おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
300 / 519
一息ついて

第263話:村長は語る

しおりを挟む
「おぉ、よくぞおいで下さいました」

3時間かけて不忍村へとやって来た一同は、そのまま村役場へと入り、村長がそれを出迎えた。

「えぇっと。その子らは?」
気の良さそうなその村長は、重清達を見ると不安そうにガクへと問いかけた。

村長の不安も無理はない。

やっと依頼を受けて忍者がやって来たと思ったら、子連れなのである。
まだ中学生にしか見えない少年少女、しかもそのうちの1人は頭に猫を乗せ、さらにその猫の頭には亀が乗っているのである。

ガクは、村長の気持ちを察し、笑顔を向ける。

「ご安心を。彼らも私と同じです。実力は私が保証します。私はこういう者で・・・」
そう言いながらガクは、村長に警察手帳を見せる。

「一応ここでは、別の簡単な事件を追っている警察官と、社会科見学の子たちということにしていただけると助かります」
「え、えぇ。わかりました」
村長は、それ以上何も言わず、ただガクの言葉に頷いていた。

この村長としては物凄く不安で仕方がないのだが、それでもこの村の異変を解決して貰えるのならばと、藁にも縋る想いなのであった。

「それで、一応依頼内容を確認させて頂きたいのですが・・・」
「わ、わかりました。と言っても、お送りした依頼書と、さほど変わり映えはしないかと思いますが・・・」
そう言いながら、村長は話し始めた。

「昔々、まだこの村に名が無かった頃の話です」

(ん?)
話し始める村長に、その場の全員が首を傾げた。
そんなことなどお構いなしに、村長は続けた。

「私のひいひいひい・・・・とにかく、だいぶ前の爺さんが、当時のこの村の取りまとめをやっていたそうです」

(ん??)
村長室に、微妙な空気が立ち込める。

「それまで、金はそこまでなくとも平和に暮らしていた村に、突然厄災が訪れたそうです」

「いや、昔話始まっちゃった――むぐっ――」
「どうかしましたかな?」
突然聞こえた声に、村長が顔を上げる。

「むぐっ!」
恒久の口を抑えたガクは、

「あ、失礼しました。続きをお願いします」
「はぁ・・・」
村長は、不思議そうにその光景を見つめながらも、頷いた。

(ガクさん!何するんですか!どう考えてもつっこむトコでしょ!)
恒久は、小声でガクに抗議した。

(いいから。もしかしたら何かヒントがあるかもしれないから、黙って聞いておこう)
ガクがそう言うと、恒久は渋々頷いていた村長へと目を向けた。

「すみませんでした。それで、その厄災というのは?」
場を落ち着けたガクは、村長へと続きを促した。

語りモードに戻った村長は、

「龍が襲って来たのです」
そう言って、恐ろしげな表情を浮かべていた。

「りゅ、龍、ですか・・・」
「まぁ、信じられないのも無理はないでしょう。どういった見た目をしていたのかなど、そういった記録も残されていないような話ですからな。私も、信じてはおりませんでした。つい最近までは」

「それって・・・」
村長の言葉に、聡太が声を漏らした。

「えぇ。この村の動物は、どれも気の強いものばかりでな。ウチの年老いた犬ですら、その辺りの猪くらいなら軽く蹴散らしたものでして」
「いやそれもう、犬じゃねーよっ!!」
恒久は、やはり我慢できずつっこんだ。

「元気の良いことで。それ程に信じられぬのなら、ウチの犬と手合わせでもしてみますかな?」
村長の挑発的な笑みに、

「え、いや、やめときます」
なんとなく恐れをなした恒久は、ただそう返した。

「そうですか。まぁ、それは置いておきましょう。
とにかく、その動物達が皆、最近ずっと怯えているのです。森の方を見て」
村長はそう言いながら、窓から見える森へと目を向けた。

「ゴクリ」
どこからともなく、誰かの唾を飲む大きな音が聞こえてきた。

「そ、それで、当時はその厄災――龍――を、どのように退けたのですか?」
ガクは、そう言って村長を見た。

「えぇ。どこからともなく現れたお人が退治した、と伝えられております。もしかすると、そのお方も忍者だったのではと思い、今回依頼させていただいたというわけです」
「ちなみにその人は、その後どうなったんですか?」
重清が、チーノをわちゃわちゃしながら村長へと聞いた。

「そのまま、この村に留まったそうです。村人達はそのお方に感謝し、その方が死ぬまで世話をしたとか」
「ではもしかすると、その方の子孫が今もこの村に?」
ガクが、村長へと期待の眼差しをむけた。

「いえいえ。そのお方は当時、既にお年を召されていたようで。誰とも結ばれることなく、お亡くなりになったと聞いております。ただ・・・」
村長は、そこで言葉を止めて一同を見渡した。

村長の語りモード奥義、『タメ』である。

「ゴクリ」
再び聞こえるその音に満足した表情を浮かべた村長は、

「そのお方の住んでいた庵は、今も大切に保存されているのです」
そう言ってニヤリと笑っていた。

(いや、タメる程の情報じゃなくね?)
恒久は隣の茜にボソリとつっこみ、笑いを堪えきれずに吹き出してしまった茜は、村長に頭を下げながら恒久の腹に肘をめり込ませるのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

jumbl 'ズ

井ノ上
キャラ文芸
青年、大吉は、平凡な日々を望む。 しかし妖や霊を視る力を持つ世話焼きの幼馴染、宮森春香が、そんな彼を放っておかない。 春香に振り回されることが、大吉の日常となっていた。 その日常が、緩やかにうねりはじめる。 美しい吸血鬼、大財閥の令嬢、漢気溢れる喧嘩師、闇医者とキョンシー、悲しき天狗の魂。 ひと癖もふた癖もある連中との出会い。 そして、降りかかる許し難い理不尽。 果たして、大吉が平穏を掴む日は来るのか。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆
ファンタジー
毎週金曜日更新です(^^) 主人公ツバサは18歳の誕生日1週間前に不思議な夢を見る。 それは10年前に別れた幼馴染み、レノアと「将来夢の配達人になって必ず会いに行く」と約束した時の夢。 だが、約束と異なり彼は現在ただの学生。 15歳の時父の死を境に、夢の配達人への夢を遮られてしまった為だ。 しかし、レノアの20歳の誕生日パーティーで二人は再会。 それをキッカケに本当の気持ちに目覚め、再びあの日の約束と自分の夢を叶える為に動き出す。 この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 2022.9.2(金) 連載開始予定

妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?

ラララキヲ
ファンタジー
 姉と下に2歳離れた妹が居る侯爵家。  両親は可愛く生まれた妹だけを愛し、可愛い妹の為に何でもした。  妹が嫌がることを排除し、妹の好きなものだけを周りに置いた。  その為に『お城のような別邸』を作り、妹はその中でお姫様となった。  姉はそのお城には入れない。  本邸で使用人たちに育てられた姉は『次期侯爵家当主』として恥ずかしくないように育った。  しかしそれをお城の窓から妹は見ていて不満を抱く。  妹は騒いだ。 「お姉さまズルい!!」  そう言って姉の着ていたドレスや宝石を奪う。  しかし…………  末娘のお願いがこのままでは叶えられないと気付いた母親はやっと重い腰を上げた。愛する末娘の為に母親は無い頭を振り絞って素晴らしい方法を見つけた。  それは『悪魔召喚』  悪魔に願い、  妹は『姉の全てを手に入れる』……── ※作中は[姉視点]です。 ※一話が短くブツブツ進みます ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。

処理中です...