225 / 519
雑賀家お家騒動
第192話:横やり
しおりを挟む
「充希!余計な手出しはしないでっ!」
重清の弾丸の術をその身に受けた美影は、膝をついたまま離れた充希を睨んでいた。
「し、しかし姉上っ!その末席は、こともあろうか姉上を傷物にっ!!」
「いや傷物て」
すかさず入る重清のつっこみを無視して、美影は充希に、
「い、今のはちょっと油断しただけよ!いいからあなたは、そこで黙って見ていなさい!」
焦ったように怒鳴り返していた。
「うぐっ」
大好きな姉に怒鳴られた充希がうなだれる。
姉にまともに叱らたことの無かった充希にとって、美影から怒鳴られるなど初めての経験なのであった。
そんな充希へと、近づいてくる者がいた。
「いやいやいや。雑賀本家ってのは、正々堂々戦うこともされないんですか?」
充希の耳にそんな声が聞こえてきた。
「お、お前は確か、伊賀家の末席!」
充希は、そう言って目の前の恒久を睨んだ。
「いや、まぁ確かに末席ですけど。でも伊賀家じゃ、あんな卑怯なことは教えてもらってないんですよね~。是非とも伊賀家の末席に、そのへんの所教えていただけないですかね?」
そう言って恒久はニヤリと笑った。
もう、どちらが悪者なのかわからないのである。
「くっ、貴様、言わせておけばフザけたことをっ!」
そのまま恒久に掴みかかろうとする充希を、慌てて駆け寄ってきたソウが遮った。
「す、すみません充希様。この人、口はこんなだけど悪い人じゃないんです!
ツネもほら、ちゃんと謝って!」
「いやソウ、何で俺が謝らないと――――」
「ツネっ!!」
「うっ。す、すみませんでした、生意気なこと言って」
恒久は、ソウの剣幕に押し負けて渋々充希に頭を下げた。
「ふん。生意気な口を聞いたのは許してあげる。けど、雑賀家を馬鹿にしたことは許せないよ。だからこうしよう。君達も、僕と手合わせしてもらえないかな?
流石に、姉上の邪魔をしたのは反省してる、っていうか、あんなに怒られたの初めてだし・・・」
そう言って今にも泣きそうな充希に、ソウが声をかけた。
「あの、よろしければこちらも、美影様達のように1対1でやりませんか?」
「へぇ。まさか君、1人で僕に勝てると思ってるの?」
「あ、いえ、そうではないんです。ただ、どうせだったら充希様の実力を1人で体験してみたいと思いまして・・・」
「ふ~ん。まぁいいか。おいクル!お前も来い!ちょうどこいつらは2人いるから、どっちかの相手をしてやれよ!」
「は、はいっ!」
そう返事をした隠は、ずっと抱いていた犬のヌイグルミを近くの木の根本へと置き、充希の側へと駆け寄った。
「で、どっちが僕の相手をしてくれるんだい?君かい?それともそっちの伊賀の末席かな?」
「あぁ、もちろん―――」
そう言って恒久が一歩前に出るのと同時に、
「充希様の相手は、アカが務めさせていただきます」
ソウは恒久を片手で制して、充希に告げた。
「「はぁっ!?」」
ソウの言葉に、恒久だけでなくアカもまた、少し離れた場所で声を上げていた。
そしてそのままアカが駆け寄って来たのを見計らって、
「すみません、ちょっとタイムで!」
充希にそう言って、ソウは恒久とアカを充希と隠から少し離れた場所へと呼び出した。
「おいソウ!なんで俺にやらせねーんだよっ!」
「ちょっとソウ!なんでわたしがあいつとやらないきゃいけないのよっ!」
2人が、ソウへと詰めよった。
「ホントは、僕がやろうと思ってたんだけどね。僕も、あの人達の言動には少なからず苛ついてるから。でも、あの隠って人が出てきちゃったから、あの充希って人をアカにお願いしたいんだ」
「だから、なんで俺に―――」
「ツネ、ちゃんと話すから聞いて」
「お、おう」
真剣な眼差しを向けてくるソウに、恒久は言葉を止めて頷いた。
重清の弾丸の術をその身に受けた美影は、膝をついたまま離れた充希を睨んでいた。
「し、しかし姉上っ!その末席は、こともあろうか姉上を傷物にっ!!」
「いや傷物て」
すかさず入る重清のつっこみを無視して、美影は充希に、
「い、今のはちょっと油断しただけよ!いいからあなたは、そこで黙って見ていなさい!」
焦ったように怒鳴り返していた。
「うぐっ」
大好きな姉に怒鳴られた充希がうなだれる。
姉にまともに叱らたことの無かった充希にとって、美影から怒鳴られるなど初めての経験なのであった。
そんな充希へと、近づいてくる者がいた。
「いやいやいや。雑賀本家ってのは、正々堂々戦うこともされないんですか?」
充希の耳にそんな声が聞こえてきた。
「お、お前は確か、伊賀家の末席!」
充希は、そう言って目の前の恒久を睨んだ。
「いや、まぁ確かに末席ですけど。でも伊賀家じゃ、あんな卑怯なことは教えてもらってないんですよね~。是非とも伊賀家の末席に、そのへんの所教えていただけないですかね?」
そう言って恒久はニヤリと笑った。
もう、どちらが悪者なのかわからないのである。
「くっ、貴様、言わせておけばフザけたことをっ!」
そのまま恒久に掴みかかろうとする充希を、慌てて駆け寄ってきたソウが遮った。
「す、すみません充希様。この人、口はこんなだけど悪い人じゃないんです!
ツネもほら、ちゃんと謝って!」
「いやソウ、何で俺が謝らないと――――」
「ツネっ!!」
「うっ。す、すみませんでした、生意気なこと言って」
恒久は、ソウの剣幕に押し負けて渋々充希に頭を下げた。
「ふん。生意気な口を聞いたのは許してあげる。けど、雑賀家を馬鹿にしたことは許せないよ。だからこうしよう。君達も、僕と手合わせしてもらえないかな?
流石に、姉上の邪魔をしたのは反省してる、っていうか、あんなに怒られたの初めてだし・・・」
そう言って今にも泣きそうな充希に、ソウが声をかけた。
「あの、よろしければこちらも、美影様達のように1対1でやりませんか?」
「へぇ。まさか君、1人で僕に勝てると思ってるの?」
「あ、いえ、そうではないんです。ただ、どうせだったら充希様の実力を1人で体験してみたいと思いまして・・・」
「ふ~ん。まぁいいか。おいクル!お前も来い!ちょうどこいつらは2人いるから、どっちかの相手をしてやれよ!」
「は、はいっ!」
そう返事をした隠は、ずっと抱いていた犬のヌイグルミを近くの木の根本へと置き、充希の側へと駆け寄った。
「で、どっちが僕の相手をしてくれるんだい?君かい?それともそっちの伊賀の末席かな?」
「あぁ、もちろん―――」
そう言って恒久が一歩前に出るのと同時に、
「充希様の相手は、アカが務めさせていただきます」
ソウは恒久を片手で制して、充希に告げた。
「「はぁっ!?」」
ソウの言葉に、恒久だけでなくアカもまた、少し離れた場所で声を上げていた。
そしてそのままアカが駆け寄って来たのを見計らって、
「すみません、ちょっとタイムで!」
充希にそう言って、ソウは恒久とアカを充希と隠から少し離れた場所へと呼び出した。
「おいソウ!なんで俺にやらせねーんだよっ!」
「ちょっとソウ!なんでわたしがあいつとやらないきゃいけないのよっ!」
2人が、ソウへと詰めよった。
「ホントは、僕がやろうと思ってたんだけどね。僕も、あの人達の言動には少なからず苛ついてるから。でも、あの隠って人が出てきちゃったから、あの充希って人をアカにお願いしたいんだ」
「だから、なんで俺に―――」
「ツネ、ちゃんと話すから聞いて」
「お、おう」
真剣な眼差しを向けてくるソウに、恒久は言葉を止めて頷いた。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【完結】西の辺境伯令嬢は、東の辺境伯へと嫁ぐ
まりぃべる
ファンタジー
リューリ=オークランスは十七歳になる西の辺境伯の娘。小さな体つきで見た目は大層可憐であるが、幼い頃より剣を振り回し馬を乗り回していたお転婆令嬢だ。
社交場にはほとんど参加しないリューリだが一目見た者は儚い見た目に騙され、見ていない者も噂で聞く少女の見た目に婚約したいと願う者も数多くいるが、少女はしかし十七歳になっても婚約者はいなかった。
そんなリューリが、ある事から東の辺境伯に嫁ぎ、幸せになるそんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実世界でも同じような名前、地名、単語などがありますが関係ありません。
☆現実世界とは似ていますが、異なる世界です。現実ではそんな事起こる?って事も、この世界では現象として起こる場面があります。ファンタジーです。それをご承知の上、楽しんでいただけると幸いです。
☆投稿は毎日する予定です。
☆間違えまして、感想の中にネタバレがあります…感想から読む方はお気をつけ下さい。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
jumbl 'ズ
井ノ上
キャラ文芸
青年、大吉は、平凡な日々を望む。
しかし妖や霊を視る力を持つ世話焼きの幼馴染、宮森春香が、そんな彼を放っておかない。
春香に振り回されることが、大吉の日常となっていた。
その日常が、緩やかにうねりはじめる。
美しい吸血鬼、大財閥の令嬢、漢気溢れる喧嘩師、闇医者とキョンシー、悲しき天狗の魂。
ひと癖もふた癖もある連中との出会い。
そして、降りかかる許し難い理不尽。
果たして、大吉が平穏を掴む日は来るのか。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
魔法の使えない無能と呼ばれた私は実は歴代最強でした。
こずえ
ファンタジー
私はとあるパーティーに所属していた。
私はこの世界では珍しく、魔法が使えない体質だったようで、パーティーで依頼をこなしながら、ソロで依頼をこなしたりして魔法に負けないくらいの力を手に入れる為に日々修行していた。
しかし、ある日突然、そんな日常は終わりを告げる。
「役立たずは出ていけ。」
そうして、私は無職になった。
こんにちは。
作者です。
筆が遅い節がありますので、次話投稿が遅れてたらごめんなさい。
もし誤字や脱字があったり、ここはこう言った表現がいいのでは無いかと感じられたさいにはお手数ですが、なるべく詳しく教えていただけると助かります。
ぶっちゃけ、こんなところなんて誰も読んでないやろ…とは少し思ってますが、ご理解いただけると幸いです。
…ちなみに10話程度で完結させようと思っていたのですが、それは無理そうなので1000話以内には終わります()
2022/01/23
タグを追加しました。
2024/02/06
ネタ切れのため休載してます。
片翼を君にあげる③
☆リサーナ☆
ファンタジー
毎週金曜日更新です(^^)
主人公ツバサは18歳の誕生日1週間前に不思議な夢を見る。
それは10年前に別れた幼馴染み、レノアと「将来夢の配達人になって必ず会いに行く」と約束した時の夢。
だが、約束と異なり彼は現在ただの学生。
15歳の時父の死を境に、夢の配達人への夢を遮られてしまった為だ。
しかし、レノアの20歳の誕生日パーティーで二人は再会。
それをキッカケに本当の気持ちに目覚め、再びあの日の約束と自分の夢を叶える為に動き出す。
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
2022.9.2(金)
連載開始予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる