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32.そんなところ、何で見てるんですか!
しおりを挟むうまくできたって、リールヴェリルス様に言ってもらえて、ほっとした。
だけど、リールヴェリルス様は、じーーっと、僕の方を見ている。
…………どうしたんだろう……僕、何か変なこと、しちゃったのか?
「…………あ……えっと…………あっ! こ、こっちの道具も見てもらえませんか? ……あのっ……き、きっと魔力の回復の役に立ってくれると思うんです……!」
テーブルの上に置いた杖を取ろうとすると、彼は僕の手を握って杖から遠ざけて、僕の手の甲に、ちゅってキスをする。
「……っ!!?? り、リールヴェリルス様……!?」
「…………フォルイトは、俺の婚約者だろ?」
「え? えっと……は、はい…………そ、そうです……」
「分かってるならよかった……」
「……っ!!」
そう言った彼の唇が、今度は僕の手のひらに触れる。ちゅ、ちゅっと音がして、何度もキスされて、僕はもう真っ赤だ。
ここ……誰か来るかもしれないのにっ……!
それなのに、リールヴェリルス様は、どんどん僕に迫ってくるから、ついにはソファの上で押し倒されたような体勢になってしまう。
「り、リールヴェリルスさまっ……!? あ、あのっ…………っ!!
今度は手首や、腕にまでキスされてしまう。
見上げたら、リールヴェリルス様は、僕の腕に舌を這わせていて、その妖艶な様に、ゾクゾクした。
だけど彼の顔は、さっきまでと違う。ちょっと怖い時のリールヴェリルス様だ。
「…………フォルイトは……俺の婚約者だろ?」
「……え? は……はい…………あっ…………あのっ…………」
「……それなのに、何で他の奴を見るの?」
「へっ……!?? な、なんのことですかっ…………!?」
「今朝。ずーーっと、トリステリクのこと、見てただろ?」
「へっっ!!??」
「それに、ここに来てからも。ずっと、他の奴らのことばかり見てた……」
「な、なんのことですかっ……! ……僕はそんなことっ…………あ…………」
……確かに……リールヴェリルス様の言うとおりだ……トリステリクさんにちょっと困った顔をされるくらい、じーーっと見てた。
だって……みんなが持ってる装備が珍しくて!! 僕が見たこともないものが多すぎて!!
竜族の国のものまであって……見ているだけで楽しくて、つい注目しちゃってたんだっ……!!
そんなところまでリールヴェリルス様に見られていたなんて……!
「……も、申し訳ございません…………」
「……見てた自覚はあるんだ…………」
「う…………で、でも……あ、あれは、その……装備を見ていただけで…………だ、だから、そ、それは……その…………っ!」
今度は、反対側の手まで取られて、手首にキスされてしまう。そこから何度も甘いキスの音が響いて、そのたびに、くすぐられてるみたい。ちゅって音がするたびに、背中が微かに反り返る。
そんな音を、聞いていることも見ていることもできなくて、僕は顔をそむけた。
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