75 / 85
75.二人の刺客?
しおりを挟むゴロンと寝転がって、使い魔を操る。
今回の作戦で一番難しいのは、破壊の魔法で岩山を破壊するところだ。これは事故に見せなくてはならない。これには、上層部たちが送り込んだ使者たちを利用させてもらう。奴らが作ったように見せかけた使い魔をいくつも作り、それが暴走して岩山を破壊したように見せる。
破壊の魔法でなくとも、膨大な魔力をもってすれば、岩山は破壊できる。多少無理はあるかもしれないが、見せかけの使い魔をしばらく飛ばしておけば、あとは勝手に岩山に送られた使者たちが証言してくれるだろう。他のやつが送り込んだ使者が、妙な使い魔を作っていたと。
ベッドに横になり、岩山に送った使い魔を操作していたら、廊下の方から物音がした。
普通の奴じゃないな……魔力もそこそこ隠している。
普通に考えたら、迷い込んできた魔力の少ない学生かと思っただろう。しかし、足音まで殺している。魔法をかけた俺の猫耳じゃなかったら、聞こえなかったかもしれない。
魔法で体を強化して構える。
どこからくるかと思ったが、普通にドアから。それが開いて、黒い服に身を包んだ男が飛び込んでくる。
飛び込んできた男は、部屋の中に俺の姿がなくて、焦っているようだった。魔力を使い、部屋の様子を探っているようだがもう遅い。俺が魔法をかけた布団は、使い魔化してそいつを包んだ。
「うわっ……!」
あっさり床に倒れる男は、持っていた短剣を床に落としてしまう。
そして、怒りがこもった目で、ベッドから出る俺を睨んできた。俺は単純にベッドの布団の中に隠れていただけだ。
これだけ弱いと、動揺する気にもなれない。
「弱いな。お前」
「なんだと!? 野良猫め!!」
「野良で何が悪い。公爵側の刺客にしてはとろいぞ」
「な、なぜ公爵のことをっ……!」
「……なぜ、じゃない。言うな、馬鹿。悪いことするのに、雇い主の家の紋章が入った短剣を持ってくるな」
「ぐっ……しまった……」
「……あからさまに動揺するな……一瞬、公爵側に罪をなすりつけ、わざと見つかり会議で公爵を揺さぶるネタにするつもりかと思ったが……違うようだな。こんなヘボを送り込むなど、公爵は頭にカビでも生えたか?」
「貴様っ……! 公爵を愚弄するか!!」
「……だから、そういうこと言うなって……それと、せっかく魔力使って気配を隠すなら、学生のフリでもしてこい。その上下真っ黒な服に、目出し帽かぶって短剣構えて学園の中を歩いてきたのか? お前は」
「こ、この方が人目につかないだろう!」
「……誰もいない夜道ならともかく、なんでそれで見つからなかったんだ……」
あの公爵……本人はやり手だが、人を見る目はまるでないな……
コレリールも、初めて会った時、秒で公爵が破壊の魔法狙ってること話してたし、岩山へやった使者も、あいつのが一番クソだ。ここへきた時、ぞろぞろお供引き連れてたが、もしかしてほとんどぼんくらなんじゃないか?
「とにかく、貴様はそこで丸まってろ。下手に公爵に返すと、面倒なことに…………」
言いかけた俺の耳に、かすかな音がした。すぐそば……すでにドアのすぐそばに迫っている! そこまできても、まるで魔力を感じないっ……!
俺でもこうはいかない。そもそも、魔力を隠す術は高度なもので、そう簡単には扱えないはず!
それなのに、これだけ魔力を感じさせないとは……! そもそも、刺客が公爵側のヘボだけとは限らないのに、俺は何を油断していたんだ!!
ドアが開く。足枷は切れたが、身体の強化は間に合わない。無理にでも相手をするしかない!
俺は爪を構えて、開くドアに向かって走る。
「ヴァデス!!」
「お前かクソ犬っ!!」
慌てて爪を引いて代わりに殴りかかる。あっさり止められたが、余計に怒りが湧く。わざわざ高度な魔法で気配を消して、ここまでやってきたのは、バカ犬のゲキファじゃないか!!
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~
雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。
元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。
書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。
自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。
基本思いつきなんでよくわかんなくなります。
ストーリー繋がんなくなったりするかもです。
1話1話短いです。
18禁要素出す気ないです。書けないです。
出てもキスくらいかなぁ
*改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~
みどりとあおとあお
うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。
ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。
モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。
そんな碧の物語です。
短編。
とある隠密の受難
nionea
BL
普通に仕事してたら突然訳の解らない魔法で王子の前に引きずり出された隠密が、必死に自分の貞操を守ろうとするお話。
銀髪碧眼の美丈夫な絶倫王子 と 彼を観察するのが仕事の中肉中背平凡顔の隠密
果たして隠密は無事貞操を守れるのか。
頑張れ隠密。
負けるな隠密。
読者さんは解らないが作者はお前を応援しているぞ。たぶん。
※プロローグだけ隠密一人称ですが、本文は三人称です。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる