな。随分お静かですが、どうかなされたのですか?
先程お話に出た、もうひとりのパパである青龍様と一緒にいらっしゃるのですか?」
「・・・・・いえ。ここにいるんですけど・・・」
亀太郎の言葉に、首元の龍のアクセサリーを指で弾きながら聡太は悲しげな表情を浮かべた。
「いや、っていうかなんでソウの具現獣のことは名前まで知ってて、ロイの事は知らなかったのさ」
「紅葉様は、聡太様にしかご興味がありませんでしたからね」
重清の久しぶりの脱線に丁寧に答えつつ、亀太郎は聡太へと向き直った。
「それで・・・ブルーメ様はどうしてお静かなのですか?」
「はい。ブルーメ、凄く悲しんでるんです。もうひとりのパパ、青龍さんが消えちゃって」
「きえ、た?」
亀太郎の言葉に頷いた聡太は、再び語りだした。
時は再び戻って、『喫茶 中央公園』。
術の契約書を具現化させた青龍は、聡太をじっと見つめていた。
「では聡太。お主に『青龍の術』を与える」
「は、はい」
「この術は、具現獣がいないと使うことは出来ない。
お主にはこの子が居るから、問題はないがな」
そう言った青龍が術の契約書を見つめて念じると、
『ピロリンっ』
聡太の頭に久々の着信音が鳴り響いた。
しかし聡太は、その音のことなど聞こえなかったかのように青龍を見つめていた。
「せ、青龍さん・・・体が・・・」
「ふむ。やはりこうなったか」
青龍はそう言って、自身の手を見つめていた。
そこにあるはずの手は、忍力の霧となって辺りに漂っていた。
そしてその忍力の霧は、青龍の全身から漏れ出ていた。
聡太の話にじっと聞き入っていた亀太郎が呟くと、紅葉は面白くなさそうに亀太郎を睨みつけ、
「それでも、あなたが『玄武の術』と契約をしない理由にはならないわ!
『玄武の術』の発動には具現獣が必要なの。しかも、具現獣ならばなんでも良いというわけじゃない。
『玄武の術』には亀の具現獣がいないと、本当の力は発揮できないわ。
その点、亀太郎ならば聡太と契約しても構わないと言っているわ。聡太が『玄武の術』の術と契約した方が―――」
「・・・それも間に合ってます」
申し訳無さそうにそう言って視線を外す聡太の視線を、紅葉は自然と追った。
そこには、頭に亀を乗せたバカそうな子が満面の笑みで立っていた。
「ソウ!言うの忘れてたけど、お前の伯母さん失礼だぞ!」
重清は今更ながら、先程の紅葉の『バカそうな子』発言に対する文句を、聡太へと投げつけていた。
「でも、まぁ、間違ってもいないからね」
「え、風魔ってみんなこんなに失礼なの?」
親友の呆気ない裏切りに、重清は亀太郎へと視線を向けた。
「いえ、聡太様のお母様、楓様はそれはそれはお優しい方でした。
お嬢様は、その、独り身が続きすぎて少々性格が―――」
「亀太郎!!」
亀太郎のフォローになっていないフォローに、紅葉は怒鳴り声を上げた。
「っていうか、あんた雑賀重清でしょ?なんで亀なんて具現獣にしているのよ!?
あんたの具現獣は、猫じゃなかったの!?」
「ふん。儂はその、雑賀本家の元具現獣じゃ」
紅葉の言葉に、ロイは冷たく言い放った。
「おぉ!あなたがあの、ゴロウ様ですか!亀先輩であるゴロウ様にお会いできて、私は感動しておりますっ!!」
突然の謎ワードを叫びながら、亀太郎は重清の頭に鎮座するロイへと尊敬の眼差しを向けていた。
「いや、亀先輩って、なに?」
さすがにこらえきれず、重清がロイに謎ワードについて尋ねるも、
「儂に聞くな」
ロイは呆れ声でそう返して重清の中へと戻っていった。
「なんとクールな・・・」
「あんたも少しは見習ったら?」
感動冷めやまぬ亀太郎に対し、紅葉は華麗なる嫌味を飛ばして聡太に目を向けた。
「とにかく、雑賀に術を与えるなんて私は認めないわ」
「だったら、ぼく風魔の当主になんか絶対になりません」
「あーでも、一旦貸してあげるくらいは問題ないかなぁ~」
聡太の強い口調に、紅葉は瞬時に手のひらを返した。
「じゃ、そういうことで」
聡太が笑顔でそう言うと、
「・・・わかったわ」
紅葉は諦めたように、術の契約書を具現化させた。
「いい?ことが済んだら、すぐに聡太に術を返すのよ!」
「いや、誰に言ってんの?」
何故か亀太郎に向かって声をかけている紅葉に、重清は小さくつっこんだ。
他人に直接話しかけられない紅葉の、精一杯の頑張りに、亀太郎は何故か涙を流して喜んでいた。
(風魔本家マジ面倒くせぇ。早くソウが当主になってくれ)
ノリはそんな現風魔本家当主とその具現獣の様子に、ただただそう祈るのであった。
紅葉が術の契約書をいじっている間に、亀太郎は涙を拭きながら聡太へと声をかけた。
「そういえば、聡太様の具現獣、確かお名前はブルーメ様でしたな。随分お静かですが、どうかなされたのですか?
先程お話に出た、もうひとりのパパである青龍様と一緒にいらっしゃるのですか?」
「・・・・・いえ。ここにいるんですけど・・・」
亀太郎の言葉に、首元の龍のアクセサリーを指で弾きながら聡太は悲しげな表情を浮かべた。
「いや、っていうかなんでソウの具現獣のことは名前まで知ってて、ロイの事は知らなかったのさ」
「紅葉様は、聡太様にしかご興味がありませんでしたからね」
重清の久しぶりの脱線に丁寧に答えつつ、亀太郎は聡太へと向き直った。
「それで・・・ブルーメ様はどうしてお静かなのですか?」
「はい。ブルーメ、凄く悲しんでるんです。もうひとりのパパ、青龍さんが消えちゃって」
「きえ、た?」
亀太郎の言葉に頷いた聡太は、再び語りだした。
時は再び戻って、『喫茶 中央公園』。
術の契約書を具現化させた青龍は、聡太をじっと見つめていた。
「では聡太。お主に『青龍の術』を与える」
「は、はい」
「この術は、具現獣がいないと使うことは出来ない。
お主にはこの子が居るから、問題はないがな」
そう言った青龍が術の契約書を見つめて念じると、
『ピロリンっ』
聡太の頭に久々の着信音が鳴り響いた。
しかし聡太は、その音のことなど聞こえなかったかのように青龍を見つめていた。
「せ、青龍さん・・・体が・・・」
「ふむ。やはりこうなったか」
青龍はそう言って、自身の手を見つめていた。
そこにあるはずの手は、忍力の霧となって辺りに漂っていた。
そしてその忍力の霧は、青龍の全身から漏れ出ていた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる