おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
212 / 519
外伝〜出会いの章〜

第10話:甲賀平八 対 雑賀雅 決着

しおりを挟む
そんな沈黙を破ったのは、雅の方でした。

「あたしはね、この術を作るのに、結構苦労したのよ。そして、できたときには思ったわ。この術は、絶対に誰にも作ることはできない、って」
「なるほど。それで、この術の契約に、制限を設けなかったのか。だから私にも契約ができたんだね」

「いいえ、それは違うわ。一応、万が一、他の誰かが使えないように、ちゃんとあたし限定にしておいたわ」
「だったら何故、私は契約できたのかな?」

「さっきあんたが、『異空手裏剣の術』との契約に辿り着いたときに、思ったのよ。あんたがもし、この『異空転移の術』すらも契約に辿り着くことが出来るのなら、あたしは負けを認めよう、って」
「え!?『異空手裏剣の術』に『異空転移の術』!?君は、術の名付けまで天才なのかい!?めちゃくちゃかっこいいじゃないか!!」

「今それ、関係ある?まぁ、あんたの脱線には慣れちゃったけど」
雅が、呆れたように平八に言って、続けました。

「そうでもしないと、このままお互いに本気でやり始めたら多分、確実にどちらかが死んじゃうから」

「だろうね。君はまだ、全然本気ではなかっただろう?」
「まったく。全部お見通しね」
そう言った彼女の表情には、笑みが浮かんでいたそうです。

実際に平八は、しばし雅に見惚れていたようです。

「なによ、そんなにジロジロ見て」
「いや、やっぱり君は、笑顔の方が可愛いね」

「さっきまで自分の命を狙っていた相手に、言う言葉?」
「仕方ないじゃないか。一目惚れしちゃったくらい、可愛いんだから」

「え?」
「え?

・・・・あっ!ちょ、今の無し!忘れて!今の忘れてっ!!」

初めて狼狽えた表情を浮かべる平八に、雅は笑い始めました。

「まったく。こんな告白、ある?」
「いやほんと、面目ない」

平八が、肩を落として言いました。

「今度、あんたを雑賀家に連れていきたいんだけど」
そんな平八に、雅が言いました。

「え!?もうご両親へのご挨拶!?ちょっと気が早すぎるんじゃない!?」
「違うわよ。あんたは雑賀家当主から指名された、あたしの標的なのよ?失敗した報告に、あんたもついてくるのは当たり前でしょ!?」

「いや、普通標的はそんなことしないと思うけどな・・・」
平八が困ったように言うと、

「多分あたしは、雑賀家と縁を切られるわ。そうしたら、あたしをあんたの弟子にしなさい。あたしは、甲賀雅になるわ。そして、あたしが16になったら、その、あたしを鈴木雅にしなさいよ」
雅が、顔を真っ赤にして言いました。

「・・・今のは、聞かなかったことにしていいかい?」
「はぁっ!?あんた!人をその気にさせておいて、このあたしをふるっていうの!?」

「いや、そうじゃなくって。プロポーズは改めて、私の方からさせてくれないかな?」
平八が、頬をかきながら言いました。

「そ、そういうことなら、仕方ないわね。自分から言ったんだから、ちゃんと素敵なプロポーズ、しなさいよね!」

「まぁ、頑張るよ」


こうして、2人の天才の戦いは、良くわからない甘い雰囲気で、幕を閉じたのでした。

私は平八からこの話を聞いたとき、ただこう思いました。

爆ぜろ、と。

平八の頭が見るも無残に爆ぜ始めるのは、それから数年経ってからのことでした。


え?変なオチをつけるな?
仕方ないじゃない!思い出しただけで腹が立ってくるのよこの話!

2人とも、イチャイチャしながら私に話すのよ!?
このくらいしたって、バチなんか当たらないわよ!!

ちょ、雅!?危ないから!『異空手裏剣の術』使うのやめなさい!?
あなたいつから、そのばにいなくてもその術使えるようになったのよ!?

いや、ほんと、謝るから!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

ゲーセンダンジョン繁盛記 ~魔王に異世界へ誘われ王国に横取りされ、 そこで捨てられた俺は地下帝国を建設する~

アンミン
ファンタジー
主人公・仁務博人は窮地に立たされていた。 脱サラで、ホテルとゲームセンターを一つにした ビジネスを開始。 しかし開業した途端、コ〇ナが直撃。 「ああ、コ〇ナの無い世界に行きてぇ……」 「ではこちらへおいでくださいっ♪」 かくして彼は、異世界で――― ホテル業とゲームセンターを兼ねたダンジョンを 経営する事になった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

闇鍋【一話完結短編集】

だんぞう
ライト文芸
奇譚、SF、ファンタジー、軽めの怪談などの風味を集めた短編集です。 ジャンルを横断しているように見えるのは、「日常にある悲喜こもごもに非日常が少し混ざる」という意味では自分の中では同じカテゴリであるからです。アルファポリスさんに「ライト文芸」というジャンルがあり、本当に嬉しいです。 念のためタイトルの前に風味ジャンルを添えますので、どうぞご自由につまみ食いしてください。 読んでくださった方の良い気分転換になれれば幸いです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...