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彼らの日常と蠢く影
第181話:やって来た酔っ払い
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「ふーん。可愛い子に裏拳された、ねぇ。シゲ、俺に喧嘩売ってる?」
遅れてやってきた恒久が、重清の部屋でこれまでの経緯を聞いて面白くなさそうに言った。
「いや、売ってないし、むしろツネこそ喧嘩売ってない?どう考えてもここは、おれに同情する場面でしょ!?」
重清が、そんな恒久に言い返す。
「2人とも、落ち着いて。ツネ、今回はシゲの言うことが正しいよ!絶対、羨ましがることじゃないでしょ!?」
聡太が2人の間に立つも恒久は2人に反論する。
「いや、どう考えても羨ましいだろ!可愛い子にボディタッチされたんだぞ!?」
「いや、タッチってレベルじゃないからね!?スゲー痛かったんだぞ!?見ろよここ!めちゃくちゃ腫れてるだろ!?」
重清は、自身の頬を指して叫ぶ。
「しかも、『末席』とか『潰すぞ』とか言われたんだそ!?もう、頬よりも心がズタボロだよっ!!」
重清が、涙を流しながら言うと、
「「末席??」」
聡太と、これまで荒れていた恒久が声を揃えた。
「え、そこ食いつく所!?」
「いや、ウチも伊賀家の中じゃ末席らしいからな。意外と俺、そこ気にしてるから、気になっちまった」
「あー、そういえば前に恒久のお父さんがそんなこと言ってたね」
重清は、恒久の言葉に呑気にそう答えた。
「シゲのことを『末席』なんて呼ぶってことは、もしかしてその人、雑賀家の偉い人なんじゃないの?」
「さすが聡太君。その通りだよ」
突然、重清の扉の奥からそんな声が聞こえ、重清の父、雅司が部屋へと入ってきた。
「出たな、タイミングよく部屋に入ってくる雑賀家」
恒久が、そんな雅司を忌々しそうに見ていた。
「いや、それ1回だけだよね?そして、私は君とは今日で会うの2回目だよね?そんなに噛みつく!?え、反抗期なの?触れる者全て傷つけるタイプの反抗期なの!?」
「シゲ、お前んとこの親父さん、いつもこんな感じなのか?」
恒久は、雅司を無視して重清に目を向けた。
「普段はもう少し静かなんだけどね。ほら、父さんの手元見て?ビールあるでしょ?酔ってるんだよ」
「聡太君!早速お土産のビールいただいているよ!」
そう言って雅司は、ビールを掲げて聡太に笑いかけた。
「あ、はい。喜んでもらえたようで何よりです」
「さすがは聡太君のお父さんだね!私が酒好きだって、よくわかっていらっしゃる!それに比べて伊賀家は・・・」
雅司は、ため息をついて恒久を見る。
「はぁ!?そんなこと言うか!?ウチだって野菜たっぷり持ってきただろうが!」
「あ、うん。それについては感謝してるよ。もう、妻が大喜び」
「おいシゲ!なんなんだよお前の親父さん!!」
恒久に親指を立ててビールを飲む雅司を指さして、恒久が叫ぶ。
「あー、もう無視しちゃって。酒の入った父さんはただただ面倒くさいだけだから」
「おい重清!お前いつから父さんにそんなこと言うようになったんだ!?反抗期か?親と少し距離置きたくなるタイプの反抗期か!?」
「ね?」
「・・・お前も、色々と大変なんだな」
「あの~」
そんな中、聡太が酔っ払いに声をかける。
「シゲが会った女の人って、やっぱり雑賀家の人なんですか?」
「おっ、さすが聡太君!その通りだよ!」
「いやそれ、さっきも言ってただろ」
恒久が、雅司につっこんだ。
人の親であろうとも、お構いなしにため口なのである。
「さっきの方は、雑賀家本家の娘さんなんだよ。えーっと、そうそう!近くに寄ったってことでわざわざご挨拶に来てくださったのさ。手土産なんて何も無かったけど」
雅司が、若干口ごもりながらも手に持ったビールを撫でて言った。
「えっと、本家の人って、そんなに偉いんですか?」
雅司の口調を不思議に思った聡太が、おずおずと尋ねると、
「まぁ、そりゃぁね。その辺は、私の話しぶりで察してくれ。智乃だって、重清がやられたとき、何も手出ししなかっただろう?」
「なーる。ま、別にそうそう本家って人達と絡むこともないんでしょ?一応気をつけとくけどさ」
重清が、納得したように頷いて吞気そうに言う。
「・・・だといいがな」
雅司は、重清の言葉に一瞬苦々しそうな顔をしてそう呟き、すぐにまた酔っ払いに戻る。
「そんなことより、もうすぐ晩飯できるってよ。怜央と智乃が今母さんを手伝ってるから、お前らも下に来いよ」
そう言って、雅司は重清の部屋を後にした。
「雑賀家も、色々と大変なんだな」
雅司がいなくなった部屋で、恒久がボソリと呟いた。
「雑賀家も、ってことは、伊賀家も?」
重清が、そんな恒久を見る。
「まぁ、な。その話はいつかするよ。それより、さっさと飯食いに行こうぜ」
「・・・だね」
恒久を心配そうに見た聡太がそう答えると、重清と恒久もそれに頷き、3人は夕食に向かうのであった。
遅れてやってきた恒久が、重清の部屋でこれまでの経緯を聞いて面白くなさそうに言った。
「いや、売ってないし、むしろツネこそ喧嘩売ってない?どう考えてもここは、おれに同情する場面でしょ!?」
重清が、そんな恒久に言い返す。
「2人とも、落ち着いて。ツネ、今回はシゲの言うことが正しいよ!絶対、羨ましがることじゃないでしょ!?」
聡太が2人の間に立つも恒久は2人に反論する。
「いや、どう考えても羨ましいだろ!可愛い子にボディタッチされたんだぞ!?」
「いや、タッチってレベルじゃないからね!?スゲー痛かったんだぞ!?見ろよここ!めちゃくちゃ腫れてるだろ!?」
重清は、自身の頬を指して叫ぶ。
「しかも、『末席』とか『潰すぞ』とか言われたんだそ!?もう、頬よりも心がズタボロだよっ!!」
重清が、涙を流しながら言うと、
「「末席??」」
聡太と、これまで荒れていた恒久が声を揃えた。
「え、そこ食いつく所!?」
「いや、ウチも伊賀家の中じゃ末席らしいからな。意外と俺、そこ気にしてるから、気になっちまった」
「あー、そういえば前に恒久のお父さんがそんなこと言ってたね」
重清は、恒久の言葉に呑気にそう答えた。
「シゲのことを『末席』なんて呼ぶってことは、もしかしてその人、雑賀家の偉い人なんじゃないの?」
「さすが聡太君。その通りだよ」
突然、重清の扉の奥からそんな声が聞こえ、重清の父、雅司が部屋へと入ってきた。
「出たな、タイミングよく部屋に入ってくる雑賀家」
恒久が、そんな雅司を忌々しそうに見ていた。
「いや、それ1回だけだよね?そして、私は君とは今日で会うの2回目だよね?そんなに噛みつく!?え、反抗期なの?触れる者全て傷つけるタイプの反抗期なの!?」
「シゲ、お前んとこの親父さん、いつもこんな感じなのか?」
恒久は、雅司を無視して重清に目を向けた。
「普段はもう少し静かなんだけどね。ほら、父さんの手元見て?ビールあるでしょ?酔ってるんだよ」
「聡太君!早速お土産のビールいただいているよ!」
そう言って雅司は、ビールを掲げて聡太に笑いかけた。
「あ、はい。喜んでもらえたようで何よりです」
「さすがは聡太君のお父さんだね!私が酒好きだって、よくわかっていらっしゃる!それに比べて伊賀家は・・・」
雅司は、ため息をついて恒久を見る。
「はぁ!?そんなこと言うか!?ウチだって野菜たっぷり持ってきただろうが!」
「あ、うん。それについては感謝してるよ。もう、妻が大喜び」
「おいシゲ!なんなんだよお前の親父さん!!」
恒久に親指を立ててビールを飲む雅司を指さして、恒久が叫ぶ。
「あー、もう無視しちゃって。酒の入った父さんはただただ面倒くさいだけだから」
「おい重清!お前いつから父さんにそんなこと言うようになったんだ!?反抗期か?親と少し距離置きたくなるタイプの反抗期か!?」
「ね?」
「・・・お前も、色々と大変なんだな」
「あの~」
そんな中、聡太が酔っ払いに声をかける。
「シゲが会った女の人って、やっぱり雑賀家の人なんですか?」
「おっ、さすが聡太君!その通りだよ!」
「いやそれ、さっきも言ってただろ」
恒久が、雅司につっこんだ。
人の親であろうとも、お構いなしにため口なのである。
「さっきの方は、雑賀家本家の娘さんなんだよ。えーっと、そうそう!近くに寄ったってことでわざわざご挨拶に来てくださったのさ。手土産なんて何も無かったけど」
雅司が、若干口ごもりながらも手に持ったビールを撫でて言った。
「えっと、本家の人って、そんなに偉いんですか?」
雅司の口調を不思議に思った聡太が、おずおずと尋ねると、
「まぁ、そりゃぁね。その辺は、私の話しぶりで察してくれ。智乃だって、重清がやられたとき、何も手出ししなかっただろう?」
「なーる。ま、別にそうそう本家って人達と絡むこともないんでしょ?一応気をつけとくけどさ」
重清が、納得したように頷いて吞気そうに言う。
「・・・だといいがな」
雅司は、重清の言葉に一瞬苦々しそうな顔をしてそう呟き、すぐにまた酔っ払いに戻る。
「そんなことより、もうすぐ晩飯できるってよ。怜央と智乃が今母さんを手伝ってるから、お前らも下に来いよ」
そう言って、雅司は重清の部屋を後にした。
「雑賀家も、色々と大変なんだな」
雅司がいなくなった部屋で、恒久がボソリと呟いた。
「雑賀家も、ってことは、伊賀家も?」
重清が、そんな恒久を見る。
「まぁ、な。その話はいつかするよ。それより、さっさと飯食いに行こうぜ」
「・・・だね」
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