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11.傘くらいで忠誠なんか誓えるか!

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 このままなんて絶対嫌だけど、だからってこんなやつに一生頭を下げるなんてもっと嫌だ!!

 だけど、悩んでいる間にも、勃ち上がった先がヒクヒクしてる。中心に欲が集まりすぎて、体がそこから崩れていきそうなくらい気持ちいい。こんなところで何を気持ちよくなっているんだ。俺は!
 気味の悪い痺れが入り込んできて、身体が縛られていく。必死に我慢してるのに、もう、先からとろとろしたものが漏れてきた。

 もう、無理っ……!!

「ま、魔王様……」
「どうした?」

 くっそ……勝ち誇った顔してっ……!!

「あ、謝るから……生意気な口はもう利かないからっ……! た、たすけて……くださぃ……」
「忠誠はどうした?」
「そ、それは……ま、また今度にしてくれませんかっ……?」
「……そんな状態で、尚意地をはるか…………まあいい。一度に全てを手に入れてもつまらない。嬲りながら堕としていくのも一興だ」
「ぅっ……!!」

 ……すごいことを言われている気がする……

 だけど今の俺は、頭が痺れてて何も考えられない。
 そろそろ本当にまずい。だってもう、足まで快楽に絡めとられて、立っていることすらできない。

「ぅっ……あっ……」

 倒れそうになる俺を、魔王様が抱きとめてくれた。その金色の目が、こんな時だというのに、やけに楽しそうに俺を見下ろしている。
 俺よりずっと背が高くて、肩幅だって広い。透けるように細く白い髪の間から、金色の切れ長の目が、じっと俺を見下ろしていた。
 端正な顔立ちが、今は勝ち誇ったように意地悪な目を向けてくる。きっと、舐められたり馬鹿にされたことなんて、一回もないんだろう。俺とは違いすぎてムカつく……

「いい子にしていろよ」

 魔王様が俺の頬に触れる。その吐息がかかりそうなくらい、そばに近寄られた。
 手、大きい。片手だけで、俺の顔を覆ってしまいそう。
 その手がそっと、俺の耳に塞ぐように触れた。微かなその刺激だけで、身体は震えてしまう。怯える俺を楽しむように、魔王様の手が、耳から首までくすぐるみたいに降りて来た。

「その快楽から自由になりたいのなら、素直に享受しろ」

 そんな言い方はずるい。だって俺、今魔王様を受け入れなかったら、ずーっとこのままになるんだ。

 頷くこともできなくて、微かに口だけ開いて伝えた。

「はい……魔王様……」

 少し怖い。

 自由になるためとはいえ、何をされるんだ。

 俺は、こんなふうに相手の髪が頬にかかるくらいそばに寄られるのも、初めてなのに。

 もう身体は快感に負けてしまい、言うことを聞かない。ぐったりしている俺を、魔王様はずっと抱きとめている。

 なんでそんなに顔を近づけてくるんだ?
 まさか……キスでもされるのか?
 いや、まさか。
 魔王様だって、好きでもない男とのキスは嫌だろ。

 そのはずなのに、魔王様は、どんどん俺に顔を近づけてきて、ついに俺は怖くて目を瞑ってしまった。

 なにも見えなくなって、余計に唇にかかる息を感じてしまう。

 魔王様の長くてさらさらの髪が頬を撫でて、微かな吐息が俺の唇を通り過ぎ、首元にかかった。

「え……えっ!!」

 驚いて、ついたじろぎそうになる俺の首に、魔王様の唇が触れた。

 濡れたような感触。
 そんなものを首に押し当てられて、ぞくぞくした。

 怖いのに、声が出ない。
 息も吐けなくなりそう。

 濡れた柔らかい舌が首を撫でて、次の瞬間、微かに痛んだ。歯を立てられたんだ。

「ま、待って……魔王さっ……ぃっ!!」

 また俺を怯えさせるような目で、あの口調で、一言、黙れって、そう言われているような気がした。
 魔王様の牙が首に食い込んで、一瞬、痛みが強くなる。肌を食い破られたのかと思った。だけどそこから、体に溜まった熱がトロトロ溶けていくみたいに消えていく。

 だんだん体は楽になっていき、魔王様は俺の首から唇を離した。

 安心したところで、最後にからかうように、ぺろっと首を舐められて、腰が跳ね上がる。

 そんな俺を見下ろして、やっぱり魔王様は笑ってた。

「抜いてやったぞ。ありがたく思え」

 ニヤニヤ笑って見下ろされると、かなり恥ずかしい。

 つい、噛まれたところに触れてしまう。

 恥ずかしかったけど、怪我はしていないし、体もすっかり楽になった。ちゃんと治してくれたんだ……

「……ありがとう……ございます……」

 お礼を言うと、魔王様は少し面食らったようだった。

 だけどすぐに嬉しそうに笑う。

「素直な奴だ。やっと私の偉大さに気づいたか?」
「い、いえ……べ、別に、そういうわけでは……」
「……それで、お前は私の部屋から勝手に逃げ出して、こんなところで何をしていた?」
「に、逃げたんじゃありません! 食費が欲しくて……バイトしてただけです!」
「バイト?」
「そうです。ほら!」

 俺は、槍を掲げて見せた。

 その時、魔王様の背後から、その背中目掛けて飛んでくるスライムの大群が見えた。

「危ない!」

 とっさに彼の前に出て、大きく槍を振る。すると、スライムの群れは見事に槍にぶつかって飛んでいき、空の上で弾けて消えた。

 またホームランだ……あんな大群、よく一度に打ち返せたな。自分のやったことなのに、びっくりしてしまう。

 槍の先が当たったことで、スライムは空で凍ったらしく、降ってきたのはさっきみたいな雨じゃなくて、雪。
 セミの声が響く中に雪が降ってきて、キラキラ光ってる。

 涼しいし、綺麗だ。

 庭を見渡しても、もうスライムは襲ってこない。

「あっ……! 氷っ!!」

 急いで、氷を集めた箱に駆け寄る。だけどそれはやっぱり空。全部逃げたんだ。せめて、今降ってる雪だけでも集めるか……

 早速バケツを頭の上に掲げて、雪を集め始める。

 すると、さっきから、傘をさして俺を観察していた魔王様が微笑んだ。

「朝からいないと思ったら、そんなことをしていたのか?」
「だ、だって、お腹空いたし……もうずっと、なにも食べてないんです!!」
「馬鹿な犬だ。腹が減ったのなら、飼い主である私の前で尻尾を振れば、好きなだけくれてやる」
「い、犬じゃなくて、こいうです! いりません! そんなの……! あとで何されるかわかんない!!」
「馬鹿のくせに、警戒しているのか? 必要ない。ところで、お前がさっきから集めているその雪だが、媚薬も混じっているぞ」
「へ?」
「さっきお前が殴り飛ばした群れに、まだ媚薬のスライムが混じっていたんじゃないか?」
「は!? わああああっっ!!」

 本当だ!! バケツの中の雪、一部がピンク色!

 待て。じゃあ、今降ってきてるの、媚薬が混じった雪!? これに当たったらさっきみたいになる!?

「うわあああ!」

 慌ててバケツかぶって逃げ出す俺。
 背後で大笑いする魔王様。

 笑うな。俺は真剣に困っているのに。また媚薬にやられて喘ぐのは嫌だ!!

「忠誠を誓うなら傘に入れてやってもいいぞー」

 からかうように言った魔王様は、俺の背後で一人だけ傘さして呑気に笑ってる。

 なんだあいつ!! 傘くらいでセコいんだよ!!

「そっ……そんなものでっ……! 忠誠なんか誓えるかーーーーっっ!!」
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