おれは忍者の子孫

メバ

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忍者部、戦力強化

第70話:小指いじめ

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修行が始まって3週間たった日の夜。

重清は部屋でプレッソとくつろいでいた。

「あー、なかなか修行上手くいかないな~」
「お前、全然水の属性使えるようになれてないもんな。ノブのやつは使えるようになったってのに。」
「そうなんだよな~。ってうるさいよ!術作れたんだからそこは褒めてくれよ!」

そう、重清は、ついに新しい術を作ることに成功していた。
そしてさらに、ノブは水の属性を発動することに成功していた。
もともと頭よりも体を動かす方が得意であったノブは、雅の感覚的な指導を徐々に受け入れ、ついに体で雅の指導を理解したのである。
脳筋の勝利である。

「みんなの修行は、どうなのかな~?」
「やっぱり、他のやつらの修行状況は聞けてないのか?」
「まぁね。そういう決まりになっちゃったからね~」

重清がそう言いながら布団へと倒れこむ。

何故重清たちはノブ以外の修行状況を知らないのか。

それは、修行初日へと遡る。


2つ目の属性を目指す修行の初日。

それぞれが、属性の修行を終え、重清と恒久が家族との修行、それ以外のメンバーが個人対個人の模擬戦を終え、中忍体ルールでの模擬戦を始めるためにいつもの森の一角に集まっていた。

「ソウ!修行はどんな感じだ?」
「あ、シゲ。それがね~」

「あー、お前らちょっと待て。」
ソウと重清の会話をノリが遮る。
「お前ら、今後、修行の進捗状況を共有することを禁止する。」

「え??」
全員の声が揃う。

「えっと、理由を聞いても?」
恒久が手を挙げる。

「これから毎日、最後に中忍体ルールでの模擬戦を行うわけだが、見知った者同士での模擬戦には、大きなデメリットがある。
それは、相手の手の内が分かっていることだ。」

「なるほど。」
ショウが頷く。

「わかったか?今回、敢えて他の奴らがどんな力を覚えたかを知らない状態にして、最後の模擬戦で、少しでも本番に備えたい。
相手がどんな属性や術を使うかが分からない、そんな状況で咄嗟に判断ができるのか、見てみたいんだよ。」

「そういうことか!」
重清が、目を輝かせる。

「ってことで、ほい。」
ノリがそう言うと、重清と恒久以外のメンバーが、契約書を取り出していた。2人はそれぞれ、近くの者の契約書を覗き込む。
そこには、実力試験の時と同様、こんなことか書かれていた。

----------

(追加遵守事項)

5 師、甲賀ノリが許可するまでの間、新しく覚えた属性及び術の使用を禁止する。これを破るものは、その日から1週間、色んなものの角で足の小指をぶつけることとなる。

----------

「地味っ!罰が地味にいやらしい!!って、あれ?」
恒久がいつものようにつっこんだあと、首を傾げる。

「おれと重清は、これを守ったか、確認しようがなくないですか?それに、罰だっておれ達に課すのは無理ですよね?」
「あー、そこは安心しろ。ですよね?」
ノリがそう答えるのと同時に、恒久の背後にあった木に、突然矢が刺さる。
その矢には、紙が結ばれていた。

突然のことに体を強張らせていた恒久が恐る恐る矢に結ばれた紙を解き、その手の中に広げてみる。

『あたしに任せなさい♡』

「うわぁ、メールよりもレス早い。じゃない!!ちょっと待てよ!もしかしてこれからノリさんが課題課す度に、おれは『恐怖の重清監視システム』の対象になるのかよ!!」
あまりの恐怖と混乱で、敬語も忘れていたノリに詰め寄る恒久。

「もちろん、恒吉さんの」
「許可取ってるんだよな!わかってるよ!!あのクソ親父がっ!!」

「ちなみに、2人には、『小指いじめ』の代わりに、この矢文の主の修行が待ってるからな。」
そう言って親指を立てるノリを見ることもなく、

「「「『小指いじめ』の方がいいよぉーーー!」」」
恒久と重清、そしてプレッソは泣き崩れていた。

「あー、ちなみにこの罰についてもちゃんと」
「『恒吉さんの許可は取っている』だろ!もういいよそれ!あんたの用意周到さは、もう分かったよ!
そして今更だけど、『矢文の主』とかボカシてる意味ねーからな!」
もう、敬語なんか使う気が無くなっている恒久なのであった。

そんな恒久達を『ざまぁ』な顔で見たノリは、それをほっといて話す。
「さて、喜んでいるバカはほっといて。最終日だが、中忍体ルールではなく、2人ペアの遭遇戦にする。」

「遭遇戦?」
ソウが、重清達をちらっと憐れむ視線を送って、口を開く。

「あぁ。今、属性毎にペア組んでるだろ?そのペア毎に、4つのチームで、まとめて戦ってもらう。
中忍体でも、複数校がまとめて試合やるから、その訓練にもなるしな。
ちなみに、ショウは恒久とペアな。」
ノリの言葉に、喜びに打ちひしがれている2人と1匹以外が頷く。

「そのペアの2人ともが2つ目の属性を使えないと、かなり厳しい戦いになるだろうから、お前ら、必死で頑張れよ。」
そう言って笑う、ノリなのであった。


そんな訳で、重清は他のメンバーの修行の状況を把握できていないままなのである。

「あーあ。こんなんで、大丈夫なのかなぁ?」
布団に倒れこんだままの重清が、そう呟く。

「お前、修行の方もだけど、あっちの方はどうなんだよ?」
「ん?あぁ、ガクさんの言ってた、『恐怖と向き合う』ってやつか?全然。正直最近、みんなとの模擬戦でもあの時のこと思い出して、アシが竦むようになっちまってるよ。」
「おいおい、大丈夫なのか?」
「わかんねー。」

そんな会話をしていると、枕元に置いている重清のスマホに、突然メッセージが届くのであった。
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