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11.保障?

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 ビクビクしながら歩いて、すぐにパーティー会場に着いてしまう。そのドアが、音を立てて開かれた。

 中には、さっきまでパーティーに出席していた人たちがいた。あの時より少し人数は減ったようだったけど、囲まれたら恐ろしくて仕方がないような数だ。

 誰もが一斉に僕らに振り向く。

 みんなが王子に道を開けて、僕は広間の真ん中まで引っ張っていかれた。僕だけじゃない。レヴェリルインとドルニテットまで。広間の真ん中でみんなに囲まれて、これじゃまるで吊し上げだ。

 王子は、広間の真ん中まで来て振り向いた。もう彼は、レヴェリルインたちの方を見ていない。周りに集まった貴族たちに向かって、よりいっそう声を上げて、高らかに話し出す。

「皆さま、よくぞお集まりいただきました!!」
「さっさと本題に入れ」

 ドルニテットの冷たい一言も何のその。王子はやけに楽しそうに微笑んで話し出す。

「皆さま、ご存知の通り、この城を管理していた彼ら、イルウイン一族は、国王から授かった金貨を、すべて自分達の私利私欲のために使い、この美しい城を、街を、荒廃した薄汚いものに変えてしまった!! 街は荒れて、城に住む魔法使いたちは彼らに与えられた無茶苦茶な課題に耐えきれずに倒れていく!! こんなことが許されていいはずがない!! 国王陛下はお怒りです。この罪深い一族を……城ごと廃棄しろと……」

 ニヤニヤ笑いながら、王子がレヴェリルインたちに視線を送る。

 こんな状況でも、レヴェリルインの態度は変わらない。腕を組んだままのレヴェリルインは、平然と言った。

「城ごとだと?」
「あなた方兄弟を、この城ごと葬ってしまえと、国王陛下はそう仰るのです。爆破の魔法で、全員! 城と共に! 髪の毛一本すら残さないように、木っ端微塵にしてしまえと……しかし、そんなの、あんまりではありませんか!! あなた方は、確かに間違ったことをした。ですが、私は、その間違いですら許してあげたいと考えています」

 高らかに言う王子に、周りから拍手が送られる。誰もが、王子の言葉を慈悲深いと言って、褒め称えているようだった。
 さっきまで、和やかなパーティーが開かれていたはずの会場が、今はまるで公開処刑だ。

 気を良くしたらしい王子は、レヴェリルインに一歩近づいて言った。

「レヴェリルイン……今すぐに逃げた伯爵……いや、もうただのバルアヴィフか。横領を行った反逆者はどこにいる?」
「知らん」

 きっぱり、あっさり答えられて、さすがに王子は青筋を立てる。

 すでにレヴェリルインは、敬語すら使ってない。それどころか腕を組んで、王子をまるで見下げるような目をしている。

 多分王子は、全く違う反応を期待していたんだろう。それなのに、さっきまでよりむしろちょっと態度が大きくなったレヴェリルインを睨みつけていた。

「……本当に、その答えでいいのか?」
「ああ」
「…………国王と、この国に対する敬意より、貴様はあの怠惰な兄に対する安っぽい家族愛を選ぶのか……それでもいいでしょう! 所詮屑の兄弟は屑、それを私たちに教えてくださったのですから!」

 周囲を見渡して言う王子に呼応するように、レヴェリルインとドルニテットに冷たい視線が向けられる。

 横領って、本当にそんなこと、伯爵がしたのか? そんなの、聞いたことない。それに、逃げたって……だから今、ここにいないのか?

 キョロキョロ見回してみても、確かに伯爵の姿は見えない。こんな時になんでいないんだ。

 このままじゃ、レヴェリルインたちが……

 貴族たちの同意を得られて気分が良くなったのか、王子は、さっきよりもさらに声を張り上げる。

「あなたは優秀な魔法使いです! レヴェリルイン!! その力を失ってしまうことは、この国にとっても大きな損失だ!! それに私は、あなた方のようなものでも殺したくはないのです! ですから、あなた方に最後のチャンスをあげましょう……レヴェリルイン……」
「パフォーマンスはもういいから、さっさと言え」
「……どこまでも図々しい男だ…………では、最後のチャンスだ……」

 王子は、僕を指差した。

「その失敗作を今すぐ、この場で破壊するんだ!! 体の全てを魔法で焼き尽くせ!!!! すでに処分が決まっていたものを、これまでずっと先延ばしにしてきたんだ! それを今すぐ焼き殺して、私に忠誠を誓え!! そうすれば、貴様ら一族の命も、その身分も、私が保障してやろう!!」
「……俺たちの処分は、国王が決めたんじゃなかったのか? それを、すでに決まっていたこと一つこなすだけで許す? そんなことをお前が勝手に決めていいのか?」
「…………言っただろう? 私は慈悲深いんだ。貴様のような、非常に無礼な輩でも、殺すなどできない。先延ばしにしてきた廃棄処分を、今すぐに行えば助けてやる。レヴェリルイン」
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