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番外編16.オーフィザン様とデート!

172.どうしたの?

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 オーフィザン様の使い魔は、僕たちを乗せて城の方に飛んでいく。
 その間も、キュウテはずっと、僕の腕の中で暴れていた。

「クラジュ……離して! 僕、陛下のところには戻らないもん!!」
「でも、キュウテ……」
「陛下、ひどいもんっ……! ぼ、僕……陛下のこと、ずっと心配してたのにっ……僕がいなくなったことにも気づかないなんてっ……!!」

 しゅんってなっちゃうキュウテを、僕はぎゅって抱きしめた。
 キュウテはそう言うけど、さっきお城に走っていった陛下は、真っ青な顔してた。キュウテがいなくなったら、陛下だって絶対すっごく寂しいよ!!

 オーフィザン様も、使い魔の竜を操りながら言った。

「落ち着け、キュウテ。魔物の狙いが自分だとしたら、自分のそばにお前を置いておくほど恐ろしいことはないだろう。臆病なくせにしがらみの中で生きなくてはならないあいつを憐れんでフってやれ」
「オーフィザン様!! フってやれなんてひどいです!!」

 僕が叫んでも、オーフィザン様は全然聞いてない。キュウテも俯いちゃうし、もう僕はおろおろするしかない。

 うううーー!! キュウテも陛下も絶対お互いすっごく好きだもん!! それなのに、そんなのダメだもん!!

「僕、陛下を探してきます!」

 使い魔の竜から降りようとする僕だけど、後ろからオーフィザン様に首根っこを掴まれて止められてしまう。

「やめろ。あの馬鹿のことは、俺が探してやる」
「え? オーフィザン様! 陛下がどこにいったのか分かるんですか?」
「あいつにその拗ねた猫を渡したら、俺とデートの続きをするか?」
「えっ……!? えっと…………」

 もちろん、したいけど……見下ろしたらキュウテが俯いてて、今、デートの話はできないよ……だって、キュウテは大事な友達。キュウテがしゅんってなってたら、僕だって寂しいもん!!

「で、デートはキュウテが元気になってからです!! それまでだめです!」
「……だったら急がないとな」

 言って、オーフィザン様は、竜のスピードをあげる。それは羽を広げて、城の窓から中に入り込むと、迷わずまっすぐ飛んでいく。

 そしたら、階段の下にいる陛下を見つけた。

 いた!! キュウテが大好きな人!!

 キュウテは陛下のことを見て、やっぱり恋しいみたいだけど、会いづらいのか、暴れちゃう。このままじゃ逃げられちゃうと思った僕は、キュウテをぎゅって抱きしめて、陛下目掛けて竜から飛び降りようとした。

 高いところから降りるのは怖いけど、オーフィザン様がいるから大丈夫だもん!!

 でもすぐにオーフィザン様の魔法に捕まって、竜の上に戻されちゃう。

「ふ、ふえ?? お、オーフィザン様?」
「危ない真似をするんじゃない。落ち着きのない猫だ」
「で、でもっ……」
「お前がそんな真似をしなくても、あいつならすぐに捕まえられる」

 そう言って、オーフィザン様がニヤリと笑うと、陛下の足元から鎖が飛び出して、陛下のことを縛り上げちゃう。国王がそんなことになっちゃったから、周りにいたみんなは大騒ぎだ。

 一人だけ、キョテルさんだけ楽しそうに陛下を指差して笑ってるけど、他の人はオーフィザン様に怖い顔で振り向いて、オーフィザン様を怒鳴りつける。

「オーフィザン!! どういうつもりだ!!」
「今すぐに陛下の鎖を解けっ……! オーフィザン!!」

 喚くみんなの上を飛び越えて、キュウテが猫のまま陛下に飛びついていく。

「陛下っ!! 大丈夫!?」
「せっかくお気に入りの猫を連れてきてやったのに、注文の多い連中だ」

 そう言ってオーフィザン様は、ちょっとムッとしながらも、陛下の体を縛り付けていた鎖を消してくれた。
 縛られていたのに、陛下は怒り出すことはなくて、代わりにキュウテをぎゅうって抱きしめた。

「キュウテ……」
「……」

 キュウテは何も言わなかったけど、陛下の腕の中に入ったら、急に大人しくなっちゃう。大好きな人の腕の中にいたら気持ち良くなっちゃうのは、僕と同じみたい。彼の幸せそうな顔を見ていたら、僕まで嬉しくて、尻尾がゆらゆら揺れちゃった。

 陛下は、周りでオーフィザン様に武器を向けている人たちに向かって、静かに言った。

「やめろ。私は無事だ」
「えー。陛下、いいんですか?」

 キョテルさんに言われて、陛下はいいんだって言って、キュウテを抱きしめた。

「彼は、キュウテを連れてきてくれただけだ」
「……」

 キュウテはやっぱり何も言わなくて、陛下の腕の中でじっとしてる。

 僕は、オーフィザン様に降ろしてもらって、キュウテの耳に囁いた。

「き、今日は晩餐会なくなったから、陛下といっぱい一緒だよ!! 魔物だって、もういないし……」
「クラジュ…………」
「あ、後で、陛下と遊びに来て!! 僕も、キュウテたちと一緒に遊びたい! 絶対にきてね!」
「…………いいの?」
「うん!! キュウテが、僕と一緒にいたいって言ってくれて、嬉しかったもん! 僕もキュウテといたいもん!!」
「クラジュ……僕もっ……!!」

 そう言ってキュウテが笑ってくれたから、僕もすっごく嬉しい!!

 魔物のことも解決したし、陛下とキュウテも会えたし、僕もあんまりドジしなかったし、これでこれからデートができる!!

 嬉しくって、しっぽをぶんぶんふりながら、振り向く。そしたらオーフィザン様は僕の頭をなでなでしてくれるっ……って思ったのに、あれ?
 オーフィザン様、頭を抱えちゃってる。どうしたんだろう。ぼ、僕、最後に何かやっちゃったの??

 オーフィザン様は、僕に気づいて顔を上げると、陛下たちに向き直った。

「これで、今日の予定は終わりだな。俺は、猫とのデートに戻る。言っておくが……くれぐれも邪魔するなよ」

 言い含めて、オーフィザン様が使い魔の竜の手綱を操ると、それは空高く飛び上がった。
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