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50.会議です
しおりを挟む俺は、腕を組んで学園長と対峙した。
「今回のことは、本当にただの事故だ。包み隠さずそう話せばいい」
「それでも、憶測は飛び交う。特に今回は、あの破壊の魔法のロフズテルの使い魔だ。あんなもの動かしちゃったから、各方面から使いが来てる」
「なんだと……? どういうことだ?」
「そんなこと、君には話せない」
「何だ急に!! これだけベラベラ喋っておいて!!」
「俺だって、あちこちと喧嘩したくないの」
「あちこちとはどこだ? ロフズテルの使い魔はどこにあるっっ!? あの小生意気な隊長が持って行ったんだ!! あの使い魔を返せ!」
「それはできない。君の尋問はもう終わり。早く出ていって。俺は、例のロフズテルの使い魔の件で、これから研究棟の会議で、えらーーい人に意地悪言われなきゃならないんだから」
「なんだと!? 会議!?」
「言っておくけど、潜り込もうとしたら、君のこと消すから。生まれた記録ごと消されて、いなかったことにされたくなかったら、大人しくしてて。ここにもこれから、それはそれはえらーーい人が来るんだから、野良猫は出て行って。いないふりしてて」
そう言って、勝手に俺を呼びつけた男は、俺の首根っこを掴んで、学長室の外につまみ出した。
学長が学生に対してすることか!?? 脅しじゃないか!
学長室の扉がバタンと閉まり、一人廊下に放り出された俺は、服装を整えて、立ち上がった。
誰かが来るとか言っていたな……会議の方は、おそらく警備が厳重で潜り込めない。それなら、これからここに来る奴のことくらいは調べておくか。
各方面の使いと言うなら、それなりの身分のものが来る。だとすれば、来客専用の門から来るはずだ。門の近くは、魔法使いの連中が守っていて、結界が張られる。しかし、ここへ来るまで、移動している間は、魔法が届かないほどの距離から盗み見ることができるはず。ちょうど、門の近くの塔の陰あたりがいい。
俺は、廊下の窓を開けて、そばの校舎の屋根まで飛び移った。来客用の門は、ここから遠くない。
まだ朝早くて、いつもは賑やかな学園も、静まり返っている。そんな中、校舎の屋根を伝って走る。
まだ、ゲキファとコレリールも寝ている時間か……? 会いに行きたいが、二人ともまだ休養が必要なはず。あまり早朝から部屋を訪れてもな……
ダメだ。あの二人のことで頭がいっぱいになっている。あいつらが起きる時間になったら、会いに行こう。
少し行くと、来客用の門のそばに聳える、高い塔が見えてきた。塔の屋根まで飛び移ると、ちょうど門が開くのが見える。
誰かが来たんだ。
門の外から、使い魔の竜が並んで歩いてくる。何人もの武装した護衛が、鋭い目をして使い魔の竜に乗っている。その数、数十人。
なんだか……まずい奴が来たみたいだ。あれだけの供を引き連れてくるなら、只者じゃない。
門の前に立った出迎えの面々も、錚々たるメンツだ。警備隊長や、あの森で俺の前に現れた第二部隊の隊長、学園組織の上層部が並んでいて、学園長の姿もあった。俺がここまで走る間に、出迎えの準備を整えて列に加わったらしい。さすがだな。
あいつは、俺と話すより、よほど早くあそこに立ちたかっただろう。
少し反省した。竜が引く客車には、それはそれは偉くて、めちゃくちゃ面倒なやつが乗っていたからだ。
白い髭を伸ばし、骨張った顔をした、そばにいるだけで威圧感を感じる風体の男……
嘘だろ……クレレーイト公爵だ。
驚いた俺は、つい塔の影に隠れてしまう。あんな奴が出て来るとは……
だが、誰が出てこようが、俺はこのまま引き下がりる気はない。あの使い魔は、必ず返してもらう。
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