ずっと周囲に邪魔だと罵倒されてた僕なのになぜか婚約者に執着されて怖い……憎まれるんじゃなかったの!? 溺愛は必要ないので敵同士になりませんか

迷路を跳ぶ狐

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43.もちろんだ!

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 僕たちは、リールヴェリルス様の使い魔に乗って空を飛んで、急いで宿へ戻った。

 宿の周りには、すでに多くの魔物が集まっている。どれも崩れかけの空を飛ぶ虫のような魔物だ。宿の屋根に登った人たちが、魔法で応戦していた。

 彼らの魔法を受けても、魔物たちは宿を狙って飛んでいく。かなり強力なものが多いみたいだ。まだこんなに魔物がいたなんてっ……!

 結界が効いているのか、宿に近づいている敵はいないようだけど、その数はかなりのものだ。

 リールヴェリルス様は、使い魔を魔物がいる宿めがけて飛ばしていく。

 すると、屋根で魔物を倒していたデルフィルスさんが僕らに気付いたらしく、僕らに向かって手を振って、安堵したように「ご無事でしたか」と言ってくれた。

 リールヴェリルス様は、彼に向かって叫ぶ。

「周囲に魔物が集まってきているっ……! そっちは俺がやるから、宿を守っていてくれ!」
「は、はいっ……! しかしっ……魔物はどれも強力です! どうかお気をつけてっ……!」

 叫ぶ彼に「もちろんだ」と返事をして、リールヴェリルス様は、今度は僕に振り向いた。

「フォルイト、宿の結界の方を頼める?」
「……え…………? ……えっと……や、やって……やってみます!」

 僕が答えると、リールヴェリルス様は僕に微笑んで、僕を結界の中の宿の前におろしてくれた。そこには、僕が渡した結界の槍が刺さっていて、宿を守っている。

 よかった……これ、役に立っているんだ。

 ホッとして顔を上げると、リールヴェリルス様は真剣な顔をして言った。
 
「ここまでは魔物は来ないと思うけど……気をつけてね」
「はいっ……!! 任せてくださいっ……!!」

 トリステリクさんも、こっちを頼んだぞって言って、空を飛びながら僕に手を振っている。

「今度は俺を刺すなよー!!」
「さ、刺してませんっ……あの、でも……き、気をつけます!!」

 僕が答えると、彼は「本当に気を付けろよっ!」と叫んで飛んで行った。

 僕は、槍を握って結界を張るために集中する。それは、一気に周りの結界を強化していく。

 これなら……宿の方は守れる。だけど……今回集まっているのは、かなり強力な魔物ばかりだ。もっと、強力な結界を張れればいいんだけど……

 宿の周りには人が集まっていて、結界の中から魔法を放っている。

 けれど、魔物の数は減りそうにない。強力な魔物が次々寄ってきているんだ。

 なんとかしたい……結界さえ強化できれば、なんとかなるんだ。

 結界の槍は、ここに来るまでに強化しておいた。だけど、それも急拵えだ。強力な魔法には、それだけ危険も伴う。それに僕だけで対処するなんてできない。

 ぎゅっと槍を握る。

 それから僕は、顔を上げた。

 周りでは多くの魔法使いたちが魔物に向かって魔法を放っていた。

 僕だけじゃ結界の強化は無理だけど、他の魔法使いの力があれば、なんとかできるかもしれない。

 槍を握った手が汗ばんでいる。緊張で、胸が痛くなる。声を上げるたびに「こんなこともできない無能」と怒鳴られたことばかり思い出してしまう。口を開くことが、ひどく恐ろしい。

 だけど僕だって、ここがこのままなんて嫌だ。

 ついさっき、トリステリクさんに言われたことを思い出す。あんなことがあっても、彼は、僕の槍を心強く思ってくれていたんだ。

「…………あ、あのっ……!」

 そう蚊の鳴くような声で呼んだけど、やっぱり誰も気づかない。みんな、周りの魔物たちに対処するだけで、精一杯なんだ。それだって、この結界があれば、なんとかなるはず。

「あっ……あのっっ…………!! あのっっ!! だ、だれかっ…………誰かっ……! 誰か手を貸して下さいっっ!!」

 思いっきり叫ぶと、周りにいたみんなが振り向いてくれた。

「どうしたっ!?? 結界に何かあったのか!?」
「い、いえっ……そのっ…………あ、あのっ…………」
「フォルイト?」
「……あのっ……! ぼ、僕っ……あの!! け、結界をっ……強化したいんです!! 力をっ……力を貸してくださいっっ!!」

 裏返った声で叫ぶ。

 叫びながらも、ひどくドキドキした。だって、どんな返事が返ってくるか分からない。

 けれど、僕に駆け寄ってきてくれた人は、すぐに微笑んで言った。

「もちろんだっ……!」
「え……?」
「結界を強化するんだろ!? 任せておけ!!」

 彼が叫ぶと、他のみんなも、同じようにもちろんだって言ってくれた。
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