おれは忍者の子孫

メバ

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いざ、中忍体!

第95話:悪意の話題選択

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保健室を後にした重清達は、社会科研究会の部室へと戻ってくる。

重清が図書室から部室への扉を開けると、そこにはまだ、ノリを除いて全員が帰らずに残っていた。

「あれ?みんなまだ帰らなかったんですか??」
普段であれば既に忍者部での活動が終わり誰もいないはずの部室に全員が残っていたことに疑問を感じた重清がそう言うと、

「俺が、ノリさんに連絡しといたんだよ。」
後ろからシンがそう答える。

「なぁる。でも、ノリさんいなくないですか?」
「さっき、保健室に行くって出ていったわよ。」

重清の言葉に、座っていたアカがそう答えてシンに目を向ける。
「シンさん、何があったんですか?」
「・・・依頼内容も関係してくるから、詳細はノリさんが帰ってきてからだ。」

シンの言葉に、重清達も経屋の椅子へと腰掛け、しばし微妙な雰囲気が辺りに漂う。

「いゃ~」
その沈黙に耐えられなくなった重清が、口を開く。

「カオルンのソウ贔屓は、目に余るものがあるよねぇ!」
「ちょっ、シゲ!?この雰囲気で何でその話題を選ぶの!?」
重清の言葉に聡太が詰め寄ると、重清はただ、ニヤリと笑っていた。

「シゲ、カオルンって、誰だ?」
おそらく女性であろうと思ったムッツリ恒久が、同じくその場の雰囲気に耐えられずに話題に食いつく。

「保健室の花園先生だよ。ソウが大好きみたいでさ。『カオルンって呼んで』なんてソウに言ってたから、おれもそう呼ぶことにしたんだ。」

「おいソウ、なんだその話。聞いてないぞ!」
恒久が聡太を睨みつける。

「いや、睨まれても。ぼくも何がなんだか分かってないんだって。」
聡太がため息をつきながらそう答える。

「あら、シンさんはこの話、食いつかないんですね。いつもなら、いの一番に食いつきそうなのに。」
「アカは俺のことを何だと思ってるんだよ。今はそんな事に頭がついていかないんだよ。」

「でもさっき、保健室で思いっきり食いついてましたよ?」
シンの言葉に、聡太がつっこむ。
自身に向かう矛先を、誰かに向けるために。

「おまっ、まさかソウが俺を裏切るとは思わなかったぞ。」
「はぁ。やっぱり、シンさんはシンさんなんですね。」
「おいアカっ!それじゃぁ俺が、普段からダメなやつみたじゃ―――」

「お前ら。図書館まで声が響いてるぞ。
そもそもここで色恋の話なんて、俺にケンカ売ってんのか?」

アカの言葉に反論しようとするシンの言葉を遮るように、ノリが部室へと入ってくる。

「ここはあっちの部室じゃないんだ。会話には十分に注意しろよ。
どうせこんな話になったのは、どこぞの大魔王の孫のせいだろうが、その話は一旦忘れろ。
ソウ、お前には、後でたっぷり話を聞かせてもらう。」

「えぇ。ぼく何も悪くないのに・・・」
そう言って重清にジト目を向ける聡太は、
(絶対に、シゲと田中さんのことをチクろう。)
そう、心に誓うのであった。

「さてと。シン、どこまで話した?」
一同の前に立ったノリが、そう言ってシンに目を向ける。

「依頼も関係してくるので、まだ何も。」
「そうか。じゃぁまずは俺の方から話させてもらおう。
今回、1つの『お願い』が入ったんだ。『イジメを受けている』って内容のな。」
敢えて『依頼』を『お願い』と言い換えて、ノリが続ける。

「お願いをしてきた者に関しては伏せておく。で、これに当たってもらったのがシン達だ。
シン達が現場に向かったところで、その加害者に会った。そうだな?」
ノリの言葉にシンが頷き、ノリに代わって話し出す。

「はい。そこにいたのは、コウさんでした。」

「「なっ!?」」
シンの言葉に、ケンとノブが声を出して立ち上がり、ショウもまた、言葉を発することはなかったが大きく目を見開いていた。

「その、コウさんって何者何ですか?シンさんが言うには元忍じ―――」
「重清。元『部員』だ。」
重清の言葉をノリが遮る。

それに頷き返して重清が続ける。
「コウさんって人は元部員ってことらしいですけど、それはうちの、ですよね?」
「その通りだ。コウは、近藤浩介は元々、この社会科研究部の部員だった。
コウは3年で、ショウと同じ学年だ。1つ上の代に部員がいなかったこともあって、当時部長を務めていた。」

「そんなっ!そのコウって人は、ショウさんよりも凄かったっていうんですか!?」
茜が立ち上がって声を上げる。

「そうだよ。彼は、僕なんかよりも上だった。力、技術、統率力、全てにおいてね。」
ショウが、呟くようにそう言うと、
「そんな人が、何で・・・」
聡太がそんなショウの言葉に驚いたように口を開く。

「あの人は、暴力事件を起こしたんだ。それも、力を使って。」
ケンが絞り出すように言葉を発し、ノブがそれに続ける。

「さっきノリさんが言ったように、ショウさん達の上の代に部員がいなかったから、俺らは丁度6人。大会に出られるギリギリの人数だった。
それでも、ショウさんとコウさんがいれば、それなりにいい線いける確信があった。
しかしそれも、1年前の事件のせいで・・・」

「全部ダメになっちまったんだよ。」
シンがため息をついてそう締めくくる。

「でも、そんな事件、学校でも全然聞いたことありませんでしたよ?」
手を挙げる恒久にノリは答える。

「さっきケンが言ったろ?力を使ったって。あの事件は、それを理由に協会が介入して、揉み消したんだよ。」
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