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13.威力が強すぎた
しおりを挟む僕は、何度も咳き込んで、体を起こした。頭から、パラパラと砂埃が落ちてくる。それが目にまで入ってきて、目が開けられなくて、ボロボロ涙が出た。
そしたら、すぐそばで声がした。
「大丈夫か?」
その声に、頷いて目を開けようとする。だけど頭や体から砂が落ちてくるし、目を開けることもできない。
「じっとしていろ」
また声がして、僕の頭に、誰かが触れる感触がした。声の主が、僕の頭に触れてきたんだ。
一瞬で、体が水に包まれる。水の魔法だろう。水に体が包まれても、息ができた。すぐに水は弾けて消えて、僕は、目を開けた。
まだ体が微かに濡れていて、髪から水が滴っている。だけど不思議と、冷たいとは思わなかった。
僕、どうしたんだろう……
「わっ…………!!」
びっくりして、僕は飛び退いた。
だって目の前に、レヴェリルインの顔があったから。
なんでこんなそばにいるんだ!?
飛び退いた拍子に、僕は尻餅をついてしまう。さすがに、これは冷たい。ベチャって音がして、地面から泥が跳ねた。
早速泥だらけだ。
そんな僕に、レヴェリルインは手を差し出した。
「……大丈夫か?」
「え……」
えっと……
こ、これは、手を握っていいってことかな? だけど、僕の手はびしょびしょ。レヴェリルインの手まで濡らしてしまう。泥だらけの上、濡れた僕に手なんて触られたら、嫌なんじゃ……
そんなことを考えてしまって、なかなか手を取れない。
チラッと見上げたレヴェリルインは、ますますムッとしてしまっている。そして、促すように、さらに手を前に出された。
て、手をとっていいってことだよな……
僕は、恐る恐るその手を取ろうとして、すぐに引っ込めた。手を拭いてからの方がいい。
濡れた服で自分の手を拭くけど、濡れているから、なかなか手も綺麗にならない。そんなことをしていたら、レヴェリルインは強引に僕の手を取って、立ち上がらせた。
「わっ……!!」
「大丈夫なのか!?」
「ぇっ……」
また聞かれて、僕は顔を上げた。すると、レヴェリルインと目が合う。そして、彼は心配そうにまた、大丈夫か? って聞いてきた。
あ、そうか……この「大丈夫か?」っていうの、僕の無事を聞いてるんだ……
自分の体を見下ろす。多分、さっきまで頭から砂埃をかぶっていたんだろうけど、今はもう、魔法で綺麗に洗ってもらったから、すっかり綺麗だ。
体にも傷はない。
手のひらを見ていたら、それはすでに渇いていた。
レヴェリルインの手、ちゃんと握ればよかった。それにさっきの、僕が手を取ろうとしてやめようとしたみたいじゃないか。せっかく、手を貸そうとしてくれたのに。
僕は、恐る恐る彼を見上げて、返事をした。
「……は……は、い……」
緊張のおかげで、変な声になってしまった。
だけど、僕が頷いて返事をしても、レヴェリルインは、納得していないみたい。
「本当か?」
「はい……」
「怪我はしていないか?」
「は、はい」
「そうか……」
レヴェリルインも、怪我はしてないようだ。ついさっき、僕を抱きしめてくれた時と、まるで変わらない。
よかった…………
ホッとしたら、ますますさっきのことを思い出してしまう。
あの時……僕、この人に抱きしめられたんだ。な、な、なんで、レヴェリルインはそんなことしたんだろう……
急に恥ずかしくなってきて、僕はすぐにレヴェリルインから、顔を背けた。
あ……そうだ。お礼、言いたかったんだ。
こうして僕も生きているし、僕は彼に、声をかけようとした。すると、僕と彼の間を、風が吹き抜けていく。
そして、初めて気づいた。土の匂いがする。
なんだこれ。
やっと僕は顔を上げて、周りを見渡した。
城がない。周りは剥き出しの土だけだ。それが、僕らを取り囲むようにずっと続いている。まるで、土に取り囲まれたような気になる。
見上げると、空には青い空が広がっていて、呑気な鳥の鳴き声が聞こえた。
どうやら、僕は、大きなクレーターの中にいるようだった。
そして、城がなくなっている。庭も、城壁もだ。代わりに大きな、見渡すほど大きなクレーターができている。
もしかして、ここ、城があったところか!? 手伝ってやろうって言ってたけど、本当に自分の城、吹っ飛ばしちゃったの!?
驚いて、レヴェリルインを見上げる。
すると彼は、真っ青になった僕の視線に気付いたのか、決まり悪そうに腕を組んで、空を見上げていた。
「…………腹が立ったんだ……」
「……」
……えっと…………今の、なんだろう……もしかして、城を吹き飛ばした理由??
レヴェリルインは、もうこっちを向いてくれないし……
えっと…………僕は、どうすればいいんだろう……
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