おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
284 / 519
雑賀家お家騒動

第248話:契約に際しまして

しおりを挟む
「えっ、ゴロウと、契約??」
突然のゴロウの申し出に、重清は呟きながら六兵衛へと目を向ける。

六兵衛は、重清の視線を受け、ただ頷き返した。

そんな六兵衛の隣では美影と充希が、

「あ、姉上!ゴロウが話していますよ!?」
「ほ、本当ね!今まで一度も話さなかったのに!!」
と、2人で驚きの表情を浮かべていた。

「なっ、なりませんっ!!」
そんな中、またしても日立が叫んだ。

「ゴロウは、雑賀本家に代々受け継がれる具現獣!いくら重清君が雅殿の血を引いているとはいえ、それを認めるわけにはいきませんっ!!」

「父上」
そんな日立に、隠が立ちふさがった。

「父上のお気持ちは良くわかります!しかし、ゴロウ様のお気持ちも、考えてあげてくださいっ!!」
「か、隠・・・」
日立は、隠の言葉に声を失っていた。

それは、隠の言葉が心に響いたのももちろんある。

しかしそれ以上に日立の心には、ある想いが渦巻いていた。

(あの隠が、私に意見した!これは、世に言う反抗期!?なんと。隠はこうも成長したのか・・・)

と。

そう。日立はただ、隠の成長に感動していたのだ。

どうやらこの親子の今後は、何となく大丈夫な気がしてきたのである。

「隠よ。ありがとうな」
ゴロウは、隠へと優しさのこもった目を向けて言った。

「ゴ、ゴロウ。何故、雑賀本家を見捨てるのだ!?」
日立は、ゴロウへと詰め寄った。

「ふん。誰のせいじゃと思うておる」
ゴロウは、日立を睨みつけた。

「近年の貴様等雑賀本家は、見ていて腹立たしいほどに腐っておった。他者を見下し、あまつさえこの儂をも虐げておったではないか。その責任の一端は、確実に貴様にあるのだぞ、日立?」
そう言って向けられるゴロウの厳しい視線に、日立は言い返すことができず押し黙っていた。

「とはいえ、その年で自身の間違いに気付き、自分自身を見直そうとするなど、そう出来るものでもない。少しだけ、貴様を見直したわ」
ゴロウは、日立に笑いかけた。

「あ、ありがとう、ございます」
日立は、ただそう言ってゴロウへと頭を下げた。

「とはいえ。儂はな、もう貴様等雑賀本家と居るのには疲れたのじゃよ」
ゴロウはそう言って、重清へと目を向けた。

「それに引き換えコヤツは見ていて面白い。童の言う意味が、わかったわ」
ゴロウの言葉に、童ことプレッソが重清の頭の上で胸を張っていた。

「たった数日で美影の心を入れ替えさせ、コヤツの具現獣であるチーノは、日立すらも変えてしまった。こんな面白そうな者達は、なかなかおらんじゃろう」
そう、ゴロウは笑って言った。

「へっへっへぇ~。爺さん、オイラの言うとおりだったろう?」
「あぁ、そうじゃな」
プレッソの言葉に、ゴロウは頷いた。

「しかし、このまま契約しても面白くはないな」
ゴロウは、言いながら雅へと目を向けた。

「雅ちゃんや。儂の忍力を奪うことは、出来るかな?」
「まったく、ゴロ爺はあたしを何だと思ってるんだい。まぁ、出来るけど」

「いやできるのかよっ!!」
雅の言葉に、恒久が果敢につっこんだ。

そんな恒久の姿に、

(おぉ、まさか姉上にもつっこむとは。我が師は、中々の大物だな)
と、六兵衛恒久のつっこみの弟子が勝手に感動していた。

「だがその前に確認させてもらうよ。六兵衛、あんたは良いのかい?」
自身へとつっこんだ恒久を黙殺し、雅はそう言って六兵衛へと目を向ける。

「えぇ。ゴロウ自身がそう言っておりますからね。それに、相手が重清君であれば尚の事良い。いつか、本家の人間になるかもしれないですからね」
そう言って、六兵衛は笑った。

その隣では、美影が顔を赤くしてモジモジしながら重清へと目を向け、さらにその隣では充希が、穴が開かんばかりに重清を睨みつけていた。

ついでにその充希の隣では、隠が何となく合いの手を入れようとしてそのタイミングを見計らっていた。

どうやら隠君、少しはタイミングを見ることを覚えたようなのである。

そんなことはさておき。

六兵衛に笑いかけられた重清は、苦笑いを六兵衛へと返していた。

本人としては、実はまんざらでもなかったりはする。
美影は美しい。さらには重清に対して惚れており、唯一重清が受け付けなかった本家以外への目に余る見下しも、改めようとしている。

しかも、いざ付き合った場合、祖父公認である。

それでも重清は、素直には喜べないでいた。

その原因はもちろん、琴音である。

自身が琴音に対してどんな想いを抱いているかも分からないような状態で、重清は美影の想いを素直には受け止められなかったのだ。

だからこそ重清は、美影が自身から離れることに少しだけ安堵も感じていたりするのだが。

「ほれ。さっさと始めるぞ」
そんな重清の複雑な男心など知りもしないゴロウは、雅、六兵衛、そして最後に重清へと目を向けて言った。

「わかったよ。重清、六兵衛、準備はいいね?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌

力水
ファンタジー
 楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。  妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。  倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。  こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。  ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。  恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。    主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。  不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!  書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。  一人でも読んでいただければ嬉しいです。

jumbl 'ズ

井ノ上
キャラ文芸
青年、大吉は、平凡な日々を望む。 しかし妖や霊を視る力を持つ世話焼きの幼馴染、宮森春香が、そんな彼を放っておかない。 春香に振り回されることが、大吉の日常となっていた。 その日常が、緩やかにうねりはじめる。 美しい吸血鬼、大財閥の令嬢、漢気溢れる喧嘩師、闇医者とキョンシー、悲しき天狗の魂。 ひと癖もふた癖もある連中との出会い。 そして、降りかかる許し難い理不尽。 果たして、大吉が平穏を掴む日は来るのか。

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆
ファンタジー
毎週金曜日更新です(^^) 主人公ツバサは18歳の誕生日1週間前に不思議な夢を見る。 それは10年前に別れた幼馴染み、レノアと「将来夢の配達人になって必ず会いに行く」と約束した時の夢。 だが、約束と異なり彼は現在ただの学生。 15歳の時父の死を境に、夢の配達人への夢を遮られてしまった為だ。 しかし、レノアの20歳の誕生日パーティーで二人は再会。 それをキッカケに本当の気持ちに目覚め、再びあの日の約束と自分の夢を叶える為に動き出す。 この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 2022.9.2(金) 連載開始予定

処理中です...