おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
221 / 519
雑賀家お家騒動

第188話:かくれんぼの天才

しおりを挟む
「ん?なんか雰囲気悪くないか?ショウ、何があった?」
社会科研究部の部室に入ってきたノリが、そう言ってショウを見る。

「いやー、僕達が来たときには、もうこんな感じでしたよー。多分、原因はあの子達かと・・・」
そう言って向けるショウの視線の先を見たノリは、

(ちっ。もう来てやがったか)
そう思いながら、笑顔で部室の中へと入っていった。

「美影様、充希様、もうお越しでしたか。お待たせしてしまって申し訳ございませんでした。隠(かくる)君も、悪かったね」
そう言って部室の隅へと目を向けるノリの言葉に、恒久は呆れたようにノリの視線を追った。

「いやいやノリさん。隠君って、そこには誰も・・・いたよ!誰かいたよ!!ってかお前、俺のクラスの転校生じゃねーかよっ!!」
その常にの言葉に、忍者部一同が一斉に部屋の隅へと目を向けた。

するとそこには、聡太よりも背が低い、坊主頭の1人の少年がぽつんと立っていた。

何故か、年老いた犬のヌイグルミを抱いて。

シゲ「ソウ、気付いてた?」
ソウ「いや、全然気付かなかった」
アカ「突然現れたわよね?」
ショウ「えー、そうかなー?あ、あの犬可愛いねー」
シン「まさに、隠るだな」
ノブ「ガッハッハ!隠れんぼなら最強だな!」
ケン「っていうか俺達、久々に喋った」

「ちょっとあなた達!いい加減に静かに―――あら、古賀先生、いらっしゃったんですね。少し、静かにしていただけますか?」
忍者部一同の騒がしい声に、島田さんが怒鳴りこんで来た直後、ノリの姿を確認した島田さんは、顔を赤らめてそう言って、そそくさと部室を後にした。

「・・・じゃぁ、続きは向こうに行ってからにしよう。美影様、充希様、よろしいですね?」

「えぇ。そうしてちょうだ―――」
「ガラガラっ!」

「ごめーーん、遅くなった!いやー、やっぱり、夏休み終わったら人が増えるわね!
制服違うから、凄く目立っちゃったわー!」

美影の言葉を遮るように、再び部室の扉が開け放たれ、そこから麻耶が笑いながら入ってきた。

「あれ?皆、どうしちゃったの?・・・・げっ!」
場の雰囲気を不思議に思った麻耶が部屋を見渡し、そう声を漏らした。

「あー、えっと。あっ!私今日、用事があったんだったわ!今日のところは、帰るわねっ!!」
そう言って慌てて部室を出ようとする麻耶の背に、美影が声をかけた。

「待ちなさい、雑賀麻耶。あなたも、ついてきなさい」
「・・・はい」

「ふんっ。じゃぁ甲賀ノリ、案内しなさい」
麻耶の返事に満足した美影は、そう言ってノリへと視線を送った。

「・・・では、こちらへ」
忍者部一同にだけわかるくらいに若干イラッとした表情を浮かべたノリは、努めて笑顔で美影にそう答え、そのまま美影達を連れて部室に掛かる掛け軸の先へと進んでいった。

「麻耶姉ちゃん、あの人達と面識あるの?」
「ま、後で話すわよ。とにかく今は、あいつらの機嫌を損ねないように急いで向こうに行きましょう」
重清の言葉にそう答えた麻耶は、肩を落として掛け軸の先へと進み、残された一同もそれについて行くのであった。


忍者部の部室へと移った一同を見渡して、ノリが話し出す。
「さて、これで島田さんから怒られることは無くなったな。もう何人かは分かっていると思うが、このお2人は、雑賀本家の方々だ。こちらが雑賀美影様、そしてこちらが美影様の双子の弟でもある充希様だ。みんな、くれぐれも失礼のないようにな!」

ノリの言葉に、1年生一同が気まずそうに顔を見合わせた。

そして、代表してツネがいつものごとく手を挙げる。

「あー、ノリさん。既にもう、失礼働いちゃってるやつがいるんだけど・・・」

「ん?それであっちで雰囲気最悪だったのか。で、重清、何やったんだ?」

「失礼っ!ノリさん失礼だ!おれと決まったわけじゃないだろ!」
「お前以外考えられないだろうが!」

「おれは別に、何もやってないよっ!」
「何もやっていないですって?甲賀ノリと言ったわね。あんた一体、普段どういう教育をしているのかしら?」
重清の言葉に、美影が怒りの表情を浮かべる。

「教育、ですか」
ノリの顔が、少しだけピクついた。

「この末席はね、雑賀家を面倒臭いと言ったのよ?」
「ぷっ!あ、失礼。重清、お前そんなこと言ったのか!?」
ノリが一瞬吹き出し、取り繕ったように怒りの表情で重清を睨んだ。

それを見ていた忍者部一同は、ノリの気持ちをなんとなく察した。
ノリも、この2人を快く思ってはいないのだと。

それに唯一気付いていない重清は、ノリの言葉に反論した。

「言ったよ!だって、なんでおれが、本家の人ってだけで同い年のやつに敬語使わなきゃいけないんだよっ!!」

「何でってお前・・・そりゃこっちのセリフだよ」
後半、誰にも聞こえないようにそう呟くノリに、またしてもツネが手を挙げる。

「このバカはいいとして、俺達もこの人達には敬語使うのか?」
「ん?あぁ、そりゃ俺を見てれば分かるだろ?本家の方々には、敬意を持って接するんだ」

「使わないとどうなる?」
「特に重清と恒久は、家の立場が悪くなるな。家系が違うとはいえ、本家にはそれくらい影響力がある」

「だから、そんなのおれには関係ないよっ!!」
「いや、それはお前が決めるとこでは―――」
ノリが困り顔で重清に言っていると、それまでじっと黙っていた美影が大声を上げた。

「さっきから聞いていれば、雑賀重清!少しは雑賀家末席であることを自覚しなさいっ!!
いいえ、あなたのようなバカでは、自覚なんてできないでしょうね。
雑賀重清!私と勝負しなさい!雑賀本家の力を、たっぷりとあなたに教え込んであげるわっ!!」
そう言って、美影は重清をビシリと指差した。

「えぇ~、面倒臭いなぁー」
重清の呑気で心底面倒臭そうな声だけが、その場に響くのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

処理中です...