おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
280 / 519
雑賀家お家騒動

第246話:雑賀本家のご挨拶

しおりを挟む
鈴木宅に美影が来た翌日の日曜日。

前日に忍者部の活動も休みであったことから、重清はその休日をただ1日ダラダラと過ごし、すっかり元気になった体に、なんとなくモヤモヤする気持ちを携えて、社会科研究部の部室へと入っていった。

隣に聡太とチーノ、頭の上にプレッソと言ういつものスタイルで。

するとそこには既に、同級生である恒久や茜、そして先輩の面々や麻耶も揃っていた。

そして、2日前にドタバタした雑賀本家の面々も、一堂に会していた。

何故か雑賀本家当主、雑賀六兵衛まで伴って。

「全員、揃ったようだな」
重清達が入ってきたのを確認した六兵衛が言った。

「六兵衛様。お話はあちらへ行ってからに」
ノリが、部室に掛けられた掛け軸へと目を向けながら言うと、

「そうだな」
そう頷いた六兵衛を確認したノリは、掛け軸へと近寄り手をかざした。

そのまま光りだす掛け軸の向こうへと進んでいったノリに、六兵衛が続き、それに雑賀本家の面々がゾロゾロとついて行った。

「・・・・とにかく、行こうかぁー」
ショウがそう言って掛け軸の向こうへと進んで行き、一同もそれに従って忍者部の部室へと入って行った。


「さて。改めて、全員揃ったようだな」
一同が部室の席へと座ったのを確認した六兵衛が、再び口を開いた。

「雑賀重清君」
「はへっ!?はい!」

急に忍名を呼ばれた重清は、変な声を上げながら返事をして立ち上がった。

自身の忍名を呼んだのは、祖母である雅の弟とはいえ雑賀本家の当主なのである。

重清は、柄にもなく緊張していた。

重清は今、美影が琴音から襲われた日に、目覚めた美影に駆け寄るために六兵衛を押しのけたことを、今更ながら思い出して冷や汗をかいていた。

「そう緊張するな。先日押しのけられたことなど、気にしてはおらんよ」
(いや、絶対気にしてんじゃん!!)
六兵衛の言葉に、重清は心の中でつっこんでいた。

さすがに、口に出す程の勇気は無かったのである。

「改めて、雑賀重清君。我が孫娘、そして次期雑賀本家当主でもある美影の為に自身の危険も顧みず、犯人へと立ち向かってくれた事、現雑賀本家当主として礼を言わせてもらう」
「あー、はい・・・・」
深々と頭を下げる六兵衛に、重清は何とも言えない表情でそう返していた。

重清の中では確かにあの日、1人で琴音の元へと向かったのには美影の為という一面もあった。
しかしそれ以上に、琴音を信じたいという想いの為に動いた側面が強いのだ。

であるからこそ重清は、六兵衛の言葉を素直に受け取ることができずに微妙な返事をしたのであった。

「しかし」
そんな重清に向かって、頭を上げた六兵衛が厳しい表情で言葉を続ける。

「君はまだ、忍者になって1年も経っていないひよっこだ。あまり無理をしないで欲しい。これは、同じ雑賀の血を引く者、そして、姉上の弟であり、君の親戚として言わせてもらう」
「あ、はい・・・すみません」
重清は、真面目な表情で六兵衛へと返した。

「うむ。君には勇気がある。そして、師にも恵まれておる。これからも修行を積んで、姉上や平八殿のような忍者になるんだぞ」
「いやぁ~、ばあちゃんみたいには、なりたいような、なりたくないような・・・・」

「なに!?あんな素晴らしい人、この世に他にいないのだぞ!?」
「あぁ・・・はい、頑張ります」
六兵衛の言葉に、何となく充希の匂いを感じた重清は、これ以上余計な事を口にするのはまずいと判断し、六兵衛に対してそう、雑に返した。

「それから・・・」
(いやまだあんのかーーい!)
更に言葉を続けようとする六兵衛に、重清は再び心の中でつっこんだ。

「美影のことを、頼んだぞ。これは、美影の祖父としての、言葉じゃな」
そう言って六兵衛は、重清にウインクをかました。

爺さんのウインク。

それは、誰も得することの無いものなのである。

重清へとウインクをかました六兵衛は、部屋を見渡した。

「皆もこの数日、ウチの者達が迷惑をかけたな。知らぬ者も居るだろうが、先日美影が襲われた。重清君は、果敢にもその犯人と対峙したのだ」
その言葉に、

ショウ「あー、確かに数日前、忍力感じたねー」
シン「マジかよ、全然気付かなかった。シゲ、や大丈夫だったのかよ!?」
ノブ「ガッハッハ!!さすがはシゲだ!!」
ケン「シゲ、やる」
ショウ達が口々言った。

シン達に至っては、かなり久しぶりのコメントなのである。

雑賀本家の面々が来てあまりにもごちゃごちゃしていたために、あまり話す機会が無かったのである。

決して、忘れられていたわけではないのである。

いや。本当に。

そんな4人へと頷き返した六兵衛は、再び口を開いた。

「美影が襲われたから、というわけではないが、本日をもって、美影達は雑賀本家へと返すことにした」

「えっ!?そうなの!?」

六兵衛の言葉に、重清は美影へと視線を送るのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ
ファンタジー
大陸の端に存在する小国、ボーンネル。 バラバラとなったこの国で少女ジンは多くの仲間とともに建物を建て、新たな仲間を集め、国を立て直す。 そして同時にジンを中心にして世界の歯車は動き出そうとしていた。 これはいずれ一国の王となる少女の物語。

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya
ファンタジー
戦争・紛争の収まらぬ戦乱の世で 平和への夜明けを導く者は誰だ? 其々の正義が織り成す長編ファンタジー。 〜本編あらすじ〜 広く豊かな海に囲まれ、大陸に属さず 島国として永きに渡り歴史を紡いできた 独立国家《プレジア》 此の国が、世界に其の名を馳せる事となった 背景には、世界で只一国のみ、そう此の プレジアのみが執り行った政策がある。 其れは《鎖国政策》 外界との繋がりを遮断し自国を守るべく 百年も昔に制定された国家政策である。 そんな国もかつて繋がりを育んで来た 近隣国《バルモア》との戦争は回避出来ず。 百年の間戦争によって生まれた傷跡は 近年の自国内紛争を呼ぶ事態へと発展。 その紛争の中心となったのは紛れも無く 新しく掲げられた双つの旗と王家守護の 象徴ともされる一つの旗であった。 鎖国政策を打ち破り外界との繋がりを 再度育み、此の国の衰退を止めるべく 立ち上がった《独立師団革命軍》 異国との戦争で生まれた傷跡を活力に 革命軍の考えを異と唱え、自国の文化や 歴史を護ると決めた《護国師団反乱軍》 三百年の歴史を誇るケーニッヒ王家に仕え 毅然と正義を掲げ、自国最高の防衛戦力と 評され此れを迎え討つ《国王直下帝国軍》 乱立した隊旗を起点に止まらぬ紛争。 今プレジアは変革の時を期せずして迎える。 此の歴史の中で起こる大きな戦いは後に 《日の出戦争》と呼ばれるが此の物語は 此のどれにも属さず、己の運命に翻弄され 巻き込まれて行く一人の流浪人の物語ーー。 

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

処理中です...