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外伝〜出会いの章〜
第8話:甲賀平八 対 雑賀雅 その2
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筵(むしろ)を持った平八が、雅へと向かっていきました。
「初めて仕掛けて来たと思えば、そんな術なんて。どこまであたしを馬鹿にすれば気が済むのよ!?」
雅が、筵を避けながら言いました。
そんな雅に、平八は笑いながら答えました。
「いつも言ってるだろ?私は、自分の意志で向かってこない者は、無闇に傷つけたくないんだよ」
「あたしは、自分の意志でここにいる!今まであんたを狙ってきた奴らとは、違うのよ!」
「いいや、それは違うね」
平八は、尽く雅から筵を避けられながらも、まだ笑っていました。
「何が違うのよ!?」
「君はただ、雑賀家の馬鹿馬鹿しい伝統のせいでこんなところにいるんだ。言っただろう?私は君を、悪しき伝統から守りたい、って」
「っ!?」
雅は、絶句していました。
それでもなんとか気を取り直した様子の雅は、言葉を絞り出しました。
「雑賀家を、馬鹿にするな!あたしは当主になって、雑賀家を、立て直すんだっ!だからあたしは、そのためならあんたの命だって、とってみせる!これはあたしの意志なんだ!!」
「だったら何故君は、そんなに泣いているのかな?」
平八が筵を避けられながらも、雅とのすれ違いざまにそっと雅の目に浮かぶ涙を指で拭ってそう言い、すぐにまたその場を離れました。
「っ!?」
雅が再び、言葉を失っていました。
平八の筵を避けるために激しく動いていた雅が、いとも容易く平八の接近を許し、その身に触れられたのです。
それはつまり、平八に害意があれば、その瞬間に自身の命が刈り取られていてもおかしくはないということ。
これまで天才美少女と呼ばれていた雅には、初めての経験だったと思います。
後に雅は、そんな経験、この時が最初で最後だったと言っていたわ。
まぁ、最後っていうのは、雅の強がりかもしれないのだけれど。
でもそれ以上に、彼女は戸惑っていたと言っていたわね。
それはもちろん、自身の目から流れる涙に、ね。
彼女自身、自分が涙を流していたことに気付いてはいかなかったみたい。
その時彼女の中で、何かが折れそうだったと言っていたわ。
それでも当時の雅は、そんなこと一切表情には出さずに、言ったの。
「こ、これはあれよ!汗よっ!」
「・・・うん、そうだね。女性の言い訳は、黙って受け入れるのが良い男ってもんだよね」
「勝手に言い訳って決めるなっ!!」
そう言うと雅は、筵を持つ平八から距離を取りました。
「あんたが自分の術を使うなら、あたしだって、やってやる!天才美少女と呼ばれる所以、身を持って味わいなさい!」
雅がそう言った直後、突然平八が身を躱しました。
すると先程まで平八がいた場所を、手裏剣が通り過ぎていきました。
「これは、さっき使っていた術だね―――うわっと!」
平八が話していると、いくつもの手裏剣が忽然と姿を現し、次々に平八を襲っていきました。
平八はそれらを避けながら、ブツブツと呟いていました。
その間にも手裏剣は平八を襲い続けました。
さすがの平八も、音もなく突然現れる手裏剣を全て避けることは難しかったようで、服は所々破れ、そこからは血が幾重にも流れていました。
「ぐっ」
そしてついに手裏剣が平八を捉え、いくつもの手裏剣が平八に突き刺さりました。
そのまま地に膝をついた平八は、それでも嬉々とした表情を浮かべて、雅を見上げていた。
「凄い術だ!これは、空間を曲げた術だね!?実際には別の場所にある手裏剣を、ここに呼び出しているんだね!?しかもご丁寧に、それぞれの手裏剣には別々の属性の忍力を纏わせて、術での回避にまで対策がなされている。素晴らしい!!」
「これがあたしだけのオリジナルの術のひとつよ。ほかにもいくつかあるけど―――」
「いょ~~~~~~~ぉ!ポン!!」
突然、雅の脳内にそんな音が聞こえてきたと、後日雅から聞きました。
そんなことを知らなかった私には、雅が突然平八に驚愕の表情を向けたようにしか見えませんでした。
「あ、あんたまさか・・・」
雅が、そう言葉を絞り出していました。
「お。正解だったみたいだね。さすがに、契約には制限がかかっていたみたいだけど」
手裏剣による傷を治癒の術で治しながら、平八が楽しそうに笑っていました。
「あ、あたしはこの術を作るのに長い時間を使っていたのよ!?それをあんたは、この短時間でやったというの!?」
雅のその言葉で、2人に何が起きたのか私にもわかりました。
平八は、雅が使った術を避けながら、その力の配分を分析し、その術との契約を試みたのです。
おそらくその際に、雅の脳内では術の契約者が現れたことを知らせる何かしらの音が、響いたのだと思います。
でもおそらく、雅の術は契約に制限を設けているのか、もしくは雅のみを使用者に設定しているのか、いずれにしても、平八はその術との契約にまでは至らなかったのだと思います。
雅の術は、本当にすごい術でした。
おそらく、相手が平八でなければ対応することはほとんど不可能なのではないでしょうか。
私も力の感知には自信があります。
でも、空間を捻じ曲げて突然目の前に手裏剣を出されたら、さすがの私でも対処はできないと思います。
しかもその上に、それぞれの手裏剣には別々の属性忍力を纏わせている。
雑賀雅は、本当に天才なのだと改めて思いました。
しかし、そんな雅すらも驚愕させる平八。
この2人の天才の戦いを私1人だけが見ていていいのだろうかと、私が思ってしまうほどに、目の前で繰り広げられる術の応酬は、見事なものでした。
「初めて仕掛けて来たと思えば、そんな術なんて。どこまであたしを馬鹿にすれば気が済むのよ!?」
雅が、筵を避けながら言いました。
そんな雅に、平八は笑いながら答えました。
「いつも言ってるだろ?私は、自分の意志で向かってこない者は、無闇に傷つけたくないんだよ」
「あたしは、自分の意志でここにいる!今まであんたを狙ってきた奴らとは、違うのよ!」
「いいや、それは違うね」
平八は、尽く雅から筵を避けられながらも、まだ笑っていました。
「何が違うのよ!?」
「君はただ、雑賀家の馬鹿馬鹿しい伝統のせいでこんなところにいるんだ。言っただろう?私は君を、悪しき伝統から守りたい、って」
「っ!?」
雅は、絶句していました。
それでもなんとか気を取り直した様子の雅は、言葉を絞り出しました。
「雑賀家を、馬鹿にするな!あたしは当主になって、雑賀家を、立て直すんだっ!だからあたしは、そのためならあんたの命だって、とってみせる!これはあたしの意志なんだ!!」
「だったら何故君は、そんなに泣いているのかな?」
平八が筵を避けられながらも、雅とのすれ違いざまにそっと雅の目に浮かぶ涙を指で拭ってそう言い、すぐにまたその場を離れました。
「っ!?」
雅が再び、言葉を失っていました。
平八の筵を避けるために激しく動いていた雅が、いとも容易く平八の接近を許し、その身に触れられたのです。
それはつまり、平八に害意があれば、その瞬間に自身の命が刈り取られていてもおかしくはないということ。
これまで天才美少女と呼ばれていた雅には、初めての経験だったと思います。
後に雅は、そんな経験、この時が最初で最後だったと言っていたわ。
まぁ、最後っていうのは、雅の強がりかもしれないのだけれど。
でもそれ以上に、彼女は戸惑っていたと言っていたわね。
それはもちろん、自身の目から流れる涙に、ね。
彼女自身、自分が涙を流していたことに気付いてはいかなかったみたい。
その時彼女の中で、何かが折れそうだったと言っていたわ。
それでも当時の雅は、そんなこと一切表情には出さずに、言ったの。
「こ、これはあれよ!汗よっ!」
「・・・うん、そうだね。女性の言い訳は、黙って受け入れるのが良い男ってもんだよね」
「勝手に言い訳って決めるなっ!!」
そう言うと雅は、筵を持つ平八から距離を取りました。
「あんたが自分の術を使うなら、あたしだって、やってやる!天才美少女と呼ばれる所以、身を持って味わいなさい!」
雅がそう言った直後、突然平八が身を躱しました。
すると先程まで平八がいた場所を、手裏剣が通り過ぎていきました。
「これは、さっき使っていた術だね―――うわっと!」
平八が話していると、いくつもの手裏剣が忽然と姿を現し、次々に平八を襲っていきました。
平八はそれらを避けながら、ブツブツと呟いていました。
その間にも手裏剣は平八を襲い続けました。
さすがの平八も、音もなく突然現れる手裏剣を全て避けることは難しかったようで、服は所々破れ、そこからは血が幾重にも流れていました。
「ぐっ」
そしてついに手裏剣が平八を捉え、いくつもの手裏剣が平八に突き刺さりました。
そのまま地に膝をついた平八は、それでも嬉々とした表情を浮かべて、雅を見上げていた。
「凄い術だ!これは、空間を曲げた術だね!?実際には別の場所にある手裏剣を、ここに呼び出しているんだね!?しかもご丁寧に、それぞれの手裏剣には別々の属性の忍力を纏わせて、術での回避にまで対策がなされている。素晴らしい!!」
「これがあたしだけのオリジナルの術のひとつよ。ほかにもいくつかあるけど―――」
「いょ~~~~~~~ぉ!ポン!!」
突然、雅の脳内にそんな音が聞こえてきたと、後日雅から聞きました。
そんなことを知らなかった私には、雅が突然平八に驚愕の表情を向けたようにしか見えませんでした。
「あ、あんたまさか・・・」
雅が、そう言葉を絞り出していました。
「お。正解だったみたいだね。さすがに、契約には制限がかかっていたみたいだけど」
手裏剣による傷を治癒の術で治しながら、平八が楽しそうに笑っていました。
「あ、あたしはこの術を作るのに長い時間を使っていたのよ!?それをあんたは、この短時間でやったというの!?」
雅のその言葉で、2人に何が起きたのか私にもわかりました。
平八は、雅が使った術を避けながら、その力の配分を分析し、その術との契約を試みたのです。
おそらくその際に、雅の脳内では術の契約者が現れたことを知らせる何かしらの音が、響いたのだと思います。
でもおそらく、雅の術は契約に制限を設けているのか、もしくは雅のみを使用者に設定しているのか、いずれにしても、平八はその術との契約にまでは至らなかったのだと思います。
雅の術は、本当にすごい術でした。
おそらく、相手が平八でなければ対応することはほとんど不可能なのではないでしょうか。
私も力の感知には自信があります。
でも、空間を捻じ曲げて突然目の前に手裏剣を出されたら、さすがの私でも対処はできないと思います。
しかもその上に、それぞれの手裏剣には別々の属性忍力を纏わせている。
雑賀雅は、本当に天才なのだと改めて思いました。
しかし、そんな雅すらも驚愕させる平八。
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