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雑賀家お家騒動
第185話:迫る雑賀家
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夏休みが終わった始業式の日の朝。
重清達のいる1年3組は、異様な雰囲気に包まれていた。
その原因は、彼らの目の前に立つ1人の美少女であった。
長い黒髪を後ろでひとくくりにしたその美少女は、クラスの男子のほぼ全員が見惚れる笑顔で、担任の田中とともに立っていた。
その少女に馬鹿みたいに見惚れている男子を、女子は軽蔑するように見て声をひそめて囁きあっていた。
しかしそんな女子も、目の前の美少女の言葉でその様相を一変させることとなる。
「今日からこちらでお世話になります。雑賀 美影(みかげ)と申します。双子の弟の充希(みつき)は別のクラスになってしまいましたが、弟ともども、どうぞよろしくお願いいたします」
そう言ってぺこりと頭を下げるその少女にまず反応を示したのは、男子であった。
「うぉーーーーーー!ちょーーー可愛いーーーーーー!」
「春だ!ついに俺にも春が来たぞーーーー!」
「ふざけんな!美影ちゃんと春を迎えるのは俺だ!!!」
「み、みかげたん!ワシもうあんたにメロメロや~~」
そう言って一斉に美影の周りへと群がる男子(ハイエナ)。
ちなみに、この騒いでいる男子(ハイエナ)達の中には、以前クラスのアイドルである村中穂香を狙うと宣言していた後藤たちも、漏れなく入っていたりする。
男心は移り変わりやすいのである。
そんな男子(ハイエナ)一同をしり目に、女子もまた、ひそめた声が大きくなっていた。
「美影ちゃん、可愛い過ぎじゃない!?」
「でも、その美影ちゃんの双子の弟って・・・」
「絶対イケメンじゃん!!あたし狙っちゃおうかな!」
「み、みつきたん!それもそれで、アリなんやで~~」
そんな女子(ハイエナ)達の騒ぎの中でも、村中だけはそっと、自身の席を離れてある人物の元へと歩み寄っていった。
その人物は、騒ぐ男子の中にあって唯一騒がず、ただ顎が外れそうなほどに口を開けて、呆然としていた。
そしてその隣では、その友人の風間聡太が、その口を抑えながらも前に立つ美少女に見とれていた。
風間聡太が美少女に見とれていることに少し意外だと驚きながらも、村中は顎の外れそうなその人物へと声をかけた。
「雑賀さん、とっても可愛いわね。重清君も、ああいう子、好みなの?」
村中に声をかけられた重清は、思いっきり開いた口を何とか閉じて、答えにくそうに口を開いた。
「いや、まぁ、可愛いとは思うんだけどね・・・」
「けど?」
その時、担任の田中が大声をあげた。
「お前ら、いい加減にしろーーーーーー!全員、今すぐ席に着け!!」
「「「「「ブーーーーーーーーー!!」」」」」
1年3組一同は、一斉にブーイングをあげながらも、素直にそれぞれの席へと戻っていった。
みんな、意外と素直なのである。
それと同時に村中も、「またあとでね」と小さく重清に言って、席へと戻っていった。
「えーと、どこまで話したかな。君達が騒ぐからわからなくなったじゃないか」
田中がそう言って一同を見回す。
「さっき話したように、雑賀さんはご両親のご都合で今日からこの2中に転校してきた。
もう大丈夫だとは思うが、みんな、仲良くしてくれよ」
「みなさん、よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」
雑賀美影が笑顔で言うと、男子一同が何故かその場で立ち上がり、手を前に突き出しながら声をそろえた。
いわゆる、「『ごめんなさい』待ちスタイル」である。
そんな男子一同の手を無視して、田中は重清の後ろへと目を向けた。
「とりあえず、雑賀さんの席は鈴木の後ろだな。鈴木ってのはあそこのアホ面だから」
そう言って田中が雑に指さす方向へ、雑賀美影はトコトコと歩いて行った。
近づく雑賀美影にオドオドする重清に対して、彼女は頭を下げながら言った。
「鈴木さん、どうぞよろしくお願いいたします」
「あ、えっと・・・はい」
そう言う重清に、男子の目が突き刺さっていた。
そんな中雑賀美影は、頭を下げたまま重清にだけ聞こえるほどの小さな声で囁いた。
「この前のことクラスの誰かに言ってみろ。跡形もなく消し去るからな、アホ面末席」
「・・・・・・・あ、えっと・・・はい」
重清は、雑賀美影から殴られた、とっくに痛みのひいているはずの頬をさすりながら、そう答えるのがやっとなのであった。
重清達のいる1年3組は、異様な雰囲気に包まれていた。
その原因は、彼らの目の前に立つ1人の美少女であった。
長い黒髪を後ろでひとくくりにしたその美少女は、クラスの男子のほぼ全員が見惚れる笑顔で、担任の田中とともに立っていた。
その少女に馬鹿みたいに見惚れている男子を、女子は軽蔑するように見て声をひそめて囁きあっていた。
しかしそんな女子も、目の前の美少女の言葉でその様相を一変させることとなる。
「今日からこちらでお世話になります。雑賀 美影(みかげ)と申します。双子の弟の充希(みつき)は別のクラスになってしまいましたが、弟ともども、どうぞよろしくお願いいたします」
そう言ってぺこりと頭を下げるその少女にまず反応を示したのは、男子であった。
「うぉーーーーーー!ちょーーー可愛いーーーーーー!」
「春だ!ついに俺にも春が来たぞーーーー!」
「ふざけんな!美影ちゃんと春を迎えるのは俺だ!!!」
「み、みかげたん!ワシもうあんたにメロメロや~~」
そう言って一斉に美影の周りへと群がる男子(ハイエナ)。
ちなみに、この騒いでいる男子(ハイエナ)達の中には、以前クラスのアイドルである村中穂香を狙うと宣言していた後藤たちも、漏れなく入っていたりする。
男心は移り変わりやすいのである。
そんな男子(ハイエナ)一同をしり目に、女子もまた、ひそめた声が大きくなっていた。
「美影ちゃん、可愛い過ぎじゃない!?」
「でも、その美影ちゃんの双子の弟って・・・」
「絶対イケメンじゃん!!あたし狙っちゃおうかな!」
「み、みつきたん!それもそれで、アリなんやで~~」
そんな女子(ハイエナ)達の騒ぎの中でも、村中だけはそっと、自身の席を離れてある人物の元へと歩み寄っていった。
その人物は、騒ぐ男子の中にあって唯一騒がず、ただ顎が外れそうなほどに口を開けて、呆然としていた。
そしてその隣では、その友人の風間聡太が、その口を抑えながらも前に立つ美少女に見とれていた。
風間聡太が美少女に見とれていることに少し意外だと驚きながらも、村中は顎の外れそうなその人物へと声をかけた。
「雑賀さん、とっても可愛いわね。重清君も、ああいう子、好みなの?」
村中に声をかけられた重清は、思いっきり開いた口を何とか閉じて、答えにくそうに口を開いた。
「いや、まぁ、可愛いとは思うんだけどね・・・」
「けど?」
その時、担任の田中が大声をあげた。
「お前ら、いい加減にしろーーーーーー!全員、今すぐ席に着け!!」
「「「「「ブーーーーーーーーー!!」」」」」
1年3組一同は、一斉にブーイングをあげながらも、素直にそれぞれの席へと戻っていった。
みんな、意外と素直なのである。
それと同時に村中も、「またあとでね」と小さく重清に言って、席へと戻っていった。
「えーと、どこまで話したかな。君達が騒ぐからわからなくなったじゃないか」
田中がそう言って一同を見回す。
「さっき話したように、雑賀さんはご両親のご都合で今日からこの2中に転校してきた。
もう大丈夫だとは思うが、みんな、仲良くしてくれよ」
「みなさん、よろしくお願いします」
「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」
雑賀美影が笑顔で言うと、男子一同が何故かその場で立ち上がり、手を前に突き出しながら声をそろえた。
いわゆる、「『ごめんなさい』待ちスタイル」である。
そんな男子一同の手を無視して、田中は重清の後ろへと目を向けた。
「とりあえず、雑賀さんの席は鈴木の後ろだな。鈴木ってのはあそこのアホ面だから」
そう言って田中が雑に指さす方向へ、雑賀美影はトコトコと歩いて行った。
近づく雑賀美影にオドオドする重清に対して、彼女は頭を下げながら言った。
「鈴木さん、どうぞよろしくお願いいたします」
「あ、えっと・・・はい」
そう言う重清に、男子の目が突き刺さっていた。
そんな中雑賀美影は、頭を下げたまま重清にだけ聞こえるほどの小さな声で囁いた。
「この前のことクラスの誰かに言ってみろ。跡形もなく消し去るからな、アホ面末席」
「・・・・・・・あ、えっと・・・はい」
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