486 / 519
雑賀重清の目標
第436話:お久しぶり
しおりを挟む
時はしばし戻る。
甲賀オウのゴウとの内通が暴かれ、ゴウの師が平八であったことが判明した後のこと。
驚きの嵐が吹き荒れた『喫茶 中央公園』では、一旦落ち着こうという雅の提案により、明美姉さんの珈琲が振る舞われていた。
「重清君、悪かったな。儂のせいで。君に迷惑をかけてしまった。聡太も、こんな師で失望しただろう」
オウは、目の前の珈琲に目を落としながら、頭を下げた。
「ま、ばあちゃんも言った通り、終わったことだしね。それにオウさん、ばあちゃんの修行っていう罰を受けるんでしょ?
だったら、帳消しどころかお釣りがくるくらいだよ」
重清は笑いつつも、哀れみのこもった目でオウへと返した。
「おじいちゃん。ぼくも、おじいちゃんの立場だったら同じことしてたと思う。だから、気にしないで」
そう言って笑う聡太の言葉にオウは、
「すまん。ありがとう・・・」
1人涙を流していた。
「ったく。辛気臭いねぇ。アンタ達、何か芸でもやりな」
雅はそんなオウに聞こえるようにそう言って、ユキ達に無茶振りした。
こう言っている雅だが、一応これは彼女なりの優しさなのである。
雑賀家の情報をゴウに流したオウに対し、雅はそれほど怒ってはいなかった。
平八の弟子である事も理由の1つではあるが、オウが情報を流した理由が友情によるものであったことと、一番被害を被った重清自身が、全くと言っていいほどオウに対して気にした素振りを見せていないことが彼女の心を落ち着かせていた。
とはいえ、そのオウへのフォローのつもりで言った言葉があまりにもな無茶振りであったところあたり、雅の僅かに残った怒りを誰かにぶつけたいという想いが垣間見れた。
「なんで俺達が芸なんかやらなきゃいけないのさぁ~」
かたや、雅から突然の無茶振りをされたユキは、戸惑いながらも雅を睨みつけた。
ちなみに、ゴウは再び休むために店の奥へと戻り、花園とグリはそれについてその場にはいなかったりする。
「ユキ、落ち着きなさい」
そんなユキを止めるように声をかけたドウは、いつもその顔に張り付いた笑みを引きつらせて雅を見つめた。
「申し訳ありません。我々、芸と呼べるものはなにも―――」
「雅様、ふざけている場合じゃないですよ」
真面目に答えるドウを静止し、ノリが雅をたしなめた。
「そうですよ姉上!美影が捕まっているんですよ!どうするんですかこれから!?」
六兵衛もまた、非難の目を姉に向けた。
「もう甲賀と伊賀、それから風魔の本家には大体の事は説明してある。あとはさっき行ったメンバーで頭を下げに行きゃ、なんとかなるさ」
「い、いつの間に・・・」
面倒くさそうに答える雅に、六兵衛は驚きのこもった声でそう呟いていた。
姉の素早い動きに六兵衛が安心しているなか、ノリは未だ不安げな表情を浮かべたまま話し始めた。
「雑賀を含め、トウさ―――允行の言う術を持つのは4大名家と言われる4家。しかし允行は、もう1つ、どこにあるか分からないと言っていた術があります。それについては、どうするのですか?」
ノリのその言葉に、雅を含めたその場の全員が押し黙った。
そんななか、聡太がそっと手を挙げた。
「あの・・・もしかしてですけど、心当たりがあるかも・・・」
聡太がそう言うと、一同の目が聡太へと注がれた。
「パパ、もしかして・・・」
聡太の首にアクセサリーのままぶら下がっていたブルーメが龍の姿へと戻り、聡太を見上げた。
その時、『喫茶 中央公園』の扉が開き、そこから1人男が入ってきた。
長い髪に丸いサングラスをつけたその男は、派手なシャツを揺らしながら店の中を進んだ。
「やはり、お主は聡いな」
男はそう言って、聡太に微笑みかけた。
「あ、あなたは・・・」
「パパぁっ!!」
聡太が男を見つめて呟いていると、ブルーメが男の首に巻き付いて頬ずりを始めていた。
「パパ!?」
『喫茶 中央公園』に、その場の聡太を除く者達の声が響いた。
「お主があの卵から生まれた子か。元気そうでなによりだな」
男はそう言いながら、小さなブルーメの頭を撫でていた。
「あ・・・もしかして、コモドさん?」
「「あっ!!」」
重清が男の顔を覗き込むと、茜と恒久も同時に声を上げた。
「お主達も、久しぶりだな」
男はサングラスを外しながら、重清達に微笑みかけた。
サングラスを外した男の目は、爬虫類のそれのように鋭く、重清達を除く者達はその目に驚いていた。
「この人?が、ブルーメの生みの親、コモドさんです」
聡太はそう言いながら、派手なシャツを纏う男を雅達へ紹介した。
「懐かしい忍力を感じてこの街に来たら、何やら問題が起きているようだな」
コモド氏は、そう言いながら辺りを見渡して、聡太にその視線を注いだ。
「話は聞いていた。どうやら必要になったようだな。我が主が師より頂戴した術、『青龍の術』を」
甲賀オウのゴウとの内通が暴かれ、ゴウの師が平八であったことが判明した後のこと。
驚きの嵐が吹き荒れた『喫茶 中央公園』では、一旦落ち着こうという雅の提案により、明美姉さんの珈琲が振る舞われていた。
「重清君、悪かったな。儂のせいで。君に迷惑をかけてしまった。聡太も、こんな師で失望しただろう」
オウは、目の前の珈琲に目を落としながら、頭を下げた。
「ま、ばあちゃんも言った通り、終わったことだしね。それにオウさん、ばあちゃんの修行っていう罰を受けるんでしょ?
だったら、帳消しどころかお釣りがくるくらいだよ」
重清は笑いつつも、哀れみのこもった目でオウへと返した。
「おじいちゃん。ぼくも、おじいちゃんの立場だったら同じことしてたと思う。だから、気にしないで」
そう言って笑う聡太の言葉にオウは、
「すまん。ありがとう・・・」
1人涙を流していた。
「ったく。辛気臭いねぇ。アンタ達、何か芸でもやりな」
雅はそんなオウに聞こえるようにそう言って、ユキ達に無茶振りした。
こう言っている雅だが、一応これは彼女なりの優しさなのである。
雑賀家の情報をゴウに流したオウに対し、雅はそれほど怒ってはいなかった。
平八の弟子である事も理由の1つではあるが、オウが情報を流した理由が友情によるものであったことと、一番被害を被った重清自身が、全くと言っていいほどオウに対して気にした素振りを見せていないことが彼女の心を落ち着かせていた。
とはいえ、そのオウへのフォローのつもりで言った言葉があまりにもな無茶振りであったところあたり、雅の僅かに残った怒りを誰かにぶつけたいという想いが垣間見れた。
「なんで俺達が芸なんかやらなきゃいけないのさぁ~」
かたや、雅から突然の無茶振りをされたユキは、戸惑いながらも雅を睨みつけた。
ちなみに、ゴウは再び休むために店の奥へと戻り、花園とグリはそれについてその場にはいなかったりする。
「ユキ、落ち着きなさい」
そんなユキを止めるように声をかけたドウは、いつもその顔に張り付いた笑みを引きつらせて雅を見つめた。
「申し訳ありません。我々、芸と呼べるものはなにも―――」
「雅様、ふざけている場合じゃないですよ」
真面目に答えるドウを静止し、ノリが雅をたしなめた。
「そうですよ姉上!美影が捕まっているんですよ!どうするんですかこれから!?」
六兵衛もまた、非難の目を姉に向けた。
「もう甲賀と伊賀、それから風魔の本家には大体の事は説明してある。あとはさっき行ったメンバーで頭を下げに行きゃ、なんとかなるさ」
「い、いつの間に・・・」
面倒くさそうに答える雅に、六兵衛は驚きのこもった声でそう呟いていた。
姉の素早い動きに六兵衛が安心しているなか、ノリは未だ不安げな表情を浮かべたまま話し始めた。
「雑賀を含め、トウさ―――允行の言う術を持つのは4大名家と言われる4家。しかし允行は、もう1つ、どこにあるか分からないと言っていた術があります。それについては、どうするのですか?」
ノリのその言葉に、雅を含めたその場の全員が押し黙った。
そんななか、聡太がそっと手を挙げた。
「あの・・・もしかしてですけど、心当たりがあるかも・・・」
聡太がそう言うと、一同の目が聡太へと注がれた。
「パパ、もしかして・・・」
聡太の首にアクセサリーのままぶら下がっていたブルーメが龍の姿へと戻り、聡太を見上げた。
その時、『喫茶 中央公園』の扉が開き、そこから1人男が入ってきた。
長い髪に丸いサングラスをつけたその男は、派手なシャツを揺らしながら店の中を進んだ。
「やはり、お主は聡いな」
男はそう言って、聡太に微笑みかけた。
「あ、あなたは・・・」
「パパぁっ!!」
聡太が男を見つめて呟いていると、ブルーメが男の首に巻き付いて頬ずりを始めていた。
「パパ!?」
『喫茶 中央公園』に、その場の聡太を除く者達の声が響いた。
「お主があの卵から生まれた子か。元気そうでなによりだな」
男はそう言いながら、小さなブルーメの頭を撫でていた。
「あ・・・もしかして、コモドさん?」
「「あっ!!」」
重清が男の顔を覗き込むと、茜と恒久も同時に声を上げた。
「お主達も、久しぶりだな」
男はサングラスを外しながら、重清達に微笑みかけた。
サングラスを外した男の目は、爬虫類のそれのように鋭く、重清達を除く者達はその目に驚いていた。
「この人?が、ブルーメの生みの親、コモドさんです」
聡太はそう言いながら、派手なシャツを纏う男を雅達へ紹介した。
「懐かしい忍力を感じてこの街に来たら、何やら問題が起きているようだな」
コモド氏は、そう言いながら辺りを見渡して、聡太にその視線を注いだ。
「話は聞いていた。どうやら必要になったようだな。我が主が師より頂戴した術、『青龍の術』を」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
悪夢で視る人――それは俺だけが視ることのできる、酷く残酷で凄惨な個人的ホラー映画。
されど電波おやぢは妄想を騙る
ホラー
彼女居ない歴イコール、生きた歳の俺は二十歳。
仕事が休みになると、当然、することもないので、決まって部屋に引き篭もる悪い癖を持っている。
何をしているかって言うとナニではなく、ひたすらに大好物なホラー映画を鑑賞しているってわけ。
怪奇物にスプラッター、パンデミックに猟奇物まで、ホラーと名のつく物ならなんでもバッチ来いの大概な雑食である。
めっさリアルに臓物が飛び出す映画でも、観ながら平気で食事が喉を通るって言うんだから大概だろ?
変なヤツだと後ろ指を刺されるわ、あの人とはお話ししてはダメよと付き添いの親に陰口を叩かれるくらいのな?
そんな俺が例の如くホラー映画を鑑賞中、有り得ないことが俺の身に起きた。
そこを境に聴くも悍しい体験をしていくこととなる――。
虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌
力水
ファンタジー
楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。
妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。
倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。
こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。
ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。
恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。
主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。
不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!
書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。
一人でも読んでいただければ嬉しいです。
転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です
途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。
ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。
前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。
ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——
一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——
ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。
色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから!
※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください
※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】
jumbl 'ズ
井ノ上
キャラ文芸
青年、大吉は、平凡な日々を望む。
しかし妖や霊を視る力を持つ世話焼きの幼馴染、宮森春香が、そんな彼を放っておかない。
春香に振り回されることが、大吉の日常となっていた。
その日常が、緩やかにうねりはじめる。
美しい吸血鬼、大財閥の令嬢、漢気溢れる喧嘩師、闇医者とキョンシー、悲しき天狗の魂。
ひと癖もふた癖もある連中との出会い。
そして、降りかかる許し難い理不尽。
果たして、大吉が平穏を掴む日は来るのか。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
片翼を君にあげる③
☆リサーナ☆
ファンタジー
毎週金曜日更新です(^^)
主人公ツバサは18歳の誕生日1週間前に不思議な夢を見る。
それは10年前に別れた幼馴染み、レノアと「将来夢の配達人になって必ず会いに行く」と約束した時の夢。
だが、約束と異なり彼は現在ただの学生。
15歳の時父の死を境に、夢の配達人への夢を遮られてしまった為だ。
しかし、レノアの20歳の誕生日パーティーで二人は再会。
それをキッカケに本当の気持ちに目覚め、再びあの日の約束と自分の夢を叶える為に動き出す。
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
2022.9.2(金)
連載開始予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる