おれは忍者の子孫

メバ

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いざ、中忍体!

第110話:控室への来客

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(は!?麻耶姉ちゃんいるの!?)
そんな重清の叫びにも似た声が、ソウの頭に響く。

「シゲ、うるさい。シンさん達の報告では、雅さんの孫で、雑賀麻耶って名乗ったらしいよ。聞いてなかったの?」

(マジかぁー。いや、確かに麻耶姉ちゃんは1中の校区に住んでるし、忍者なのかなぁーとか思ってはいたけど・・・)
「いやそれ、普通に気付こうよ!」

(でも、何でおれを倒したいと思ってるのか、わかんないんだよねぇ。)
「シゲの事だから、何も考えずに失礼な事でも言ったんでしょ?
とにかく、気を付けてね!じゃっ!」

(ちょっ、ソウ!お前時々失礼なことを―――)
「ふぅ。」

「シゲ、何だって?」
「雑賀麻耶って人がいることに、驚いてたみたいです。」
「そうなんだー。雑賀麻耶、確かに一昨年の中忍体でも見かけたなぁ。可愛い子だったよー。」

「え!?」
「ん?どうしたの?」
「ショウさんも、そういう事言うんですね。」
「そりゃ言うさー。僕だって男だからね。普段はほら、そういうのにうるさい人がいるじゃない?」

「あー。」
ソウは、とある2中忍者部の顧問を思い浮かべてそう呟いた。

「っと。無駄話なんて、シゲみたいだね。
それよりもソウ、1中の校旗の場所までは、どれくらいかな?」
若干重清をディスりながらのショウの言葉に、ソウはスマホ型レーダーに目をやる。

「んー。このままもうしばらく進んだところですね。」
「よーし。じゃぁサクッと見つけちゃおう!」
「おー!」
どことなくピクニック感のある2人は、そのまま街の中を進んでいくのであった。


「・・・あいつら、覚えとけよ。」
ノリが目の前のモニターに目を向けながら呟いた。

中忍体控室では顧問のノリと、参加していない恒久、アカが目の前の6つのモニターで、中忍体の様子を観戦していた。

「でもまぁ、ショウさんの言うこと、間違っては無いけどな。」
最早完全にノリに敬語を使う気が無くなっていた恒久が、そう言ってニヤニヤと笑っていた。

「ショウさん、ちゃんと女の子に興味あったんだ!ってことは、わたしにも可能性はあるわけよね・・・」
恒久の隣では、アカが真剣な顔でそんな事を呟いていた。

「部内恋愛禁止。」
そんなアカに、ノリは冷めた目でそう切り捨てる。

「ノリさんのケチー!あっ、じゃぁ、ショウさんが引退したら、付き合っても良いってことですよね!?」
「ん?忍者部に引退とかないぞ?」
ノリが、ポカンとした表情でアカに返す。

「えっ!ちょっと、それ絶対今考えたでしょ!」
「いやいや、ほんとに。確かに中忍体終わっちまったら、3年は大会とは関係なくなるけどな。
でもお前らは忍者なんだ。引退なんて、あるわけねーだろ?」
そう言って、今度はノリが、ニヤニヤと笑い出す。

「そんなぁ。じゃぁ、ショウさんと付き合うのは、来年の4月からかぁ。」
「いやお前、ショウさんの気持ちガン無視かよ。」
恒久がアカにつっこんでいると、

「中学生の恋愛を禁止するなんて、これだから彼女いない歴=年齢、のやつは困るぜ~。」
そんな声が、控室の扉から聞こえてきた。

その直後、扉が開かれ、そこから茶色く染めた長髪に見え隠れするピアスのある、ダボダボのジャージの男が控室へと入ってくる。

「あっ!」
男の姿に、恒久が声を上げていると、

「ロキ。貴様、何しに来やがった。」
突然の客に対して、ノリが睨みつけながら冷たく言い放つ。

「おいおい、同級生に対してそれは冷たいぜー。
ま、お前は昔っからそんなヤツだったよな。
今日は、俺には用はないんだぜ?
こちらの方が、お前にご挨拶したいんだとさ。」

そう言ってロキと呼ばれた男が、後方にわざとらしいくらいにうやうやしく礼をする。

「お主らは、いつまでたっても変わらんなぁ。」
そう言いながら、1人の好々爺然とした老人がロキの後ろから現れる。

「これは、トウさんでしたか。ご無沙汰しております。」
「ノリ、久しぶりだな。そう畏まるな。」

「ノリさん、この人たちは?」
3人のやり取りに、アカが口を挟む。

「この方は、根来(ねごろ)トウさん、3中の顧問をされているんだ。」
「で、俺は1中顧問の風魔ロキ!よろしく頼むぜ!」
ロキはそう言って、親指を立てる。

ノリはそれを無視して、トウに目を向ける。
「それでトウさん。本日はどのようなご用件で?」
「ワシが今年で定年だからな。その挨拶だ。」
「そう、でしたか。トウさん、もうそのようなお年で。」

「万年最下位の我が忍者部であったが、なかなかに楽しかったわ。お主らが来てからは、特にな。」
「私も、トウさんには色々と学ばせて頂きました。」

「よせ、むず痒い。平八様の元で学んだお主に、ワシから何を学ぶことがあるか。」

「いやーでも、トウの爺さんの『男女1人ずつ入部させる』ってやり方は、なかなか面白いと思うんだぜ?」
ロキが、ノリに無視された腹いせでもするように話に割って入る。

「そうだろう?お陰で、より楽しめたわ。」
そう言ってニヤリと笑うトウ。

「楽しめた、とおっしゃいますと?」
トウの言葉に、ノリが首を傾げると、

「皆、なかなかに『青春』しておったわ。」
「おじいちゃん!その話詳しくっ!!」

アカが、突如としてその話に食らいついてた。
小難しそうな話から、突如として恋バナに流れが傾いた途端の素早い行動。

恋愛に貪欲な女子、アカなのであった。

「アカ!トウさんに失礼だろ!トウさんも、趣味が悪いですよっ!」
「えぇーー!いいじゃないですかぁーー!ね!おじいちゃん、いいでしょ!?」
「フム。おじいちゃん、か。これはこれで・・・」
「なっはっは。トウの爺さんも、喜んでるんだぜ!」

アカの乱入で、場がわちゃわちゃしている中、恒久だけはロキをじっと見ているのであった。
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