ずっと周囲に邪魔だと罵倒されてた僕なのになぜか婚約者に執着されて怖い……憎まれるんじゃなかったの!? 溺愛は必要ないので敵同士になりませんか

迷路を跳ぶ狐

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24.困るかも

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 結局それからいっぱいキスされて、もう無理ですって言って泣きそうになるまでされて、僕は死にそうになった。
 僕……ちゃんとリールヴェリルス様の婚約者なのに……

 クイヴィーアさんは「最高に妨害できてて素晴らしいでーす」なんて言って、ちっとも助けてくれないし、それどころか魔法でお茶を出してのんびり飲んでいた。

 やっと解放された僕は、もうふらふらだった。

 それから、リールヴェリルス様は出発のために使い魔を整備し始めて、クイヴィーアさんは、檻があったあたりで、木切れのようなものを拾い集め始めた。

 クイヴィーアさんが、さして心配していないように言う。

「大丈夫ー? 今日はいっぱい旅の妨害できて、よかったね!」

 彼が集めているのは、さっきの魔物の破片だろう。泥のような色をして、切り口が溶けたようになっている。それを集めては、小さな袋に入れているようだ。

「それ…………さっきの魔物の破片ですよね……?」

 僕がそうたずねると、彼は頷いて答える。

「うん。せっかくだから、この先にある店で買い取ってもらおうかと思って」
「あっ…………あのっ……! それ、少し分けてもらってもいいですか!? 後で……武器の強化とか、道具の整備にも使いたくて……」
「もちろんいいけど…………袋、小さいし、魔物の魔力が暴走しかけてるから……あんまり持って行けないかも……」
「普通の袋で大丈夫ですよ?」
「……何言ってるの? 魔物の破片に、まだ魔物の魔力が残ってる。こんなの、ただの袋にいれていったら、いつ暴走するか分からないんだよ? ちゃんと魔力を抑える加工がされた袋じゃないと……」
「……あ、そ、それなら……大丈夫です……な、何か袋があったら、一つ貸してくれませんか?」
「……いいけど……」

 彼はそう言って、古びた袋を渡してくれた。

「飲み物を冷たくして持って行くためのものなんだけど……魔物の素材を入れるのには向かないよ?」
「……大丈夫です。あ、こ、これ……目的地に着くまで使えなくても構いませんか?」
「……それはもちろんだけど……」

 クイヴィーアさんがそう言うのを聞いて、僕は、袋に杖の先を向けた。保冷の効果は今は必要ないから、魔力を抑えるための効果に変換。ついでに大きくしておこう……何しろ、ここには魔物が残していった破片がいくつもある。
 杖の先を袋に向けて魔力をこめると、袋は元の大きさの数倍にまで大きくなった。

 ちょっと大きすぎたかな……? だけど、これで何とかなるだろう。

「あ、あの……目的地まで使えなくてもいい武器があったら、貸してもらえませんか……? 魔力の暴走を抑えるのに使いたいんです……」
「……これ……使っていいよ……」

 そう言って、クイヴィーアさんは魔法で槍を出して、貸してくれる。魔物の力を削ぐための魔法がかかっているようだ。これなら、魔力を抑えるには十分だろう。きっと、選んでこれを出してくれたんだ。

「あ、ありがとうございますっ……!」

 お礼を言って、槍を受け取り、それに杖を向ける。槍自体にかかっている魔法は、かなり強いもののようだけど、元々魔物の力を削ぐためのものだ。僕が整備するときの魔法とは相性がいいみたい。
 杖の先を槍に向けて、魔力を注いでいく。槍にかかった魔法に干渉して、その性質を変化させる。
 それが終わってから、僕は、槍の先を魔物の破片が落ちていた辺りに突き刺した。
 魔力が足りなかったらまた誰かに借りなきゃならないかもしれないと思っていたけど、何とかなったみたい。
 槍を刺したところから、かすかな魔法の風が吹いて、魔物の破片が溶けるのを止めてくれる。同時に、地面に流れていた泥も止まって消える。

 僕は、クイヴィーアさんに振り向いた。

「これで……落ちている破片の暴走はないと思います……この辺りに散らばったものの魔力も抑えたので…………槍を小さくして袋に括り付ければ、目的地まで安全だと思います…………ただ……あの……ち、散らかったものを回収する魔法は、僕には使えなくて……あ、あの…………すみません……」
「……回収の魔法くらいなら、僕ができるからいいよ」
「えっっ!!?? い、いいんですか!?」
「何びっくりしてるの? この袋だけで十分だよ……それより、これ、どうやったの?」
「へ!??」
「さっきの、袋に魔法かけたり、槍に魔物の破片の暴走を抑える魔法をかけたり……あんなの、初めて見たよ」
「あ…………討伐に行く人の手元に届く時には、すでにかけ終わっているはずの魔法ですから…………お、お役に立てて、よかったです……」
「お礼を言うのはこっちだよー」

 そう言って、彼は落ちていた破片に魔法をかけて、袋に次々入れていく。

「お前がいなくなって、討伐隊の奴ら、困ってるんじゃない? こんなの用意できる奴、なかなかいないよ?」
「え…………? そ、そんなことありません……城にはいくつも素材回収のための道具があるし、武器だって、たくさんありますから…………」
「……そう? だけど僕はお前がいないとすごく困るかも……助かったよ。ありがとう」
「い、いえっ……!!!! や、や、役にた、立てたのなら……よかったです……」

 役に立ててよかった……僕がそんなことを言う日が来るなんて……
 やっぱり嬉しくて、僕も落ちた破片を集め始めた。
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