おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
187 / 519
彼らの日常と蠢く影

第179話:夏休みも終わりに近づき

しおりを挟む
なんだかんだあった夏休みも、いよいよ最終日の前日となったこの日。

忍者部の面々は部室に集まっていた。
もちろん、社会科研究部の部室ではなく、いつも修行をしている雅の作った空間である忍者部の部室に。

「あー。結局、夏休みの間に新しい術できなかったな~」
そんななか重清が、残念そうに呟いていた。

「まぁ、術なんてそうそう自力では作れないらしいから、仕方ないよ」
ソウが、重清を励ますように返した。

「自力で2つも術を契約したソウに言われてもなー」
重清が、ソウをジト目で見ていると、一同の前に立ったノリが全員を見渡して話し出す。

「明日で夏休みも終わりだ。明日は1日休みとする。今年は色々とあったが、みんな毎日よく頑張ったな。麻耶も、こいつらに付き合ってくれて助かった。これからもよろしく頼むな」
ノリはそう言って麻耶に頭を下げた。

「いいえ、私も、良い修行になりました。みんな、これからもよろしくね!」
そう言って一同に笑顔を振りまく麻耶に重清は、

「そういえば、麻耶姉ちゃんって、2中に転校してくることになるの?」
そう、声をかけた。

「いいえ、転校はしないわよ。あくまで1中に在学しながら、修行だけこっちでやるってだけ。私にだって1中に友達いるし、わざわざ転校するまでもないわよ」
「でも、なんか気まずくないの?」

「その辺は気にすんな。俺の方からロキには話してるから、そこまで気まずくなることはねーだろ。」
「ノリさんの言う通りよ重清。まぁ、一部面倒なことになりそうなやつはいるんだけどね」
麻耶は、自身にあからさまに好意を寄せるイチを思い浮かべてため息をついた。

「モテる女は大変だな、麻耶。でも俺としては、お前ら全員、この夏休みの間に誰1人として恋人ができず、本当にうれしい限りだ。毎日を修行で拘束した甲斐があったってもんだ」
「いやそこかよっ!そもそも別にここでの修行は実際には時間取られてねーから、意味ねーだろっ!!」
ノリの言葉に、恒久がつっこんだ。

「いいんだよ、んなことは!お前らが青春してねーことの方が俺には大事なんだよ!!たまにいるんだよな、夏休みの間に『彼女出来ちゃいました』とか言い出すヤツが。今年はそんなヤツがいなくて、俺は本当に嬉しいぞ!」
「そんなに人の幸せがムカつくんだったら、さっさとアンタが恋人の1人でも作れよ!」
恒久が、再びノリにつっこむ。

「うるせーな!!教師ってのは忙しいんだよっ!恋人とか作る余裕も無いわ!!あー、彼女欲しい」
ノリは、恒久に返しつつ、最後に本音を駄々漏らしていた。

「ノリさんって、普通にかっこいいのに、なんで彼女作らないんだろうね?」
「あー、なんかね、ノリさんには理想の出会いがあるらしいわよ」
そんなノリをしり目に、麻耶とアカがそう話していた。

「あっ、それおれも聞いたことある!」
アカの言葉に、重清が食いついた。

「ちょっ、その話はやめろっ!雅様だな、アカに言ったのは!」
ノリが、焦ってアカたちに割って入る。

「でも、どんな出会いなのかは聞いてないんですよね。ノリさん、教えてくださいよ~」
アカが、焦るノリにニヤニヤしながら返すと、

「だっ、誰が話すか!それよりもお前ら、ちゃんと夏休みの宿題は終わらせてんだろうな!?
こういう時、重清あたりが全くやってなくてパニクるのが定番だろ!?」
「え、ちょっと、なんでおれ!?」
話を逸らすためのノリの流れ弾に着弾した重清が、抗議の声をあげた。

「ちゃんとやってるし!な!」
「うん。ぼくたち、修行の後にいつもt『中央公園』でやってたからね」
「あぁ、あそこがあるお陰で宿題が捗ったもんな」
「本当よね。わたしも、みーちゃんとの修行が終わったら一緒にやってたから、みんなちゃんと宿題終わらせることができたもんね」
重清達1年生が、口々にどや顔でノリに返した。

「そりゃよかったよ。ってことは、あっちの方もちゃんとできてるんだよな?」

「「「「あっち、とは??」」」」
ノリの言葉に、それまでどや顔だった4人がポカンとした表情でノリを見た。

「お、お前らまさか、忘れてるんじゃないだろうな?」
そんな4人に、シンが立ち上がって言った。

「いや、立ち上がるほどのことですか?」
恒久が、そんなシンに笑ってつっこんだ。

「もしお前らが忘れてたんなら、立ち上がるほどのことなんだよ。
お前ら、1週間後、何があるかわかってるか?」

「「「「1週間後??」」」」
シンの言葉に、4人が再びポカンとする。

「うん、これは忘れてるねー。」
4人の表情を見たショウが、笑いながらシンに代わって話し出した。

「この学校ではね、夏休み明けの1週間後に、文化祭があるんだよー。うちではクラスごとの出し物とかは無くて、あくまで文化部の発表の場、って位置づけだからねー」

「「「「文化祭??」」」」
4人が、首を傾げた。

「はっはっは!こいつら、完全に忘れとるぞ!」
「あーあ」
ノブとケンが、4人に憐れんだ視線を向けた。

ノブが憐れんでいるかはさておき。

「俺、最初の方で話したよな?ここは忍者部ではあるが、表向きは社会科研究部だ。だから、文化祭では社会科研究部としてそれなりに何かをまとめた報告書を出す、って。」

「「「「あ」」」」
4人は、それぞれに絶望の表情を浮かべるのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

田中は生存中?

10期
ホラー
彼女の名前は田中すず、17歳。 至った普通の、ニンニクや刺激物が大好きなだけの女子高生であった。 そんな彼女の生きていく環境はある日の境にガラリと変わり、一部の地域の人間はゾンビ化してしまったのである。 一人ひっそりと隠れて生きる田中すずであったが、彼女果たして生きていると言えるのだろうか。 ※一話1000〜3000文字ほどです。 十二話完結。予約投稿済みです。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

処理中です...