おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
148 / 519
彼らの日常と蠢く影

第141話:年上には敬語を使おう

しおりを挟む
忍者部の部室へと移動した一同の前に、改めて自分麻耶が立つ。

「改めまして、雑賀麻耶です!今日からこちらでお世話になることになりました!よろしくお願いしますっ!!」

麻耶はそう言って、再び深々と頭を下げた。

「いやいやいや、麻耶姉ちゃん、どゆこと!?」
そんな麻耶に、全員を代表して重清がつっこむ。

「どゆこともなにも、まんまの意味よ。私、1中の忍者部を辞めてきたのよ。
あんな卑怯なことする人たちと一緒になんて、修行したくなかったし。」
ない胸を張ってそう言い切る麻耶の言葉に、ソウがあっと声を上げる。

「そうか。麻耶さんも血の契約者だから、向こうの顧問の先生に縛られないんですね。」
「あら、あなたは確か、ウチのトクを倒したソウ君ね。
その通りよ。本当はおばあちゃんの所でお世話になるつもりだったんだけど、初めての弟子に手一杯だぁって、ここを紹介してくれたのよ。」

「ま、そういうことだ。お前らも、麻耶の強さはよく分かってるだろ?色々と学ぶことも多いんだ。麻耶の中学卒業までの間、仲良くやってくれ。」
ノリが、そう一同に笑いかける。

ノリの他人事のような笑顔にそれぞれが反応に困っていると、

「よ、よろしく。」
ケンがボソッと言葉を漏らした。

「ま、あんたの強さは俺らも身を持って分かってるからな。よろしくな。」
シンが、そんなケンの様子にニヤつきながらもそう言うと、

「がっはっは!よろしく頼むぞ!」
ノブもそう言って笑っていた。

「あんた達は、あの時の3人ね。刀を上手く操っていたのがケン、幻術が上手かったのがシン、そしてゴリラがゴリだったわね。」
麻耶がそれぞれの顔を見ながら、そういったあと、恒久に目を向ける。

「えっと、キミは?」
「恒久。伊賀恒久だ。中忍体には出てなかったから、まともに会うのは初めてだな。俺はモニター越しにアンタのこと見てたけどな。」

「あ。あなたが茜の言っていたムッツリ君ね。」
「誰がムッツリじゃいっ!っていうかアカめ!人のことなんて紹介してやがんだっ!!」
久々の恒久のつっこみが炸裂する。

その時。
「っていうかあなた達さぁ。」
そう言った麻耶の姿が突然消える。

「「「「いってぇ!!!」」」」

直後、シン、ケン、ノブ、恒久が頭を抑えて叫び、麻耶が元いた場所に現れて拳をさすって笑顔で立っていた。

「私の方が年上なのに、なんで当たり前のようにタメ口なのかしら?」

シン「なにするんだ、ですかっ!」
ノブ「っていうか俺は、ゴリじゃなくてノブだ、です!」
ケン「痛いけど、これはこれで。」
恒久「シゲっ!雑賀家の女はどんな教育受けてんだっ!!」

約1名がおかしな扉を開きつつ、4人が思い思いに叫ぶ。

「麻耶姉ちゃん、おれも敬語じゃなきゃダメ?」
「いや、呑気かっ!!」
重清の言葉に、頭を抑えて恒久が恨みがましそうにつっこむ。

そんなことを無視して麻耶は、
「あんたはいいわよ、いつもどおりで。重清から敬語で話されるなんて、なんだかむず痒いし。」

「流石麻耶姉ちゃんっ!おっぱいちっちゃいけど器はでかおごっ!!!」

その言葉を残して、重清はその場から消え、皆が気付いた時には壁にめり込んでいた。

「いやー、これはまた、騒がしくなったねー。」
「ほんとですねぇ。」
麻耶の被害を受けなかったショウとソウがそれぞれプレッソとチーノを撫でながら、呑気にお茶を啜っていた。

一体どこからお茶を出したのだろうか。

方や、麻耶のやりたい放題っぷりをみていたノリはというと。

(あー、こりゃ間違いなく雅様の孫だわ。これまでの中忍体ではしっかりしてそうだったから安心してたけど、こっちが素か。
あー、雑賀家の血、甘く見てたわー。)

1人、物思いに耽っていた。

「そういえばー。」
手に持った湯呑を置いて、ショウがプレッソを撫で続けながら麻耶を見る。

「1中、中忍体はどうなるのー?」
「あんたはショウ、だったわね。1中なら、私が抜けたから人数足りなくて出場できなくなったわね。
まぁ、そうでなくても出場は出来なかったと思うけど。」

「んー?それはどういうことかなぁー?」
「あんた、いつもそんな話し方なのね。まぁいいわ。えっと・・・」
麻耶はそこで少し言い淀んで重清をチラリと見たあと、おもむろに口を開く。

「コトが、忍者を辞めたのよ。」

「えっ。なっ、なんで!?」
その言葉に、めり込んでいた壁から出てきた重清が反応する。

「罪悪感を感じたんじゃないかしら。あの日も、帰りずっとぼ~っとしてたし。」

コトを元々は可愛い後輩だと思っていた麻耶にとっても、コトが忍者を辞めたことは非常に悔いの残る結果であった。

それでもそれを表に出さず、気丈に振る舞う麻耶であった。

「そっかぁ・・・」
「重清、会いに行こうなんて考えないでね?あの子はもう、何も覚えていないんだから。」

「わ、わかってるよ。」
「いや、お前今、絶対会いに行こうと思ってただろ?」
「プレッソ、わかっててもそこに触れないのが優しさよ。」

「うるせーぞプレッソ!それにチーノ!その優しさは、それはそれでなんか辛くなるからっ!!」
「あんた達、ホント仲良いわね。」

「「どこがだよっ!!」」
「そうでしょう?」

ハモる重清とプレッソ。そして、そんな2人微笑ましく見る、チーノ。

こうして2中忍者部は新たな仲間を加え、更に騒がしくなったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「一人で何でもできる女って嫌い」と婚約破棄されましたが、部下に慕われていました。仲間と一緒に今日も妖から都を守ります。

蜜柑
ファンタジー
*第17回ファンタジー小説大賞参加中です。応援いただけると嬉しいです。 人を喰らう異形の存在――妖がはびこる和国。妖から人々を守るのが、代々妖と戦うための特殊能力【家紋】を持つ者で構成される「対妖防衛隊」 「俺、何でもひとりでできる女って嫌いなんだよね」 首都東都を守る東都本部・精鋭部隊である第参部隊長を務める「藤宮 綾子」は、ある日婚約者で同じく防衛隊員の「神宮司 修介」から、婚約破棄を告げられる。 「俺さ、今、すごくかわいい子と付き合っているんだ。お前と違って、俺がいないとだめな子なんだよ」 彼は別の女性と婚約するために、綾子との婚約は破棄する、というのだ。 「……お一人での参加でも結構ですけど」 婚約披露宴に招待された綾子は、ひとりで参加するか悩んでいた。 そこに声をかけたのは、部下の「鈴原 彰吾」だった。 「俺じゃダメですか?……お試しでいいですから!」 一方、東都では若い女性が妖により白髪の鬼にされる事件が相次いでいた。 その陰に見え隠れするのは、かつて綾子を鬼にしようとし、父母を失った原因の妖――九十九(つくも)。 九十九と綾子の因縁はまた廻る。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

色々あって掃除婦になりました。

みるみる
エッセイ・ノンフィクション
 春、子供の中学入学、通信教育費、車の保険で一気に50万円もの出費がありました。かろうじて3桁あった貯金は一気に半分に減り、さらには夫が年明けに新車でファミリーワゴンを新車で買うと宣言。 「頭金50万円で、月々のローンが二万円の車なら買っても大丈夫だと思う。」  そう言った私に夫はすかさず突っ込みを入れました。 「いやいや、それじゃ中古車すら買えねーから!っていうか、他所の家は家を建てたり新車も買いまくってるのに、なんでうちはできねーの?他所の奥さんは皆んな看護師や大企業でフルタイムで働いてるのになー。」 「‥‥。」  ぐうの音も出ずに黙る私。  自分の実家の家族の為に仕事を辞めて一年‥。自分の給料を貯めておいた通帳は、前の車が壊れて乗れなくなった為新車を買ったり、娘の歯の矯正の為に使ってしまい、いまや数百円の残金しかない状態。 「また働きたい‥。」  そう思ってはいるけど、私の自由になれる時間は週に二、三日。しかも午前中だけ。  時々夫の休みの日を利用して短期のバイトをしながらも、パート探しを続けていると、週3日で午前中だけの掃除婦のパートを発見。すぐさま応募し働き始めました。  そんな私に対して夫は一言。 「とうとうお前も落ちぶれるところまで落ちぶれたな。っていうか、なんで普通に事務員とかにならないで、そんなニッチな所を攻めるかな。頭おかしいんじゃない?」  子供達も‥ 「お母さん、仕事から帰ってきたらすぐにシャワー浴びてね。」  夫の実家は‥ 「‥また何でそんな所に‥。もっと良いところがあるでしょうに。っていうか、息子の給与だけで生活できないなんておかしい。絶対にやりくりのどこかで無駄があるはずよ。」  ‥っていうか、そもそも掃除婦ってそんなに世間から差別されるものなの?  私は皆んなが嫌がるトイレ掃除をする事は立派な仕事だと誇りを持って言えますが!  だから家族には馬鹿にされても、自分の親に親孝行をしたいし、限られた条件の中でやっと見つけたこの仕事を辞めるつもりはありません。  それに見栄っ張りで贅沢?だけど、新築の家を建てる事を諦めて私の実家に間借りして暮らす選択をしてくれた夫の為に、大きい新車を買う頭金を少しでも多く貯めておきたい。  そんな私‥一主婦が節約をしながらお金を貯めたり、夫婦喧嘩や親子喧嘩をしたりする日々を気ままにブログ風の日記にしてみました。  

しあわせ

のり明太
BL
ゆっくり更新してます。pixivに上げてるものと同じです。

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

塩対応のアイドルにジョブチェンジします!

有沢真尋
恋愛
駆け出し新人アイドルである双子の妹彩菜(あやな)が、どうしても外せない舞台を前に高熱を出してダウン。 妹激推しの双子の兄玲央名(れおな)は、やむを得ず妹の代わりとしてステージに立つ。 それはとある高校の学校祭。 見事にアイドル一位の座に輝いてしまったために、学校祭の終わりまで一日アイドルとして校内に留まることになる。 世話役は美人生徒会長。 正体を知られるわけにはいかないと、玲央名はひたすら塩対応を続けるが……? 表紙はかんたん表紙メーカーさま

処理中です...