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一息ついて
第265話:森を散策していると
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心の中ではつっこみつつも役場へと戻っていった村長を見送った一行は、森の中へと進んでいった。
「やっぱり、わかんねぇな」
恒久が、辺りを見回しながら言った。
「わたしにもさっぱりだわ。ソウはどう?」
「うーん。なんとなく、普通の森とは違うかなぁって感じるくらいかな?」
茜の言葉に、聡太が答えていると、
「いや、それでも充分凄いさ。俺にもさっぱりわからんからな」
ガクは周りに気を配りながら聡太へと笑いかけた。
「ほんとにこの森、忍力出てんの?」
一行と同じく、特に森に違和感を感じていない重清は、智乃に疑いの眼差しを送った。
「本当よ。といっても、かなり微弱な忍力だから、感知力の強い聡太や、私達具現獣くらいしか感じないのでしょうね」
智乃はそう言いながら玲央をチラリと見た。
「お、オイラだって、さすがにここまで来れば普通の森じゃないのわかるって!」
小屋では森から出ている忍力に気付かなかった玲央は、不貞腐れ気味に智乃へと返した。
「それにしても・・・」
玲央は、お腹を擦りながら続けた。
「ここいると、腹一杯になるな」
「ん?どういうこと?」
腹一杯、とでも言いたげな表情の玲央に、聡太が首を傾げた。
「玲央よ。お主無意識にここの忍力を食べているのぉ。重清の忍力でないのだ、あまり食べないほうが良いぞ」
ロイが、玲央の頭の上から言った。
「ここの忍力だと、何か悪かったりするのか?」
恒久は、ロイへと問いかけた。
「悪くはないさ。ただな、儂ら具現獣は契約者の忍力こそ最も力になるのだ。別の忍力では、腹は膨れても力が出ん。まぁ、ただ生きるだけであれば、ここにいるだけで充分じゃろうがな」
「なるほど。はぐれ具現獣にはうってつけの場所ってわけか」
ガクが納得したように頷くと、ロイもそれを肯定するようにコクリと頷いた。
「ってことは・・・」
「あぁ。君達、油断するな―――」
茜の不安そうな声に答え、ガクが一同に目を向けていると、
「ガサガサッ」
近くの茂みから何かが動く気配があった。
「ちっ、早速お出ましかよ!」
恒久が、手裏剣を具現化させながら茂みの方へと向き、一同が構えていると、茂みから現れたのは、
「熊かよっ!!」
熊であった。
一行を品定めするかのようにじっとしている熊に目を向けながらも、聡太がガクへと声をかけた。
「コイツが、はぐれ具現獣?」
「いいえ、違うわね」
智乃が、ガクに代わって答えた。
「この子は、具現獣ではないわ。でも、普通の熊とも違うみたい」
「えっ、それってどういう・・・あっ!」
聡太は、智乃の言葉を聞いて熊へと目を向け、声を上げた。
「に、忍力・・・」
「えぇ。この子、少しだけど忍力を出しているわ」
「なに?」
「来るわよ!」
ガクが智乃に怪訝な顔を向けるのと同時に、熊が動き出した。
「ちぃっ!」
ガクは咄嗟に、熊の前へと飛び出した。
「がぁっ!」
熊パンチを受けたガクは、そのまま後方の木へと叩きつけられた。
「おいおいおい!マジかよ!ガクさんやられちゃったぞ!!」
恒久が叫んでいると、
「勝手に人を退場したみたいに言うな」
そう言いながら、ガクが一同の前へと姿を現した。
「ガクさん!」
重清達が声を揃えて言うと、
「君達、気をつけろ。コイツ、パワーもスピードも普通の熊じゃない。全員、戦闘態勢に―――」
ガクはそう言って目の前の熊に目を向けて言っていたその時。
「ガサガサッ」
茂みから、またしても何かが現れた。
「おいおい、マジかよ」
辺りの光景に、玲央が声を漏らしていた。
重清達の周りを、熊や猪、そして野犬が取り囲んでいた。
「この子たち、みんな少しだけど忍力を出しているわ」
智乃は、周りを警戒しながら言った。
動物達は、じっと重清達を見据え、
「ガウッ!!」
初めに出てきた熊の号令で一斉に飛びかかってきた。
「く、来るぞっ!!」
ガウの言葉に全員が構えたその時。
『やめい』
そんな声が森に響いた。
それを聞いた動物達は、ピタリとその動きを止めて、跪いていた。
「いや、跪いちゃってるよ!!」
動物らしからぬその行動に恒久がつっこんでいると、動物たちは跪きながらも移動し、道を開け始めた。
「器用だな・・・」
跪いたまま道を開けるという芸当に恒久は言葉を漏らしながらつっこむという芸当を返していると、
「こっちに行けってことか」
ガクは動物たちの作った道の先を見つめながらそう言って歩き始めると、重清達も不安そうにそれに続くのであった。
動物たちに囲まれながら。
「やっぱり、わかんねぇな」
恒久が、辺りを見回しながら言った。
「わたしにもさっぱりだわ。ソウはどう?」
「うーん。なんとなく、普通の森とは違うかなぁって感じるくらいかな?」
茜の言葉に、聡太が答えていると、
「いや、それでも充分凄いさ。俺にもさっぱりわからんからな」
ガクは周りに気を配りながら聡太へと笑いかけた。
「ほんとにこの森、忍力出てんの?」
一行と同じく、特に森に違和感を感じていない重清は、智乃に疑いの眼差しを送った。
「本当よ。といっても、かなり微弱な忍力だから、感知力の強い聡太や、私達具現獣くらいしか感じないのでしょうね」
智乃はそう言いながら玲央をチラリと見た。
「お、オイラだって、さすがにここまで来れば普通の森じゃないのわかるって!」
小屋では森から出ている忍力に気付かなかった玲央は、不貞腐れ気味に智乃へと返した。
「それにしても・・・」
玲央は、お腹を擦りながら続けた。
「ここいると、腹一杯になるな」
「ん?どういうこと?」
腹一杯、とでも言いたげな表情の玲央に、聡太が首を傾げた。
「玲央よ。お主無意識にここの忍力を食べているのぉ。重清の忍力でないのだ、あまり食べないほうが良いぞ」
ロイが、玲央の頭の上から言った。
「ここの忍力だと、何か悪かったりするのか?」
恒久は、ロイへと問いかけた。
「悪くはないさ。ただな、儂ら具現獣は契約者の忍力こそ最も力になるのだ。別の忍力では、腹は膨れても力が出ん。まぁ、ただ生きるだけであれば、ここにいるだけで充分じゃろうがな」
「なるほど。はぐれ具現獣にはうってつけの場所ってわけか」
ガクが納得したように頷くと、ロイもそれを肯定するようにコクリと頷いた。
「ってことは・・・」
「あぁ。君達、油断するな―――」
茜の不安そうな声に答え、ガクが一同に目を向けていると、
「ガサガサッ」
近くの茂みから何かが動く気配があった。
「ちっ、早速お出ましかよ!」
恒久が、手裏剣を具現化させながら茂みの方へと向き、一同が構えていると、茂みから現れたのは、
「熊かよっ!!」
熊であった。
一行を品定めするかのようにじっとしている熊に目を向けながらも、聡太がガクへと声をかけた。
「コイツが、はぐれ具現獣?」
「いいえ、違うわね」
智乃が、ガクに代わって答えた。
「この子は、具現獣ではないわ。でも、普通の熊とも違うみたい」
「えっ、それってどういう・・・あっ!」
聡太は、智乃の言葉を聞いて熊へと目を向け、声を上げた。
「に、忍力・・・」
「えぇ。この子、少しだけど忍力を出しているわ」
「なに?」
「来るわよ!」
ガクが智乃に怪訝な顔を向けるのと同時に、熊が動き出した。
「ちぃっ!」
ガクは咄嗟に、熊の前へと飛び出した。
「がぁっ!」
熊パンチを受けたガクは、そのまま後方の木へと叩きつけられた。
「おいおいおい!マジかよ!ガクさんやられちゃったぞ!!」
恒久が叫んでいると、
「勝手に人を退場したみたいに言うな」
そう言いながら、ガクが一同の前へと姿を現した。
「ガクさん!」
重清達が声を揃えて言うと、
「君達、気をつけろ。コイツ、パワーもスピードも普通の熊じゃない。全員、戦闘態勢に―――」
ガクはそう言って目の前の熊に目を向けて言っていたその時。
「ガサガサッ」
茂みから、またしても何かが現れた。
「おいおい、マジかよ」
辺りの光景に、玲央が声を漏らしていた。
重清達の周りを、熊や猪、そして野犬が取り囲んでいた。
「この子たち、みんな少しだけど忍力を出しているわ」
智乃は、周りを警戒しながら言った。
動物達は、じっと重清達を見据え、
「ガウッ!!」
初めに出てきた熊の号令で一斉に飛びかかってきた。
「く、来るぞっ!!」
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そんな声が森に響いた。
それを聞いた動物達は、ピタリとその動きを止めて、跪いていた。
「いや、跪いちゃってるよ!!」
動物らしからぬその行動に恒久がつっこんでいると、動物たちは跪きながらも移動し、道を開け始めた。
「器用だな・・・」
跪いたまま道を開けるという芸当に恒久は言葉を漏らしながらつっこむという芸当を返していると、
「こっちに行けってことか」
ガクは動物たちの作った道の先を見つめながらそう言って歩き始めると、重清達も不安そうにそれに続くのであった。
動物たちに囲まれながら。
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