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29.本気にしていないのか?
しおりを挟む俺の体には、まだあの媚薬が這い回っている。乳首の上では、俺の欲望を誘う媚薬が、グリグリと硬くなった乳首を押し潰しては、舐めるように吸い上げ、たまにかすかに生えたギザギザの歯で噛みつくことを繰り返している。強く、たまに力を抜きながら、敏感になりすぎたそこを蹂躙され、体の奥から、何度も熱が吹き出しては、俺の体に染み渡っていく。
「んっ……! んっ……くぅっ……ぅうっ……んっ! ち、ちくび……やだ…………ま、まおうさまっ……これっ! とめろよぉっ……!!」
こっちは喘ぎながら、涎を垂らしながら、涙で顔をドロドロにして頼んでるのに、魔王様は全然聞いてない!!
俺を眺めながら、鞭なんか撫で回してる。そんなもん撫でる暇があるなら、俺に触れて欲しいのに。無意識のうちに、その手を見つめてしまう。早くあの大きな手で触れて、俺を嬲って欲しいのに、魔王様は見ているだけ。
くそ……あんだけやっといて、今度は焦らす気かよ!! あの悪魔は!!
「くうぅっ……!」
ドロドロした媚薬が、俺の胸から、腹に降りて、おへそのそばを通る。媚薬が通った後の肌に服が擦れて、それだけで中心がピクピク反応してる。
もう、先走りだけで、足はびちゃびちゃに濡れていた。それなのに、まだ溢れてくる。しかも、それは既に床まで届いているようだ。ガーターベルトまでドロドロ。その上を、媚薬が這いずり回る。レースをたっぷり使ったベルトの上を、冷たく濡れた媚薬が何度も動いて、かすかにレースが擦れるだけで、快感が生まれる。
だけど、これだけじゃイけない。せめて手が使えれば、自分で扱くこともできたのに、両手は手枷に拘束されて頭の上だ。これじゃ、自分の股間なんて弄れない。せめてもの手段で、太腿をこすり合わせるけど、余計に自分を追い詰めるだけだった。
「あっ……あっ……!!」
太腿の上で別れた媚薬が、縦横無尽に俺の足を這い回る。それどころか、媚薬は既に下着の中にまで侵入し、まるで俺が漏らしたものを舐めとるように這いずり回る。足のあちこちを同時に濡れたもので刺激され、ヌルヌルしたものが、俺の身体に淫らな欲を植えつけていく。足の間が焼けるみたい。中心が熱を膨らませていく。何度も、目の前が白くなる。とっくにイって、出してしまってもおかしくないほどの快楽なのに、全く出せない。もう、耐えきれない。溢れる。そのはずなのに、欲望は俺の中で行き場を失い、右往左往しているようだった。
それもそのはず、俺の鈴口の辺りにまで媚薬は回っていて、出口に蓋をしていた。それだけで気がおかしくなってしまいそうなのに、媚薬は音を立てて俺の先っぽをグリグリ刺激し始める。
「あっ…………ーーっ! あ、あぁぅっ……! うっ……や、やめっ……あっ……あぁぁぁぁっっ……!!」
先が蕩けていく。もう、中心すらとけてしまいそう。解放されたい。それなのに、どこへもいけない快楽は、熱となって溜まり続けるばかり。
ひどい……こんなの。どこまで俺に屈辱を味わわせれば気が済むんだ。
こんなもの着せられて、地下で吊るされて。見せ物のように喘がされて。
悔しくて仕方ないのに、今の俺にできることは、目の前で俺を嘲る魔王様に、泣きながら命乞いすることだけ。
くそ……もうっ……! 限界っ……!!
「ま、まおうさまっ……!」
「どうした?」
冷徹な笑みを浮かべ、魔王様が俺に近づいてくる。そして、手に持った鞭で、くいっと、俺の顎をあげた。
すました顔だ。長く弄ばれた俺は、汗と涙と涎で、ひどい顔をしているのに。
「も、もう……げんかいっ…………うっ……ぅっ……んん!! あっ……ぁぁんっ……! お、おねがいっ……」
「…………伴侶としての自覚は芽生えたか?」
「うっ……や、やだ!! あぁんっ…………!! だ、誰がっ……! そんなもんっ……! ふ、ふざけんなっ!! あ、ああああっっ!!!」
また乳首を摘み上げられた。今度は、鋭く伸びた爪先で。
「いやあああーーーーっっ!!!! 痛い痛いっっ……!! 魔王様!!! お許しくださいっっ!! 痛いっ……! あっ…………ぁ、んっ……好きじゃないくせに!!!」
「……なんだと?」
「俺なんか好きじゃないくせにっ!!!! 好きでもない奴にそんなこと言ってからかって! 吊るして媚薬で虐めてっ……楽しいかよっ!! 俺のこと苦しめて!!!! なんで……こんなことっ……!」
怒鳴りつけると、魔王様は、一歩、俺から離れた。なんでもいいから、早くイかせてほしいのに。
「好きじゃないだと? おい……貴様……まさか、私の言ったことを本気で受け止めていなかったのか?」
「はっ……!? うっ……! あぁっ……! いやぁっ……く、くるしいよぉ……! そ、そんなこといいから! い、一回だけでいいからっ……! イかせろっ……!」
「……イカせろだと……? 誰が解放などしてやるものか!!!」
「は!?」
見上げた魔王様は、めちゃくちゃキレた顔していた。ひどいことをされてるのは俺なのに。
「そうか………………貴様は、死ぬまで犯し尽くしてやらなければ分からないか……」
「な、なんでそうなるっ……あ!!」
魔王様の指が、俺の尻の辺りに触れる。それだけで、期待した体がピクンと震える。
この前、無理矢理突っ込まれて、最奥に欲望を突き立てられ、果てることの快感を教え込まれたそこは、もうずっとピクピクしてる。一生秘められているはずだった窄まりが、何度も口を広げては、咥えることができずに閉じてを繰り返す。
何度も魔王様の楔を求めるそこに、かわりに冷たい媚薬が近づいていく。背中から、腰、双丘の間を通って、あるいは、太腿から。じわじわと追い詰めるような快楽で、俺を嬲りながら、媚薬が俺の後孔に近づいていく。こんなものが入ってきたら、きっと俺はもう、俺じゃなくなってしまう。
「い、いやぁ……やだ! ま、まおうさまっっ」
泣き喚いて暴れるけど、無駄だった。魔王様は、本気で怒ってしまったらしく、俺の耳元で恐怖を煽ってくる。
「言っておくが、その媚薬は、貴様を壊すまで暴れ尽くすぞ。中をぐちゃぐちゃにされる快楽を味わえ」
「ぃ……いや…………いや……許して……許してよ……」
「もがき苦しめ」
「いやっ……あ!!」
ついに、そこに達した媚薬は、たやすく俺の秘部に侵入し、肉に染み込みながら、俺の身体に流れ込んでくる。快楽は絶え間なく俺を責め続け、全身の感覚が麻痺していく。
もう頭は快感に犯し尽くされてしまい、何も考えられない。自分の耳に、欲に煽られた血が巡る音が聞こえる気がした。
「あっーー……っ! ぁ……あ……あ…………っ!!」
「ドライでもイくことは許さない。せいぜい達せないことを嘆くんだな」
「くっ……うぅぅっ……! か、かってなこと……いうなあぁぁ……!!」
限界まで昂った身体は、何度も頂まで届きそうなのに、ギリギリのところで、引き戻される。無理矢理突き上げられては、最上の一歩手前で引き摺り下ろされて。何度も何度もそれを繰り返されて、俺の身体はボロボロだった。
どこまで俺を痛めつければ気が済むんだ。もう、いつ壊れたっておかしくない。股間だって足だってベチョベチョ。身体だって熱い。
「た、たすけて……ま、おう……さま……し、しぬっ……もう死んじゃうよぉ……」
「助けてだと? 私があれだけ想いを告げてやったと言うのに、それを笑い飛ばしておいて、助けろ?」
「お、思い??」
「……覚えてもいないのか? お前は伴侶だと言っただろう」
「じ、冗談だろ! そんなの!! 本気じゃないくせにっ!!」
「冗談でそんなことを言うか。お前をそばに置きたいと、そう思ったからそう言ったんだ」
「へっ……?」
「…………貴様、さては、全く本気にしていなかったな?」
「だ、だって……」
「そうか……」
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