おれは忍者の子孫

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雑賀重清の目標

第437話:コモド氏の正体

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「やっぱり・・・コモドさん、あなたはもしかして、あの本に描かれている、丞篭しょうこさんの、具現獣なんじゃないですか?」
聡太はそう言って、既に読んだ平八の本をチラリと見て、コモド氏に視線をうつした。

「そこまで分かっていたのか。お主はやはり、聡いな、聡太」
コモド氏はそう言って笑い、言葉を続けた。

「いかにも。我はお主らの言う始祖様の弟子の1人、丞篭しょうこの具現獣。名を青龍せいりゅうと言う。お主らと以前会った時の姿コモドドラゴンは、人前に出るときの仮の姿。本来はこの子と同じ、龍の具現獣だ」
「まさか、そのようなことが・・・」
青龍の言葉にノリは驚いて声を漏らし、雅でさえも見開いた目で青龍を見つめていた。

「ちょっと待ってくれ」
その時、どうしても我慢できないといった様子の恒久が、立ち上がった。

「あんたの正体について、それが本当かなんて俺にはわからねぇ。だけどなぁ、これだけは言わせてくれ」
そう言った恒久は、大きく息を吸い込んだ。

恒久はずっと、我慢していた。
店に入ってきた青龍をひと目見た瞬間から、ずっと我慢していたのだ。
しかし、相手がどこの誰かも分からないままでは、どうすることもできなかったのだ。

だが今は違う。
相手が、あのコモドドラゴンであることが分かった恒久には、この大事な話を止めてでも、伝えなければならないことがあったのだ。

その思いの丈をぶつけるべく吸い込んだ息を、恒久はひと思いに吐き出した。

「なんつーカッコしてんだよっ!!!!」
そう言った恒久は、自信のこもった目で青龍を見つめていた。

ブルーメ出産(卵)の際に恒久は、青龍から自身のつっこみにダメ出しを受けていた。
そんな青龍に久々に会った恒久は、自身の腕前を披露したかったのだ。

もちろん、それ以上に青龍の見た目につっこみどころがあったのも事実だか。

しかし当の青龍は、恒久の言葉に不思議そうに首を傾げていた。

「ん?人の世では、この格好が流行っているのではなかったか?」
「いやいつの時代だよっ!!っていうか俺でもその格好がいつ流行ったのか分かんねぇよっ!!」

「まったく。お主は本当につっこみとやらが好きだな。
お主を見ていると、人のあげ足ばかり取るりんを思い出すわ」
青龍は鋭い目を恒久へと向け、懐かしそうに微笑んでいた。

「麟・・・それも、この本に描かれている始祖の弟子の1人。
やはり、この本には事実が描かれているのか・・・」
青龍の言葉に、ノリはそう言葉を漏らした。

「本?聡太もそのような事を言っていたな。それか?見せてくれ」
青龍がそう言うと、ノリは平八の本を手渡した。


「なるほどな」
しばし本に目を通していた青龍は、本を閉じ、呟いた。

「確かに、これに書かれているのは事実だ。書いたのは・・・お主か?」
青龍はそう言いながら、雅に目を向けた。

「いいや、書いたのはあたしの愛する夫だよ。始祖の契約書に辿り着いた雑賀平八が、それを書いたのさ」
「ほぉ。あれを手にしたのか。しかし、どうやって・・・」
雅の言葉に、青龍は考え込むように目を閉じた。

「あの・・・青龍、様?」
青龍に、ノリは探るように声をかけた。

「む。悪い、何かな?」
「この本が事実であるならば、丞篭しょうこ様以外の始祖の弟子達は、今の4大名家の祖先であると私は予想しています」

「うむ。おそらくそうであろうな」
「ならば、丞篭しょうこ様は、弟子を取らなかったのですか?」

「いや、我が主も1人、弟子を取っていた。確か、根来ねごろの姓を授けたはずだが・・・」
「では、根来本家がもう1つの術を持っているののか!?」
最後の術の在処が分かったことに喜んだ六兵衛が、立ち上がって青龍を見つめた。

(((根来本家って・・・アレかぁ・・・行きたくねぇ)))
重清、聡太、そして恒久は、いい年して猫耳を付け、語尾に『にゃ』などと付ける痛いおじさんであり、『獣装じゅうそうの術』の作成者、そして本人曰く、根来本家次期当主である、根来真備まきびの顔が、それも見事なまでの猫ポーズを決めている真備の姿が、くっきりと脳内で再生されていた。

そんな重清達の心配をよそに、青龍は六兵衛の言葉に首を横に振った。

「いや、確かに我が主は根来と名付けた子をいっときの間弟子にしていた。だが、師から与えられたあの術は、渡してはおらん。我が主は自身に子が生まれたら、その術を与えようと思っていたようだからな。
まぁ、結局我が主は、生涯独り身を貫いたがな」
青龍は、寂しそうな笑みを、誰に向けるともなく浮かべていた。

「じゃぁ、その術ってのはどこにあるの?」
茜が青龍に問いかけると、

「だから我がここに来たのだ。我が主より預かった、この『青龍の術』を、聡太。お主に与えるためにな」
そう言って術の契約書を具現化した青龍は、聡太をじっと見つめていた。
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