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雑賀家お家騒動
第245話:乙女の味方
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「おれ・・・・・」
そこまで言った重清は、またしばらく考えて美影を見返した。
「やっぱり琴音ちゃんのこと、好きかどうかはわからない」
「えっ、ちょ、ここまで溜めて、それが答えなの!?」
美影が。初めて重清へとつっこんだ。
「う~ん、やっぱさぁ、美影に酷い事したのは事実だし、琴音ちゃんに対して好きって気持ちは、ちょっと沸かないかなぁ・・・」
そう言って苦笑いを浮かべる重清は、言葉を続けた。
「でもおれ、琴音ちゃんを、助けたい。忍者の存在を消したいなんて、そんな考えになっちゃった琴音ちゃんを、元に戻してあげたいんだ」
「でも、それは彼女の意思なんでしょう?」
力強く言う重清に、美影も強い眼差しで返す。
「それは、わかってる。でもおれは、恨むんなら忍者じゃなくておれを恨んで欲しいんだ。
それにやっぱり、いくら理由があっても、人を傷付けるのは良くないと思うんだ。まぁ、おれも忍者になって、普通に人を傷付けちゃってるんだけどさ」
重清の言葉を聞いた美影は、しばらく黙ったまま重清を見つめた。
「それが重清の、『全てを守る』ってことなのね?」
その美影の言葉に、重清は強く頷いた。
「わかったわ。重清の言う事、理解はできないけど納得はしたわ。今日のところは、その返事で勘弁してあげる」
そう言うと、美影はスッと立ち上がった。
「じゃぁ、話は済んだし、私は帰るわね」
そう言って部屋を出ようとした美影は、振り返って智乃へと目を向けた。
「チーノ、だったかしら。さっきは、フォローありがとう。あなた、雑賀平八殿の具現獣だったそうね。日立から聞いたわ。あなたの恋バナ、聞きたかったわ」
「あら、それならば今度、女子会においでなさい。雅も、きっと喜ぶわ。まぁ、あなたが重清への恋心を語ったら、雅がどうなるかはわからないけどね」
「それは怖いわね。でも、雅様を味方につけることが出来れば、もうほとんど重清を攻略したと言っても過言ではないわね」
「いや過言だからね!?おれの意思は無視なの!?」
重清が咄嗟につっこむも、それを華麗にスルーして智乃が美影の言葉に微笑んだ。
「雅を味方に、ね。それは、頑張らないといけないわよ。雅、茜ちゃん推しだから」
「茜って、雅様の一番弟子の子ね。それは、強敵ね」
「いやちょっと2人とも、おれの話聞いてます!?別に茜とは、そんなんじゃないからね!?」
重清の再度のつっこみも流した智乃は、
「ふふふ。頑張ってね」
そう言って微笑んだ。
智乃から醸し出される色気に、美影は苦笑いを浮かべた。
「その姿でそんな色気があるなんて。日立が惚れるわけだわ」
「あら、昔の私は、こんなものじゃなかったわよ?」
「あー、確かにエロ姉ちゃんのチーノは、やばかったな~」
「ちょっと重清!浮気は許さないわよっ!!」
「いや、なんでこんな時だけおれの言葉に反応すんだよっ!っていうか別に、付き合ってるわけじゃないから浮気じゃねーしっ!!」
美影の突然のつっこみに、重清は焦りながらも返した。
「あら重清。自分を慕ってくれている女子に、その言い方はないんじゃないの?」
「ちょ、智乃!美影の味方なの!?」
「私は、生きとし生ける全ての恋する乙女の味方よ」
「あら、それ素敵ね」
美影が、カッコよく言いながらカプチーノを飲む智乃に、そう言って微笑みかけ、重清へと向き直った。
「もう。帰ろうとしていたのに重清のせいで脱線しちゃったじゃない」
「いや、今のは絶対美影のせいだからね!?」
「女の失敗も、自分の物として受け止める。それが男ってもんよ?」
美影の言葉に即座につっこんだ重清に、智乃がつっこみ返した。
「男女平等っ!!」
重清は、そんな智乃にそう叫び返していた。
「朝から元気ね。重清といると楽しいから、帰るのは残念だけど。そろそろ私、行くわね」
そう言って美影は、再び部屋から出ようとした。
「あっ、美影!」
そんな美影に、重清がそう言って立ち上がった。
「あの、美影襲われたばっかりなんだから、送るよ」
「ちょ、急にそんなこと言わないでよ!恥ずかしいじゃない!」
美影は、顔を真っ赤にして重清へと返した。
「ごめんなさい、取り乱して。重清の気持ちは嬉しいけど、外で日立が待ってるの。日立、私が襲われたことで凄く落ち込んでるから、多分警護の役は渡してくれないわよ?」
「あぁ、そう、なんだ・・・じゃ、美影警護は日立さんに任せるか。美影、気をつけて帰ってね」
「えぇ、ありがとう。重清、今日は休みだと聞いているわ。ゆっくりと休んでね。
智乃ちゃん、今度是非、女子会に呼んでね。
それから、プレッソ、だったかしら?重清のこと、頼んだわね」
「おう!美影もゆっくり休めよ!」
「えぇ、そうさせてもらうわ」
「ん?もう帰んのか?」
重清達が口々に言うのに笑みを返した美影は、そのまま鈴木家をあとにした。
「重清。もしかしてあなた、もう少し美影と過ごしたかったんじゃない?」
「・・・・・ノー、コメント!!!」
ニヤリと笑う智乃に、重清は顔を赤らめてそう返すのであった。
そこまで言った重清は、またしばらく考えて美影を見返した。
「やっぱり琴音ちゃんのこと、好きかどうかはわからない」
「えっ、ちょ、ここまで溜めて、それが答えなの!?」
美影が。初めて重清へとつっこんだ。
「う~ん、やっぱさぁ、美影に酷い事したのは事実だし、琴音ちゃんに対して好きって気持ちは、ちょっと沸かないかなぁ・・・」
そう言って苦笑いを浮かべる重清は、言葉を続けた。
「でもおれ、琴音ちゃんを、助けたい。忍者の存在を消したいなんて、そんな考えになっちゃった琴音ちゃんを、元に戻してあげたいんだ」
「でも、それは彼女の意思なんでしょう?」
力強く言う重清に、美影も強い眼差しで返す。
「それは、わかってる。でもおれは、恨むんなら忍者じゃなくておれを恨んで欲しいんだ。
それにやっぱり、いくら理由があっても、人を傷付けるのは良くないと思うんだ。まぁ、おれも忍者になって、普通に人を傷付けちゃってるんだけどさ」
重清の言葉を聞いた美影は、しばらく黙ったまま重清を見つめた。
「それが重清の、『全てを守る』ってことなのね?」
その美影の言葉に、重清は強く頷いた。
「わかったわ。重清の言う事、理解はできないけど納得はしたわ。今日のところは、その返事で勘弁してあげる」
そう言うと、美影はスッと立ち上がった。
「じゃぁ、話は済んだし、私は帰るわね」
そう言って部屋を出ようとした美影は、振り返って智乃へと目を向けた。
「チーノ、だったかしら。さっきは、フォローありがとう。あなた、雑賀平八殿の具現獣だったそうね。日立から聞いたわ。あなたの恋バナ、聞きたかったわ」
「あら、それならば今度、女子会においでなさい。雅も、きっと喜ぶわ。まぁ、あなたが重清への恋心を語ったら、雅がどうなるかはわからないけどね」
「それは怖いわね。でも、雅様を味方につけることが出来れば、もうほとんど重清を攻略したと言っても過言ではないわね」
「いや過言だからね!?おれの意思は無視なの!?」
重清が咄嗟につっこむも、それを華麗にスルーして智乃が美影の言葉に微笑んだ。
「雅を味方に、ね。それは、頑張らないといけないわよ。雅、茜ちゃん推しだから」
「茜って、雅様の一番弟子の子ね。それは、強敵ね」
「いやちょっと2人とも、おれの話聞いてます!?別に茜とは、そんなんじゃないからね!?」
重清の再度のつっこみも流した智乃は、
「ふふふ。頑張ってね」
そう言って微笑んだ。
智乃から醸し出される色気に、美影は苦笑いを浮かべた。
「その姿でそんな色気があるなんて。日立が惚れるわけだわ」
「あら、昔の私は、こんなものじゃなかったわよ?」
「あー、確かにエロ姉ちゃんのチーノは、やばかったな~」
「ちょっと重清!浮気は許さないわよっ!!」
「いや、なんでこんな時だけおれの言葉に反応すんだよっ!っていうか別に、付き合ってるわけじゃないから浮気じゃねーしっ!!」
美影の突然のつっこみに、重清は焦りながらも返した。
「あら重清。自分を慕ってくれている女子に、その言い方はないんじゃないの?」
「ちょ、智乃!美影の味方なの!?」
「私は、生きとし生ける全ての恋する乙女の味方よ」
「あら、それ素敵ね」
美影が、カッコよく言いながらカプチーノを飲む智乃に、そう言って微笑みかけ、重清へと向き直った。
「もう。帰ろうとしていたのに重清のせいで脱線しちゃったじゃない」
「いや、今のは絶対美影のせいだからね!?」
「女の失敗も、自分の物として受け止める。それが男ってもんよ?」
美影の言葉に即座につっこんだ重清に、智乃がつっこみ返した。
「男女平等っ!!」
重清は、そんな智乃にそう叫び返していた。
「朝から元気ね。重清といると楽しいから、帰るのは残念だけど。そろそろ私、行くわね」
そう言って美影は、再び部屋から出ようとした。
「あっ、美影!」
そんな美影に、重清がそう言って立ち上がった。
「あの、美影襲われたばっかりなんだから、送るよ」
「ちょ、急にそんなこと言わないでよ!恥ずかしいじゃない!」
美影は、顔を真っ赤にして重清へと返した。
「ごめんなさい、取り乱して。重清の気持ちは嬉しいけど、外で日立が待ってるの。日立、私が襲われたことで凄く落ち込んでるから、多分警護の役は渡してくれないわよ?」
「あぁ、そう、なんだ・・・じゃ、美影警護は日立さんに任せるか。美影、気をつけて帰ってね」
「えぇ、ありがとう。重清、今日は休みだと聞いているわ。ゆっくりと休んでね。
智乃ちゃん、今度是非、女子会に呼んでね。
それから、プレッソ、だったかしら?重清のこと、頼んだわね」
「おう!美影もゆっくり休めよ!」
「えぇ、そうさせてもらうわ」
「ん?もう帰んのか?」
重清達が口々に言うのに笑みを返した美影は、そのまま鈴木家をあとにした。
「重清。もしかしてあなた、もう少し美影と過ごしたかったんじゃない?」
「・・・・・ノー、コメント!!!」
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