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39.好きなんだよ!

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 広間での会合は、すぐに終わった。

 誰もが保身しきれないと知り、頭を抱えてもう終わりだと涙を流す人もいる中、魔王様は全員に謹慎を命じた。
 これから、この街は再生していかなくてはならない。それに全員が駆り出され、そのあと、本格的な検証が行われるらしい。
 この地には、魔王城から新しい指導者が送られることになり、テアフィザンは罷免。それと一緒に、アレゼまで仕事を辞めてしまった。僕は魔王様について行きたかったんですー! と言い出して、これから、魔王様が城へ帰る旅の供をするらしい。
 テアフィザンは、しばらくは俺まで心配になるような落ち込みようだった。自分が不甲斐ないばかりに、魔王様から預かった街を混乱に落とし入れ、命すら失われてしまったと言って、自害してしまいそうな様子だった。
 だけど魔王様から、泣いている暇があるなら、これから先、私の従順な下僕となる準備をしておけと言われ、今は旅路の用意をしている。

 魔王様は魔力が戻った。そうなったら、元の世界に帰してもらうはずだった。それなのに、魔王様のお供ができる二人を、羨ましいと感じてしまう。

 魔王様から離れたくない。

 って真剣に考えているのに、何で俺だけ、後ろ手に縛られてるんだ。そして何で、ベッドに寝かされているんだ!

「魔王様!! なんで俺だけこんな目にあわされてるんですか!!」
「そんな顔をしているからだ。いかにも、私に嬲って欲しそうに指をくわえていただろう」
「はあーー? い、意味わかんないっ……!」

 言いがかりもいいところだ。俺は何もしていないのに、縛られて寝かされて。一体どういうつもりなんだ。

 しかもすぐそばでは、アレゼが楽しそうに食事の用意をしている。

「魔王様、ワインはこちらでよろしいでしょうか? 人族には少々刺激が強すぎるかもしれませんが……」
「ああ。いいものだ」
「お食事には、催淫効果のある果物のシロップ漬けをご用意したしました。どうぞお楽しみください」
「気が利くじゃないか……」

 魔王様はアレゼの頭をいい子いい子してるけど、なんで二人だけで楽しそうにしてるんだ。催淫効果ってなんだ!! 俺は酒飲むなんて、一言も言ってない!!

「俺そんなの、絶対飲まないからな!!」
「イウ、そんな怖い声出さないで」

 宥めるようにアレゼが言うけど、騙されるもんか!!
 大きなベッドだけだったこの部屋に、鞭だの鎖だの拘束具だの、いろいろ楽しげに準備したのは全部こいつ!! 完全に面白がっている!!

 暴れる俺に布団をかけ直して、アレゼは口元で指を立てて言った。

「イウ、暴れちゃダメだよ。この布団がずれて、イウのえっちな身体が露になっちゃったら、それを見た僕は、魔王様に殺されちゃうかもしれないんだよ? イウはそれでもいいの?」
「う………………」
「大丈夫。イウが辛い目に合わないように、ぬるぬるしてて気持ちいいものばっかり集めたから」
「ぬるぬるって……なんのことだよ……」
「ぬるぬるはぬるぬるだよ。体に果物を盛る時は、このシロップを塗るといいんだ」
「は!? な、なんで体に盛るんだよ!!」
「あははー。イウ可愛いー。記念写真撮っていい?」
「ふざけんな!!」
「じゃあ、魔王様と仲良くね! ちなみにこれは、結婚式で着てもらう予定のドレスなんだけど、どう思う?」
「どこがドレスなんだよ!! それ、紐じゃないか!!」
「紐は嫌? じゃあ、縄にするね!」

 誰がいつそんなことを言った。だけど、俺がどれだけ怒鳴っても、アレゼはどこ吹く風で、魔王様に向き直り、深々と頭を下げた。

「では、魔王様!! 僕はこれで失礼いたします!」
「ああ。旅の準備を頼んだぞ」
「はい!」
「城に戻ったら、寵臣としてお前を迎えてやろう」
「ありがとうございます!! だけど僕、城には興味ないんで、イウ専用のお世話係でお願いします!!」

 絶対に嫌だ。こんな奴が俺のそばにいたら、四六時中魔王様に襲われる。

 だけど、俺が嫌だってどれだけ叫んでも、アレゼも魔王様も聞いてない。

 アレゼは部屋から出て行き、魔王様は俺に振り向いた。

 部屋には魔王様と俺の二人きり。もう、何をされるかわからない。

 だって……

 怯える俺から、魔王様は布団を剥ぎ取ってしまう。俺はすでに素っ裸で、後孔には、ずっと玩具を押し込まれている。それが何度も俺の中をくすぐって、すぐにでもイってしまいそうなのに、鈴口の中にまで媚薬のスライムを押し込まれた。膨らむだけ膨らんだ欲が、体の中で渦巻いている。もう許して欲しいのに、魔王様は、喘ぐ俺の身体に意地悪く触れてくる。

「あっ……!」
「ずいぶんといやらしい身体に育ったな……出会ったばかりの頃とは、別人のようだ」
「な、何言って……あ…………ぁ……んっ……!! あ、あ……」
「こうして私が触れてやっただけで、淫らに喘ぐではないか」
「だ、だって……そんなのっ……! ま、魔王様がっ……!!」
「ああ。私がお前の身体をかえてやったんだ。ありがたく思え」
「だ、誰がっ……! そんなこと!!」
「まだ言うか……」
「いっ!!」

 散々昂った俺の中心に、魔王様がいやらしく触れる。こんなことされて、我慢なんてできるわけない。何度もねだってるのに、魔王様はお預けばかり。

「ま、まおうさまあっ……早くっ……!」
「ああ、そうだなあ……少しくらいは解放してやるか……」

 魔王様がそう言うと、中に突っ込まれたものが、少し大人しくなる。確かに、少しは楽になったけど、こんなの、解放したって言わない。魔王様に貫かれなきゃ満足できないの、知ってるくせに。

「ま、魔王様っ……! こ、こんなのやだっ……!」
「わがままな奴だ。私は忙しいんだぞ。これから城に戻る準備をしなくてはならないんだ」

 魔王様は、窓の端に置いた鳥籠を持ってくる。中には、濡れた水のような羽を持ち、魚の尻尾がある鳥が入れられていた。

「魔王様……それ…………」
「テトラだ」
「それがっ!?」
「このまま城に連れていく。これにしてみれば、虐殺の魔物ですら、ただの魔力集めの道具だったらしい。魔力を喰らい尽くし、たっぷり太ったところで、自分がいただく予定だったそうだ」
「……そんなにまでして……魔力って欲しいものなんですか?」
「……わからなくもない」
「ま、魔王様!? なに言ってるんですか!?」
「私も、先代を倒すと息巻いていた頃、どんなことをしてでも魔力を手に入れたいと願ったことがあった」
「……魔王様……」
「そういうわけだから、こんな危ない奴を、使い魔には任せられない。私が城まで連れていく」
「……テトラを連れて、アレゼとテアフィザンさんと一緒に、城に帰るんですか?」
「ああ」

 答えて、魔王様は俺に背を向けてしまう。

 やっぱり、もう無理だ。魔王様と離れるなんて、できるはずがない。

 俺は、縛られたまま起き上がり、ベッドのわきに置いた槍に手を伸ばした。指先でそれの柄に触れて、倒れてきた刃に俺の手を縛っていた鎖を当てると、鎖はあっさり千切れる。

 拘束から逃れた俺は魔王様に飛びついた。

「魔王様っ……!」
「イウ!??」

 驚いた魔王様が振り返る。俺はその顔を見上げて、ますます強く彼を抱きしめた。

「魔王様っ……! 俺っ……帰りたくないです!!」
「イウ……」
「俺……俺っ……! ま、魔王様のことが好きです!! だからっ……は、離れたくないんです!!!」
「……」

 魔王様は俺を見下ろして、静かに言った。

「……それは、どれほどの覚悟で言っている?」
「……」
「全てを捨てて、私と歩みたいと思うほど、お前は私が好きなのか?」
「…………」

 またそういう、意地悪な聞き方をするんだ。魔王様は。

 俺はもう真っ赤だったけど、うなずいた。

「そうか……」

 魔王様の顔が綻ぶ。分かっていたくせに。俺がこう言い出すこと。

 上機嫌で抱き上げられて、ベッドまで戻された。

 微笑んだ魔王様は、俺に優しいキスをくれる。

「今日は……たっぷり褒美をやろう」
「ほ、本当に? 今日は、意地悪なしですか!?」
「私がいつ意地悪をした?」
「い、いつだって意地悪なくせに……あ!」

 魔王様の手が、俺の鈴口に触れる。中には媚薬のスライムを押し込まれているのに。

「ま、魔王様……や、やめて…………」
「お前がそこまで覚悟したのなら、私も答えてやらなければならないだろう?」
「う…………ぁ、でも……家賃払わなきゃならないから、バイトの日は帰してほしい」
「……は?」

 魔王様の目が丸くなる。だけど、家賃は大事だ。

「それに、大学だって……単位取らないと留年だから……試験前は帰りたい。夏休みになったらくるから…………」
「……ずっとこっちにいるんじゃないのか?」
「だ、だって…………そ、そっちだって、最初から俺を手放す気なんかなかったくせに! アレゼから聞きました! 魔王様、俺を帰したってすぐ迎えに行っちゃうはずだって! そ、それなら、こっちに来る日、俺が決めたっていいですよね!?」
「…………とりあえず、アレゼは後で吊るす。貴様……覚悟ができたと言っただろう!」
「そんなこと言ってない!! 魔王様のこと、全部捨てられるくらい好きだけど、捨てなくていいなら捨てたくない!! バイトも大学も家賃も大事なんだよ!! 俺は!!」
「そうか……」

 魔王様の目が細くなる。その顔を見たら、俺は震え上がりそう。

 中心に押し込まれた媚薬のスライムが揺れた。

「あっ…………ぁあっ……!!」

 すぐに達してしまいそうになるのに、意地悪な魔王様は、俺の先に指を押し付けてきた。そこから恐ろしいほどの快楽が広がるのに、出すこともできない。

「な、何して……い、いやああ!!」

 もがく俺の後孔でまで、玩具が暴れ始める。もう我慢なんてできるはずがない。魔王様のいいなりになった身体は、出さなくても達することができるようになった。だけど、そんなの嫌だ。魔王様に弄られてイきたい。魔王様にされたいんだ。

「ま、魔王様っ……! まおうさまあっ!! こ、こんなの嫌だっ……イくならっ……! いくなら魔王様に抱かれてイきたいっ……!!」
「イウ……」

 魔王様は顔を綻ばせて、俺の両足を上げる。俺の身体は、すでに魔王様のためのものにされている。ずっと放置されて、そこはずっとねだるようにヒクヒク動いている。

 犯されるのを待っている、そんなものを見られて、それだけで恥ずかしくてたまらないのに、魔王様は舌舐めずりをしてそこを眺めているだけ。

「ああ……うまそうだ。そんなに抱かれたかったか?」
「う……は、早く……待てないからあ……!」
「では、お前が私の責めに耐えられたら、お前の願いを叶えてやる」
「はっ……?」
「出発まで、まだ一日ある。それまで、嫌というほど犯し続けてやる。耐え切れたら、お前の言ったとおりにする。どうする?」
「……う…………や、約束、してくれるんだろうな?」
「ああ、もちろんだ」
「…………」

 無言で、魔王様を見上げる。凶悪に笑うその顔を見たら、拒否なんてできるはずなくて、俺はうなずいてしまった。
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