おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
382 / 519
新学期と

第333話:やって来た新入生

しおりを挟む
「あ、ほら。やっぱりいた」
「げっ。なんであんた達まで来てるのよ」

社会科研究部の部室を覗いた聡太の言葉に、部室の後ろを陣取っていた茜が声を漏らした。

「いや、っていうか・・・全員集合じゃねーかよ。なにしてんすか、シンさん達まで」
さも当然のように席について談笑するシン達3年生3人に、恒久が呆れたような目を向けた。

シン「何って・・・・なぁ?」
ノブ「はっはっは!仕方ないじゃないか!」
ケン「それ言うなら、お前達だって同じ」

シン達3人は、照れ笑いを浮かべて恒久に返した。

「みんな、ショウさんの弟に興味があるみたいだね」
聡太が笑ってそう言うと、

「ま、そういうことだ。そろそろ1年生が来はじめる頃だから、みんな邪魔にならないように端にいるぞ」
新部長シンがそう言うと、重清達はそれに従って端の方へと腰を下ろした。

そのまま談笑を続けていると、チラホラと生徒達が部室へとやって来た。

皆、重清達をチラリと見て、おずおずと前の方へと着席していた。

そして最後に、ノリが1人の生徒を連れて部室へと入ってきた。

その生徒は中性的な顔立ちでジャージを着用しており、傍目からは性別の見分けがつきにくかった。

(あれがショウさんの弟、か?)
重清達がボソボソとささやきあっていると、連れてきた生徒が着席したのを確認したノリが、一瞬重清達に視線を向け、ため息をついて口を開いた。

「さて、時間になったし、社会科研究部の説明を始めます。この社会科研究部では、その名のとおり社会科を研究します。ただし、ここでの研究は、基本的に試験に出るような内容は扱いません。もしもそういうことを期待しているなら、入ることはオススメしません。
ここまでの説明で、入部の意志がない人は退席してもらって大丈夫ですよ」
昨年重清達が聞いたのと同じセリフをノリが発すると、殆どの生徒が席を立ち、その場に残ったのはたった2人になっていた。

1人はノリが連れてきたジャージ姿の生徒。
その生徒は、1人で周りをキョロキョロと見回していた。

「あー、今なら分かるわ。ノリさん、めっちゃ忍力出してるね」
重清は、隣に座る聡太に小声で話しかけた。

「うん。1年前、ぼくはこの忍力を感じて、この場に留まったんだ。
多分、あの子も何か感じてるんだと思う。やっぱりショウさんの弟なのかな?」
聡太が小声で返しながらその生徒を見つめていた。

「っていうかあいつ、めちゃくちゃ汗かいてないか?」
そう言いながら恒久が、顎でもうひとりの生徒を指した。

重清と聡太がその先に目を向けると、もう1人その場に残った男子生徒が、恒久の言う通り汗をダラダラとかきながら、ひたすらその場に座っていた。

「もしかしてあの子、忍力に怯えてるんじゃない?」
茜が、3人の会話に割り込んできた。

「確かに、そうも見えるね」
重清はそう言いながら、少年を見つめた。

顔面が蒼白になっているその少年は、確かに自分の中から湧き出る何かと戦っているようにも見えたのだ。

「おいお前ら。呼んでもないのに来た挙げ句、俺の邪魔をするつもりか?」
そんな4人に、これまで猫を被っていたノリが、いつもの口調で睨みつけてきた。

「なははは。ノリさん、地が出ちゃってるよ」
重清が苦笑いを浮かべながらそう言うと、

「ちっ。あれは、この社会科研究部の2年と3年です。ここに入部したら、もれなくあのバカどもが先輩になってしまいます。
それが嫌な場合は、入ることはオススメしません」
ノリは猫かぶりモードの口調で涼やかに毒を吐きながら、残る2人に笑いかけた。

「いやもう、口調以外はいつものノリさんじゃねーかよ」
そう小声でつっこむ恒久を無視して、ノリは2人の生徒を交互に見た。

「2人とも、出て行く気は無いみたいだね。
えっと・・・君は、どうしてこの部に入りたいのかな?見たところ、今にも出て行きたそうだけど?」
ノリはそう言って、汗をかいている少年を見つめた。

「ち、父が生前、中学に進学したら必ず社会科研究部に入るように、と」
少年は、怯えた表情の中に強い意志のこもった眼差しを残し、ノリを見返していた。

「なんか、去年のツネみたいなこと言ってるね、あの子」
「懐かしいな。ってことは、あいつも血を引いてんのか?」
重清と恒久がそう言い合っていると、不思議そうな顔をしたノリが、少年を見つめた。

「お父さんの?はて、聞いてないな。失礼だが、お父さんのお名前を聞いてもいいかな?」
ノリのその言葉に、少年は頷いた。

「はい。父の名は松本正義まさよし。生前は、忍ヶ丘警察署で署長をしていました」



--------
あとがき

いや松本ってだれ?って方のために、次話のはじめにある程度の説明を入れるのでご安心を。
それまで待てない!って奇特な方が万が一いらっしゃったときのために。
松本氏の初登場は48話、多少彼について語られるのが69話、そしてその死については138話、139話で語られております。
いや、どうせ待てない!って人がいないのはわかってるんですけど。
言ってみたかったんだもん。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません

ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」 目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。 この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。 だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。 だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。 そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。 人気ランキング2位に載っていました。 hotランキング1位に載っていました。 ありがとうございます。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

田中は生存中?

10期
ホラー
彼女の名前は田中すず、17歳。 至った普通の、ニンニクや刺激物が大好きなだけの女子高生であった。 そんな彼女の生きていく環境はある日の境にガラリと変わり、一部の地域の人間はゾンビ化してしまったのである。 一人ひっそりと隠れて生きる田中すずであったが、彼女果たして生きていると言えるのだろうか。 ※一話1000〜3000文字ほどです。 十二話完結。予約投稿済みです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

闇鍋【一話完結短編集】

だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。 ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。 念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。 読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...