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新学期と
第380話:脅迫ではありません
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「さすがに今回の件、古賀先生にお任せするわけにはいきませんね。こんな時間に学校に侵入するなどと。
さて、皆さんには何か処分を受けてもらわなければなりませんね」
「その前に、1ついいですか?」
校長の口から『処分』という言葉が飛び出たことに身をすくませる一同の中で、シンは躊躇することなく前へと進み出る。
「君は、部長の脇田君ですね。えぇ、なんでしょう?」
「先生方は、こんな時間に暗い中、何をされているんですか?」
「君達が気にすることではありません。単なる残業です」
シンの言葉にピクリと眉を上げながらも、校長は努めて笑顔でシンに答える。
「もしかして、何か探し物なんじゃないですか?
例えば、こんな記録媒体とか」
シンはそう言いながら、小さな音USBメモリを校長に見えるようにプラプラと掲げていた。
「そ、それはっ!?」
そのUSBメモリを見た島田さんが、声を上げた。
「・・・どうやら、それが我々の捜し物のようですね。一体、それをどこで?」
校長は顔を歪ませながらも、そこに無理矢理笑みを浮かべたままシンに問いかけた。
「いや~、たまたまそこで見つけまして」
シンはニヤニヤ笑いながら校長を見つめ返した。
もちろん、たまたまなどではない。
図書室で島田さんの嘆きを聞いたシンと茜は、そのまましばらく島田さんの独り言に付き合っていた。
その理由はもちろん、教師達が何を探しているのかを探るためであった。
茜はすぐに、キーホルダーの捜索をすべきだと主張していたが、シンはそれを頑なに断っていた。
キーホルダーを探したくなかったからではない。
ないったら、ない。
これだけ教師達が徘徊する中、忍者部の誰かが教師に見つかってもおかしくないと考えていたシンは、その場合に備えることにしたのだ。
もう一度言う。
決して、キーホルダーを探したくなかったからではないのだ。
忍者部の部長として、部員達を守るために、シンは泣く泣くキーホルダーの捜索を諦めたのだ。
そんな言い訳を心の中でしていたシンと、その言い訳を聞いた茜は島田さんの独り言から、教師達が探しているのがUSBメモリであることに気が付いた。
そのまま島田さんが図書室を後にするまで待ったシンと茜は、図書室内にある島田さんの席を物色し、すぐに目当てのUSBメモリを見つけたのだ。
デスクトップPCに挿しっぱなしの、それを。
「島田さん、ちゃんと探そうよ」
呆れた声で呟いたシンはそう言いながらUSBメモリを引き抜き、そして現在に至ったのである。
「もしかして、個人情報とか入ってるんですか?
あー、こういうのって、教育委員会とか文科省に報告したりするんですかね?」
USBメモリを校長に見せびらかしながら、シンはニコリと笑っていた。
「き、君は、我々を脅迫するつもりなのかい?」
校長は、先程までの笑みも忘れてシンを睨みつけた。
「いやいや、そんなことしませんって。
ただ、今日のことはお互いに忘れたほうがいいのかぁ~って、思っただけですよ」
「・・・・それが、お互いのため、ですか・・・」
「さすが長宗我部校長。話がわかる」
「えっ!?長宗我部!?」
シンの言葉に、重清が突然叫び声を上げた。
「え、もしかして校長って、長宗我部君のお父さん!?」
「シゲ、それみんな入学式の時に気付いてるし、今じゃないよ」
聡太が呆れながら重清へと声をかけ、周りの教師達も呆れたように重清を見つめていた。
特に田中は、自身のクラスのあまりにも空気を読まない発言に頭を抱え、ノリはそんな重清のいつもの脱線癖に笑いを堪えていた。
「じゃ、俺達は帰りますね。一応、今の会話は録音してるんで。あとで『やっぱ処分する』はナシですよ」
シンはノリへとUSBメモリを放り投げると、そう言いながら忍者部員達に目配せをして、そのまま揃って音楽室を後にした。
アカ(シンさんが、初めて部長っぽかった!)
ツネ(確かに、今日のシンさんはカッコよかったな)
ユウ(えぇ~、恒久先輩はいつもかっこいいですよぉ~)
シゲ(やっぱり、ツネとユウ何かあったんじゃないの?)
シン(おいツネ!そこんとこどうなんだよっ!!
お前はやっぱり、裏切り者なのか!?)
ケン(シン。台無しだ)
ノブ(はっはっは!それでこそシンだ!)
ソウ(・・・・・・)
シゲ(あれ、ソウどうしたの?)
ソウ(ううん。なんでもない)
シゲ(??そっか。そういえば、結局音楽室の不思議だけは解決しなかったな)
一同はそんな会話をしながら、その日の報告は翌日に回し、それぞれの家路へとついた。
(あの音楽室、忍力じゃないけど、何かそれに似た力があったような・・・)
聡太のそんな心の声を残して。
話は変わるが、雑賀平八は忍力についてある考察を残していた。
忍力とは、もともと人が持つ不思議な力を、契約という力によって忍者という枠組みに当て嵌めた結果、作られたものである、と。
平八の見解は、間違ってはいない。
忍力の元となるその力は、人ならば誰しもが持つ力なのである。
その力は、魔法のような不思議な力に変わる可能性も、秘めているものである。
そして、強い想いを抱いたまま死を迎えた者がその力を使えば・・・・
重清達忍者部員と教師達が2中から帰ったあとの暗い音楽室で、静かにピアノが鳴り響いていた。
そこには今にも消えそうな少年が、1人ピアノを演奏していた。
少年は小さく笑うと、そのままスッと姿を消した。
暗い音楽室には、演奏者の居なくなったピアノだけが、ただ
そこに残るだけなのであった。
さて、皆さんには何か処分を受けてもらわなければなりませんね」
「その前に、1ついいですか?」
校長の口から『処分』という言葉が飛び出たことに身をすくませる一同の中で、シンは躊躇することなく前へと進み出る。
「君は、部長の脇田君ですね。えぇ、なんでしょう?」
「先生方は、こんな時間に暗い中、何をされているんですか?」
「君達が気にすることではありません。単なる残業です」
シンの言葉にピクリと眉を上げながらも、校長は努めて笑顔でシンに答える。
「もしかして、何か探し物なんじゃないですか?
例えば、こんな記録媒体とか」
シンはそう言いながら、小さな音USBメモリを校長に見えるようにプラプラと掲げていた。
「そ、それはっ!?」
そのUSBメモリを見た島田さんが、声を上げた。
「・・・どうやら、それが我々の捜し物のようですね。一体、それをどこで?」
校長は顔を歪ませながらも、そこに無理矢理笑みを浮かべたままシンに問いかけた。
「いや~、たまたまそこで見つけまして」
シンはニヤニヤ笑いながら校長を見つめ返した。
もちろん、たまたまなどではない。
図書室で島田さんの嘆きを聞いたシンと茜は、そのまましばらく島田さんの独り言に付き合っていた。
その理由はもちろん、教師達が何を探しているのかを探るためであった。
茜はすぐに、キーホルダーの捜索をすべきだと主張していたが、シンはそれを頑なに断っていた。
キーホルダーを探したくなかったからではない。
ないったら、ない。
これだけ教師達が徘徊する中、忍者部の誰かが教師に見つかってもおかしくないと考えていたシンは、その場合に備えることにしたのだ。
もう一度言う。
決して、キーホルダーを探したくなかったからではないのだ。
忍者部の部長として、部員達を守るために、シンは泣く泣くキーホルダーの捜索を諦めたのだ。
そんな言い訳を心の中でしていたシンと、その言い訳を聞いた茜は島田さんの独り言から、教師達が探しているのがUSBメモリであることに気が付いた。
そのまま島田さんが図書室を後にするまで待ったシンと茜は、図書室内にある島田さんの席を物色し、すぐに目当てのUSBメモリを見つけたのだ。
デスクトップPCに挿しっぱなしの、それを。
「島田さん、ちゃんと探そうよ」
呆れた声で呟いたシンはそう言いながらUSBメモリを引き抜き、そして現在に至ったのである。
「もしかして、個人情報とか入ってるんですか?
あー、こういうのって、教育委員会とか文科省に報告したりするんですかね?」
USBメモリを校長に見せびらかしながら、シンはニコリと笑っていた。
「き、君は、我々を脅迫するつもりなのかい?」
校長は、先程までの笑みも忘れてシンを睨みつけた。
「いやいや、そんなことしませんって。
ただ、今日のことはお互いに忘れたほうがいいのかぁ~って、思っただけですよ」
「・・・・それが、お互いのため、ですか・・・」
「さすが長宗我部校長。話がわかる」
「えっ!?長宗我部!?」
シンの言葉に、重清が突然叫び声を上げた。
「え、もしかして校長って、長宗我部君のお父さん!?」
「シゲ、それみんな入学式の時に気付いてるし、今じゃないよ」
聡太が呆れながら重清へと声をかけ、周りの教師達も呆れたように重清を見つめていた。
特に田中は、自身のクラスのあまりにも空気を読まない発言に頭を抱え、ノリはそんな重清のいつもの脱線癖に笑いを堪えていた。
「じゃ、俺達は帰りますね。一応、今の会話は録音してるんで。あとで『やっぱ処分する』はナシですよ」
シンはノリへとUSBメモリを放り投げると、そう言いながら忍者部員達に目配せをして、そのまま揃って音楽室を後にした。
アカ(シンさんが、初めて部長っぽかった!)
ツネ(確かに、今日のシンさんはカッコよかったな)
ユウ(えぇ~、恒久先輩はいつもかっこいいですよぉ~)
シゲ(やっぱり、ツネとユウ何かあったんじゃないの?)
シン(おいツネ!そこんとこどうなんだよっ!!
お前はやっぱり、裏切り者なのか!?)
ケン(シン。台無しだ)
ノブ(はっはっは!それでこそシンだ!)
ソウ(・・・・・・)
シゲ(あれ、ソウどうしたの?)
ソウ(ううん。なんでもない)
シゲ(??そっか。そういえば、結局音楽室の不思議だけは解決しなかったな)
一同はそんな会話をしながら、その日の報告は翌日に回し、それぞれの家路へとついた。
(あの音楽室、忍力じゃないけど、何かそれに似た力があったような・・・)
聡太のそんな心の声を残して。
話は変わるが、雑賀平八は忍力についてある考察を残していた。
忍力とは、もともと人が持つ不思議な力を、契約という力によって忍者という枠組みに当て嵌めた結果、作られたものである、と。
平八の見解は、間違ってはいない。
忍力の元となるその力は、人ならば誰しもが持つ力なのである。
その力は、魔法のような不思議な力に変わる可能性も、秘めているものである。
そして、強い想いを抱いたまま死を迎えた者がその力を使えば・・・・
重清達忍者部員と教師達が2中から帰ったあとの暗い音楽室で、静かにピアノが鳴り響いていた。
そこには今にも消えそうな少年が、1人ピアノを演奏していた。
少年は小さく笑うと、そのままスッと姿を消した。
暗い音楽室には、演奏者の居なくなったピアノだけが、ただ
そこに残るだけなのであった。
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