39 / 60
39.好きなんだよ!
しおりを挟む広間での会合は、すぐに終わった。
誰もが保身しきれないと知り、頭を抱えてもう終わりだと涙を流す人もいる中、魔王様は全員に謹慎を命じた。
これから、この街は再生していかなくてはならない。それに全員が駆り出され、そのあと、本格的な検証が行われるらしい。
この地には、魔王城から新しい指導者が送られることになり、テアフィザンは罷免。それと一緒に、アレゼまで仕事を辞めてしまった。僕は魔王様について行きたかったんですー! と言い出して、これから、魔王様が城へ帰る旅の供をするらしい。
テアフィザンは、しばらくは俺まで心配になるような落ち込みようだった。自分が不甲斐ないばかりに、魔王様から預かった街を混乱に落とし入れ、命すら失われてしまったと言って、自害してしまいそうな様子だった。
だけど魔王様から、泣いている暇があるなら、これから先、私の従順な下僕となる準備をしておけと言われ、今は旅路の用意をしている。
魔王様は魔力が戻った。そうなったら、元の世界に帰してもらうはずだった。それなのに、魔王様のお供ができる二人を、羨ましいと感じてしまう。
魔王様から離れたくない。
って真剣に考えているのに、何で俺だけ、後ろ手に縛られてるんだ。そして何で、ベッドに寝かされているんだ!
「魔王様!! なんで俺だけこんな目にあわされてるんですか!!」
「そんな顔をしているからだ。いかにも、私に嬲って欲しそうに指をくわえていただろう」
「はあーー? い、意味わかんないっ……!」
言いがかりもいいところだ。俺は何もしていないのに、縛られて寝かされて。一体どういうつもりなんだ。
しかもすぐそばでは、アレゼが楽しそうに食事の用意をしている。
「魔王様、ワインはこちらでよろしいでしょうか? 人族には少々刺激が強すぎるかもしれませんが……」
「ああ。いいものだ」
「お食事には、催淫効果のある果物のシロップ漬けをご用意したしました。どうぞお楽しみください」
「気が利くじゃないか……」
魔王様はアレゼの頭をいい子いい子してるけど、なんで二人だけで楽しそうにしてるんだ。催淫効果ってなんだ!! 俺は酒飲むなんて、一言も言ってない!!
「俺そんなの、絶対飲まないからな!!」
「イウ、そんな怖い声出さないで」
宥めるようにアレゼが言うけど、騙されるもんか!!
大きなベッドだけだったこの部屋に、鞭だの鎖だの拘束具だの、いろいろ楽しげに準備したのは全部こいつ!! 完全に面白がっている!!
暴れる俺に布団をかけ直して、アレゼは口元で指を立てて言った。
「イウ、暴れちゃダメだよ。この布団がずれて、イウのえっちな身体が露になっちゃったら、それを見た僕は、魔王様に殺されちゃうかもしれないんだよ? イウはそれでもいいの?」
「う………………」
「大丈夫。イウが辛い目に合わないように、ぬるぬるしてて気持ちいいものばっかり集めたから」
「ぬるぬるって……なんのことだよ……」
「ぬるぬるはぬるぬるだよ。体に果物を盛る時は、このシロップを塗るといいんだ」
「は!? な、なんで体に盛るんだよ!!」
「あははー。イウ可愛いー。記念写真撮っていい?」
「ふざけんな!!」
「じゃあ、魔王様と仲良くね! ちなみにこれは、結婚式で着てもらう予定のドレスなんだけど、どう思う?」
「どこがドレスなんだよ!! それ、紐じゃないか!!」
「紐は嫌? じゃあ、縄にするね!」
誰がいつそんなことを言った。だけど、俺がどれだけ怒鳴っても、アレゼはどこ吹く風で、魔王様に向き直り、深々と頭を下げた。
「では、魔王様!! 僕はこれで失礼いたします!」
「ああ。旅の準備を頼んだぞ」
「はい!」
「城に戻ったら、寵臣としてお前を迎えてやろう」
「ありがとうございます!! だけど僕、城には興味ないんで、イウ専用のお世話係でお願いします!!」
絶対に嫌だ。こんな奴が俺のそばにいたら、四六時中魔王様に襲われる。
だけど、俺が嫌だってどれだけ叫んでも、アレゼも魔王様も聞いてない。
アレゼは部屋から出て行き、魔王様は俺に振り向いた。
部屋には魔王様と俺の二人きり。もう、何をされるかわからない。
だって……
怯える俺から、魔王様は布団を剥ぎ取ってしまう。俺はすでに素っ裸で、後孔には、ずっと玩具を押し込まれている。それが何度も俺の中をくすぐって、すぐにでもイってしまいそうなのに、鈴口の中にまで媚薬のスライムを押し込まれた。膨らむだけ膨らんだ欲が、体の中で渦巻いている。もう許して欲しいのに、魔王様は、喘ぐ俺の身体に意地悪く触れてくる。
「あっ……!」
「ずいぶんといやらしい身体に育ったな……出会ったばかりの頃とは、別人のようだ」
「な、何言って……あ…………ぁ……んっ……!! あ、あ……」
「こうして私が触れてやっただけで、淫らに喘ぐではないか」
「だ、だって……そんなのっ……! ま、魔王様がっ……!!」
「ああ。私がお前の身体をかえてやったんだ。ありがたく思え」
「だ、誰がっ……! そんなこと!!」
「まだ言うか……」
「いっ!!」
散々昂った俺の中心に、魔王様がいやらしく触れる。こんなことされて、我慢なんてできるわけない。何度もねだってるのに、魔王様はお預けばかり。
「ま、まおうさまあっ……早くっ……!」
「ああ、そうだなあ……少しくらいは解放してやるか……」
魔王様がそう言うと、中に突っ込まれたものが、少し大人しくなる。確かに、少しは楽になったけど、こんなの、解放したって言わない。魔王様に貫かれなきゃ満足できないの、知ってるくせに。
「ま、魔王様っ……! こ、こんなのやだっ……!」
「わがままな奴だ。私は忙しいんだぞ。これから城に戻る準備をしなくてはならないんだ」
魔王様は、窓の端に置いた鳥籠を持ってくる。中には、濡れた水のような羽を持ち、魚の尻尾がある鳥が入れられていた。
「魔王様……それ…………」
「テトラだ」
「それがっ!?」
「このまま城に連れていく。これにしてみれば、虐殺の魔物ですら、ただの魔力集めの道具だったらしい。魔力を喰らい尽くし、たっぷり太ったところで、自分がいただく予定だったそうだ」
「……そんなにまでして……魔力って欲しいものなんですか?」
「……わからなくもない」
「ま、魔王様!? なに言ってるんですか!?」
「私も、先代を倒すと息巻いていた頃、どんなことをしてでも魔力を手に入れたいと願ったことがあった」
「……魔王様……」
「そういうわけだから、こんな危ない奴を、使い魔には任せられない。私が城まで連れていく」
「……テトラを連れて、アレゼとテアフィザンさんと一緒に、城に帰るんですか?」
「ああ」
答えて、魔王様は俺に背を向けてしまう。
やっぱり、もう無理だ。魔王様と離れるなんて、できるはずがない。
俺は、縛られたまま起き上がり、ベッドのわきに置いた槍に手を伸ばした。指先でそれの柄に触れて、倒れてきた刃に俺の手を縛っていた鎖を当てると、鎖はあっさり千切れる。
拘束から逃れた俺は魔王様に飛びついた。
「魔王様っ……!」
「イウ!??」
驚いた魔王様が振り返る。俺はその顔を見上げて、ますます強く彼を抱きしめた。
「魔王様っ……! 俺っ……帰りたくないです!!」
「イウ……」
「俺……俺っ……! ま、魔王様のことが好きです!! だからっ……は、離れたくないんです!!!」
「……」
魔王様は俺を見下ろして、静かに言った。
「……それは、どれほどの覚悟で言っている?」
「……」
「全てを捨てて、私と歩みたいと思うほど、お前は私が好きなのか?」
「…………」
またそういう、意地悪な聞き方をするんだ。魔王様は。
俺はもう真っ赤だったけど、うなずいた。
「そうか……」
魔王様の顔が綻ぶ。分かっていたくせに。俺がこう言い出すこと。
上機嫌で抱き上げられて、ベッドまで戻された。
微笑んだ魔王様は、俺に優しいキスをくれる。
「今日は……たっぷり褒美をやろう」
「ほ、本当に? 今日は、意地悪なしですか!?」
「私がいつ意地悪をした?」
「い、いつだって意地悪なくせに……あ!」
魔王様の手が、俺の鈴口に触れる。中には媚薬のスライムを押し込まれているのに。
「ま、魔王様……や、やめて…………」
「お前がそこまで覚悟したのなら、私も答えてやらなければならないだろう?」
「う…………ぁ、でも……家賃払わなきゃならないから、バイトの日は帰してほしい」
「……は?」
魔王様の目が丸くなる。だけど、家賃は大事だ。
「それに、大学だって……単位取らないと留年だから……試験前は帰りたい。夏休みになったらくるから…………」
「……ずっとこっちにいるんじゃないのか?」
「だ、だって…………そ、そっちだって、最初から俺を手放す気なんかなかったくせに! アレゼから聞きました! 魔王様、俺を帰したってすぐ迎えに行っちゃうはずだって! そ、それなら、こっちに来る日、俺が決めたっていいですよね!?」
「…………とりあえず、アレゼは後で吊るす。貴様……覚悟ができたと言っただろう!」
「そんなこと言ってない!! 魔王様のこと、全部捨てられるくらい好きだけど、捨てなくていいなら捨てたくない!! バイトも大学も家賃も大事なんだよ!! 俺は!!」
「そうか……」
魔王様の目が細くなる。その顔を見たら、俺は震え上がりそう。
中心に押し込まれた媚薬のスライムが揺れた。
「あっ…………ぁあっ……!!」
すぐに達してしまいそうになるのに、意地悪な魔王様は、俺の先に指を押し付けてきた。そこから恐ろしいほどの快楽が広がるのに、出すこともできない。
「な、何して……い、いやああ!!」
もがく俺の後孔でまで、玩具が暴れ始める。もう我慢なんてできるはずがない。魔王様のいいなりになった身体は、出さなくても達することができるようになった。だけど、そんなの嫌だ。魔王様に弄られてイきたい。魔王様にされたいんだ。
「ま、魔王様っ……! まおうさまあっ!! こ、こんなの嫌だっ……イくならっ……! いくなら魔王様に抱かれてイきたいっ……!!」
「イウ……」
魔王様は顔を綻ばせて、俺の両足を上げる。俺の身体は、すでに魔王様のためのものにされている。ずっと放置されて、そこはずっとねだるようにヒクヒク動いている。
犯されるのを待っている、そんなものを見られて、それだけで恥ずかしくてたまらないのに、魔王様は舌舐めずりをしてそこを眺めているだけ。
「ああ……うまそうだ。そんなに抱かれたかったか?」
「う……は、早く……待てないからあ……!」
「では、お前が私の責めに耐えられたら、お前の願いを叶えてやる」
「はっ……?」
「出発まで、まだ一日ある。それまで、嫌というほど犯し続けてやる。耐え切れたら、お前の言ったとおりにする。どうする?」
「……う…………や、約束、してくれるんだろうな?」
「ああ、もちろんだ」
「…………」
無言で、魔王様を見上げる。凶悪に笑うその顔を見たら、拒否なんてできるはずなくて、俺はうなずいてしまった。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…
リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。
乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。
(あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…)
次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり…
前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた…
そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。
それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。
じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。
ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!?
※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております
淫紋付けたら逆襲!!巨根絶倫種付けでメス奴隷に堕とされる悪魔ちゃん♂
朝井染両
BL
お久しぶりです!
ご飯を二日食べずに寝ていたら、身体が生きようとしてエロ小説が書き終わりました。人間って不思議ですね。
こういう間抜けな受けが好きなんだと思います。可愛いね~ばかだね~可愛いね~と大切にしてあげたいですね。
合意のようで合意ではないのでお気をつけ下さい。幸せラブラブエンドなのでご安心下さい。
ご飯食べます。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
公開凌辱される話まとめ
たみしげ
BL
BLすけべ小説です。
・性奴隷を飼う街
元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。
・玩具でアナルを焦らされる話
猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる