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20.悪い?
しおりを挟む右手をゲキファに向かって伸ばして、魔法をかける。すると俺の手に光る鎖が現れ、目の前のゲキファに絡みついていく。
「……っ!」
一瞬、ゲキファが動揺を見せた。反撃か、でなければ自らの身を守ろうとしたのだろう。そいつの体から、魔力が噴き出した。しかし、それはすぐに掻き消える。ゲキファ自身が、魔法を使うのをやめたからだ。
反撃にも出ず、防御もしない男の体に、俺の鎖が巻きついていく。
俺の鎖に体の自由を奪われたゲキファは、かすかに苦しそうな声を上げた。すでに、俺の鎖はゲキファの魔力すら拘束している。こうしてしまえば、今から魔法を使って鎖から逃れることもできない。
俺は、鎖に少し魔力を込め、ゲキファを締め上げた。
「うっ……」
苦痛に歪むそいつの顔。いいぞ。なんだか乗ってきた。俺はこうでなくては。
「さあ、話せ。本当は何を企んでいる?」
「……俺は……何も企んでなんかない。本当にヴァデスのことが好きだし、誰とも組んでなんか……っ!!」
鎖の締め付けを強くしてやる。こいつ、どれだけ強情なんだ。
「いい加減にしないと、腕の一本くらい、へし折るぞ」
ゲキファが、苦しそうなうめき声をあげる。けれど、それでもそいつは黙って苦痛に耐えている。
…………なんだか、自分がものすっっっごく悪いことをしている気になってきたぞ。いや、悪くて構わないのだが、そんなに苦しそうな顔をされると……
ゲキファの唇から苦しそうな吐息が漏れて、額からは脂汗が流れている。その腕や体には、鎖の跡ができていた。
俺は、鎖を消した。
拘束から解放されたゲキファは、その場に膝をついてしまう。けれど、痛め付けられた自らの体には見向きもせず、俺を見上げた。
「ヴァデス……?」
「い、言っておくが、信じてはいないぞ!! 単に、お前から聞き出すのは後でいいと思っただけだ!」
言い放ち、すぐにそいつに背を向ける。
くそ……調子が狂う!! こんなことをされて、本来なら怒るところだろう!! 体にも、まだ鎖の跡が残っているのに。
ちらっとそいつを盗み見ると、そいつと目が合ってしまう。
ゲキファは俺に微笑んだ。
「じゃあ、次に聞き出される前に信じてもらえるように頑張るよ」
「うるさい黙れ頑張るな!! 好青年のふりもやめろ!」
なんなんだこいつは!!
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