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雑賀家お家騒動
第247話:意外な師弟の出来上がり
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「えぇ」
重清の視線を受けた美影は、頷いた。
「私、あの依頼のあと、重清から言われたことを考えていたの。本家以外を見下していたこと。それが本当に正しいことだったのかって。重清に嫌われたくないって気持ちも確かにあったけど、それ以上に、私は自分自身が許せなかった。あの、男尊女卑男と同じ考え方をしている、自分自身が。そう、思っていたの・・・・」
言いながら美影は、拳を強く握りしめていた。
「でも実際は、重清が好きって記憶を無くした途端、私は重清を見下していた。結局私は、重清に嫌われたくない一心だったんだって、後になって分かったわ。
でも、今は違う。重清のことは関係なく、私はもう一度、今の考えを整理したいの。
だからこそ、一度重清と離れて、しっかりと自分自身と向き合いたいの!」
美影は、そう言って重清を見つめ返した。
「そっか」
重清は、ただそれだけを返して頷いた。
「あら、少しは寂しがってくれてもいいんじゃないの?」
美影は、そんな素っ気ない返事をする重清にすねた顔を返した。
「せっかく美影が、おれらを見下さないよう考え直してくれたのに、邪魔しちゃ悪いからさ」
ニシシと笑って、重清が言っていると。
「私も、美影様と一緒に、もう一度これまでの考え方と向き合ってみようと思う」
そう言って、日立が前へと進み出た。
「ちょっと日立!今、私と重清、いい感じだったのに邪魔しないでよっ!!」
そんな日立に、美影が怒った顔で言うと、
「いよぉっ!お似合いの2人!!」
隠が相変わらずの間の悪い合いの手をぶちこみ、
「認めない!こんなにも美しい姉上と雑賀重清が良い感じだなんて、絶対に認めないぞ!!茜!!君も僕と良い感じになってくれっ!!」
充希は充希で、シスコンからの茜攻めという謎コンボを繰り出していた。
雑賀本家の面々は、相変わらずのようである。
ちなみに茜は、充希の言葉に一方引いて、麻耶の後ろへと隠れていた。
充希、ドンマイ!なのである。
「ふむ。皆も、ここへ来て楽しんだようだな」
そんな充希達の様子に、六兵衛は苦笑いを浮かべながらもそう呟いていた。
その時。
「いや良い感じにまとめちゃったなおいっ!!」
雑賀本家が現れてからこれまで、ずっとつっこみを我慢していた恒久が、ついにつっこんだ。
しかも、雑賀本家当主、雑賀六兵衛へと。
六兵衛は、そんな恒久をじっと見つめていた。
「あっ、いや、その・・・ごめんなさいっ!!」
その視線に耐えられなくなった恒久は、すかさず頭を下げた。
しかし彼は、決して後悔はしていない。
ちゃんとつっこんで怒られるなら、それは彼にとって本望なのである。
(いや、そこまでつっこみに情熱注いでねーよっ!!)
恒久は、頭を下げながらもどこへともなく心の中でつっこんでいた。
「君は、伊賀家の子だね」
頭を下げたままの恒久に、六兵衛が声をかけた。
「は、はいっ!!」
すかさず恒久は、頭を上げて直立不動の姿勢をとった。
「そう畏まらなくても良いわ。今の、つっこみとかいうやつであろう?伊賀本家でそのようなことをすればどうなるかはわからんが、もはや雑賀本家では、とやかく言う者はおるまい」
「えっ、じゃぁ・・・」
「お待ち下さい!!」
安堵の表情を浮かべる恒久の言葉を遮ったのは、日立であった。
「流石に、雑賀本家当主である六兵衛様にあのような物言いは―――」
「良いのだ日立」
六兵衛は、いきりたつ日立を片手で制し、言った。
「こんな立場だからな。姉上以外からあのように言われたのは初めてだ。しかし、悪い気はせんかった。この子のつっこみとやらは、中々良いものだぞ、日立」
六兵衛は、そう言って笑っていた。
「聞けば君は、いつしか協会長になりたいそうではないか。
現協会長として、色々と教えてやれるかもしれん。いつでも遊びに来なさい」
「えっ!?六兵衛さん、協会のトップなの!?」
六兵衛の言葉に、重清が声を上げていた。
しかし驚いていたのは重清だけではなく、恒久もまた、口をあんぐりと開けて六兵衛を見ていた。
「口開けてんな!」
そんな恒久に、六兵衛が言った。
「へ??」
恒久は、六兵衛の言葉に変な声を上げていた。
「君の真似をしてつっこんでみたのだが・・・ダメだったか?」
「いや、ダメっつーか、いや、ダメというかですね・・・」
「畏まらなくても良いと言っただろう?敬語も使わずとも良い」
「え、それじゃぁ・・・今の、つっこみとしては全然ダメだな。今度、俺が教えてやるよ!その代わり、六兵衛様は俺に協会のこと、色々と教えてくれよ!」
「ほっほっほ。まさかこの年で師を持つことになるとは思わなんだな」
六兵衛は、恒久の言葉にそう言って笑うのであった。
「どうやら、話はある程度済んだみたいだね」
六兵衛が笑っていると、掛け軸の向こうから雅が現れた。
「姉上。えぇ、大体の話は済みました」
「そうかい。じゃぁ、本家まで送ってやるよ」
雅がそう言って掛け軸の方へ進もうとすると。
「姉上、あと1つだけ用が済んでおりません」
「そうなのかい?だったら早く済ませな」
雅がそう言うと、これまで沈黙していたゴロウが、隠の腕から飛び上がり、重清の前へと降り立った。
「雑賀重清。儂と、契約せぬか?」
重清の視線を受けた美影は、頷いた。
「私、あの依頼のあと、重清から言われたことを考えていたの。本家以外を見下していたこと。それが本当に正しいことだったのかって。重清に嫌われたくないって気持ちも確かにあったけど、それ以上に、私は自分自身が許せなかった。あの、男尊女卑男と同じ考え方をしている、自分自身が。そう、思っていたの・・・・」
言いながら美影は、拳を強く握りしめていた。
「でも実際は、重清が好きって記憶を無くした途端、私は重清を見下していた。結局私は、重清に嫌われたくない一心だったんだって、後になって分かったわ。
でも、今は違う。重清のことは関係なく、私はもう一度、今の考えを整理したいの。
だからこそ、一度重清と離れて、しっかりと自分自身と向き合いたいの!」
美影は、そう言って重清を見つめ返した。
「そっか」
重清は、ただそれだけを返して頷いた。
「あら、少しは寂しがってくれてもいいんじゃないの?」
美影は、そんな素っ気ない返事をする重清にすねた顔を返した。
「せっかく美影が、おれらを見下さないよう考え直してくれたのに、邪魔しちゃ悪いからさ」
ニシシと笑って、重清が言っていると。
「私も、美影様と一緒に、もう一度これまでの考え方と向き合ってみようと思う」
そう言って、日立が前へと進み出た。
「ちょっと日立!今、私と重清、いい感じだったのに邪魔しないでよっ!!」
そんな日立に、美影が怒った顔で言うと、
「いよぉっ!お似合いの2人!!」
隠が相変わらずの間の悪い合いの手をぶちこみ、
「認めない!こんなにも美しい姉上と雑賀重清が良い感じだなんて、絶対に認めないぞ!!茜!!君も僕と良い感じになってくれっ!!」
充希は充希で、シスコンからの茜攻めという謎コンボを繰り出していた。
雑賀本家の面々は、相変わらずのようである。
ちなみに茜は、充希の言葉に一方引いて、麻耶の後ろへと隠れていた。
充希、ドンマイ!なのである。
「ふむ。皆も、ここへ来て楽しんだようだな」
そんな充希達の様子に、六兵衛は苦笑いを浮かべながらもそう呟いていた。
その時。
「いや良い感じにまとめちゃったなおいっ!!」
雑賀本家が現れてからこれまで、ずっとつっこみを我慢していた恒久が、ついにつっこんだ。
しかも、雑賀本家当主、雑賀六兵衛へと。
六兵衛は、そんな恒久をじっと見つめていた。
「あっ、いや、その・・・ごめんなさいっ!!」
その視線に耐えられなくなった恒久は、すかさず頭を下げた。
しかし彼は、決して後悔はしていない。
ちゃんとつっこんで怒られるなら、それは彼にとって本望なのである。
(いや、そこまでつっこみに情熱注いでねーよっ!!)
恒久は、頭を下げながらもどこへともなく心の中でつっこんでいた。
「君は、伊賀家の子だね」
頭を下げたままの恒久に、六兵衛が声をかけた。
「は、はいっ!!」
すかさず恒久は、頭を上げて直立不動の姿勢をとった。
「そう畏まらなくても良いわ。今の、つっこみとかいうやつであろう?伊賀本家でそのようなことをすればどうなるかはわからんが、もはや雑賀本家では、とやかく言う者はおるまい」
「えっ、じゃぁ・・・」
「お待ち下さい!!」
安堵の表情を浮かべる恒久の言葉を遮ったのは、日立であった。
「流石に、雑賀本家当主である六兵衛様にあのような物言いは―――」
「良いのだ日立」
六兵衛は、いきりたつ日立を片手で制し、言った。
「こんな立場だからな。姉上以外からあのように言われたのは初めてだ。しかし、悪い気はせんかった。この子のつっこみとやらは、中々良いものだぞ、日立」
六兵衛は、そう言って笑っていた。
「聞けば君は、いつしか協会長になりたいそうではないか。
現協会長として、色々と教えてやれるかもしれん。いつでも遊びに来なさい」
「えっ!?六兵衛さん、協会のトップなの!?」
六兵衛の言葉に、重清が声を上げていた。
しかし驚いていたのは重清だけではなく、恒久もまた、口をあんぐりと開けて六兵衛を見ていた。
「口開けてんな!」
そんな恒久に、六兵衛が言った。
「へ??」
恒久は、六兵衛の言葉に変な声を上げていた。
「君の真似をしてつっこんでみたのだが・・・ダメだったか?」
「いや、ダメっつーか、いや、ダメというかですね・・・」
「畏まらなくても良いと言っただろう?敬語も使わずとも良い」
「え、それじゃぁ・・・今の、つっこみとしては全然ダメだな。今度、俺が教えてやるよ!その代わり、六兵衛様は俺に協会のこと、色々と教えてくれよ!」
「ほっほっほ。まさかこの年で師を持つことになるとは思わなんだな」
六兵衛は、恒久の言葉にそう言って笑うのであった。
「どうやら、話はある程度済んだみたいだね」
六兵衛が笑っていると、掛け軸の向こうから雅が現れた。
「姉上。えぇ、大体の話は済みました」
「そうかい。じゃぁ、本家まで送ってやるよ」
雅がそう言って掛け軸の方へ進もうとすると。
「姉上、あと1つだけ用が済んでおりません」
「そうなのかい?だったら早く済ませな」
雅がそう言うと、これまで沈黙していたゴロウが、隠の腕から飛び上がり、重清の前へと降り立った。
「雑賀重清。儂と、契約せぬか?」
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