上 下
68 / 85

68.そんなことできない!

しおりを挟む

 俺は、ゲキファに振り向いた。

「ゲキファ」
「なに?」
「貴様、生涯、俺の犬でいることを誓うか?」
「……生涯犬だけっていうのは嫌だけど…………ヴァデスのことは、ずっと大事にする」
「ならばいい。俺を縛り上げろ」
「………………は?」
「俺を縛れ。手錠をかけ、首輪をつけて鎖で繋ぎ、学長室に連行するんだ」
「な、なんで!? そんなこと、できるはずないだろ!!」
「貴様らは、俺が破壊の魔法を使う使い魔を岩山に送ったと言って、俺を告発するんだぞ。否定する俺を拘束し、学長室に連行するんだ。それなのに、俺が貴様らと仲よーーく肩を並べていたら、おかしいだろう」
「そ、それは……確かにそうだけど……」
「分かったら縛れ」
「…………無理」
「なんだと?」
「お、俺に……そんなこと、できるはずないだろっ……!!」
「……じゃあいい。コレリール」
「そいつに頼むのはもっとだめだっ……! お、俺じゃない男が……ヴァデスにそんなことするなんて……」
「……面倒臭い奴だ。嫌なら貴様がやるしかないだろう。さっさとやれ!」
「でも…………」

 ダメだこいつ……何をうじうじしてるんだ。ヘタレめ。馬鹿なのか?

「貴様……そんなふうで大丈夫なのか?」
「え……?」
「貴様は俺を、岩の庭園の魔力を狙った極悪人として、学園長に告発するんだぞ。学長室に行ったら、俺は一度は否定する。そうでないと、俺が本当に岩の庭園の魔力を狙ったことになり、後で面倒なことになる。あくまで、今回のことは、不幸な事故でなくてはならない。俺が学長室で、やっていないと否定した時、貴様は俺を厳しく糾弾できるか?」
「…………き、厳しく糾弾!?」
「多少なら手を上げることも許可してやる」
「できるわけないだろそんなこと!!!!」
「……やらなければ、目的を達成できない。もういい。コレリール、貴様は……」

 コレリールに振り向いて言うと、コレリールまで、さっと顔をそむける。

「僕は……師匠に手を上げるなんて、できません」

 こいつら……

 呆れていたら、足元のロフズテルが、楽しそうに言った。

「俺がやってやる。好きなだけ痛めつけてやろう」
「お前、今猫だろ。馬鹿」
「馬鹿だと!? 俺はお前の師だぞ! コレリールを見習え!」
「お前は、使い魔の片割れを咥えて庭園に突っ込むだけでいい。お前に何か任せると、失敗しそうだ」
「…………まずい」
「何がだ? この作戦に、まずいところなどあるものか!」
「そうじゃない。本物の俺に、追っ手が迫っている」

 猫は、やけに真剣な顔で言うが、それは自業自得だ。

「そうか。早く捕まれ」
「……俺は逃げる。しばらく使い魔は動かせない。ヴァデス、その間、この使い魔の体を頼んだぞ」

 その言葉を最後に、使い魔は動かなくなる。早く捕まればいいのに。

 まあいい。こっちはこっちで進めよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~

雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。 元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。 書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。 自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。 基本思いつきなんでよくわかんなくなります。 ストーリー繋がんなくなったりするかもです。 1話1話短いです。 18禁要素出す気ないです。書けないです。 出てもキスくらいかなぁ *改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~

とある隠密の受難

nionea
BL
 普通に仕事してたら突然訳の解らない魔法で王子の前に引きずり出された隠密が、必死に自分の貞操を守ろうとするお話。  銀髪碧眼の美丈夫な絶倫王子 と 彼を観察するのが仕事の中肉中背平凡顔の隠密  果たして隠密は無事貞操を守れるのか。  頑張れ隠密。  負けるな隠密。  読者さんは解らないが作者はお前を応援しているぞ。たぶん。    ※プロローグだけ隠密一人称ですが、本文は三人称です。

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

全校生徒の肉便器

いちみやりょう
BL
人気投票で生徒会などが選ばれる学園で肉便器に決まってしまった花倉詩音。まずは生徒会によるみそぎと開通式ということで全校生徒の前で脱糞ショー。これから始まる肉便器生活はどうなっていくのか!? ーーーーーーーーーー 主人公は終始かわいそうな目にあいます。 自己責任で読んでください。

処理中です...