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番外編.触手です

9.すぐシーツぐちゃぐちゃにしちゃうかと思ってました

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 アレゼと魔王様なら、どっちかって言うとアレゼの方が魔王だ。気を引き締めて行かないと、返り討ちにあう。

 それに、広い屋敷の中を出鱈目に逃げたから、自分がどこにいるのかも分からない。

 俺は、窓に駆け寄った。

 外を眺めたら、自分が今いる場所がわかるかと思ったけど、ダメだな……
 庭にはいくつか間接照明があるとはいえ、暗くて周りの様子なんてわからない。初めて来るところだから勝手がわからないし……

 誰かに離れの場所を聞くしかない。人はいないかとキョロキョロしていたら、水の音が聞こえてきた。誰かいるのかもしれない。行ってみるか。

 俺は、自分の手の中の触手を見下ろした。

「しばらくいい子にしていろよ」

 つぶやいて、それをポケットに入れる。

 テアを助け出して、できるだけ遠くまで逃げてやる!! 俺を怒らせたことを後悔しろ! 魔王様!!







 水の音は、歩くごとに大きくなっていく。その音をたどってきた俺は、大きな扉の前に来た。ドアには、洗濯場ってかいたプレートがある。

 誰かいるのかな……?

 ドアは少しだけ開いていて、中を覗いてみる。

 中には、いくつも大きなタライが並んでいた。一つ一つが、俺の背丈より大きい。

 そのタライの間で、真っ白なエプロンをつけた男の人が、大きなシーツをタライの中に放り込んでいた。タライからは、シャボン玉がいくつも飛び出している。多分あのタライ、洗濯機だ。

「あの……こんばんは……」

 声をかけると、男の人は俺に振り向いてくれる。大きなリボンで長い金色の髪の毛を縛った童顔な人で、真っ青な目で見つめられると、ドキッとするくらい可愛い。

「あなたは?」
「お、俺、イウって言います。魔王様の連れで、今日はここに泊めてもらってるんです」
「あー……聞いてます。魔王様の伴侶の方ですよね? 僕、洗濯係のランドラーっていいます。もしかして……シーツ、汚れちゃいました?」
「へ!? い、いえ……そうじゃなくて……」
「まだやってないんですか?」
「へっっ!!??」
「珍しいですねー。魔王様なら、すぐにシーツぐっちゃぐちゃにしちゃうかと思ってました」
「…………」

 なんでみんな、俺が魔王様にイカされてること前提で話すんだ……
 なんだかもう、めちゃくちゃ恥ずかしい。道を聞くだけなのに、なんで俺は真っ赤になってるんだ。

 俺は恥ずかしいのを抑えて、説明を始めた。

「あ、あの……そうじゃなくて、俺、部屋を出たら道に迷っちゃったんです。離れまでの道、教えてくれませんか?!」
「ああ……それなら…………」

 ランドラーは、ドアから出て、南へ向かう廊下を指差した。

「ここをまっすぐ行って、最初に見えた角を右に。そこをまっすぐ行って、十番目の角を右に。さらにまっすぐ行くと、ドアがあるんで、それを開けて中庭に出て、噴水の前を突っ切って、厨房の煙が見えたら、そこのドアから中に入って、すぐにある階段を上がってから、池の上の廊下をまっすぐ行って階段を降りて」
「す、すみません! 覚えられないので、地図に書いてくれませんか!?」
「地図? ああ、それなら……」

 ランドラーは、タライの端に丸めて立てかけてあったものを持ってきてくれた。

 彼は、それを俺の目の前で開く。それはこの屋敷の地図だった。

「これ、各部屋の洗濯物を回収するときの地図なんです。今日はもう洗濯終わったし、よかったら、使ってください」
「ありがとうございます!!」

 これがあれば、迷わず離れまで戻れそうだ。早くテアを助けに行くんだ!
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