上 下
23 / 25
毒蛇との邂逅

第二十三話

しおりを挟む
「うーん、1階の共同スペースやっぱ充実してていいよなあ。使いやすそうだし…やっぱ金持ちすごい…。」
  正直実家より快適に暮らせるのでは?というような設備にちゃんと温泉を引いている大浴場まであって、つい、スパイ後もここにいられるように打診しようかな…とか考え始めてしまった。なんならここで働きたいレベルだ。住み込みで食堂とかで雇ってもらえないかな。
  さすがにそれは冗談にしても、1階は日常生活を送るには十分すぎるようだと分かった。しかも洗濯などは用務員がやっているようで、大浴場より奥の洗濯室やらリネン室やらは今の時間だと入れないわけではなさそうだが生徒の立ち入りがほぼ皆無で、用務員が数人いる程度だ。早朝や深夜など人気の無さそうな時間なら隠れて使うこともできそうだな。いや、早朝は逆に部活動とかの関係で生徒が来るか…?それもおいおい調査だな。
  一方でその手前にある大浴場はなかなか使用する生徒もいるようで、まだお昼の時間だがちらほら出入りがある。清掃は深夜の2:00~4:00と昼の10:00~12:00のようだ。ふむ、深夜にここを通るときは清掃員に見られないように気を付けないとな。
  さて、食堂はさっき見たからいいとして…スーパーみたいな店……は狐塚と行くって約束したから後でいいか。となると、上だ。階段で行ってみるかあ…。
  ということで俺は階段で2階に上がった。エレベーターもあるんだけど、いざというときのために階段の段数とか勾配とか見ておきたかったから。地図で見て階段がフロアの端と端にしか無かったから何となく想像してたけど、実際来てみるとやっぱりみんなエレベーターを使うからか人気も全然ないし、この豪華な寮の造りにそぐわないこぢんまりした場所だった。非常用階段的な感じなんだろうな。階段は短い感覚で踊り場があり、最上階まで繋がっていた。
  一応1階ずつ端の階段から反対の端の階段まで探索しては上るを繰り返し、特に異変もなく5階まで上りきった。5階の風紀のフロアは何となく他のフロアより少し静かな気はしたが、人通りも部屋数もそんなに下の階と変わりないように見えた。…すれ違う人たちがちょっとごつかったかな?くらいか。
「ふぅ…。」
  さて、残すは6階。6階は生徒会のフロアだが、立ち入り禁止というわけではないらしい―――しかし、6階にはほとんど生徒会役員か、役員が招いた客しか来ない。立ち入ったことがバレたら即親衛隊に報告されてリンチの未来が待っているからだ。狐塚から聞いたばかりの話に軽く身震いし、パーカーのフードを深く被りなおした。念のためにメガネは外しておいたし、髪もくくった。顔がはっきり見えるだろうけど、俺の場合は見つかったときに、こうした方が返って身元がわかりにくいだろう。いや、そもそもフードをとるような事態にはならないでほしいのだが…。
  …まあ、見たところ5部屋しかないし、そこからたまたま人が出てきて鉢合わせる確率は低いだろう。それに、生徒会ならまだ校舎で仕事してるかもしれないよな?つらつらと言い訳を考えてみたが、嫌な予感がぬぐいきれない。なんだこの【フラグがたちました】みたいな感覚は…。お風呂がわきました、みたいな感覚で言うんじゃねえ…。いや、それにしてもここのフロアは早いとこ見ておいた方がいいのは確かだ。住民全員ターゲットらしいし。…………まあ、ちょっと疲れてきてるし、ささっと見て帰ろう、うん。大丈夫、大丈夫……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元生徒会長さんの日常

あ×100
BL
俺ではダメだったみたいだ。気づけなくてごめんね。みんな大好きだったよ。 転校生が現れたことによってリコールされてしまった会長の二階堂雪乃。俺は仕事をサボり、遊び呆けたりセフレを部屋に連れ込んだりしたり、転校生をいじめたりしていたらしい。 そんな悪評高い元会長さまのお話。 長らくお待たせしました!近日中に更新再開できたらと思っております(公開済みのものも加筆修正するつもり) なお、あまり文才を期待しないでください…痛い目みますよ… 誹謗中傷はおやめくださいね(泣) 2021.3.3

さむいよ、さみしいよ、

moka
BL
僕は誰にも愛されない、、、 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人を信じることをやめた奏が学園で色々な人と出会い信じること、愛を知る物語です。

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

目が覚めたらαのアイドルだった

アシタカ
BL
高校教師だった。 三十路も半ば、彼女はいなかったが平凡で良い人生を送っていた。 ある真夏の日、倒れてから俺の人生は平凡なんかじゃなくなった__ オメガバースの世界?! 俺がアイドル?! しかもメンバーからめちゃくちゃ構われるんだけど、 俺ら全員αだよな?! 「大好きだよ♡」 「お前のコーディネートは、俺が一生してやるよ。」 「ずっと俺が守ってあげるよ。リーダーだもん。」 ____ (※以下の内容は本編に関係あったりなかったり) ____ ドラマCD化もされた今話題のBL漫画! 『トップアイドル目指してます!』 主人公の成宮麟太郎(β)が所属するグループ"SCREAM(スクリーム)"。 そんな俺らの(社長が勝手に決めた)ライバルは、"2人組"のトップアイドルユニット"Opera(オペラ)"。 持ち前のポジティブで乗り切る麟太郎の前に、そんなトップアイドルの1人がレギュラーを務める番組に出させてもらい……? 「面白いね。本当にトップアイドルになれると思ってるの?」 憧れのトップアイドルからの厳しい言葉と現実…… だけどたまに優しくて? 「そんなに危なっかしくて…怪我でもしたらどうする。全く、ほっとけないな…」 先輩、その笑顔を俺に見せていいんですか?! ____ 『続!トップアイドル目指してます!』 憧れの人との仲が深まり、最近仕事も増えてきた! 言葉にはしてないけど、俺たち恋人ってことなのかな? なんて幸せ真っ只中!暗雲が立ち込める?! 「何で何で何で???何でお前らは笑ってられるの?あいつのこと忘れて?過去の話にして終わりってか?ふざけんじゃねぇぞ!!!こんなβなんかとつるんでるから!!」 誰?!え?先輩のグループの元メンバー? いやいやいや変わり過ぎでしょ!! ーーーーーーーーーー 亀更新中、頑張ります。

気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!

甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!! ※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。

総受けなんか、なりたくない!!

はる
BL
ある日、王道学園に入学することになった柳瀬 晴人(主人公)。 イケメン達のホモ活を見守るべく、目立たないように専念するがー…? どきどき!ハラハラ!!王道学園のBLが 今ここに!!

生徒会長親衛隊長を辞めたい!

佳奈
BL
私立黎明学園という全寮制男子校に通っている鮎川頼は幼なじみの生徒会長の親衛隊長をしている。 その役職により頼は全校生徒から嫌われていたがなんだかんだ平和に過ごしていた。 しかし季節外れの転校生の出現により大混乱発生 面倒事には関わりたくないけどいろんなことに巻き込まれてしまう嫌われ親衛隊長の総愛され物語! 嫌われ要素は少なめです。タイトル回収まで気持ち長いかもしれません。 一旦考えているところまで不定期更新です。ちょくちょく手直ししながら更新したいと思います。 *王道学園の設定を使用してるため設定や名称などが被りますが他作品などとは関係ありません。全てフィクションです。 素人の文のため暖かい目で見ていただけると幸いです。よろしくお願いします。

処理中です...