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雑賀家お家騒動

第187話:雑賀家面倒くさい

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放課後、先に社会科研究部の部室に集まった一同は、先輩たちを待つ間、転校生の話をしていた。

「やっぱり、あの雑賀充希ってイケメン、雑賀家の人なんだ」
茜のこの言葉に、重清と聡太は思った。

((あ、やっぱ弟イケメンなんだ))

と。どうやら、重清達のクラスメイト達の予想は正しかったようである。

「くそっ!!」
その時、恒久が悔しそうな声をあげた。

「ツネ、どうしたのさ?」
重清が声をかけると、恒久は部屋の外から聞こえてくる司書教諭島田さんの咳払いに気を使いながら小声で、

「なんで、シゲ達のクラスには可愛い転校生が来てんだよ!ウチのクラスにも来てほしいよ、可愛い転校生・・・」
と、いじけていた。

「いやいや、ツネ。おれの話聞いてた?あの本家の人、めちゃくちゃ怖いからね!?」
「それはお前が雑賀家の末席だからだろ!?俺には優しいかもしれないじゃん!」

「まぁ確かに雑賀さん、他の人には普通に接してたもんね。茜のクラスに来た、弟君はどうだったの?」
聡太が、そう言って茜に目を向けた。

「充希君?すごく爽やかそうだったわよ。可愛いから、女子だけじゃなく男子にも人気出てたみたい」
「なんだ茜。やけに他人事だな」
茜の言葉に、恒久がいじけから回復してそう言うと、

「もしかしたら雑賀本家の関係者かなとは思ってたからね。シゲの話を思い出して、今はまだ様子見なのよ」
「へぇ。お前、ただイケメンに弱いだけじゃないんだな」

「失礼ね。わたしはね、ちゃんと中身まで見て判断するのよ。見た目は、そうね。1次試験みたいなもんよ。
ちなみにツネは、2次試験で不合格ね」
「なんだよそれ!俺は見た目だけの男なのか!?」

「まぁ、ツネはムッツリだからね」
「だね」
重清と聡太が、恒久に哀れんだ視線を送った。

「うるせーよ!俺はムッツリじゃなくて、ただのスケベなんだよ!!」
「そういうことを当たり前のように女の子の前で言うところが、私の2次試験を突破できない理由なのよ」
茜が、恒久にとどめを刺した。

「うっ・・・クソっ!言い返せねぇ!っていうか別に、茜の試験になんか通らなくていいし!」
と、恒久が子どものような負け惜しみをほざいていると、

「あれ?そういえばツネと同じクラスの友達に聞いたけど、ツネの所にも、転校生来たんじゃないの?」、
と、聡太が首を傾げた。

「ん?あぁ、来たっちゃ来たよ。男だけどな・・・名前は・・・忘れた」
「いや男に興味持たなさすぎでしょ」
面白くなさそうに言う恒久に、重清がつっこむ。

「いいんだよ、俺のクラスの転校生のことは。あぁ~、美影ちゃん、にんじゃ――なくて、社会科研究部に入らないのかな~~」
恒久がそう言っていると、

「ふざけたことを言わないでくれるかしら?」
そんな声とともに、社会科研究部の扉が開け放たれた。

「げっ!!」
重清は、開け放たれた扉から入ってきた人物を見て、思わず声を漏らしていた。

重清の目の前には、今日転校してきたばかりの雑賀美影、そしてもう1人、綺麗な顔の少年が立っていた。

「あ、充希君」
茜の言葉に、その少年が雑賀美影の弟、充希であると理解した重清が、2人に目を向けて美影に声をかけた。

「あ、あの、美影さん―――」
重清がそう、目の前の美少女に声をかけようとすると、美影はギロリと重清を睨みつた。

「何を気安く呼んでんのよ末席!様、でしょ?美影様!」

「み、美影様、えっと、どのようなご用件でいらっしゃりになられたのでございましょうか?」
「ここには、お祖父様に言われて来たんです。甲賀ノリって人に会え、って」
美影に代わって、美影の隣の充希が、慣れない敬語の重清に答えた。

「あ、あぁ、そうなんだ、ですね・・・・あぁもう!!敬語とか面倒臭いよ!!なんでおれが、相手が本家だからって理由だけで同い年に敬語つかわなきゃいけないんだよっ!!」
重清が、慣れない敬語に早速音を上げた。

「本家の私に対して、そんな態度で良いと思ってるの?そんなことだと―――」
重清の言葉に、美影がニヤリと笑う。

「な、なんなん・・・ですか」

「雑賀家の中でずっと立場が弱いままよ?」
「あ、じゃぁそれでいいや。立場とか、どうでもいいし」

「はぁ!?ちょっとあんた!何言ってくれてんのよ!?」
「知らないよ!なんていうか、雑賀家、面倒くさいよ!!」

「ちょ、言うに事欠いて面倒くさいとは何よ!?」
「面倒臭いから面倒臭いんだよっ!何なんだよ!本家ってのがそんなに偉いのかよっ!!」

「なっ!偉いに決まってるじゃないのっ!あんた達分家は、ただ私達本家に従っていればいいのよっ!!」

重清と美影が言い争っていると、突然社会科研究部の扉が開け放たれ、

「あなた達!いい加減静かにしなさいっ!!!!!!」
騒ぐ雑賀家に、島田さんの雑賀家よりも大きな怒鳴り声が突き刺さるのであった。
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