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一息ついて
第250話:忍ヶ丘第2中学校の体育祭
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雑賀本家が帰り、そしてロイが重清の具現獣となって1週間が経った。
いつもの如く放課後に社会科研究部へと集まった重清達1年生4人は、心底疲れ切った表現で、それぞれが椅子へと腰掛けていた。
「おっ、早速ヘバッてるな、1年」
部室へと入ってきたシンが、重清達を見てニヤニヤと笑っていた。
「ガッハッハ!これも2中に入った宿命だ!」
「ゴリ五月蠅い。島田さんに怒られる」
ノブとケンも、言いながら部室へと入ってきた。
「「「「・・・・・・・・」」」」
しかし4人は、そんなシン達に目もくれず、ただ自身の疲れと戦っていた。
「いや、先輩の言葉無視すんなよな・・・」
シンが呆れ声で言っていると、
「えー、シン達も去年はこんな感じだったよぉー」
ショウが言いながら入ってきた。
「え?そうでしたっけ??」
シンは、ショウの言葉に頬をかきながら返した。
その時、プレッソがショウの肩へと飛び上がってショウにだけ聞こえるほどの小声で言った。
「ショウ、コイツらどうしたんだ?オイラ達が来たときには既にこんな状態で、話すら聞けないんだよ」
その日、プレッソ、チーノ、そして新しく重清の具現獣となったロイは、雅宅で過ごしており、何故重清達がまだ部活すら始まっていないにも関わらず既にグロッキーなのか、分かっていなかったのだ。
「うーん。どうせならノリさん来る前に、教えてあげちゃおうかなぁー」
言いながらショウは、ニコリと笑った。
「多分シゲ達は、体育祭の練習で疲れたんだよ」
「体育祭の練習とな?それで、ここまで疲れるものなのか?」
プレッソの頭に乗っていたロイが、同じく小声でショウへと聞いた。
「普通の学校じゃ、なかなかないだろうねぇー。でも、ウチの中学、ちょっとおかしいんだよー」
そう苦笑いで返すショウの言葉に続けて、
「俺らの中学、めちゃくちゃ応援に力入れてるんだよ。毎年、数名の脱落者を出すくらいにな」
シンが続ける。
「ガッハッハ!ちなみに去年、ケンが脱落したぞ!」
そう笑いながら言うノブに、
「・・・・・あれは仕方ない」
ケンは顔を赤くして呟いていた。
心の中で、自身の失態を麻耶に聞かれなかったことに安堵しながら。
「じゃぁ、その応援の練習でこれだけ疲れたというわけね。それにしても、いくら力を入れているといっても、ちょっとダラしないんじゃない?」
プレッソとは逆のショウの肩に飛び乗ったチーノが、小声で言いながら重清達に目を向けた。
「あははは。僕モテモテだなー」
笑いながら言うショウは、4人を見ながら、
「でもね、チーノ。仕方ないんだよ」
そう言ってチーノを撫でていた。
「「「うん、仕方ない」」」
ショウの言葉に、シン達3人も声を揃えて頷いた。
(((そ、そんなに辛いのか)))
具現獣トリオは、ショウ達の様子に恐れをなしていた。
「つ、辛いなんて言葉、生易しいぞ・・・・」
唯一、契約者としてプレッソ達の言葉が聞こえていた重清が、死んだ魚の目をショウの肩へと向けながら、必死に返してきた。
するとその声に反応したかのように、聡太、茜、恒久も生気のない目をどこへともなく向けながら頷いていた。
どうやら、それ程までに辛かったようなのである。
重清達の在学する忍ヶ丘第2中学校では、体育祭の際に応援合戦が繰り広げられる。
1年生から3年生まで、それぞれに3組まである2中では、学年を通して1組が赤組、2組が青組、3組が黄色組となって3学年合同の組が作られる。
それぞれの組が体育祭の中で100m走など、体育祭でよくある競技によりその順位に応じて配点された点数を競い、その合計点の高い組が優勝となる、と、そこまではよくある体育祭である。
しかしこの2中においては、そのそれぞれの組で行われる応援合戦は、熾烈を極めるものであった。
元々は体育祭の中の1つの出し物程度の位置付けであった応援合戦は、年々生徒達の気合が高まり、それに応じて生徒達の要望により、応援合戦の勝者への配点が高くなっていった。
結果、現在の応援合戦の勝者には、1000点が加算されることとなっていた。
他の競技の勝者への加算が、10点程なのにも関わらず。
つまり、応援合戦の勝者こそが体育祭の勝者なのだ。
最早他の競技など、ただの飾りと化しているのである。
何故そうなったのか。
それはひとえに、『なによりも生徒の想いを大事にする』という、2中の校風によるものなのだ。
ここの教師達は、限度というものを知らないのだろうか。
しかしこれにより、生徒達の心が一つになっていったことも事実であり、中学校側は結局、このありえない点数を黙認しているのであった。
こうした理由によって、現在の応援合戦に向けた練習はもはや戦場とっても過言ではないほどの厳しい場となっているのであった。
重清達がこんな状態なのも、仕方がないのであった。
そうこうしているうちに、部室の扉が開け放たれた。
「おっ、全員揃ってんな」
そう言いながらノリが部室へと入ってきた。
「まだ麻耶さんが来てない」
そんなノリに、ケンがつっこんでいた。
「あぁ、逆にちょうどいい。お前らに、久々に楽しい話持ってきたぞ」
ノリが、ニヤリと笑った。
「今回の体育祭、久々にお前らに課題を課す!!」
いつもの如く放課後に社会科研究部へと集まった重清達1年生4人は、心底疲れ切った表現で、それぞれが椅子へと腰掛けていた。
「おっ、早速ヘバッてるな、1年」
部室へと入ってきたシンが、重清達を見てニヤニヤと笑っていた。
「ガッハッハ!これも2中に入った宿命だ!」
「ゴリ五月蠅い。島田さんに怒られる」
ノブとケンも、言いながら部室へと入ってきた。
「「「「・・・・・・・・」」」」
しかし4人は、そんなシン達に目もくれず、ただ自身の疲れと戦っていた。
「いや、先輩の言葉無視すんなよな・・・」
シンが呆れ声で言っていると、
「えー、シン達も去年はこんな感じだったよぉー」
ショウが言いながら入ってきた。
「え?そうでしたっけ??」
シンは、ショウの言葉に頬をかきながら返した。
その時、プレッソがショウの肩へと飛び上がってショウにだけ聞こえるほどの小声で言った。
「ショウ、コイツらどうしたんだ?オイラ達が来たときには既にこんな状態で、話すら聞けないんだよ」
その日、プレッソ、チーノ、そして新しく重清の具現獣となったロイは、雅宅で過ごしており、何故重清達がまだ部活すら始まっていないにも関わらず既にグロッキーなのか、分かっていなかったのだ。
「うーん。どうせならノリさん来る前に、教えてあげちゃおうかなぁー」
言いながらショウは、ニコリと笑った。
「多分シゲ達は、体育祭の練習で疲れたんだよ」
「体育祭の練習とな?それで、ここまで疲れるものなのか?」
プレッソの頭に乗っていたロイが、同じく小声でショウへと聞いた。
「普通の学校じゃ、なかなかないだろうねぇー。でも、ウチの中学、ちょっとおかしいんだよー」
そう苦笑いで返すショウの言葉に続けて、
「俺らの中学、めちゃくちゃ応援に力入れてるんだよ。毎年、数名の脱落者を出すくらいにな」
シンが続ける。
「ガッハッハ!ちなみに去年、ケンが脱落したぞ!」
そう笑いながら言うノブに、
「・・・・・あれは仕方ない」
ケンは顔を赤くして呟いていた。
心の中で、自身の失態を麻耶に聞かれなかったことに安堵しながら。
「じゃぁ、その応援の練習でこれだけ疲れたというわけね。それにしても、いくら力を入れているといっても、ちょっとダラしないんじゃない?」
プレッソとは逆のショウの肩に飛び乗ったチーノが、小声で言いながら重清達に目を向けた。
「あははは。僕モテモテだなー」
笑いながら言うショウは、4人を見ながら、
「でもね、チーノ。仕方ないんだよ」
そう言ってチーノを撫でていた。
「「「うん、仕方ない」」」
ショウの言葉に、シン達3人も声を揃えて頷いた。
(((そ、そんなに辛いのか)))
具現獣トリオは、ショウ達の様子に恐れをなしていた。
「つ、辛いなんて言葉、生易しいぞ・・・・」
唯一、契約者としてプレッソ達の言葉が聞こえていた重清が、死んだ魚の目をショウの肩へと向けながら、必死に返してきた。
するとその声に反応したかのように、聡太、茜、恒久も生気のない目をどこへともなく向けながら頷いていた。
どうやら、それ程までに辛かったようなのである。
重清達の在学する忍ヶ丘第2中学校では、体育祭の際に応援合戦が繰り広げられる。
1年生から3年生まで、それぞれに3組まである2中では、学年を通して1組が赤組、2組が青組、3組が黄色組となって3学年合同の組が作られる。
それぞれの組が体育祭の中で100m走など、体育祭でよくある競技によりその順位に応じて配点された点数を競い、その合計点の高い組が優勝となる、と、そこまではよくある体育祭である。
しかしこの2中においては、そのそれぞれの組で行われる応援合戦は、熾烈を極めるものであった。
元々は体育祭の中の1つの出し物程度の位置付けであった応援合戦は、年々生徒達の気合が高まり、それに応じて生徒達の要望により、応援合戦の勝者への配点が高くなっていった。
結果、現在の応援合戦の勝者には、1000点が加算されることとなっていた。
他の競技の勝者への加算が、10点程なのにも関わらず。
つまり、応援合戦の勝者こそが体育祭の勝者なのだ。
最早他の競技など、ただの飾りと化しているのである。
何故そうなったのか。
それはひとえに、『なによりも生徒の想いを大事にする』という、2中の校風によるものなのだ。
ここの教師達は、限度というものを知らないのだろうか。
しかしこれにより、生徒達の心が一つになっていったことも事実であり、中学校側は結局、このありえない点数を黙認しているのであった。
こうした理由によって、現在の応援合戦に向けた練習はもはや戦場とっても過言ではないほどの厳しい場となっているのであった。
重清達がこんな状態なのも、仕方がないのであった。
そうこうしているうちに、部室の扉が開け放たれた。
「おっ、全員揃ってんな」
そう言いながらノリが部室へと入ってきた。
「まだ麻耶さんが来てない」
そんなノリに、ケンがつっこんでいた。
「あぁ、逆にちょうどいい。お前らに、久々に楽しい話持ってきたぞ」
ノリが、ニヤリと笑った。
「今回の体育祭、久々にお前らに課題を課す!!」
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