おれは忍者の子孫

メバ

文字の大きさ
上 下
30 / 519
雑賀(さいが)の血

第28話:ソウ対シン、重清対ショウ

しおりを挟む
「始めっ!」

古賀の声と同時に、ソウの前後左右にクナイが刺さる。しかしクナイは、ソウから2メートル程も離れたところに刺さっていた。
「あ、勘違いしないでね?わざと外してるんだからね。分身の術!」
と、シンの声が先程までいたソウの目の前でないどこかから聞こえてくる。
その声と同時に、クナイのあった場所に4人のシンが現れる。
(幻術!?レーダーを!)
そう思ってソウは、咄嗟にレーダーを具現化する。
「あれっ?」
レーダーを見たソウは、そんな声を上げる。
何故ならレーダーには、中心にしかなかったからだ。
(う、上!?)
ソウが上を見上げると、すぐそこにシンの姿があった。そのままシンは、ソウの持つレーダーを殴り飛ばす。

シンの攻撃でレーダーを飛ばされたソウは、慌ててレーダーと逆の方へ回避してしまう。

すると、4人のシンとそこにあったはずのクナイが消失する。
「仕切り直し。本当だったらここで一気に終わらせるところだけど、今日は色々と試したほうがいいでしょ?」
そう言ってシンが、改めてクナイを具現化する。
それを聞いたソウは、少し悔しい気持ちになりつつ、一度レーダーの具現化を解除してから、再度具現化する。
そしてすぐに、レーダー上のシンの点にタッチしてマークする。
(木砲の術!)
ソウが念じると、一輪の花が出現する。
(木砲なのに、花!?)
そうソウが考えていると、
「準備は出来たみたいだね。じゃ、いくよ?安心してね、このクナイも当たっても切れないようにしてあるから。それでも、痛いのはかわらないけど、ねっ!」
そう言いながらシンが3つのクナイをソウの周りへと投げつける。
「分身の術!」
シンのその声と同時にまた、シンの分身が現れる。
周りに現れたシンが幻術だと思ったソウは、それを気にせず花に攻撃するよう念じる。
すると、花はソウの後ろへと種を飛ばす。
「おっと。」
そう言いながらいつの間にかソウの後ろにいたシンが種を避けるが、種はそのまま方向転換してシンに再度襲いかかる。
シンはそれを手に持ったクナイで弾き落とす。
「ほんとに追尾してくるよ。やっかいだね。」
シンがそう言っていると、突然ソウの腕に痛みが走る。腕を見ると、そこが赤くなっており足元にはクナイが落ちていた。
(まさか、あの分身が投げた!?やばっ!)
そう考えながらその場を避けると、シンの分身がさらにクナイを投げてくる。
ソウがそのクナイを避けると、ソウの横を過ぎたクナイの場所に再度分身が現れ、またクナイを投げてくる。

3人のシンの分身から投げられるクナイ避けながらもソウは、木砲の術での攻撃をやめなかった。しかし、サッカーボールサイズのレーダーを持ちながら避けるのは、長くは続かなかった。そして、
「あぁっ!」
3つのクナイが、ソウの腕、足、胴体へと直撃する。

「そこまでっ!」
古賀の声が鳴り響く。

「シン、ちょぉーっとやりすぎなんじゃない?ソウ、大丈夫かい?」
「いてててて。はい、シンさんの言うとおり痛くはありますけど、切れたりはしてませんから。」
「ソウ、ごめん!先生の言うとおり、やりすぎた。正直、お前の術に焦っちまった。」
「いえ、シンさんが一度仕切り直してくれたおかげで、今の自分の力を確認することができました。ありがとうございました。」
お互いにそう言って、頭を下げる。

「よし、これで残りは重清とショウだね。準備はいいかな、」
そう言われて重清は、「よ~し、プレッソ、行くぞ!」そう言いながら前に出る。そして気付く。

(あれ、そういえばおれだけ、どんな術か聞いてなくね!?)

「あ、せんせ・・・」
「始めっ!」

「うぉーーー!始まっちまったよ!とりあえずやってみるか!鉄壁の術!」

重清がそう言って鉄壁の術の発動を念じると、重清の目の前に鉄の盾が現れる。
しかし、その盾は、3秒ほど出現したまま空中で留まった後、消失する。
ショウはそれを、笑顔でそれを見守って、
「もう、いいのかな?」
と口にだす。
「あ、もう少し待ってください!」
「ん~、とりあえずここで待ってるから、いつでも攻撃してきてね~」
そう言って杖を構えて重清をただ待つショウ。

「よし、プレッソ!鉄玉の術だ!多分ソウみたいな遠距離用の術っぽいから、そのままショウさんに攻撃するぞ!」
「おっけぇーい!いくぜ!鉄玉の術!」
プレッソが叫ぶと、その体が輝き始める。そして。

プレッソのいた場所に、野球ボールサイズの鉄の玉が現れる。
「いやお前が鉄玉になんのかよ!でもあれなら・・・」
そう言いながら重清がプレッソ、もとい鉄の玉を掴み、
「いくぞ、プレッソ!」
「は、え、お前、まさか!」
「いっけぇーーーー!」
そのままショウに向かって投げる。
「のぉーーーー!」
プレッソの悲痛な叫ひをあげながら、ショウへと襲いかかる。

やっと来た攻撃にショウは、持っていた杖をバットのように持ち直し、そのまま打ち返す。
打ち返された鉄の玉は、真っ直ぐに重清に向かって飛んでいくが、
「痛ってぇーー!」
杖で打たれた痛さでプレッソの術が解かれ、そのままプレッソは重清にぶつかる。
「ショウ選手、見事なピッチャー返しです。ごめんね、プレッソ。」
ショウがそう言って舌を出す。
約1名、見学者の目がハートになっていることも知らずに。

プレッソとぶつかった重清は、ぶつかった頭をさすりながら立ち上がる。
「これで、術の効果はだいたい把握できたかな?じゃぁ次は、こっちから行くよ?」
そう言ってショウが、重清へと向かっていく。
「プレッソ、起きろ!ショウさんが来る!」
「わかったよ!重清、覚えとけよ!?」
プレッソにそう言われながらも重清は、アカの模擬戦を思い出しながら手と足に体の力を集中させる。

「迎え撃つぞ、プレッソ!」
「おぅ!」
そう言い合う間に、ショウは重清の目の前まで来ており、そのまま重清に杖を振り下ろす。
「今度こそ、鉄壁の術!」
重清と杖の間に鉄の盾が出現し、ショウの攻撃を防ぐ。しかし鉄の盾は、ショウの攻撃を防ぎはしたものの、グニャリと曲がって、そのまま消滅する。
(今、あの盾曲がったぞ!?そんなに強度ないのか!?)
そう重清が考えている隙に、ショウは再度重清に杖を振り下ろす。
「させるかよっ!」
その声とともにプレッソが、横から杖を持つショウの右手に体当たりをする。
ショウはプレッソからの体当たりでバランスを崩すことなく体当たりされた勢いに乗ってそのまま横に回転し、回転の途中でプレッソを左手で回収して、杖を重清の頭部に当てる直前で止める。

「そこまでっ!」
そこで、古賀が終了を告げる。

「さて、これでひとまず全員の模擬戦が終わったね。重清、最初のグダグダ、普通だったらその隙を見せた時点で負けちゃうんだからね?」
「わ、わかってますよ!次からは気をつけます!それよりショウさん、色々とありがとうございました!」
そう言いながら重清はショウへと頭を下げる。
「いえいえ。それよりプレッソ、痛くなかった?ごめんねぇ!」
そう言ってショウは、プレッソを抱きかかえるのであった。

「ほんと、あれメチャクチャ痛かったんだからな!?」
と、心地良いショウの胸の中で、落ち着いた顔のプレッソが文句を言う。
全くもって、説得力はないのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「一人で何でもできる女って嫌い」と婚約破棄されましたが、部下に慕われていました。仲間と一緒に今日も妖から都を守ります。

蜜柑
ファンタジー
*第17回ファンタジー小説大賞参加中です。応援いただけると嬉しいです。 人を喰らう異形の存在――妖がはびこる和国。妖から人々を守るのが、代々妖と戦うための特殊能力【家紋】を持つ者で構成される「対妖防衛隊」 「俺、何でもひとりでできる女って嫌いなんだよね」 首都東都を守る東都本部・精鋭部隊である第参部隊長を務める「藤宮 綾子」は、ある日婚約者で同じく防衛隊員の「神宮司 修介」から、婚約破棄を告げられる。 「俺さ、今、すごくかわいい子と付き合っているんだ。お前と違って、俺がいないとだめな子なんだよ」 彼は別の女性と婚約するために、綾子との婚約は破棄する、というのだ。 「……お一人での参加でも結構ですけど」 婚約披露宴に招待された綾子は、ひとりで参加するか悩んでいた。 そこに声をかけたのは、部下の「鈴原 彰吾」だった。 「俺じゃダメですか?……お試しでいいですから!」 一方、東都では若い女性が妖により白髪の鬼にされる事件が相次いでいた。 その陰に見え隠れするのは、かつて綾子を鬼にしようとし、父母を失った原因の妖――九十九(つくも)。 九十九と綾子の因縁はまた廻る。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

色々あって掃除婦になりました。

みるみる
エッセイ・ノンフィクション
 春、子供の中学入学、通信教育費、車の保険で一気に50万円もの出費がありました。かろうじて3桁あった貯金は一気に半分に減り、さらには夫が年明けに新車でファミリーワゴンを新車で買うと宣言。 「頭金50万円で、月々のローンが二万円の車なら買っても大丈夫だと思う。」  そう言った私に夫はすかさず突っ込みを入れました。 「いやいや、それじゃ中古車すら買えねーから!っていうか、他所の家は家を建てたり新車も買いまくってるのに、なんでうちはできねーの?他所の奥さんは皆んな看護師や大企業でフルタイムで働いてるのになー。」 「‥‥。」  ぐうの音も出ずに黙る私。  自分の実家の家族の為に仕事を辞めて一年‥。自分の給料を貯めておいた通帳は、前の車が壊れて乗れなくなった為新車を買ったり、娘の歯の矯正の為に使ってしまい、いまや数百円の残金しかない状態。 「また働きたい‥。」  そう思ってはいるけど、私の自由になれる時間は週に二、三日。しかも午前中だけ。  時々夫の休みの日を利用して短期のバイトをしながらも、パート探しを続けていると、週3日で午前中だけの掃除婦のパートを発見。すぐさま応募し働き始めました。  そんな私に対して夫は一言。 「とうとうお前も落ちぶれるところまで落ちぶれたな。っていうか、なんで普通に事務員とかにならないで、そんなニッチな所を攻めるかな。頭おかしいんじゃない?」  子供達も‥ 「お母さん、仕事から帰ってきたらすぐにシャワー浴びてね。」  夫の実家は‥ 「‥また何でそんな所に‥。もっと良いところがあるでしょうに。っていうか、息子の給与だけで生活できないなんておかしい。絶対にやりくりのどこかで無駄があるはずよ。」  ‥っていうか、そもそも掃除婦ってそんなに世間から差別されるものなの?  私は皆んなが嫌がるトイレ掃除をする事は立派な仕事だと誇りを持って言えますが!  だから家族には馬鹿にされても、自分の親に親孝行をしたいし、限られた条件の中でやっと見つけたこの仕事を辞めるつもりはありません。  それに見栄っ張りで贅沢?だけど、新築の家を建てる事を諦めて私の実家に間借りして暮らす選択をしてくれた夫の為に、大きい新車を買う頭金を少しでも多く貯めておきたい。  そんな私‥一主婦が節約をしながらお金を貯めたり、夫婦喧嘩や親子喧嘩をしたりする日々を気ままにブログ風の日記にしてみました。  

しあわせ

のり明太
BL
ゆっくり更新してます。pixivに上げてるものと同じです。

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?

西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね? 7話完結のショートストーリー。 1日1話。1週間で完結する予定です。

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

塩対応のアイドルにジョブチェンジします!

有沢真尋
恋愛
駆け出し新人アイドルである双子の妹彩菜(あやな)が、どうしても外せない舞台を前に高熱を出してダウン。 妹激推しの双子の兄玲央名(れおな)は、やむを得ず妹の代わりとしてステージに立つ。 それはとある高校の学校祭。 見事にアイドル一位の座に輝いてしまったために、学校祭の終わりまで一日アイドルとして校内に留まることになる。 世話役は美人生徒会長。 正体を知られるわけにはいかないと、玲央名はひたすら塩対応を続けるが……? 表紙はかんたん表紙メーカーさま

処理中です...