23 / 85
23.勘違いだ
しおりを挟む腹の探り合い対決でもしたいのかと思ったのに、ゲキファは、真っ赤な顔のまま、微笑んだ。
「……予定、絶対にあけておく……ありがとう……夜、楽しみだ」
「……」
何がそんなに嬉しいんだ?
……待て。俺はこいつに好きだと言われているんだ。
…………おい、待て。
「おい待て!! お、俺は別に、貴様をデートに誘ったわけではないぞ!!」
「え?」
「か、勘違いするなっ!! 俺はお前が伯爵の息子だから誘っているだけだ!! お前のその立場と、伯爵とのつながりがなければ誘わないっ!! 覚えておけ! 貴様に気があるわけではまっっったくない!!!! そこだけは!! 覚えておくんだ!! おかしな真似をしたら、伯爵の息子といえども首を跳ね飛ばしてやる!!」
「…………」
少しの沈黙の後。
一気に捲し立てたせいで、肩で息をしなくてはならなかった。
そして、さらに静寂の後。
ゲキファは、長い尻尾と眉を垂れて口を開いた。
「……それって、キュラブ伯爵に……恨みがあるから、俺を誘ったってこと?」
「……ああ」
くそ。何を暴露しているんだ。最初にこんな暴露をしてどうする。
当初の計画では、俺がここを追い出された経緯など、まるで気にしていないふりをして、この男の懐に入り込むつもりだったのに。それなのに、全部話してどうするんだ。
こんなはずじゃなかった。計画は最初からやり直しだ。
俺は、ゲキファの横をすり抜け歩き出した。
もう追っては来ないだろうと思った。しかしゲキファは、後ろから俺に声をかけてきた。
「俺のことが嫌いなわけじゃないんだろ?」
「……ああ。はっきり言うが、お前には何の感情もない」
「……そっか…………じゃあ、俺にもまだ、チャンスあるんだ」
「はあ??」
何言ってるんだ、こいつ。キッパリと何の感情もないと伝えたのに、それが分かっていないのか? いや、理解する気がないのか?
狼狽える俺の手を、ゲキファは、ぎゅっと握る。
「お、おいっ……!」
しかも、俺の手を握ったまま走り出す。
「コレリールの部屋なら知ってるけど、多分行っても会えない」
「な、なんだと!?」
「コレリールはこの時間は学食にいるんだ。朝食食べてるはずだから」
「お、おいっ! 引っ張るな!!」
走るくらい、自分でできる。腕に力を込めると、今度は簡単に振り払うことができた。
手を離されたのに、ゲキファはやけに嬉しそうに笑う。
「……チャンスあるなら、俺、頑張る」
「はあ!? ない!! 貴様には何の感情もないと言っただろう!! 利用したいだけだバカ!! おい! 聞け!!」
何がそんなに嬉しいのか、そいつはまた俺の手を取って、ぐいぐい引いていく。
こいつ……本当に分かっているのか!? 利用してやると言われて何を頑張るんだ!! 大丈夫かこいつ!!
くそっ……いちいち腹立たしい男だ。部下にするなら、存分に痛めつけて身の程を分からせてからにしてやる!!
怒りを込めて、見上げる。そいつは俺に振り向きにっこり笑う。
拒絶の意味が、全く理解されていないらしい。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~
雨雪
BL
スイマセン、腐男子要素どこいった状態になりそうだったんでタイトル変えました。
元、腐男子が王道学園に入学してみた。腐男子設定は生きてますがあんま出てこないかもです。
書いてみたいと思ったから書いてみただけのお話。駄文です。
自分が平凡だと本気で思っている非凡の腐男子の全寮制男子校での話。
基本思いつきなんでよくわかんなくなります。
ストーリー繋がんなくなったりするかもです。
1話1話短いです。
18禁要素出す気ないです。書けないです。
出てもキスくらいかなぁ
*改稿終わって再投稿も終わったのでとりあえず完結です~
とある隠密の受難
nionea
BL
普通に仕事してたら突然訳の解らない魔法で王子の前に引きずり出された隠密が、必死に自分の貞操を守ろうとするお話。
銀髪碧眼の美丈夫な絶倫王子 と 彼を観察するのが仕事の中肉中背平凡顔の隠密
果たして隠密は無事貞操を守れるのか。
頑張れ隠密。
負けるな隠密。
読者さんは解らないが作者はお前を応援しているぞ。たぶん。
※プロローグだけ隠密一人称ですが、本文は三人称です。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる