おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
345 / 519
一息ついて

第307話:カオルン強襲

しおりを挟む
神楽が妹との悲しい再会をした事など知りもしない重清と聡太は、翌日の放課後、恒久を伴って『喫茶 中央公園』へとやって来ていた。

「なるほどな。そのアイデア、面白いじゃねーか」
重清が思いついたショウへ卒業式に渡すプレゼントのアイデアを聞いた恒久は、身を乗り出していた。

「そうでしょ?シゲにしては、面白いと思うんだよね」
「え、おれにしては、ってひどくない?」
聡太の辛辣な言葉に、プレッソを頭に乗せたまま、重清は抗議の目を向ける。

ちなみに本日、チーノは部活後直ぐに雅宅女子会へ、ロイはテーブルの下で、オウの隠していた日本酒をひっそりと嗜めている最中なのである。

「それで、グラさんのとこに行ったってわけか」
恒久は納得したように頷いていた。

「そ。ちなみにこれが、グラさんからの情報ね。でも、これとプレッソたちから聞いた話じゃ、ちょっと足りないんだよね」
「まぁ、確かにな。待てよ・・・・」

恒久は重清の言葉に、考え込んだ。

「なぁ。俺昨日、伊賀本家に呼び出されたんだけどさ・・・」
「あっ、そうだった!ツネ、大丈夫だったの?」
恒久が話し始めると、聡太が心配そうに恒久へと目を向けた。

「あぁ、とりあえずは大丈夫だった。なんか、俺が六兵衛さんトコに行ってるのがバレて、呼ばれたらしい」
「なーる。でも、『雑賀本家当主は、俺の弟子なんです』なんて言っても、信じてくれなかったんじゃない?」
重清が笑いながら言うと、

「いや、それがそうでもやくてな」
恒久は重清に苦笑いを返した。

「何があったの?」
そう言う心配そうな聡太に、恒久は笑顔を向ける。

「ま、心配されるようなことは起きてはないから安心しろ。とりあえず、ショウさんのプレゼントにも関係しそうだから手短に話すぞ?」
そう言って恒久は、伊賀本家との出来事を話し始めた。


「―――ってわけだ」
恒久が話し終えると、重清が目を輝かせて立ち上がった。

「カッコいい!幻獣の術とかめちゃくちゃカッコいいじゃん!!いいなぁー、伊賀家!雑賀家なんて、『百発百中の術』だぞ!?いや、それも凄いとは思いますけどねっ!!」

「シゲ、今はそこじゃないよ」
そんな重清に、聡太は冷ややかに言った。

「じゃぁどこ!?おれはどこに食いつけばいいの!?」
「いや、食いつく場所は間違ってないけどさ・・・・ツネが覚えた術、使えそうじゃない?」
聡太がそう言って、重清を見つめた。

「・・・・あっ、そうか!いける!これいけるよ!これなら、ショウさんへのプレゼントのいいヒントになるっ!!」
「だろ?」
重清の言葉に、恒久が得意そうに笑っていると。

「あらぁ~、こんな所で会うなんて、奇遇ねぇ」
そんなほんわかした声が、重清達にかけられた。

その声の主に目を向けた重清達は、

「「「カオルン!?」」」
驚きの表情で叫んだ。

重清達の視線の先にいたのは、2中保健室の養護教諭、花園薫(通称カオルン)であった。

「あらぁ、遂にソウ君も、私の事『カオルン』って呼んでくれるようになったのねぇ」
花園は、顔を赤らめて聡太を見つめていた。

(相変わらずオモテになりますな)
恒久がジト目で聡太に囁くのを誤魔化すように、聡太は花園へと声をかけた。

「な、なんでここに?」
「あらぁ、私だってコーヒーくらい飲むのよぉ」
花園は顔を膨らませて、聡太へと返した。

((クソ、可愛いなおい!))

そんな花園の姿に、重清と恒久はそう考えながらも、聡太と共に花園に心の中でつっこんでいた。

(((違う、そこじゃない)))
と。

そうそこではないのだ。今重清達がいるのは、『喫茶 中央公園』の忍者線溶席なのである。

そこは、平八の作った術、『何嫌なんかいやの術』により、忍者でない者は近づくことすら嫌がるはずなのである。

「もぉ~、なんかこの席、凄く嫌な感じよ?もしかして、幽霊でもでるんじゃないのぉ?」
花園はそう言いながら、辺りをキョロキョロしていた。

「いや、それなのによくここまで来たな」
恒久がボソリと花園につっこむと、

「私の聡太くんへの愛はぁ、幽霊なんかには負けないのよぉ!」
花園は聡太を見つめながら、言い切るのであった。

「愛とか言っちゃったよ!」
恒久は、そんな花園に思いっきりつっこんだ。

流石は伊賀本家当主からも認められたつっこみ番長。
軽くストーカーと化した花園へも、容赦なくつっこむのである。

「それでぇ、男3人で、何の良からぬ相談なのぉ?」
「いや良からなくねぇしっ!」
「あ、先輩への、卒業プレゼントの相談なんです」
すかさずつっこんだ恒久を無視して、聡太が花園へと答えた。

「あらぁ、それは良いわねぇ。私も話に混ぜてもらおうかしら」
「いや、もう決まっちゃったから、大丈夫だよ」
無理矢理席につこうとした花園を、重清がそう言って止めた。

「それは残念ねぇ。せっかく、聡太君とゆっくりお話できると思ったのにぃ」
「やっぱそれが狙いかよっ!おい、シゲ、ソウ!行こうぜっ!」
恒久がそう言って立ち上がると、2人も立ち上がり、重清は日本酒を味わうロイを肩に載せ、

「じゃ、おれらは行くね!カオルン、1人コーヒー楽しんで!」
そう言って花園に手を振って、『喫茶 中央公園』を後にした。

「もぉ、『1人』は余計よぉ」
花園はそう言いうと、その場を離れて、1人席へとついて明美姉さんに声をかけた。

花園に呼び止められた明美姉さんは、忍者専用席に入り込んだ花園に驚きの目を向けつつも、直ぐに接客モードへと切り替えて、花園のオーダーを聞くのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが

アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。 右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。 青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。 そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。 青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。 三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。 【登場人物紹介】 マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。 ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。 クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。 ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。 デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。 ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。 ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。 【お知らせ】 ◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。 ◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。 ◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。 ◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。 ◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。 ◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。 ◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。 ※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

全てのピノッキオたちへ

ままかりなんばん
ライト文芸
テーマパークの清掃員になるはずが、自立して動くアトラクションロボットの世話係に⁉︎ 現代でファンタジーで、お仕事と恋愛の物語。 ここは夢見る国、ドリーミングランド。 そんな明るい遊園地に、怪しい噂が流れていた。 「『ケインローズの冒険』というアトラクションに人馬の幽霊が出る」 主人公、樹論信(きろん しのぶ)はそんな噂をよそにドリーミングランドの夜間清掃員としての入社式を控えていたのだが……。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

田中は生存中?

10期
ホラー
彼女の名前は田中すず、17歳。 至った普通の、ニンニクや刺激物が大好きなだけの女子高生であった。 そんな彼女の生きていく環境はある日の境にガラリと変わり、一部の地域の人間はゾンビ化してしまったのである。 一人ひっそりと隠れて生きる田中すずであったが、彼女果たして生きていると言えるのだろうか。 ※一話1000〜3000文字ほどです。 十二話完結。予約投稿済みです。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

貴方の隣で私は異世界を謳歌する

紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰? あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。 わたし、どうなるの? 不定期更新 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

処理中です...