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狐と狸とそれから兎

第九話

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「きつね…?」
「ほら、君のルームメイトのやつだよ!」
「ああ、狐塚くん…?どういうって?」
「だってー、いつもならあいつ入学式の日なんかそもそも教室来ないよー?」
「そうそう、何故か式は全員強制出席って言われたからあいつも来ざるを得なかったみたいだけど~、いつもなら絶対バックレてるよ!」
「ええ、そうなの?」
「うんうん、それにー、なんかゆきとについて来たみたいだったしー?自己紹介もめんどくさがらずにちゃんとやってたし!」
 あ、あれでちゃんとやってた方なのか…。それに普段ならバックレてるって、一体どんな…
「…狐塚くんって、もしかしてヤンキー…?」
 思わず思っていたことがそのまま口から出てしまった。
「「ぶはっ」」
 狸塚兄弟が同時に吹き出した。ツボに入ったようで、2人ともケラケラ笑い転げている。
「ええ…」
 ツボ分からねー。何がそんなに面白いんだ金持ちの笑いのツボどこだよ。
「あはははっ、ゆきと、ヤンキーって…あの狐を…」
「あははっ、そもそも今時ヤンキーとかあんま聞かないよね」
「え、ヤンキーにそんなにツボってるの?」
「いや、それもそうだけど、あの狐を…ふふっ」
「そう、それだよね、ふふふっ」
 どういうことだ?狐塚ってなんかその、もっとやばい感じの人なのか?そうは見えなかったけど…。
「あはは、わけわからないって顔してるー!」
「してるねー!」
「あの狐はね~ヤンキーどころじゃなくて、いぬせんも手を焼く超問題児だったんだよー!」
「そうそう、行事ごとなんか今回みたいに強制の場合以外来ないしー、教室にすらあんま来ない!」
「だからー、みんなも怖がっちゃって誰も話しかけたりしないんだよー!」
「ほんと、チワワちゃんたちがいるだけで怖がっちゃうし、超迷惑なんだよねー!」
「えー…ていうか、そんな人なら、そんなこと言ってていいの…?」
「ぜーんぜん!狐が怖がられてるのってー、家のこともあるんだよね!あいつ、家が組だから!」
「まあ簡単にいうとヤクザのこと!」
「うええ?!そうなの?!」
「そうだよ~そこそこでかい組。でもでも~なんと、僕らのお家も~」
「「狸塚組!なんだよね~!!」」
「………はあ?!」
「あはは、びっくりしてる~」
「そう見えないでしょ~?」
「う、うん…全然見えない…」
「僕たちかわいいもんね~」
「ね~」
「うん…え、そうだったんだ、だからみんなあの態度…」
「そーそー、でも僕らの狸塚組と、あの狐の狐塚組は、超仲悪いよ!だから普通僕らの前で狐の話する子もいないんだ~」

 なるほど。そういうわけか。狸塚、狐塚は家が組の家系で、対立関係。ふむ。訳ありとは聞いてたけどまさかヤクザの息子も受け入れてるのかこの学園…。やっぱりなんだかんだヤクザと金持ちは取引してたりするんだろうか…いや、あまり考えすぎないでおこう。ヤクザに取り立てられる人がいるってことは、ヤクザも普通に社会で生活してるってことだよな。まさかターゲットがヤクザの息子とかビックリしたけど、この双子との会話でかなり情報が増えた。このまま色々聞き出しておきたいな。
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