おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
230 / 519
雑賀家お家騒動

第197話:雑賀重清 対 雑賀美影 その4

しおりを挟む
(具現獣銃化の術っ!)
重清が術を発動すると、チーノの体が光へと変わり、重清の手に艶銃えんじゅう・マキネッタが現れた。

重清が両手で持った狙撃銃から、チーノの声が聞えた。

「そのまま私を上に投げなさい!」
「へ?チーノ、何を―――」

「いいからっ!」
「だぁっ、もう!!」
重清は叫んで、言われるままマキネッタを放り投げた。

「変化の術っ!!」
空中で回転する狙撃銃から声が聞こえるのと同時に、1人の幼女が地へと着地した。

「へ?智乃―――って何それ!?」
変化の術で姿を変えた智乃チーノを見た重清が、驚きの声をあげた。

姿そのものも普段の智乃よりもさらに幼くなっていたが、そんなことが気にならない程に違和感のある彼女の腕に、重清の視線が注がれた。

「それ、サイフォン?」
「えぇ、そうよ」
事も無げにそう言った智乃は、腕があるはずの場所にサイフォンを掲げて見せた。

「なんていうか、凄いな」
「あぁ。でもよぉ重清、あれって・・・」

「「なんかグロい」」

「ちょっと!それ今、わざわざ声揃えて言うこと!?ってそんな場合じゃないわ。来るわよ!」
少し怒り顔で言った智乃は、後方へと目を向けた。

智乃の視線の先にいる美影は、今まさに重清に向けて2丁の拳銃を発砲するところであった。

「あなた達がバカにしたこの姿の力、よく見ておきなさい!!」
((あ、ちょっと気にしてたんだ))
美影の方へとサイフォンとなった腕を構える智乃の後ろ姿に、重清とプレッソマキネッタが若干の申し訳なさとともに、そう考えていた。

それでもなお、2人は思う。

((やっぱあれ、グロい))

と。

そんな2人の想いなど知る由もない智乃は、ただ2人にディスられたその姿の有用性を証明するために狙いをつけ、撃つ。

美影の撃った弾は、智乃の放った弾を避けるようにカーブし、そのまま重清へと迫った。
しかしそれが重清へと届くことはなく、避けたはずの智乃の弾にはじかれ、そのまま霧散していった。

「やはり、一度防げば何とかなるわね。まだまだ練度が低いようね」
そう言って妖艶な笑みを浮かべる幼女の姿に、美影は怒りをあらわにする。

「な、なんなのよアイツ!!さっきから想定外なことばかり!それに、3対1なんて卑怯よ、末席!!」

「ほら、やっぱ卑怯って言われた」
美影の叫びに、重清が智乃へと目を向けた。

「忍者が具現獣を使役することのなにが卑怯なのよ。まったく、どんな教育を受けているのかしら」
呆れ顔で智乃は美影を見るが、美影は混乱したように、1人ぶつぶつと何かを呟いているようであった。

美影から離れた重清達には聞こえてはいなかったが、彼女はこんなことを呟いていた。

「なんで雑賀家の術が、具現獣なんかに。そんなのありえない。きっとあれよ、私の体調が良くないせいだわ。そうよ、昨日からなんか、ちょっと熱っぽかったし。
今日は帰ったら、クルにたっぷりマッサージさせましょう。うん、そうしましょう。それから温かいミルクを飲んで寝るの。
あ、でもその前に―――」

・・・・ただの現実逃避である。

美影は、自身の予想を遥かに超える出来事に、もはや完全に混乱していた。

その様子を離れて見ていた重清達は、

「やっぱあの人、なんていうか、混乱してない?」
「えぇ。私もそう思うわ。きっと、次々に初めての事が起きて、対処出来てないのね」
「あれで本当に、雑賀本家なのか?」

口々に言いながら美影に憐れみの視線を送っていた。

かたや1人現実逃避していた美影は、重清達の視線に気づいた。

そして彼女の脳裏には、『屈辱』の二文字が浮き上がってきた。

(この私が、末席に憐れみの目を向けられている?ありえない、こんなこと、ありえない!!)

現実に無理矢理引き戻された美影は、最後の手段に打って出ることを決意した。
未だ扱いきれない、力に。

「ゴ、ゴロウ、手を貸しなさい!!」

美影が叫んだ。

・・・・・・・・・

しかし、何も起きなかった。

「ゴロウって誰―――だぶっ!!」

美影の言葉に、重清が口を開いたのと同時に、重清は前方から突然足元を掬われ、顔面から地面へと倒れ込んだ。

「な、何だ今の!?」
顔を土まみれにした重清が辺りを見回してみるも、そこには智乃が立っているだけであった。

しかし重清は気づいた。
智乃が、美影の方を睨みつけているのを。
そして智乃は、呟いていた。

「やはり、出てきたわね」

「出てきた?」
重清が首を傾げていると、

「重清、見てみろ」
プレッソマキネッタの声が聞え、重清は釣られるように智乃の視線を追った。

そこにいるのは、先程と変わらず立っている美影。
そしてその足元には―――

「犬の、ヌイグルミ?」

隠がずっと抱いていた、犬のヌイグルミがチョコンと立っていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?

ラララキヲ
ファンタジー
 姉と下に2歳離れた妹が居る侯爵家。  両親は可愛く生まれた妹だけを愛し、可愛い妹の為に何でもした。  妹が嫌がることを排除し、妹の好きなものだけを周りに置いた。  その為に『お城のような別邸』を作り、妹はその中でお姫様となった。  姉はそのお城には入れない。  本邸で使用人たちに育てられた姉は『次期侯爵家当主』として恥ずかしくないように育った。  しかしそれをお城の窓から妹は見ていて不満を抱く。  妹は騒いだ。 「お姉さまズルい!!」  そう言って姉の着ていたドレスや宝石を奪う。  しかし…………  末娘のお願いがこのままでは叶えられないと気付いた母親はやっと重い腰を上げた。愛する末娘の為に母親は無い頭を振り絞って素晴らしい方法を見つけた。  それは『悪魔召喚』  悪魔に願い、  妹は『姉の全てを手に入れる』……── ※作中は[姉視点]です。 ※一話が短くブツブツ進みます ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。

逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊
ファンタジー
【注意】この作品は自己転載作品です。現在の他所での公開済みの分が終了後、続編として新シリーズの執筆を予定しております。よろしくお願い致します。 【あらすじ】 侯爵令嬢ロゼリア・マゼンダは、身に覚えのない罪状で断罪、弁明の機会も無く即刻処刑されてしまう。 しかし、死んだと思った次の瞬間、ベッドの上で目を覚ますと、八歳の頃の自分に戻っていた。 過去に戻ったロゼリアは、処刑される未来を回避するべく、経過を思い出しながら対策を立てていく。 一大ジャンルとも言える悪役令嬢ものです

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生してギルドの社畜になったけど、S級冒険者の女辺境伯にスカウトされたので退職して領地開拓します。今更戻って来いって言われてももう婿です

途上の土
ファンタジー
『ブラック企業の社畜」ならぬ『ブラックギルドのギル畜』 ハルトはふとしたきっかけで前世の記憶を取り戻す。  ギルドにこき使われ、碌に評価もされず、虐げられる毎日に必死に耐えていたが、憧れのS 級冒険者マリアに逆プロポーズされ、ハルトは寿退社(?)することに。  前世の記憶と鑑定チートを頼りにハルトは領地開拓に動き出す。  ハルトはただの官僚としてスカウトされただけと思っていたのに、いきなり両親に紹介されて——  一方、ハルトが抜けて彼の仕事をカバーできる者がおらず冒険者ギルドは大慌て。ハルトを脅して戻って来させようとするが——  ハルトの笑顔が人々を動かし、それが発展に繋がっていく。  色々問題はあるけれど、きっと大丈夫! だって、うちの妻、人類最強ですから! ※中世ヨーロッパの村落、都市、制度等を参考にしておりますが、当然そのまんまではないので、史実とは差異があります。ご了承ください ※カクヨムにも掲載しています。現在【異世界ファンタジー週間18位】

処理中です...