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番外編14.オーフィザン様と対決する!

147.心配……

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 オーフィザン様が行っちゃって、僕だけお部屋に一人。昨日の夜はいっぱいお仕置きされたし、お昼寝してたいけど、ちょっと寂しい……

 雪解けの春がきたら、また森や果樹園の世話で忙しくなるし、オーフィザン様を訪ねてくるお客さんも増える。魔物の動きだって活発になるから、その準備があるんだろう。

 それは分かってるけど、やっぱりオーフィザン様のそばにいたい……

 寝付けない僕は、厨房にいるはずのダンドに、おにぎりとクッキーのお礼を言いに行った。
 だけど、そこにはダンドはいなくて、厨房の人には「また猫が出た!!」って悲鳴あげられちゃった。でも、ダンドの友達の料理人さんが出てきて、もうするなよって言いながら、朝ごはんをくれた。

 いっぱい食べて、その後ついうとうとしてたら、ずいぶん時間が経っちゃった。

 部屋に戻ろうと、一人で廊下を歩いていたら、しばらく聞いていなかった声がする。

 シーニュの声だ!! 帰ってきたんだ!!

 嬉しくて、僕はすぐにそっちの方に走り出した。
 廊下に、掃除用のバケツとモップを持って立っていたシーニュを見つけて、つい飛びついちゃう。

「シーニュ!!」
「く、クラジュっ!?」

 突然飛びつかれて、シーニュはすごくびっくりしたみたいだったけど、すぐに僕に微笑んでくれた。

「クラジュ……久しぶりだな……」
「シーニュ!! 帰ってきてたんだ!!」
「お、おい……あんまり強く抱きつくな……」
「だって、シーニュが帰ってきたんだもん! 嬉しいもん!! いつ帰ってきたの!?」
「あ、ああ……今朝早くにな…………く、クラジュ! そろそろ苦しい!! 離れろっ……!」
「あ、ご、ごめんっ……!」

 僕は慌てて、彼から離れた。つい、うれしくてぎゅうううって強く抱きつきすぎちゃったんだ。

「ごめん……シーニュ……」
「気にすんな。俺もそんだけ喜んでくれて嬉しいぞ」
「シーニュー……」
「な、泣くなよ……! クラジュ……」
「だって……シーニュいなくて寂しかったから……」
「泣くなって。後で部屋にお土産持って行ってやる。お前、朝までお仕置きだったんだろ?」
「な、なんで知ってるの!?」
「雑用係の奴らに聞いたんだよ。すごい騒ぎだったって」
「う、うううー……」

 知られちゃってたんだ……

 ペタンって耳が垂れちゃう頭を、シーニュは撫でてくれた。

「あんまり暴れるなよ?」
「あ、暴れてないもん!!」
「廊下で魔法の道具、破裂させたんだろ?」
「う……」
「……な、泣くなって! ほら! もう俺が帰ってきたんだし、今度ペロケ怒らせたら、俺に言え! ペロケのこと、止めてやるから」
「シーニュ……」
「だから泣くなって……ほら、部屋に戻るぞ。夜にはオーフィザン様が部屋に来るんだろ?」
「今日はお昼から会えるんだ! お部屋に行っていいって、言ってくれた!」
「だったら尚更、早く戻って用意しておけ」

 シーニュは僕の手を引いて歩き出す。

 なんだか、初めてこのお城に来た時を思い出しちゃう。シーニュは、僕がまだ何もわからなかった頃に、お城のこととかお仕事のこととか、全部教えてくれたんだ。やっぱりシーニュがいてくれると、安心する。

 彼と二人で歩いてたら、廊下の角の向こうから話し声がする。口調が荒くて、なんだか怖い……誰か喧嘩してるのかな??

 あれ? ダンドと……セリュー?

 角を曲がろうとしたところで、二人が向き合って立っているのを見つけて、つい、シーニュと二人で隠れちゃった。

 二人は何か話し込んでるみたい。だけど……どんどん険悪な雰囲気になってくよ? あの二人はいつも仲が良いのに。

「どういうことだよ!! セリュー!! ちゃんと説明しろ!!」
「もうしただろう! 全てお前の誤解だ!!」
「そんなんで納得できるわけないだろ!」
「……っ! それならもういい!」

 セリューは怒って向こうに行っちゃう。ど、どうしたんだろう……

 残されたダンドは、セリューを追ったりはせずに、すごく辛そうな顔で俯いてる。

 心配になって、そっと彼に近づいて「ダンド……大丈夫?」って聞くと、彼は振り向いてくれたけど、すごく沈んでいるみたいで、ダンドじゃないみたいだ。

「クラジュ……聞いてたの?」
「ご、ごめん…………セリュー様と……喧嘩したの?」
「……そんなんじゃない。セリューが悪い。俺に隠し事してる」

 ダンド、かなり怒ってる……

 いつもすごく優しいのに、口調も顔も怖くて、でも、すごく辛そうで、どう声をかけていいか分からない。

 おろおろしていたら、シーニュがダンドに優しく言った。

「ダンド……落ち着けよ。セリュー様にはセリュー様の事情があるんだろ? 話せることなら、そのうち話してくれるって」
「……話さないよ。だって、セリュー…………オーフィザン様のこと庇ってるんだから……」
「庇う? 一体、何があったんだよ?」
「昨日オーフィザン様にいたずらされたくせに、黙ってる」
「は!? い、いたずら??」
「したんだよ! オーフィザン様!! またあの猫じゃらし作る気だ!!」
「……あれか……オーフィザン様も懲りないな……」

 え……猫じゃらし? あ、あれ、またできちゃうの!?
 それに……オーフィザン様が昨日セリューにいたずらって……どういうこと? オーフィザン様、あの猫じゃらし、もうないって言ってたし、セリューに悪戯なんて……

 びっくりして、僕は口を挟んだ。

「ね、猫じゃらしって、もしかして、オーフィザン様が僕をお仕置きするときに使う魔法の猫じゃらし? あの猫じゃらし、もうないんじゃなかったの?」

 そしたら、ダンドは腕を組んで言う。

「確かに、俺が全部焼かせた。だけど、まだ懲りてない。絶対また作る気だ。一昨日、セリューをくすぐったのだって、新しい魔法の猫じゃらしを作るための試作品に決まってる!」
「そ、そんな……」

 怖くて震えちゃう。あの猫じゃらし、もうないって言われて、すごく安心したばかりなのに! しかも昨日もまたセリューにいたずらなんて……オーフィザン様! ひどいです!!

 そしたら、シーニュが呆れたように言った。

「そんなもんの実験台にされてんのか……セリュー様は……」
「そうだよ! 何かされたら俺に言えって言ったのに、黙ってる! セリューはいつも、オーフィザン様を庇うんだ!!」
「……落ち着けって…………あれはもう作らないって、オーフィザン様も仰っていたじゃないか」
「改良したの作る気なんだよ。セリュー、知ってるくせに俺に話してくれない!」
「まあまあ……そう怒るなよ。セリュー様にとって、オーフィザン様は絶対なんだから仕方ないだろ?」
「そうだけど……」
「オーフィザン様に聞いた方が早いんじゃねえか? そういうのは。セリュー様に話して欲しいのは分かるけど」
「うん…………ちょっと俺、行ってくる!」
「お、おい!! 落ち着いてから行け!! そのまま行くと、今度はオーフィザン様と喧嘩になるぞ!!」

 シーニュに返事しないで、ダンドは走って行っちゃう。怖い顔してたけど、大丈夫かな……?

 シーニュも心配そう。

「あいつ……大丈夫か? セリュー様のことになると、見境がなくなるからな……」
「仲いいなよね……あの二人」
「付き合ってるらしいぞ」
「えっ!? そ、そうなの!?」
「俺もダンドに聞いたわけじゃねえけどな。厨房で噂になってた。最近セリュー様、丸くなっただろ?」
「そ、そうかな……? 僕、昨日もセリュー様に追いかけられたよ?」
「それはお前が悪い」
「うううううーー……」

 確かに、それは僕が悪いんだけど……昨日、廊下の花瓶を転がしちゃったとき、飛んで行ったそれがセリュー様に当たっちゃったんだもん。

 シーニュと話していたら、大きな木箱を持った人が、シーニュに駆け寄ってきた。確か、少し前にお城に来たばかりの、雑用係の人だ。

「し、シーニュさん!! すみません……ちょっと来てもらえませんか?」
「どうした?」
「そ、その……東の物置にあるはずの鍵が見つからなくて……」
「ああ、それは少し前に全部別の部屋に移したんだ。お前にはまだ教えてなかったな……今行く」

 シーニュは僕に振り向いた。

「じゃあ俺、もう行くわ。ダンドのことは俺が後で探しといてやる。お前は部屋に戻れ。昼からオーフィザン様に呼ばれてるんだろ?」
「うん!!」

 僕が手を振ると、二人は連れ立って行っちゃう。

 シーニュ、帰ってきてすぐなのに忙しそう。雑用係の中ではリーダーで、いつもみんなに頼りにされてるんだ。

 お部屋に向かってまた一人で歩き出したら、廊下の向こう側から、雨紫陽花さんが歩いてくる。

「クラジュ、ここにいたのか。オーフィザンが探しているぞ」
「え!? オーフィザン様が?」
「ああ。お前に会いたいらしい」
「もう会いに行っていいんですか!?」

 うわあああい!! オーフィザン様に会えるんだ!!

「今行きます!!」
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