おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
247 / 519
雑賀家お家騒動

第213話:モードチェンジ

しおりを挟む
「こ、これで私と雑賀重清は、こ、恋仲になったわね。し、重清と、呼んでもいい?」
「え?あれ??おれ1話読み飛ばしてる!?どう話が進んだらそうなっちゃうの!?」
重清が、美影の言葉によくわからないことを言い出していた。

「美影様、話、聞いてました?」
「も、もちろん聞いていたわ。か、可愛いと言ってくれたわね。その・・・し、重清も、私のことは美影、と呼んでもいいのよ?」

「ちょ、この人話通じてない!誰か助けて!!」

重清の叫びに、茜とチーノはニヤニヤとした顔を、聡太は哀れんだ表情を、恒久と充希が人を呪い殺しそうなほどの黒い視線を、それぞれ重清に向けていた。

(うぉっ、恒久むっつり雑賀充希フラれたシスコンがめっちゃ睨んでる。じゃない!なんなんだよこの状況!誰も助けてくれないのかよっ!!)
重清が、心の中で泣き叫んでいると、ゴロウを抱えたままの隠がスススッと重清に近寄ってきた。

(あの・・・)
(おぉ、隠君!キミだけはおれの味方だった!!)

(あの、重清様―――)
(え、その呼び方やめて!シゲでいいよ!)

(雑賀雅様のお孫様をそんな・・・)
(いいって!凄いのはじいちゃんとばあちゃんってだけで、おれはその辺にいる普通の中学生なんだから!)

(えっと、じゃぁ・・・シゲ、君。美影様のことなんですけど・・・)
(なになに?おれはどうすればこの状況から抜け出せるの?)

(美影様は、その・・・凄く思い込みが激しい方で、一度こうだと思い込んだら、そう簡単には・・・だからその、諦めてください)
(うぉいっ!!わざわざとどめさしに来ちゃっただけだこの人!!)

「ちょっとクル、し、重清。2人で何をコソコソしているのよ?」
2人の様子に、怪訝そうな美影が声をかけてきた。

「美影様。彼はどうやら、あまりの嬉しさに心が追い付いていないようです」
隠が、美影に対してそう返した。

「ふ、ふん!当然よ!私みたいな美少女とつ、付き合うことになったんだから!」
美影は、隠の言葉に満足そうに勝ち誇った顔をしていた。
その顔は真っ赤に染まり、もはや頭からは湯気が見えてきそうなほどなのであった。

「ちょっと隠君!?何言ってくれちゃってんの!?キミがそんなこと言っちゃうと、あの人ますます勘違いしちゃうじゃんか!」
「ごめんねシゲ君。僕は、美影様と充希様をお守りするためにここにいるんだ。あのお2人のお命だけでなく、恋も、ね」
隠は、強い意志の籠った目で重清を見返した。

「いや前半めちゃくちゃかっこいいけど、後半余計なおせっかい!恋は2人だけで育むものだから!
っていうか守れてない!充希様の恋は全然守れてないよ隠君!
あの人、今現在失恋の腹いせとばかりにずっとおれを睨んでるからっ!!」
「なっ!?」
重清の言葉に、今まで痛いほどの視線で重清を射殺そうとしていた充希が、失恋のショックを思い出して再びその場にへたり込んでいた。

そんな弟の様子を気にも留めずに、美影は恍惚とした表情を浮かべて呟いていた。

「愛を、育む・・・」

「いや愛とか言ってないし!っていうかそこ以外の言葉は全部シャットダウンしてるの!?」

ここにきて、重清はつっこみに大忙しなのであった。

一方、2中忍者部のつっこみ番長恒久はというと・・・

「あんな可愛い子に告白?しかも断っただと??重清、許すまじ・・・」
あと一歩でダークなサイドに落ちそうなほどに、重清を見つめてブツブツと呟いていた。

そんなことはさておき。

「そんなに照れなくていいのよ、重清」
段々とスムーズに重清の名前を呼べるようになってきた美影が、そう言って重清を見つめる。

「いや照れてねーしっ!!っていうか美影、もう最初に会った時とはキャラが違い過ぎるよ!!!」
「み、美影って呼んでくれた・・・」

「話が進まない!!」
重清が頭を抱えていると、またしてもゴロウを抱えた隠がスススッっと重清の近くへ寄り、耳元で囁いた。

「おそらくシゲ君が初めてあった時、美影様は『末席恐喝モード』だったんだと思います。一番怖い美影様です。忍者部の時には、『末席見下しモード』。これが基本の美影様です。そして今ついに、シゲ君のおかげで美影様は、『恋する乙女モード』が発動しちゃったみたいです」

「いやほんとどうでも良い情報!!なんだよ、基本の美影が『末席見下しモード』って!そして『恋する乙女モード』って可愛いモードだなおい!!」
「基本の美影が、可愛い・・・・ポッ」

「いや編集の都合が良すぎる!!!」
重清はそのまま、頭を抱えてしまうのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ハイブリッド・ニート ~二度目の高校生活は吸血鬼ハーフで~

於田縫紀
ファンタジー
36歳無職、元高校中退の引きこもりニートの俺は、ある日親父を名乗る男に強引に若返らされ、高校生として全寮制の学校へ入学する事になった。夜20時から始まり朝3時に終わる少し変わった学校。その正体は妖怪や人外の為の施設だった。俺は果たして2度目の高校生活を無事過ごすことが出来るのか。

闇鍋【一話完結短編集】

だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。 ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。 念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。 読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。

【完結】雇われ勇者の薬草農園 ~チートスキルで薬草栽培始めます~

近衛 愛
ファンタジー
リュウは設計会社に勤務する一般男性だ。 彼女がようやく出来て、一週間後に勤務中に突如幻想世界に転移。 ラノベは好きだが、テンプレ勇者は嫌いだ!! 人類を滅ぼそうとする魔王を倒すため、女神と王により勇者として、召喚された。 しかし、雇用契約書も給料ももらえず勇者である僕は、日々の生活費を稼ぐべく、薬草採取、猪の討伐、肉の解体、薬草栽培など普段なら絶対しない仕事をすることに。 これも王と女神がまともな対応しなのが悪いのだ。 勇者のスキル「魔女の一撃」を片手に異世界を雇い雇われ、世界を巡る。 異世界転移ファンタジー。チートはあるけど、最弱ですけどなにか。 チートスキルは呪いのスキル、人を呪わば穴二つ。勇者と世界の行く末は。 『僕は世界を守りたい訳じゃない!目の前の人、親しい知人であるチル、君を守りたいんだ!』

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

【完結】転生幼女ですが、追放されたので魔王になります。(ノベル版)

アキ・スマイリー
ファンタジー
アラサー女子の三石悠乃(みついし ゆうの)は、目覚めると幼女になっていた。右も左もわからぬ異世界。モフモフな狼エルデガインに拾われ、冒険者となる。 だが、保護者であるエルデガインがかつての「魔王」である事を、周囲に知られてしまう。 町を追放され、行き場を失ったユウノだったが、エルデガインと本当の親子以上の関係となり、彼に守られながら僻地の森に居場所を探す。 そこには、エルデガインが魔王だった時の居城があった。すっかり寂れてしまった城だったが、精霊やモンスターに愛されるユウノの体質のお陰で、大勢の協力者が集う事に。 一方、エルデガインが去った後の町にはモンスターの大群がやってくるようになる。実はエルデガインが町付近にいる事で、彼を恐れたモンスター達は町に近づかなかったのだ。 守護者を失った町は、急速に崩壊の一都を辿る。 ※この作品にはコミック版もあり、そちらで使用した絵を挿絵や人物紹介に使用しています。

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが

アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。 右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。 青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。 そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。 青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。 三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。 【登場人物紹介】 マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。 ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。 クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。 ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。 デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。 ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。 ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。 ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。 【お知らせ】 ◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。 ◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。 ◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。 ◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。 ◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。 ◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。 ◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。 ※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

処理中です...