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75.二人の刺客?

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 ゴロンと寝転がって、使い魔を操る。

 今回の作戦で一番難しいのは、破壊の魔法で岩山を破壊するところだ。これは事故に見せなくてはならない。これには、上層部たちが送り込んだ使者たちを利用させてもらう。奴らが作ったように見せかけた使い魔をいくつも作り、それが暴走して岩山を破壊したように見せる。
 破壊の魔法でなくとも、膨大な魔力をもってすれば、岩山は破壊できる。多少無理はあるかもしれないが、見せかけの使い魔をしばらく飛ばしておけば、あとは勝手に岩山に送られた使者たちが証言してくれるだろう。他のやつが送り込んだ使者が、妙な使い魔を作っていたと。

 ベッドに横になり、岩山に送った使い魔を操作していたら、廊下の方から物音がした。

 普通の奴じゃないな……魔力もそこそこ隠している。
 普通に考えたら、迷い込んできた魔力の少ない学生かと思っただろう。しかし、足音まで殺している。魔法をかけた俺の猫耳じゃなかったら、聞こえなかったかもしれない。

 魔法で体を強化して構える。

 どこからくるかと思ったが、普通にドアから。それが開いて、黒い服に身を包んだ男が飛び込んでくる。

 飛び込んできた男は、部屋の中に俺の姿がなくて、焦っているようだった。魔力を使い、部屋の様子を探っているようだがもう遅い。俺が魔法をかけた布団は、使い魔化してそいつを包んだ。

「うわっ……!」

 あっさり床に倒れる男は、持っていた短剣を床に落としてしまう。

 そして、怒りがこもった目で、ベッドから出る俺を睨んできた。俺は単純にベッドの布団の中に隠れていただけだ。
 これだけ弱いと、動揺する気にもなれない。

「弱いな。お前」
「なんだと!? 野良猫め!!」
「野良で何が悪い。公爵側の刺客にしてはとろいぞ」
「な、なぜ公爵のことをっ……!」
「……なぜ、じゃない。言うな、馬鹿。悪いことするのに、雇い主の家の紋章が入った短剣を持ってくるな」
「ぐっ……しまった……」
「……あからさまに動揺するな……一瞬、公爵側に罪をなすりつけ、わざと見つかり会議で公爵を揺さぶるネタにするつもりかと思ったが……違うようだな。こんなヘボを送り込むなど、公爵は頭にカビでも生えたか?」
「貴様っ……! 公爵を愚弄するか!!」
「……だから、そういうこと言うなって……それと、せっかく魔力使って気配を隠すなら、学生のフリでもしてこい。その上下真っ黒な服に、目出し帽かぶって短剣構えて学園の中を歩いてきたのか? お前は」
「こ、この方が人目につかないだろう!」
「……誰もいない夜道ならともかく、なんでそれで見つからなかったんだ……」

 あの公爵……本人はやり手だが、人を見る目はまるでないな……
 コレリールも、初めて会った時、秒で公爵が破壊の魔法狙ってること話してたし、岩山へやった使者も、あいつのが一番クソだ。ここへきた時、ぞろぞろお供引き連れてたが、もしかしてほとんどぼんくらなんじゃないか?

「とにかく、貴様はそこで丸まってろ。下手に公爵に返すと、面倒なことに…………」

 言いかけた俺の耳に、かすかな音がした。すぐそば……すでにドアのすぐそばに迫っている! そこまできても、まるで魔力を感じないっ……!

 俺でもこうはいかない。そもそも、魔力を隠す術は高度なもので、そう簡単には扱えないはず!

 それなのに、これだけ魔力を感じさせないとは……! そもそも、刺客が公爵側のヘボだけとは限らないのに、俺は何を油断していたんだ!!

 ドアが開く。足枷は切れたが、身体の強化は間に合わない。無理にでも相手をするしかない!

 俺は爪を構えて、開くドアに向かって走る。

「ヴァデス!!」
「お前かクソ犬っ!!」

 慌てて爪を引いて代わりに殴りかかる。あっさり止められたが、余計に怒りが湧く。わざわざ高度な魔法で気配を消して、ここまでやってきたのは、バカ犬のゲキファじゃないか!!
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