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34.そんなに怯えなくても大丈夫
しおりを挟むひどい目にあった……
散々くすぐられて、魔力は回復したけど、絶対にこんな方法じゃなくてよかったはずだ。
刺されて死ぬことはなかったけど、死ぬほど笑って、お腹が痛くなった。僕は泣いているのに、リールヴェリルス様はずっと楽しそうだし……
そんな風に、たっぷりリールヴェリルス様に弄ばれた僕は、彼と一緒に泊まる部屋で、ぐったりしていた。クイヴィーアさんは、少し離れたところの部屋にいるらしく、今は僕とリールヴェリルス様の二人きり。
部屋は広くて、大きなキングサイズのベッドが一つ。お風呂もあって、今日はここでゆっくり休めそう。
食事は部屋に運んでくれるらしいから、ここで待っていればいいみたいだけど……もう起き上がるのが辛い……
それなのに、リールヴェリルス様はニコニコしてて楽しそうだ。ベッドにぐったりと横になる僕の頭を撫でてくれている。
「魔力、回復してよかったね」
「……」
確かに魔力は回復したけど! だけど、なかなか、「はい」って答えたくない……
ベッドに横になったままでいると、コンコンと扉が叩かれて、トリステリクさんが中に入ってきた。
「…………食事、持ってきたぞー…………どうしたんだ?」
彼が僕に気づいて心配そうな顔をするから、僕は慌てて跳ね起きた。
「す、すみませんっ……な、何でもないんです……」
「そうか? ……ずっと魔法の道具と武器の整備、してくれてたんだろ? ……今日はゆっくり休んでくれ……」
「は、はい……あ、ありがとうございます……」
「こっちの方こそ、助かったよ……だいぶ魔物も減って、今日はゆっくり食事ができそうだ。明日には、森の魔物を退治しに行く。手伝ってくれるか?」
「は、はい……」
僕が答えると、リールヴェリルス様も微笑んで、もちろんって言った。
リールヴェリルス様が、トリステリクさんにたずねる。
「魔物が出る辺りをまとめた地図はある?」
「あ…………多分、デルフィルスさんのところだと思います……ただ、デルフィルスさん…………今日は武器屋の方に行っているはずで……」
「だったら、俺が取りに行く」
彼はそう言って立ち上がり、僕に振り向いた。
「少し待ってて。すぐ帰るから」
「は、はい…………お、お気をつけて……あ! そうだ……!」
僕は、トリステリクさんの剣の整備を頼まれていたことを思い出した。壁に立てかけてあった剣を握って、慌てて彼に駆け寄る。
「あっ……あのっ…………! トリステリクさん!! こ、これっ……剣!! 整備してみたんです!」
僕が言うと、トリステリクさんは、もうか? と言って驚いていた。
彼はそれを握って、大きく振る。
「すげ…………よくできてるっ……! これなら、魔物退治も捗りそうだっ……!」
「よ、よかったです…………お、お役に立てて……」
「ああ……助かったよ。道具の整備できる奴が、砦の方に行ったままで、困ってたんだ」
「砦…………? あ、こ、国境の砦ですか?」
「そーだよ。ここにいた冒険者も、何人か魔物退治に駆り出されているはずなんだ。それにしちゃ、全く魔物を減らせてねえけど」
そう吐き捨てて、彼は、リールヴェリルス様に振り向いた。
「行きましょう。あ、案内します……」
「うん。ありがとう……フォルイト」
彼は、僕の名前を呼んで、微笑んだ。
「……しばらく、ここで待ってて」
「は、はい………………」
返事をしたのに、リールヴェリルス様は、ゆっくりと僕に近づいてくる。
彼の顔を見上げていると、どうしてもさっきのことを思い出してしまう。拘束されて、ずっとくすぐられたことも、杭の下で、逃げることもできずにもがいていたことも。
彼の手が、僕の頬に触れる。微かに撫でるくらいだったのに、体がビクッと震えた。心臓、ひどく高鳴ってる。こ、怖いのかドキドキしてるのか分からなくなってきたっ……!!
「……何? 怖い? 俺のこと」
「い、いえ…………そ、そんなわけでは…………」
「……そんなに怯えなくても大丈夫…………」
震える頬に、リールヴェリルス様は、優しくキスしてくれた。
「……フォルイトを怖がらせるものは全部俺が破壊しておくから、安心して待っててね」
「…………は、破壊はしなくていいです…………」
だったらくすぐるのも、あれで最後にしてください!!
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